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【プレスリリース】患者自身の免疫が反応している胃がんでは長生きしやすい可能性 ―全国規模の臨床試験データから、進行・再発胃がんの新たな特徴を発見―

2026年11月05日

【発表のポイント】
国立健康危機管理研究機構(JIHS)、公益財団法人がん研究会、京都医療センター、愛知県がんセンターほかの研究チームは、切除不能または再発胃がん患者を対象とした大規模第�V相臨床試験の付随研究において、患者自身の免疫が反応している痕跡を示す胃がんでは、生存期間が長い傾向にあることを明らかにしました。

その痕跡を示す指標となるのが、がん細胞に発現するPD-L1というタンパク質です。PD-L1は現在、がん免疫療法の効果を予測する検査として広く用いられていますが、本研究は免疫療法を受けていない患者を対象に解析し、PD-L1が胃がんそのものの性質や患者の予後と関連する可能性を示しました。

【研究の背景】
私たちの体には、がん細胞を発見して攻撃する免疫の仕組みが備わっています。免疫細胞ががんを攻撃すると、その周囲では炎症反応が起こり、さまざまな免疫関連分子が現れます。PD-L1もその一つです。
これまでPD-L1は、がんが免疫の攻撃をかわすために利用する分子として知られてきました。しかし近年の研究から、PD-L1は患者自身の免疫がすでにがんを認識し、攻撃していたことを示す“痕跡”でもあると考えられるようになっています。
つまり、PD-L1が発現している腫瘍は、免疫が全く働いていない腫瘍ではなく、患者自身の免疫とがんが活発にせめぎ合っていた状態を反映している可能性があります。研究チームは、この特徴が胃がん患者の予後にどのように関係するのかを検証しました。

【研究の概要】
PD-L1と進行・再発胃がんの予後との関係は、これまで十分に明らかではありませんでした。研究グループは、全国56病院が参加した第�V相臨床試験の保存組織を用いて、免疫チェックポイント阻害薬を使用せず、従来の抗がん剤治療を受けた患者を解析しました。
本試験に参加した741人のうち、治療前の組織でPD-L1を評価できた540人を対象とし、PD-L1を次の2つの方法で評価しました。

TPS(腫瘍細胞割合スコア)
がん細胞そのものに発現するPD-L1を評価する方法

CPS(総合陽性スコア)
がん細胞に加え、周囲のリンパ球やマクロファージなど免疫細胞のPD-L1も含めて評価する方法
現在の胃がん診療では、主にCPSが免疫療法の適応判断に用いられています。

【研究結果】
●がん細胞にPD-L1を発現する患者(TPS陽性)では、全生存期間が有意に良好であり、病気の進行または死亡までの期間(無増悪生存期間)も有意に良好でした。
●一方、免疫療法の適応判断に用いられるCPSは、予後との明確な関連を示しませんでした。

【研究の意義】
本研究の重要な点は、免疫療法の指標として用いられているCPSではなく、がん細胞そのもののPD-L1発現(TPS)が予後と関連していたことです。

この結果は、PD-L1が単なる治療選択のための検査項目ではなく、次の3つを反映している可能性を示しています。

1.胃がんの生物学的特徴
2.腫瘍と免疫の相互作用
3.患者自身の抗腫瘍免疫の状態

PD-L1が発現している腫瘍では、患者自身の免疫ががんを認識・攻撃し、その結果として炎症反応が生じ、PD-L1が誘導されていた可能性があります。すなわち本研究は、“PD-L1が予後を改善した”のではなく、“免疫が反応している胃がんでは予後が良い可能性がある”ことを示した点に大きな意義があります。

【発表代表者コメント】
山田 康秀(国立健康危機管理研究機構)
「PD-L1は免疫療法の効果予測マーカーとして広く知られていますが、本研究ではそれとは異なる重要な側面が見えてきました。私たちの結果は、PD-L1が患者さん自身の免疫が腫瘍に反応していたことを示す“痕跡”である可能性を示しています。免疫と胃がんの相互作用が、患者さんの予後に深く関わっていることを示唆する成果です。今後もそのメカニズムの解明を進め、一人ひとりの患者さんに適した治療の実現につなげていきたいと考えています。」

【発表者・研究者等情報】
国立健康危機管理研究機構 理事長参与
山田 康秀


【論文情報】
●論文名 PD-L1 expression and survival in unresectable/recurrent gastric cancer treated by 1st-line treatment without immune checkpoint inhibitors

●日本語訳 免疫チェックポイント阻害薬を含まない一次治療を受けた切除不能・再発胃がんにおけるPD-L1発現と生存期間

●論文種別 Clinical Study

●著者 Hidekazu Hirano, Yasuhide Yamada, Kengo Nagashima, Nobuyoshi Hiraoka, Shigeki Sekine, Naoki Takahashi, Mizutomo Azuma, Satoru Iwasa, Keisuke Kanato, Nozomu Machida, Takahiro Kinoshita, Hiroaki Hata, Hisato Kawakami, Daisuke Takahari, Toshiyasu Ojima, Shigenori Kadowaki, Narikazu Boku, Yukinori Kurokawa, Masanori Terashima, Takaki Yoshikawa

●臨床試験登録番号 UMIN000007652

●受付日 2026年3月14日 改訂日 2026年8月6日 採択日 2026年8月24日

●論文掲載日 2026年9月4日(英国夏時間)
〈DOI〉
https://doi.org/10.1038/s41416-026-03607-7

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