がんに関する情報

口腔がん

最終更新日 : 2016年5月9日
外来担当医師一覧

がん研有明病院の口腔がん診療の特徴

がん研有明病院の口腔がん診療の特徴

頭頸部カンファレンスによる診断および治療方針の決定

担当医師個人の独断に偏らない体制

頭頸部のがんをもった患者さんを中心に、担当医師のみでなく、診断、治療に関わる頭頸科医、放射線治療医、化学療法科医、放射線診断医、形成外科医、病理医などが検討した上で、総合的に診断し、治療法を提案しています。担当医師個人の独断に偏らない、それぞれの専門家によるより高質な医療を提供するのが目的です。がん研有明病院頭頸科では、カンファレンスを通して、頭頸部のがんをもった患者さんの診断や治療法が検討されます。また、各スタッフ間の情報共有のため、電子カルテが用いられています。

多層にわたるカンファレンス

ひとりの患者さんに対し、場合によっては数度にもわたり、話し合われ検討されます。これは診断・治療にかかわる医師たちの一致した意見をつくるほか、さまざまな医師からの指摘をうけることによって、より適切で安全な治療につながると考えています。たとえば、手術治療が適応となるような患者さんに対しては、外来での複数の頭頸科スタッフによる診察、方針決定のカンファレンス(複数回行われる場合があります)、術前に行われる術式に関するカンファレンス、実際に行われた手術内容の検証を主な目的とした術後のカンファレンスなどが実施されます。

専門医師による診断・治療

がんの治療に当たっては、画像診断、病理学的診断が必須です。頭頸部放射線診断学を専門とする医師を擁する放射線診断部門、病理部門、細胞診断部門とのタイアップを密にして、診断の正確性を向上する体制を整えています。

また、治療に関しては、頭頸部外科医、放射線科医、抗がん剤のプロである化学療法科医といった各治療の専門医によって患者さんへの説明や治療がおこなわれています。

専門医による頭頸部がん患者さんへの関与により、以前にもまして安全で適切な治療ができるようになったと考えています。

丁寧な説明

病名、病状、当院での治療方針、治療の効果やリスク、後遺症・副作用など十分な時間をかけてのご説明を心がけています。患者さんにはきちんと正確な病名や病状をお話しします。それをせずに治療のよい面ばかりを強調する説明はおこなっていません。

DVDの活用

病気や術後の状態を一度も見たことのない患者さんやご家族にとって、頭頸部がんの手術はイメージがわきにくいものです。患者さんや看護師、事務の方々、医師などに協力していただき、さまざまな手術のDVDを作成、患者さんにお渡ししています。ほかの患者さんとまったく同じようにはならないものの、術前の心構えの方法のひとつとしてDVDはわかりやすいと好評を得ています。

コミュニケーションに対する努力

たとえば、がんの手術により発声器官である喉頭を摘出せざるを得ない方がおられますが、頭頸科外来看護師が中心になって、電話での応対が難しい喉頭摘出者に対象を限定してE-mailまたはFAXによる対応をしています。

手術後遺症の緩和への介助

頭頸部がんの最大の特徴は、摂食、会話などに直接関与する部位であり、また首から上という衣服に覆われず、常に人目にさらされる場所に生じるがんであるという点にあります。頭頸部がんの治療では、これらの形態機能に多かれ少なかれ障害をもたらすことは避けられませんが、腫瘍が進行していればいるほど、発声機能喪失や、咀嚼・嚥下機能低下、顔面の変形など、治療後の障害は大きくなり、社会生活に大きなハンディキャップを負うことになります。必ずしも十分ではないかもしれませんが、これら手術後遺症を緩和するため努力しています。たとえば、手術前と同様な100%の回復を期待するものではありませんが、頸部手術後の拘縮や運動障害に対しての頸部リハビリテーションや、摂食嚥下障害に対するリハビリテーションを看護師が中心になって入院中の患者さんを対象に積極的に関与しています。特に摂食・嚥下リハビリテーションは、昭和大学口腔リハビリテーション科の協力を得て、指導管理を行っています。

また、がんの治療によって喉頭摘出をせざるを得なかった患者さんに対して、適応を考慮した上で、声帯のかわりに食道と気管の間に人工弁(プロボックス など)を留置する治療も最近積極的に行っております。

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口腔がんの治療成績

がん研有明病院で実施される頭頸部腫瘍関連の年間の手術件数は約750件(甲状腺疾患含む)です。そのうちマイクロサージャリーによる再建手術は約150件におこなわれ、口腔や咽頭の欠損に皮弁を移植したり、下顎骨の切除後に肩甲骨や腓骨、肋骨を移植するなど困難な手術に取り組んでいます。その結果、従来は社会復帰が難しかったような患者さんのQOLも向上しました。

がん研有明病院頭頸科でおこなったマイクロサージャリーによる再建手術は、これまでに3,000例を超え、その成功率は97%に達しています。これだけの数の再建手術を経験している施設は世界でも多くはありません。拡大切除ばかりでなく、喉頭がんや下咽頭がんに対する音声保存手術にも、再建手術のテクニックはいかされています。

