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肺がん

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がん研有明病院の肺がん診療の特徴

がん研有明病院の肺がん診療の特徴

迅速かつ正確な診断に基づいて、診断、治療の専門家によるカンファランスでの検討(検討会名:呼吸器科キャンサーボード)を踏まえ、常に最新・最適かつ安全な治療を提供するよう努めています。

1.迅速性

初診から治療方針の決定まで3−4週間以内を目標に、確定診断および病気の進行度などの検査を行い、患者さんに最適な治療法を提案できるように心がけています。

2. 正確な診断

肺がんは発生部位や組織型、病気の進み方によって治療方針が異なります。CT 、内視鏡(気管支鏡)、CTガイド経皮針生検、MRI、シンチグラム、PETなどの最新の技術と知識を生かして、確実な診断を心がけています。また、がんの診断で重要な、病理部門、細胞診断部門は特に充実しており、臨床医師とのタイアップを密にして、診断の正確性を向上する体制を整えています。特に気管支鏡検査では、肺がんの診断だけでなく、肺がんの転移が疑われるリンパ節の診断を積極的に行っています。先端に超音波がついている気管支ファイバーでは、腫大したリンパ節を描出することが可能となり、リンパ節を穿刺することができるようになりました。当院では、手術適応にかかわる部位のリンパ節を穿刺して、肺がんの転移の有無を調べています。画像診断だけに頼らずより確実なリンパ節転移診断が可能となり、適正な治療方針を決定できるようになりました。

3. 総合診断

担当医師のみでなく、診断、治療に関わる内科、外科、放射線科医師で検討(呼吸器科キャンサーボード)した上で、患者さんの病状を総合的に診断し、治療法を提案しています。担当医師個人の独断による偏った医療にならない体制を整えています。

4. 十分な説明

肺がん手術を受ける方へ治療方針に関しては、病名、病状、現在の最新の治療、それをしのぐ目的の臨床試験、治療の効果やリスクなどを、十分な時間をかけてご説明し、ご本人はもちろん、御家族の方にも十分納得を頂いた上での治療を行います。患者さんにはきちんと正確な病名や病状をお話しします。それをしないで、治療の良い面ばかりを強調する説明は行っておりません。肺がんの手術を受けられる患者さんには、『肺がん手術を受ける方へ』という小冊子を外来でお渡ししています。

5. 最高の医療の提供

豊富な経験と、熟練した技術、関連した医師の知識の集約による最高レベルの医療の提供をしています
傷がほとんどない肺がん手術 完全鏡視下手術

胸腔鏡手術では胸に数カ所の孔を開けて行いますが、肺がん手術の場合5cm-10cm程度の傷を必要とすることも多いのが現状です。当院では、比較的早期の肺がんに対して、適応を吟味して最大で3−4cm程度の傷(4カ所の孔の中で)での完全鏡視下手術も数多く手がけています(肺がん手術の約40%)。
詳細は、後述の「胸腔鏡手術」の項目をご覧ください。

肺をなるべく残す手術(機能温存手術)

なるべく機能を温存するため、がんの治療に問題ない範囲で残せる部分は極力残すように心がけています。
今までの標準手術である肺葉切除のみならず、肺を残す区域切除や部分切除、あるいはリンパ節転移頻度やその手術成績から合理的なリンパ節の廓清も積極的に施行しています。

研究と臨床の架け橋 JCOG参加など

診断・治療にあたるとともに、同意のいただけた患者さんに関しては、新しい治療法、診断法などの臨床研究も積極的に行っています。また、JCOGなどの国内有数の大規模臨床研究にも協力をしています。

6. 安全性

治療開始前に、予定治療の危険性に関する十分な検査を行い、安全性を最重点に治療を実施しています。治療方法ごとに経験豊富な専門医が十分な注意を払って治療します。外科療法に関しては、クリニカルパスという術後の管理方式を徹底させ、手術ならびに術後管理の安全性はきわめて高いものになっています。

化学療法に関しては、呼吸器内科は毎日病棟でグループ検討会を開いており、1日ごとに変化しうる化学療法の患者さんの状態を呼吸器内科グループ全体で把握する体制をとっています。

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肺がんの治療成績(手術件数・生存率)

