がんに関する情報
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リンパ腫

リンパ腫

最終更新日 : 2024年2月14日
外来担当医師一覧

リンパ腫患者の診療の流れ

がん研有明病院のリンパ腫診療の特徴

当科では、リンパ腫の診断において毎週当院病理医との合同カンファレンスを開催しています。そして、すべての患者さんの診療方針は、毎週開催される当科医師全員、連携診療科医師(特に放射線診断医、放射線治療医)、薬剤師、看護師、治験コーディネーターが参加する血液腫瘍科Cancer Board(カンファレンス)で検討・決定されます。さらに各治療法の説明同意文書を整備しており、病状、治療法、治療に伴う副作用やその対処法についてわかりやすい説明を心掛けています。

当科の入院ベッド数は36床で、化学療法後に白血球低下をはじめ免疫力が低下した状態にも対応できるように、クリーンルーム(空気中の病原微生物を粉塵除去フィルターで遮断することで清潔に保ち、感染の合併症を予防する目的で使用するいわゆる無菌室)を個室6床、4人部屋で5室備えています。化学療法導入、救援化学療法、自家造血幹細胞移植併用大量化学療法、治験を含む臨床試験の患者さんは入院して治療を行いますが、外来で治療の継続が可能な患者さんにおいては、当院外来治療センターで行います。

リンパ腫においては、日本臨床腫瘍グループ(Japan Clinical Oncology Group: JCOG)に参加し、より最適な治療法の臨床研究・開発において中心的な立場を担っています。さらには新薬開発において、国内または国際共同で行われる複数の治験(新たな薬剤や治療法として承認を得るための臨床試験)に参加しています。疾患や病状によって臨床試験や治験の選択肢が存在する場合があります。具体的には担当医から適切に説明いたします。また同種造血幹細胞移植やCAR‐T細胞療法(キメラ抗原受容体遺伝子導入した遺伝子改変T細胞を用いた治療)が適応となる患者さんにおいては近隣の病院へ連携し、ご紹介することがあります。

リンパ腫についての知識

リンパ腫とは

リンパ組織は、リンパ節とそれを結ぶ細い管(リンパ管)よりなりますが、扁桃腺、胸腺、脾臓なども含まれ、全身に分布しています。リンパ組織はリンパ球を中心に免疫をつかさどり、感染やがんに対する防御機能の中心的な役割を果たしています。リンパ腫はこのリンパ組織から発生する血液の悪性腫瘍です。

リンパ腫は、国際的な病型分類であるWHO分類に基づいて診断・分類されています。WHO分類では、がん化したリンパ球の成熟段階によって「前駆型」(幼弱な若い段階でのがん化)と「成熟型」(成熟した段階でのがん化)に分けられます。前駆型は、リンパ芽球性白血病/リンパ腫としてそれぞれB細胞性、T細胞性、NK細胞性に分けられます。前駆型は急性リンパ性白血病と一連の疾患として扱われます。いわゆる「リンパ腫」とは成熟型を指します。

このうち、B細胞リンパ腫が全体の70%強と最も頻度が高く、次いでT/NK細胞リンパ腫が20%弱、ホジキンリンパ腫は10%弱の発症頻度です。リンパ腫は進行・増悪する速度による「悪性度」によって、おおまかに表1のように分類されています(記載している病型は一部であり、この他にも多数の病型が存在します)。

表1.悪性度分類と代表的なリンパ腫病型
進行 B細胞 T/NK細胞
低悪性度 年単位 濾胞性リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、MALTリンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫 菌状息肉症、成人T細胞白血病/リンパ腫(くすぶり型・慢性型)
中悪性度 月単位 びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫 末梢性T細胞リンパ腫・非特定型、血管免疫芽球性リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、節外性NK/T細胞リンパ腫
高悪性度 週単位 バーキットリンパ腫、Bリンパ芽球性白血病/リンパ腫 Tリンパ芽球性白血病/リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(急性型・リンパ腫型)

症状

リンパ腫の多くは、首の周りや縦隔(両側の肺の間)、腋窩(わきの下)、腹部、鼠径部(足のつけ根)などのリンパ節の腫れを伴います。リンパ腫による腫大リンパ節の多くは痛みを伴いません。リンパ節やリンパ球は全身に分布しているため、肺、肝臓、脾臓、骨髄、消化管(胃や腸)、乳腺、甲状腺、皮膚、目の周囲、骨など全身のあらゆる臓器へ出現することもあります。時に脳や脊髄などの中枢神経系病変を認めることもあります。リンパ腫による症状の多くは、リンパ腫病変が出現した部位により異なるため、「リンパ腫に特徴的な症状」はあまりありません。それほど高い頻度ではありませんが原因不明の発熱、尋常ではないほどの寝汗、急激な体重減少(B症状とよばれます)を伴うこともあります。

リンパ腫の検査と診断

リンパ腫の診断は、腫れているリンパ節など病変を採取(生検とよばれます) して、顕微鏡で調べる病理組織学的検査が必要不可欠です。病理組織学的検査なしに、症状やCT、PETなどの画像検査、あるいは血液検査だけでリンパ腫の診断を確定することは出来ません。リンパ腫はとても多くの病型に分類されます。さらにリンパ腫病型ごとに治療方針が異なるため、正確な診断をつけることは、その後の適切な治療方針の決定に最も重要です。

