研究内容目次
- 臨床部
ポドプラニン標的抗体の抗腫瘍効果の検討
3次元細胞培養モデルによる新規抗がん剤スクリーニング - TOPPANラボ
- 血液腫瘍科
造血器腫瘍における分子生物学的解明、遺伝子変異、染色体分析について
- 先端医療開発科
臨床部/先端医療開発科グループの研究内容
造血器腫瘍における分子生物学的解明、遺伝子変異、染色体分析について
白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫に代表される造血器悪性腫瘍、白血病の前段階と考えられる骨髄異形成症候群(MDS)や、多発性骨髄腫(MM)の前段階と考えられるMGUS(意義不明な単クローン性免疫グロブリン血症)など多種類の造血器腫瘍の遺伝子変異、分子病態、タンパク質異常の解明を臨床部では進めています。これらの異常な遺伝子、染色体、細胞表面、細胞内蛋白をターゲットとしたさまざまな新規薬剤の台頭により治療成績の向上が認められていますが、治療法が確立していない希少疾患、再発、難治病態について、さらなる病態に関わる因子の究明は今後の医療の進歩には不可欠です。
治療関連骨髄異形成症候群、白血病(t-MN)における遺伝子変異検索
骨髄異形成症候群は原因としては加齢が一要因と考えられていますが、がんに対する放射線治療、抗がん剤治療後に二次的に発生する治療関連性MDSがあります。様々な抗がん剤の台頭により、各がん種の予後は飛躍的に延長していますが、一方、長期抗がん剤投与継続による二次発がん、特に治療関連造血器腫瘍(t-MN)などといった生命予後に関わる重篤な問題も並行して増加しつつあります。t-MNを発症した場合、従来のMDSや白血病より一般的には治療成績は不良です。原疾患(他がん種)の治療中にt-MNを発症した場合は原疾患の治療が中止となることで予後を悪化させてしまうこともあり、臨床上の重要な課題となっています。
我々はt-MNの遺伝子変異解析、染色体分析を行うことで、発症に関する特徴的な遺伝子変異獲得パターンや前治療との関連、予後などの解析を進めています。
多発性骨髄腫(MM)における予後へ影響する遺伝子変異の解析並びに予後不良染色体の細胞内の同時発現についての研究
MMについての薬剤の開発は目覚ましく、抗体医薬、プロテアソーム阻害剤、IMiDsといった多様な薬剤が3剤、4剤組み合わさる併用療法により予後の改善を認めていますが、依然として治療抵抗性、難治性の患者が存在し、我々は治療抵抗性に関わる遺伝子変異、染色体異常の検索を進めています。
多発性骨髄腫の予後不良染色体異常としてdel(17p)、t(14;16)、t(4;14)、t(11;14)、1q gainの染色体異常に関してこれまで単染色による複数染色体異常の出現と予後との相関についての報告はありましたが、一つの細胞における複数染色体異常の獲得については十分な報告がありませんでした。複数染色体異常が一つの細胞に出現することで細胞増殖や治療抵抗性の獲得はまた複雑なものとなることが考えられます。我々は、7種類のFISH probeを用いて同時染色を行い、また表面抗原CD38も追加染色し、LSM880共焦点レーザー顕微鏡により4つの異なる励起波長を用いて各蛍光色素の鑑別を行い、IN Cell Analyzerによる自動解析を同時に行うことで一つの細胞に複数現れる染色体異常を解明し、染色体異常の獲得パターン、予後との相関を確認しています。この手法は2023年に特許を取得いたしました。


**Recent publication
- Impact of NRAS mutation on efficacy of triplet induction therapy in newly diagnosed multiple myeloma. Mishima Y, Shirouchi Y, Takayama T, Minowa S, Ishihara Y, Hirano K, Hirano M, Yoshida K, Teramoto Y, Yamauchi N, Low SK, Maruyama D. J Clin Exp Hematop. 2025;65(1):72-76.
- Serum cell-free DNA concentration as a possible prognostic marker in newly diagnosed diffuse large B-cell lymphoma. Shirouchi Y, Mishima Y, Takayama T, Minowa S, Ishihara Y, Tamba M, Hirano M, Onda N, Takeuchi K, Maruyama D. Biomed Res. 2022;43(4):99-106.
- The clonal evolution during long-term clinical course of multiple myeloma. Mishima Y, Mishima Y, Shirouchi Y, Nishimura N, Yokoyama M, Okabe T, Inoue N, Uryu H, Fukuta T, Hatake K, Terui Y. Int J Hematol. 2021 Feb;113(2):279-284.
- Bearing 19q13 aberration predicts poor prognosis in non-germinal centre type of CD5+ DLBCL. Mishima Y, Terui Y, Yokoyama M, Nishimura N, Ueda K, Kusano Y, Yamauchi H, Inoue N, Takahashi A, Tsuyama N, Mishima Y, Takeuchi K, Hatake K. Br J Haematol. 2018 Nov;183(4):661-664.