年間約400例の肺がん治療を行っています。そのうち手術施行例は約250例、化学療法施行例(放射線治療を含む)が約150例です。

肺がんの切除総数は3,500件をこえています。肺がんの発生した部位に応じた合理的なリンパ節廓清を施行し治癒率を下げずに安全性を図っています。2008年からは、主に早期の肺癌(概ねI期)を対象に胸腔鏡手術を導入し、また極めて早期の肺がんには肺葉切除でなく区域切除や部分切除(より小さい範囲での切除)も行っており、手術の低侵襲化に努めています。胸腔鏡手術は、肺がん手術の約40%(2010年)を占めています。肺門部発生肺がんに対しては、気管支形成術を行い肺機能温存につとめています。心、大血管、気管分岐部などに浸潤したVB期症例には、集学的治療として術前治療を含む拡大手術を考慮して実施しています。

手術成績は年々向上していますが、最近10年間の成績では5年生存率(全死亡)は、IA期87%、IB期70%、IIA期59%、IIB期60%、IIIA期46%、IIIB期35%と良好であり、一方、手術関連死亡率は0.3%の低率です。

肺がんの化学療法(放射線治療を含む)の成績も向上しています。限局型小細胞がんに対しては完全寛解を目指した化学療法・放射線照射の合併療法を,非小細胞がんに対してはより高い有効率とQOLの向上を目指した治療を行っています。患者さんの社会生活を損なわないように、入院期間の短縮や外来化学療法なども行っています。切除できない肺がんに対する延命効果も期待できるようになってきました。また新規抗がん剤の治験や多施設共同の臨床試験にも積極的に参加し,肺がん化学療法の治療成績の向上を目指しております。

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肺がんについての知識

肺がんとは

呼吸をする時、空気は鼻や口から体内に入り、さらに喉から気管を通り、次いで気管支に入ります。
気管支は主気管支、葉気管支、区域気管支と順次20回ほど分岐して肺胞に至ります。肺胞で酸素を身体に取り入れ、炭酸ガスを排出します。この気管支から肺胞に至る部分を肺と呼び、ここに発生するがんのすべてを肺がんと呼びます。

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肺がんの原因

肺がんの原因として、現在のところはっきりしているのは喫煙です。
特に小細胞がん、扁平上皮がんは喫煙との因果関係が深く、タバコを吸わない人はほとんどかからないがんです。タバコを多く吸う人ほど肺がんにかかりやすく、一般に重喫煙者(1日の本数×喫煙年数=喫煙指数が600以上の人)は肺がんの高危険群です。喫煙者の肺がん死亡の危険度は非喫煙者の4〜5倍と言われていますし、喫煙量が1日20本以上と多いと10倍以上、喫煙開始年齢が早いとさらに増加することが明らかになっています。
これ以外に、食事の欧米化、大気汚染なども原因と言われていますが、疫学的にはっきりした証明はないのが実情です。特殊な肺がんとして、アスベストやクロムの曝露による肺がんがありますが、それは特殊な職業に携わった人の罹る肺がんであり、普通の日常生活を送っている人ならあまり心配する必要はありません。

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肺がんの統計

肺がんは近年急速に増加

がんによる死亡数では、肺がんは、日本人では長年1位であった胃がんを1998年に追い抜いて、がん死亡の1位になってしまいました。
日本人の1年間のがん死亡者は約35万(2009年)ですが、そのうちの3分の1の10万人が、肺がんと胃がんによる死亡です。2009年には、肺がんの年間死亡者数は、男性約49,500人で、1993年以来がん死亡の第1位であり、女性は18,000人で大腸がんについで第2位です。今後当分の間、肺がんはがん死亡の1位を占め、しかも増加してゆくことは確実と考えられています。
肺がんは50歳以上に多いのですが、激増しているのは70歳代の高齢者で、10年前に比べるとざっと3倍になっており、加齢とともに増加するがんです。わが国の平均寿命の延長、高齢化社会への突入が肺がんの増加に拍車をかけています。
これは戦後、タバコを吸うようになった人の率が非常に増加したため、その世代が発がん年齢に至り、その影響が統計となって出てきていると考えられます。

男性に多いがん

肺がんは、男女比が3対1と男性に多いがんで、これは男性の方が喫煙率が高いためと考えられています。
そして男性では、1993年からがん死亡の1位(全体では1998年から第1位)が肺がんになっています。

