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副腎がん

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副腎がんについての知識

副腎がんとは

副腎腫瘍と副腎がん

一般に副腎腫瘍という言葉を使う時、ほとんどの場合は良性腫瘍をさします。また、副腎腫瘍は副腎にできる腫瘍の総称で、原発性アルドステロン症、クッシング症候群、褐色細胞腫、非機能性副腎腺腫などがその代表です。副腎腫瘍は、なんらかの症状があって精密検査で見つかることもあれば、健康診断で偶然発見されることもあります。良性腫瘍であってもホルモンの異常をきたすことがあり、手術で切除せざるを得ないこともありますが、診断や精密検査は「内分泌内科」が得意としています。
今回解説する副腎がんは同じ副腎から発生しますが、副腎腫瘍と比べると発生頻度は著しく落ちます。また副腎腫瘍(良性)が悪性化して副腎がんに変化することはないとされています。

副腎の解剖

副腎は腎臓の頭側に左右一つずつ存在し、腎臓と一緒に脂肪に包まれています。副腎は皮質と髄質から成り、それぞれで異なったホルモンを造っています。皮質では、アルドステロン(鉱質コルチコイドの一つで、体の水分や電解質の調節を行う)、コルチゾール(糖質コルチコイドの一つで、主に糖代謝に関わる)、デヒドロエピアンドロステロン(男性ホルモンの一つ)などが造られ、髄質ではアドレナリンとノルアドレナリン(血圧を上げる昇圧物質)などがその代表です。副腎がんは副腎皮質の細胞から発生しますが、副腎髄質からも悪性腫瘍(悪性褐色細胞腫や神経芽細胞腫)が発生します。

副腎がんの統計

副腎がんはまれながんで、100万人あたりの罹患率は2人です。
10歳前後と40-50歳代に2峰性があり、女性は男性の1.5〜3倍です。

副腎がんの発生と病因

まれながんであり、よくわかっていません。

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症状

副腎がんに特徴的な症状はありません。がんが進行して大きくなることによって、体の外から腫瘍を触れる、お腹が痛くなる、便秘や吐き気が起こるといった症状で発見されることが多く見られます。当然、早期には症状がありませんが、早期に発見されることは多くはなく、発見された時、多くは5cm以上の大きさになっています。がんが副腎のホルモンを異常に多く造る場合、糖尿病や高血圧、肥満といった症状で発見されることがあります。また、超音波やCTなどで偶然発見されることもあります。進行にともない発熱、食欲不振、体重減少などの多彩な全身症状を伴うことがあります。

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診断

血液・尿検査(ホルモン検査)

副腎と同様のホルモンを異常に造るタイプのがんの場合、血液検査でアルドステロン、コルチゾール、DHEA−S(デヒドロエピアンドロステロン硫酸塩)、テストステロン、アドレナリン、ノルアドレナリンなどが異常高値を呈することがあります。また、アルドステロン症では血清カリウムなどの電解質が低くなります。DHEA−Sは副腎がんの腫瘍マーカーとして有効なことがあります。尿検査では、代謝されたホルモンが尿に異常に多く出ていないかをチェックします。

CT検査

造影剤を使用したCT検査が望ましいです。副腎がんは大きさが5cm以上で発見されることが多く、逆に3cm未満の場合は良性の副腎腫瘍であることがほとんどです。CTの所見としては、がんの周りが不規則であったり、内部が不均一に造影されたり、時として石灰化を認めたりします。造影剤でよく染まり、ある程度時間が過ぎても造影剤で染まっている場合はがんである可能性が高くなります。同時に、リンパ節転移や肺・肝転移等の有無を診断することができます。

MRI検査

診断する力はCTと同程度とされています。CTでは診断困難な腫瘍と副腎がんとを鑑別する時に有効なことがあります。また、周りの組織へのがんの進行具合(浸潤)を診断する上で重要です。

核医学検査

副腎がんが異常に多くホルモンを造っている場合、各種シンチグラフィーが診断の助けとなることがあります。診断としてのPETの有用性は確立していません。

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病期診断

世界保健機構(WHO)による病期診断は以下の通りです。

StageⅠ 腫瘍径5cm以下
StageⅡ 腫瘍径5cmを超えるが周囲への浸潤がないもの
StageⅢ 周囲への浸潤があるもの
StageⅣ 隣接臓器への浸潤または遠隔転移の存在するもの

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治療法

手術

副腎がんは手術以外に有効な治療法がないため、転移がない副腎がん(stage T-V)は、手術が第一です。手術で完全に切除できた場合は予後の改善が期待できます。状況によっては腎臓や周りの臓器を一緒に切除することもあります。なお手術の後にミトタン(o.p’-DDDとも呼ばれ、副腎皮質ホルモンの生合成を阻害する作用と皮質細胞に対し細胞毒性を有する薬剤)による薬物療法を追加することがあります。また、手術のあとの放射線照射の追加は議論が分かれます。

薬物療法

副腎がんに対する基本的姿勢は「手術が可能であれば手術をすべきだ」ですが、転移を認めたり、全身状態が不良で手術が不可能な場合、ミトタンによる薬物療法(前項参照)が考慮されます。標準的な化学療法は未だ確立されていません。

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再発の診断と治療

手術で完全に切除できた場合、再発の診断は主にCTでなされます。再発時にはミトタンによる薬物療法が考慮されます。その他の化学療法は未確立ですので、個々の患者さんの状態にあわせた治療選択が必要となります。

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治療の副作用と対策

手術

がんが進行している場合、手術自体に難渋することや大量の輸血が必要になることがあります。また、切除を途中で断念せざるを得ない場合があります。アドレナリンやノルアドレナリンを産生する褐色細胞腫では、手術中あるいは手術後に血圧や脈拍に大きな乱れを生じたり、ショック状態になることがあります。

薬物療法

ミトタンの使用により80%以上の方に何らかの副作用がおこります。中でも食欲不振、吐き気をはじめとする消化器症状や肝機能障害が多く報告されています。ミトタンは正常な側の副腎にも抑制的に作用するために、しばしば副腎皮質ホルモンの補充が必要になります。

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治癒率

副腎がんはまれながんなので、当院でのデータはありません。また、ステージTやUで発見されることは実際のところ多くはなく、予後はきわめて不良です。以下にフランスにおける253例の検討によるステージ別の5年生存率を示します。

StageⅠ 60%
StageⅡ 58%
StageⅢ 24%
StageⅣ 0%(1年未満で死亡)
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