【10月14日がん研セミナーのお知らせ「DNAポリメラーゼの機能動態から見るゲノム複製の正確性(Fidelity)柔軟性(Flexibility)脆弱性(Fragility)」大学保一博士(東北大学・学際科学フロンティア研究所)】
2021年10月05日
演題:DNAポリメラーゼの機能動態から見るゲノム複製の正確性(Fidelity)柔軟性(Flexibility)脆弱性(Fragility)
演者:大学保一博士(東北大学・学際科学フロンティア研究所)
抄録:真核生物は10種類以上のDNAポリメラーゼを持ち、それらは協調して染色体DNA上に存在する様々な問題に対処し、効率的なゲノムDNAの複製を行う。それぞれのDNAポリメラーゼの性質は異なり、確度の高いDNAポリメラーゼはゲノム複製の中心的な機能を担う一方、誤りがちなポリメラーゼは複製困難な領域を柔軟に合成する。このように、DNAポリメラーゼ間でゲノム複製を分業・協調する仕組みは正確性と柔軟性のトレードオフという性質を必然的に伴い、ゲノム情報の安定性を決定する主な要因の1つである。また、様々なDNAポリメラーゼの機能の変化が、がん細胞におけるゲノム不安定性の要因として報告されている。現在までの酵母を中心とした研究によりDNA複製制御のメカニズムは明らかになりつつある。しかし、酵母の数百倍の大きさのゲノム、より複雑な核内構造を有する哺乳類では、さらに柔軟なゲノム複製機構が必要とされるのと思われるが、依然、その全容解明にはほど遠い。我々は、DNAポリメラーゼの機能動態を全ゲノムに渡り解析する実験系(Polymerase usage sequencing;Pu-seq)を確立し、リーディング鎖・ラギング鎖合成にそれぞれに使われるDNAポリメラーゼの分業を明らかにした。得られたDNAポリメラーゼの機能プロファイルから、ゲノムを網羅して複製反応が開始する位置とその確率、複製フォークの方向性を定量的に評価し、これまでにない精度での細胞内のゲノム複製の解析を可能にした。本セミナーにおいては、上記のPu-seq実験の方法論と成果を紹介し、特に遺伝子領域の転写活性が複製フォークの開始・進行のみならず個々のDNAポリメラーゼの伸長反応に影響すること、さらに、DNAポリメラーゼの動態ががん細胞で染色体異常のホットスポット(fragile site)の形成に関わることを示し、我々の開発したDNAポリメラーゼ解析系のがん研究への応用を議論する。
日時:2021年10月14日(木)15:00開始(講演50分間、その後質疑応答)
場所:オンライン(以下のURLより参加登録をお願いします)
https://zoom.us/meeting/register/tJApd--orjwqHtCqAhbsycF992mlAxALVO3Y
連絡先:野田 哲生(内線5231) (公財)がん研究会 3520−0111