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肺がんの特徴

がんの特徴は周囲の臓器に浸潤(がん細胞が正常組織にしみこんでがん組織に置き換えてゆくこと)してゆくことと、転移(元のがんから離れたところにがん細胞が飛び火して増殖すること)をすることです。
このようながんの中でも肺がんの特色は、いろいろな臓器に遠隔転移(がん細胞が血液に入って流れて行き、離れた臓器に転移をつくること)をおこしやすいことです。肺がんが遠隔転移をおこしやすい臓器としては肺、脳、骨、肝臓、副腎などが代表的です。

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肺がんの分類

細胞の形態による分類

肺がんと一口でいっても実はいろいろな種類のがんがあります。
それらは顕微鏡でみたがん細胞の形態から大きく分けると、腺がん、扁平上皮がん、小細胞がん、大細胞がんなどに分類されます。

最も多い腺がん

腺がんは肺の末梢に発生するがんの代表的なもので、非喫煙者の女性もかかるがんです。
肺がん全体の60%を占め、肺がんの中では最も発生頻度の高いがんです。しかも近年この腺がんの増加が著しいことが問題となっています。腺がんははっきりした原因の判っていないがんと考えられていましたが、近年この腺がんにも喫煙と関係のないがんと、喫煙が関係しているがんがあることが判って来ました。

二番目に多い扁平上皮がん

扁平上皮がんは喫煙と関連の深いがんで、非喫煙者はまずかからないがんです。
圧倒的に男性に多く、肺がん全体の約20%を占めます。後の項で述べる肺門(肺の心臓に近い部分で、比較的太い気管支の部分)型肺がんの代表的なものですが、肺野(肺の末梢の部分)に発生することも多く、扁平上皮がんの60%は末梢発生です。がんが発生したその場所で発育する性格が比較的強く、転移の足が遅く、完全に切除できると治癒の可能性が高いがんです。また放射線治療も有効ながんです。

その他の肺がん

小細胞がんは発育が早く、小さなうちから転移をおこしやすいがんとして有名です。
幸い肺がんの15%程度にしかすぎませんが、発育が早いために発見されたときにはすでに進行しており、治療として手術が考慮されることは少なくなります。検診での早期発見による2次予防の難しい肺がんです。肺門付近にできやすく、喫煙との関連もあり男性に多いがんです。抗がん剤や放射線療法が非常に有効なことが治療上の特徴で、この点で他の肺がんとは治療上の対応が異なり、手術よりも抗がん剤の治療が主体になることの多い肺がんです。
大細胞がんは肺がんの約5%を占めますが、発育が比較的早いという以外あまりはっきりした特徴はありません。
この4種類以外にも肺がんはありますが、特殊で稀ながんということになります。

発生部位による分類

肺門型肺がんと肺野型肺がん

肺がんは発生部位によって、肺門型(中心型)肺がんと肺野型(末梢型)肺がんに大別されます。
すなわち、肺の入り口にあたる肺門部の太い気管支にできるものと、肺の奥、すなわち肺野末梢にできるものの2つです。この二種類に分ける意味は、単にできる場所が違うというだけでなく、がんの性格や症状にも違いがあるからです。
肺門型肺がんは、初期には胸部レントゲン検査で発見するのが難しいのですが、そのかわりに咳、痰、あるいは血痰などの症状が現れたり、痰の中にがん細胞がこぼれ落ちて出て来たりします。
一方、肺野末梢型肺がんの多くは初期にはなかなか症状が現れないのが困り者です。しかし、比較的早い時期から胸部レントゲン写真に写ってきますので、定期的な検診が必要です。また、ほかの病気で胸部レントゲン写真をとり発見されることもよくあります。

治療戦略による分類

小細胞がんと非小細胞がん

治療方法で分けると、肺がんは小細胞がんと非小細胞がん(腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん)の2種類に大きく分類されます。
前述したように、小細胞がんは非小細胞がんに比べて、発育が早く転移を起こしやすいことと、抗がん剤や放射線療法が非常に有効なことが特徴で、この点で他の肺がんとは治療上の対応が異なり、手術よりも抗がん剤の治療が主体になることの多い肺がんです。

