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胃粘膜下腫瘍(GIST)の新しい手術治療(LECS)

最終更新日 : 2018年4月4日

1.胃粘膜下腫瘍に対する手術

胃の粘膜の下にできる腫瘍をまとめて、「胃粘膜下腫瘍」と呼びます。胃粘膜下腫瘍には、良性のものから、悪性のものまで様々な種類の腫瘍が含まれています。消化管間質腫瘍(Gastrointestinal stromal tumor:GIST)もその一つで、手術治療が薦められる病気です。GIST以外にも平滑筋腫や神経鞘腫などの粘膜下腫瘍も2cm以上の大きいものに対しては手術が勧められます。

胃がんとは違い、リンパ節などに転移しにくいために、リンパ節の切除は必要なく腫瘍の周囲だけをくり抜くように切除する局所切除術が主に行われます。

当院では、胃粘膜下腫瘍に対して腹腔鏡・内視鏡合同胃局所切除(LECS: Laparoscopy and Endoscopy Cooperative Surgery)という新たな手術法を開発し、積極的に治療を行っています。根治性(治すこと)と「患者さんに優しい治療」すなわち患者さんの身体への負担の軽減を両立することができています。

2. 腹腔鏡・内視鏡合同手術 (LECS)

LECSとは、内視鏡医による内視鏡手術と、外科医による腹腔鏡下胃局所手術の合同手術として、内科と外科の協力で行う手術をいいます。開腹手術と同じ全身麻酔下で行います。

実際の手技としてはまず腹腔内(腹腔:お腹の壁の内側で、胃などの臓器の外側の空間のこと)に炭酸ガスを入れて膨らませ、おへそから細い高性能カメラ(腹腔鏡)を挿入します。それに加えて、手術操作に用いる器具を挿入するために5〜10ミリの小さな傷を左右に合計4-5ヶ所に開けます。

通常の胃カメラの要領で、胃の中に内視鏡を挿入し、胃の中の様子と胃の外側(腹腔内)の様子を同時に観察しながら手術を行います。

胃粘膜下腫瘍は胃の中に出っ張っていたり、外に出っ張っていたりと様々であり、腫瘍の場所を正確にとらえていないと余分な胃壁を切除してしまうことがあります。従来、胃粘膜下腫瘍に対して行われてきた胃の局所切除術は、胃の外側からだけの手術(腹腔鏡手術)であり、過剰に胃壁を切除する必要があり、そうした過剰な切除を避けるために考案された手術方法がLECSです。胃カメラを使って胃の中から腫瘍を確認し、また腹腔鏡を使って、胃の外からも腫瘍を見ることでより正確に腫瘍の範囲を見定めて切除することが可能になります。このように腫瘍の範囲を正確に見極め、胃の内側から切除を開始することで、切除する範囲が最低限となります。手術後の胃の変形が最小限で済み、胃の機能をほとんど損なうことなく手術することができます。

手術による身体への侵襲も最小限で済むため術翌日から経口摂取を再開し術後5〜7日で退院が可能です。

このLECS手術は2006年に当院胃外科部長 比企直樹により考案され最初にその手技が世界に報告されて以来、国内の複数の医療施設で試験的に行われるようになりました。その安全性・有用性が認められ2014年には保険承認され、現在国内外で普及しつつあります。

しかしこの手術法は内視鏡治療に熟練した内科医と、腹腔鏡手術に熟達した外科医の双方が必要であり、この手術を安全に施行することができる施設は限られているのが現状です。当院では合計150症例以上の症例に対してLECS手術を行っております。術後の再発は1例も認めず、安全に施行できております。

3.食道胃接合部粘膜下腫瘍に対するLECS

食道と胃のつなぎ目(食道胃接合部)の粘膜下腫瘍に対して、従来の胃局所切除術を行うと、手術後に逆流症状や狭窄(狭くなる)症状を伴うため、以前は胃を全て切除する胃全摘術や胃の上部約1/3を切除する噴門側胃切除術が行われてきました。しかし、より患者さんに優しい治療を行うべく、2009年以降当院では食道胃接合部粘膜下腫瘍に対してもLECSを導入致しました。

食道胃接合部に近い腫瘍に対してLECSを行うことにより、胃壁の切除範囲を最小限にとどめることができます。また切除した部位を丁寧に縫合閉鎖することで狭窄や変形を避けることができ、手術前と同じような機能を温存することができます。特に噴門部の病変こそLECSの利点が生かされると考えています。

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