生検は、全身麻酔、局所麻酔下での切除生検、消化管内視鏡下生検、CTやエコー図検査を用いた画像ガイド下針生検があり、状況に応じて選択されます。リンパ腫が疑われる場合、治療ではなく組織採取(検査)が目的であるため、一般的には完全切除が行われるわけではありません。同時に病変の広がりを評価するために、画像検査(CT、FGD-PET/CT)、骨髄検査を行います。場合によっては消化管内視鏡検査、脳脊髄液検査、造影MRI検査などが必要となることがあります。

リンパ腫の進み具合(病期、ステージ)

リンパ腫の病期分類はLugano分類が用いられ、病変の広がりによってI 期〜IV期に分類されます。それぞれ患者さんの病期については病状説明時に担当医からお話します。

治療

リンパ腫の治療の柱は化学療法(抗がん剤投与)ですが、具体的な治療方針は病型によって異なります。インドレントリンパ腫(低悪性度リンパ腫)の一部では無治療経過観察(ただちに治療を開始せずに定期的な経過観察を行うこと)や放射線照射による局所治療が選択できる場合もあります。アグレッシブリンパ腫(中高悪性度リンパ腫)以上では、原則として化学療法が勧められます。病型によって、勧められる化学療法の内容(薬剤、治療強度、スケジュールなど)が異なります。また、患者さんの年齢や合併症などの状態によっても勧められる治療法が異なることや治療薬の投与量が調整されることがあります。

再発時の治療選択肢は多岐にわたります。病型や病状によっては自家造血幹細胞移植併用大量化学療法(自分の造血幹細胞を事前に採取・凍結し、大量化学療法を行った後に解凍して自分へ戻すこと)をお勧めすることがあります。病型・治療歴により、二重特異性抗体(2種類の異なる抗原に作用する抗体薬で、体内にある免疫細胞を活性化することでリンパ腫への治療効果を期待します)による治療を提案することがあります。

また、同種造血幹細胞移植(自分以外のドナーさんから、造血幹細胞を移植する治療)やCAR-T(カーティ)細胞療法(キメラ抗原受容体遺伝子を導入した遺伝子改変T細胞を用いた治療)を検討する場合は、近隣の病院へ連携してご紹介することがあります。疾患や病状によって臨床試験や新薬治験の選択肢が存在する場合もあります。

治療内容、その治療に伴う副作用と対処法などに関する詳細は担当医より説明します。ご不明な点があれば、担当医に遠慮なくお尋ねください。

代表的なリンパ腫病型に対して当院で行っている標準/標準的治療(現在可能な「最もお勧め」の治療)は以下の通りです。具体的な治療薬、治療スケジュールなどの詳細は担当医から説明します。

<ホジキンリンパ腫>
限局期ではABVD療法と放射線治療との併用療法が行われます。
進行期ではブレンツキシマブ・ベドチン併用AVD療法が行われます。

<濾胞性リンパ腫>
低腫瘍量では無治療経過観察あるいは抗CD20抗体単剤療法が行われます。
高腫瘍量では抗CD20抗体併用化学療法が行われます。

<びまん性大細胞型B細胞リンパ腫>
進行期では抗CD20抗体をはじめとする抗体薬と抗がん剤を併用する化学療法が行われます。限局期の一部の患者さんでは放射線治療を併用することもあります。

<マントル細胞リンパ腫>
若年患者さんでは抗CD20抗体併用化学療法に引き続いて、自家末梢血造血幹細胞移植併用大量化学療法が勧められます。
高齢患者さんでは抗CD20抗体併用化学療法が行われます。

<原発性マクログロブリン血症/リンパ形質細胞性リンパ腫>
国際的な診断規準に基づき、低リスクの患者さんでは無治療経過観察を行います。治療適応と診断されたら、分子標的薬(ブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬)での治療をお勧めします。

<バーキットリンパ腫>
抗CD20抗体を併用する強力な化学療法が勧められます。年齢や患者さんの状態により選択される治療内容が異なることがあります。

<T細胞リンパ腫>
CD30陰性であればCHOP療法を行います。
CD30陽性であればブレンツキシマブ・ベドチン併用CHP療法が勧められます。

<節外性NK/T細胞リンパ腫>
限局期では放射線治療と減量DeVIC療法の同時併用療法が行われます。
進行期ではSMILE療法が行われ、若年患者さんでは引き続いて造血幹細胞移植を検討します。

<成人T細胞白血病・リンパ腫>
低悪性度タイプであれば慎重な経過観察を行います。
高悪性度タイプでは化学療法導入が勧められます。若年患者さんでは、VCAP/AMP/VECP療法に引き続いて造血幹細胞移植を検討します。高齢患者さんでは化学療法を行います。

<慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫>
低リスク、無症候性の状態では治療を行うことの有効性が示されておらず経過観察が勧められます。
貧血や血小板減少が進行する場合(改訂Rai分類の高リスクもしくはBinet分類のステージCに該当)、進行性・症候性の脾腫、進行性・症候性のリンパ節腫脹、末梢血リンパ球の急激な増加、自己免疫性溶結性貧血/免疫性血小板減少を認める、消耗状態(進行性の体重減少、生活に支障のでる倦怠感、発熱や盗汗を繰り返すなど)など活動性病態を認める場合には治療が勧められます。

治療は分子標的薬(ブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬)の内服治療が有効です。主に若年者などの一部の患者さんでは抗CD20抗体を併用した化学療法(化学免疫療法)の選択肢もあります。さらには新薬を用いた臨床試験の選択肢が存在する場合もあります。具体的には担当医から説明します。

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