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肺がんの症状

原発巣による症状

原発巣(最初に発生した部分で増殖しているがんの病巣)による症状としては、肺がんが肺のどの部分に発生したかで症状が異なります。
すなわち、肺門と呼ばれる肺の中心部の太い気管支に発生する肺門型肺がんと、肺野と呼ばれる肺の末梢に発生する肺野型肺がんの二つに分けて考えた方が理解しやすいのです。
肺門型肺がんは早い時期から咳、痰などの気管支の刺激症状や、がんの組織がくずれるための血痰などの症状がでます。
前述しましたが、この肺門型肺がんの代表的なものは扁平上皮がんで、圧倒的に男性に多く、喫煙者のがんです。ごく早期のうちにはレントゲン検査では発見できないのが特徴です。もう少し進行すると気管支の内側を狭くするように発育し、そのため気管支の浄化作用が障害され、閉塞性肺炎と呼ばれる肺炎を起こします。
この時は咳、発熱、時に胸痛などの症状がでます。さらに進行するとがんが気管支を塞いでしまい、閉塞した気管支の関連している領域の肺に空気の出入りがなくなる無気肺という状態になり、その範囲が広いと呼吸困難になります。
一方、肺野型肺がんの特徴は、早期のうちには自覚症状がないのが特徴で、胸部X線写真をとる以外に発見の方法のないことです。この代表的なものは腺がんで、女性にも少なくない肺がんです。肺野型肺がんが進行して、周囲の臓器に浸潤すると、そのための症状がでます。たとえば肋骨や脊椎に浸潤するとその部分の強い痛みが生じます。

転移による症状

胸膜に進展して、がん性胸膜炎になると胸痛や咳などの症状がでます。さらに進行して胸水が多量に溜まると呼吸困難を起こします。
骨に転移して進行するとその部分に強い痛みがでます。場所によってはその部分で骨折してしまいます。
脳に転移すると頭痛や嘔吐が起こったり、転移した部位の脳の働きが障害されて手足の麻痺や視力の障害が出たりするなど、傷害された脳の部位により症状が異なります。
リンパ節の転移が進行すると、咳がでたり、首のリンパ節を硬く触れたりするようになります。また縦隔(左右の肺ではさまれた部分を言い、心臓、大血管、気管、食道など重要な臓器が入っている場所)のリンパ節転移が大きくなって、上大静脈(頭と腕の静脈血を心臓にもどす太い血管)が圧迫されると、上半身がむくんで紫色になり呼吸困難をおこす上大静脈症候群という状態になります。
転移による症状は、転移がどの部分に起こったかによるので、その症状は様々です。必ずこのような症状が起きるというものではありません。

特殊な症状

がんによっては、ホルモンや特殊な物質を産生し、そのための症状がでることがあります。
食欲不振、ばち状指解説、手足の指が腫張、四肢の関節痛、発熱など様々な症状が出ることもありますが、肺がんに特徴的というものはありません。

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肺がんの発見

症状による発見

さきに述べた自覚症状によって肺がんが発見された場合、肺門型肺がんであれば良いのですが、肺野型肺がんの場合には一般には、治癒に結びつく治療は難しいのが現実です。さらに遠隔転移による症状で発見された肺がんの場合、基本的には治癒に結びつく治療はありません。

検診による発見

肺がん発見のための検査は喀痰細胞診と胸部レントゲン検査、胸部CT検査(ヘリカルCT)です。
肺門型肺がんでは痰の中にがん細胞がこぼれ落ちてくることがあるので、喀痰細胞診も併用して発見します。早朝の痰を採取し痰の中にがん細胞が含まれているかどうかを検査するものです。肺門型肺がんは、基本的には喫煙者の肺がんですので、喀痰細胞診はタバコを吸わない人にはあまり関係がありません。
一方、肺野型肺がんでは症状に乏しく、とくに初期にはほとんど症状がありません。胸部レントゲン検査や胸部CT検査などで発見されます。
ヘリカルCTといって、患者さんが呼吸を停止している間に目標とする部位の周囲を・線管球がグルグル回転し、短時間に患者さんを検査台ごとスライドさせてすき間なく対象臓器の全体を検査する方法が普及して、通常の胸部レントゲン写真では写りにくい部位の肺がんの発見や、小さい肺がんなどの発見に威力を発揮しています。

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肺がんの検査

確定診断

がんであることの確定診断はがん細胞を確認することです。
喀痰の中のがん細胞を確認する方法(喀痰細胞診)、気管支経由で細胞を採取する器具を病変に挿入する方法(気管支鏡検査)、そして体外から針を刺して病変から細胞を採取する方法(経皮的肺穿刺法)の3種類があります。これで診断がつかない時には、手術により診断をつける方法(開胸生検)があります。

1.喀痰細胞診:

喀痰細胞診は血痰、継続する咳、痰などの呼吸器症状を訴える患者さんに対して、必須の検査です。
特に、太い気管支に発生した肺門部早期肺がんでは、胸部・線写真に異常がないことが多く、喀痰細胞診が発見手段となります。喀痰細胞診の陽性率は、回数を重ねるとともに向上するので最低3日間の検査が必要です。40歳以上のヘビースモーカーの人は、年1回の本検査が望まれます。

2.気管支鏡検査:

気管支鏡で病巣を観察しながらブラシなどで目的の部位を擦過する病巣擦過法、あるいは病巣を針で穿刺する経気管支的穿刺吸引細胞診を行います。気管支鏡の可視範囲外の末梢病巣に対しては、X線透視下にブラシや針を誘導し、病巣から細胞を採取します。先端に超音波がついている気管支ファイバーでは、腫大したリンパ節をその超音波で描出することが可能となり、リンパ節を穿刺することができます。当院では、手術適応にかかわるリンパ節を穿刺して、肺がんの転移の有無を調べて適正な治療方針を決定しています。
よく気管支鏡検査は非常に苦しいといわれますが、決してそんなことはありません。喉に局所麻酔剤をよく効かせて検査を行いますので、胃カメラ検査よりも楽に検査ができます。

3.経皮的肺穿刺法:

経気管支的に検索が困難な末梢病巣には、穿刺針を用いて細胞を採取します。
・X線透視下に病巣を確認しながら、皮膚を通して目的の部位まで穿刺針を挿入し、腫瘤に到達したら注射器で吸引します。
・X線透視で確認できない微小病変では、CTガイド下に穿刺をします。経皮針生検の場合は肺を覆っている胸膜に外から穴をあけることになりますので、そこから空気が漏れて、気胸という合併症をおこす可能性が10%ほどあります。
これに対応できるように、基本的には短期の入院が必要な検査です。

4.開胸生検:

手術により直接腫瘍から組織をとり診断する方法です。近年は胸腔鏡という技術が普及して、負担の少ない手術で診断がつくようになりました。

病期(ステージ)診断

がんは発生した部位で大きくなるのみではなく、リンパ節やいろいろな臓器に転移をおこす可能性があり、その程度によって適切な治療方法が異なります。すなわち肺がんの進行の程度を示す病期を決める検査が必要となります。これらを調べるために胸部のみならず、いろいろな臓器のCT、MR、超音波、アイソトープの検査などが目的に応じて行われます。詳しくは「Chapter.9 病期(ステージ)」を参照して下さい。

耐術能検査

肺は生命の維持に必須の臓器であり、切除の限界は、肺機能の正常な人で左右の肺のどちらか一方を全部切除するところまでです。肺や胸膜の病気により肺活量が減少したり、肺気腫などの肺の疾患で肺から血液に酸素を取り入れる効率が低下したりしている時には、片方の肺全部を切除すると残りの肺では生きてゆくことが困難な場合もあります。
そこで、がんを治すために必要十分な切除の範囲を決定し、予定手術の術後にどれだけの肺機能になるかを正確に予測すること、また予定以上に進行していた場合には、どこまで手術を拡大できるかを把握しておくことは非常に重要なのです。
このために、通常の肺機能検査のほかに、肺血流シンチや肺換気シンチなどが行なわれます。
手術適応から外れる人にはここまで詳しく調べる必要はありません。

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病期(ステージ)

がんの拡がりぐあいで治療方法が変わります。
肺がんが診断されると、がんが肺から他の臓器に拡がっているかどうか、病期診断の検査が必要になります。通常行われる検査は、脳MRI、胸部CT、腹部のCTあるいは超音波検査、骨シンチグラフィーなどです。

病期分類

がん細胞の拡がり具合で病気の進行をⅠ〜Ⅳ期の病期に分類します。
Ⅰ〜Ⅲ期は、さらにその病期の中で軽いものをA、重いものをBともう一段階細分化します。

Ⅰ期 がんが肺の中にとどまっており、リンパ節や他の臓器に転移を認めない段階。
Ⅱ期 原発巣のがんは肺内にとどまっており、同側の肺門リンパ節には転移を認めるが、他の臓器には転移を認めない段階。
Ⅲ期 原発巣のがんが肺を越えて隣接臓器に浸潤しているか、縦隔リンパ節に転移を認めるが、他の臓器には転移を認めない段階。両方あっても3期です。
Ⅳ期 原発巣の他に、肺、脳、肝臓、骨、副腎などの臓器に転移(遠隔転移)がある場合。

小細胞肺がんでの進行度分類

小細胞がんでは手術の適応の時期を逸した進行がんで発見される症例が多いことから、限局型、進展型に大別する進行度分類も使われています。

1.限局型:

がんが1側の肺と近くのリンパ節に存在する場合。

2.進展型:

がんが肺の外に拡がり、遠隔転移のある場合。
手術を考慮している時には、病期分類を使います。

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肺がんの治療

肺がんの治療法は原則的には病期により決定されます。
それに、がんの部位、組織型、年齢、既往歴、合併症、臓器の機能や一般的な健康状態に基づいて、慎重に治療の方法を選択します。肺がんの治療法には、外科療法、放射線療法、抗がん剤による化学療法、免疫療法、痛みや他の苦痛に対する症状緩和を目的とした治療(緩和治療)などがあります。

外科療法

手術方法の原則は、肺野末梢部肺がんには腫瘍を含めた肺葉切除(右は上、中、下の3葉に、左は上、下の2葉に分かれており、その葉の単位で切除すること) とリンパ節廓清(リンパ節を一つ一つつまみとるのではなく、まわりの脂肪と一緒にまとめて切除すること)、肺門部肺がんには、気管支形成術(切り取った気管支の残りをつなぎ合わせる手術)を伴った肺葉切除とリンパ節郭清です。病巣の進行が軽ければ肺の部分切除で済むこともありますが、進行していると1側肺の全摘になる場合や、隣接臓器を合併切除する場合もあります。

非小細胞がんの場合、通常、Ⅰ期からⅢA期が手術の対象となります。肺は切り取っても生えてくる臓器ではありませんので、残る予定の肺機能が悪いと手術ができないこともあります。術後の5年生存率は、病理病期でおよそⅠ期:80%、Ⅱ期:60%、Ⅲ期:40%、Ⅳ期:10%未満です。小細胞がんでは抗がん剤の効果が大きいので、手術を行う場合でも、手術前あるいは手術後に化学療法を行うのが原則です。

胸腔鏡手術

2008年からは、主に早期の肺癌(概ねI期)を対象に胸腔鏡手術での根治手術を導入し、また極めて早期の肺がんには肺葉切除でなく区域切除や部分切除(より小さい範囲での切除)も行っており、手術の低侵襲化に努めています。2010年は、肺がん手術の約40%を占めています。


放射線療法

放射線療法とは、X線や他の高エネルギーの放射線を使ってがん細胞を殺すものです。
非小細胞がんの場合手術できないⅠ期、Ⅱ期、胸水を認めないⅢ期が対象です。小細胞がんの場合には限局型が対象となります。
肺がんの場合、通常、体外から肺やリンパ節に放射線を照射します。一般的には1日1回週5回照射し、5週間から6週間の治療期間が必要です。最近では、1 日2回週10回照射する多分割照射も試みられています。症例によっては、副作用を軽減できて、十分な量の放射線照射の出来る3次元照射が出来る場合もあります。

化学療法

外科療法・放射線療法が局所治療であるのに対し、抗がん剤による化学療法は全身治療です。
小細胞がんには抗がん剤の効果が著しいことから、化学療法は小細胞がんに対するもっとも一般的な治療です。非小細胞がんに対する化学療法の対象は、原則的には手術適応がない3期とIV期の症例です。
抗がん剤は通常、2種類以上を使用します。治療期間は、通常3〜4週を1コースとして複数回繰り返します。毎週抗がん剤を投与する治療も行われています。
一方、非小細胞がんでは小細胞がんに比べ抗がん剤の効果が低く、抗がん剤のみでがんが治癒することは稀です。
抗がん剤による治療は化学療法単独で行うこともありますが、最近は、手術や放射線治療に化学療法を組み合わせる治療も積極的に行なわれるようになってきました。このようにいろいろな治療法を組み合わせて行う治療を集学的治療と呼びますが、進行した肺がんの多くには集学的治療が必要です。

内視鏡治療(レーザー治療)

気管支鏡の可視範囲内の早期がんにはレーザー光線を照射して治療できるものがあります。
肺門型肺がんはヘビースモーカーのがんですので、高齢者や肺機能の悪い人が多く、また多発することも多く、手術ができない場合があり、レーザーを用いた「光線力学的療法」が開発されました。
「光線力学的療法」とは、がん組織に取り込まれやすく光に反応しやすい化学薬品を投与後、レーザー光線を照射し、肺門部の早期肺がんを選択的に治療する方法です。
腫瘍に集まりやすい光感受性物質(ヘマトポルフィリン誘導体)を静脈注射してから腫瘍にレーザー光を照射することにより、腫瘍細胞を選択的に破壊するという治療です。レーザー照射後は、壊死組織の器質化による気道の閉塞を防止するため、翌日より2〜3日は連日、その後1カ月間は1週間に1回、気管支鏡による壊死物質の除去が必要です。(当院では施行しておりません)

免疫療法

免疫は外敵(細菌やウイルス等)の排除に活躍していますが、体の中にできるがんに対しても作用します。
この体に備わった免疫力を強化してがんを克服しようとするのが免疫療法です。体の免疫機能を高める、がん細胞を特異的に殺す免疫担当細胞を点滴するなどの種々の免疫療法が試みられています。しかし、いずれも実験段階であり、現状では肺がんに有効な免疫療法はありません。

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副作用と対策

がんに対する積極的な治療で苦痛や副作用を伴わない治療はありません。肺がんも同様です。
しかし、それをなるべく少なく、安全にという努力は日夜なされています。治療法ごとの副作用や苦痛、危険性などを下記に列挙します。

外科療法

手術に際しての一番の苦痛は、術後の痛みです。
しかし今は疼痛対策が非常に進歩していますので、かつてのような激しい痛みはほとんど感じることはなくなりました。胸腔鏡手術の導入により以前よりかなり小さい傷で手術を行うことも可能となってきています。硬膜外麻酔という仕掛けを手術直前に麻酔医が背中から行います。その他の鎮痛剤も非常に良いものが出来ています。
手術にはリスクがつきもので、100%安全な手術はありません。しかし、この手術も非常に安全になってきました。現在の一般的な手術関連死亡率は1%以下です。
手術中の事故はまずないのですが、怖いのは術後の合併症(余病)で命の危険を伴うことがあることです。この中で最も怖いのは肺炎で、喫煙者の人の方が明らかにそのリスクが高くなります。手術を受ける場合には、4週間以上の禁煙が必須となります。手術のために入院されても、禁煙できていない患者さんは退院してもらっています。
退院後は、息ぎれや、術後3ヶ月程度は傷の痛みを伴うことがあります。息ぎれがひどくライフスタイルの変更が必要になる患者さんは、滅多におられません。なぜなら、それほど低肺機能になる患者さんには手術適応がないからです。

放射線療法

主な副作用は、放射線による食道炎、皮膚炎、肺臓炎です。
食道炎、皮膚炎は放射線治療の中ごろから終わりごろに出てきます。食道炎は食事をするとしみたり、痛みを感じたりするものです。皮膚炎は皮膚に痒みや軽い痛みが出ます。肺臓炎は放射線終了後に2ヶ月位の間に出ることがあります。
初期症状は咳、微熱、息ぎれです。強い反応が出た場合は、ステロイドホルモンを投与して治療する必要があります。強い肺臓炎にはならなくても、放射線のかかった範囲の肺は放射線肺線維症という状態になり、肺としての機能はなくなります。

化学療法

主な副作用は、骨髄毒性(貧血、白血球減少による感染、血小板減少による出血傾向など)、吐き気・嘔吐、食欲不振、下痢、末梢神経障害(手足のしびれ)、肝機能障害、腎障害、脱毛、疲労感などです。
用いる抗がん剤の種類や個人差もあります。その他予期せぬ副作用も認められることがあります。強い白血球減少に対しては感染を防ぐため、白血球増殖因子(G-CSF)を用います。吐き気に対しても良い薬剤が開発されずいぶん楽になりました。

内視鏡治療(レーザー治療)

副作用として重篤なものはありません。
しかし、ヘマトポルフィリンは正常組織にも1〜2カ月はわずかに残りますので、直射日光との反応で光過敏性皮膚炎を起こします。その防止のため、約4週間直射光より遮断する必要があります。

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治療成績

非小細胞がん

病期と全身状態により異なります。外科療法の場合、術後の5年生存率は、およそⅠ期:80%、Ⅱ期:60%、Ⅲ期:40%、Ⅳ期:10%未満です。
放射線療法の場合には、手術が出来ない身体的な条件があることが多く、これよりかなり悪くなります。手術の出来ないⅢ期とⅣ期では長期生存する方は稀です。化学療法でも、それが有効な方は生存期間が延長します。

小細胞がん

治療成績はやはり進行度により異なります。
限局型の場合、3年間無再発率は20%前後ですが、進展型の場合、3年間再発しないことは少ないと言わざるを得ません。

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肺がんの予防

一次予防と二次予防

がんの予防には一次予防と二次予防があります。
一次予防とはがんにならないように工夫することをいい、二次予防とは検診によって早期発見、早期治療をして、がんで命を落さないようにすることをいいます。

一次予防

なんといっても禁煙です。
タバコが存在しなければ、理論的には男性で70%、女性で26%(男女合計で58%)の肺がんが減少すると考えられています。
一方、喫煙者が禁煙した後の肺がん発生のリスクは、喫煙を継続している人のリスクを1とすると、禁煙後5年以内では0.9倍、5年以上経過して半分に、20年を経過して約3分の1になります。
このように、禁煙の効果はすぐにでるものではありません。一方、喫煙の年数が長いほど肺がん発生のリスクは高いので、一次予防の面からはなるべく早く禁煙をして下さい。
肺がんの他にもタバコによって罹りやすくなるがんは多く、非喫煙者に比し、毎日喫煙する人では30倍以上も喉頭がんになりやすくなります。食道がんで2倍です。しかし、5年の禁煙で食道がんは50%減らすことができ、膀胱がんでは2年の禁煙で50%減少の効果が出ます。今からでも遅くありません。禁煙に心がけましょう。

二次予防

二次予防としての検診を受けていただくことも重要です。
一般外来で発見された肺がんと、検診で発見された肺がんを比較すると、検診で見つかった人は手術を受けられる率が高く、またその病期も治癒率の高いⅠ期の割合が高くなっています。
肺がん検診は、胸部レントゲン検査と喀痰細胞診により行います。
肺門型肺がんは喫煙との関係が強く、早期には胸部レントゲン検査では無所見ですが、喀痰細胞診で発見されることがあります。特に50歳以上のヘビースモーカーは、肺門部肺がんに罹る率が高いので定期的に喀痰細胞診を行う必要があります。
肺野型肺がんは早期には無症状で胸部レントゲン検査でしか発見されません。40歳以上では少なくとも年1回は検査が望ましいと思います。胸部レントゲン検査の利点はX線の被曝線量がごく少なく、時間も短時間で、費用も安いことです。欠点として、がんが1cm以下ではなかなか見つからないこと、肺の全体が写るわけではなく死角(心臓の裏や横隔膜の尾側など)があることです。
最近では死角のない胸部CT検査が検診にも応用されるようになり、普通の胸部レントゲン検査では見つけにくい部位のものや、治る確率のより高い小さな肺がんが発見されるようになっています。欠点は被曝線量が多くなること、人手がかかり費用も高いことです。

説明文にて掲載している諸症状で思い当たる節があった場合など、
がんについての疑問・不安をお持ちの方は、お気軽にご相談ください。
自己判断で迷わず、まずは専門家である医師の検診を受けることをお勧めします。

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