手術以外の治療にも力を入れています。放射線科とチームを組み、副作用を極力少なくするように照射範囲を検討したり、化学療法を併用した放射線治療など臓器温存治療も取り入れています。難治性のがんに対しての抗がん剤治療を導入するなどです。

診断の分野でも近年の進歩はめざましく、CT、MRI、エコーを駆使して、腫瘍の拡がりを的確に知ることができます。検査に要する日数の短縮にも努力しています。主な疾患の5年粗生存率は、舌がん68%、喉頭がん71%、下咽頭がん44%、上顎がん58%となっています。

2007-2010年度 手術件数

口腔腫瘍手術
  2007年度 2008年度 2009年度 2010年度
症例数 小計 症例数 小計 症例数 小計 症例数 小計
再建なし
再建あり
47
59
106 78
46
124 52
48
100 82
40
122
  • 頸部郭清術などを含む

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口腔がんについての知識

口腔がんとは

口の中にできるがんを「口腔がん」と呼びます。「口腔がん」と書いて医学的には「こうこうがん」と読まず「こうくうがん」と読みます。「口腔がん」には舌のがん(舌がん-ぜつがん)、舌と歯ぐきの間にできるがん(口腔底がん-こうくうていがん)、歯ぐきのがん(歯肉がん-しにくがん)、頬の内側の粘膜にできるがん(頬粘膜がん-きょうねんまくがん)、上あご(口の天井の固い部分)にできるがん(硬口蓋がん―こうこうがいがん)などが含まれます。
これらの中でもっとも頻度の多いものは舌がんですが、口腔がん全て合わせても全がんの1〜2%しかありません。

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症状

一般的には初期のがんでは痛みや出血などはなく、硬いしこりが触れるのみの場合が多いです。なかなか治らない口内炎の場合も注意が必要です。
実際に自分の口の中にある病変が良性か悪性か心配の場合はご自分で触ってみると良いでしょう。他の部分と違って明らかにその部分が硬く触れる場合は悪性の腫瘍の可能性がありますので、専門医の受診をお勧めします。目をつぶって触ってしまうとどこにあったかわからなくなるほどのやわらかいしこりは悪性の可能性はまずないでしょう。舌がんの好発部位は舌の両脇の部分で、尖端や真中の部分にできることは少ないです。
また、舌の奥の方には有郭乳頭や葉状乳頭とよばれる正常の突起物もありますが、これらをがんと勘違いする方もいらっしゃるようです。その他、上あご(口の天井の固い部分)や下の歯ぐきの内側には正常な骨の突起があり、これらもがんと勘違いされることがあります。
進行がんではしこりが外側に大きくなる傾向のものもあれば深部に入っていくものもあり、特に後者の場合は意外に進行しているものが多く、潰瘍を形成して痛みや出血が出現することがあります。さらに増大すると言葉が喋りづらくなったり食事が取りづらくなったり口が開かなくなったり、またがんが頚部のリンパ節に転移し、あごの下や首のリンパ節の腫脹をきたすことがあります。

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診断

口腔内の病変の視診や鼻腔を経由して細いファイバースコープで咽頭や喉頭などを観察し病変の広がりなどを確認します。同時に触診によって、頸部や頭部のリンパ節腫脹などの有無を判断します。

画像診断

CT検査、MRI検査、超音波検査などが必要に応じて行われます。

病理診断

口腔内の病変ががんであるかどうかの診断は病変の組織の一部を切り取って顕微鏡の検査(病理)にまわした際、がん細胞が認められれば確定となります。ほとんどの口腔がんは「扁平上皮がん」という種類のものです。

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病期診断

口腔がんの病期は、口腔病変の大きさと周囲組織への浸潤の状況、転移の状況によって決定されます。実際には正確な病期分類を行なうために充分な視診や触診の他、CT、MRIなどの画像診断が必要です。
2005年10月に改訂された頭頸部がん取扱い規約により下記のような病期分類がなされています。この病期分類は日本を含め世界中の医療機関で共通です。原発腫瘍、頸部転移、遠隔転移の三要素をそれぞれの大きさや広がりにより数字で分類し、それを組み合わせてI期からIV期の病期に分類しています。

原発腫瘍の分類(T分類)

口腔病変の大きさや広がりをT1からT4の4段階に分類しています。

T1 最大径が2cm以下の腫瘍
T2 最大径が2cmをこえるが4cm以下の腫瘍
T3 最大径が4cmをこえる腫瘍
T4 隣接組織たとえば骨髄質、舌深層の筋肉(外舌筋)、上顎洞、皮膚に浸潤する腫瘍
T4a 骨髄質、舌深層の筋肉/外舌筋(オトガイ舌筋、舌骨舌筋、口蓋舌筋、茎突舌筋)、上顎洞、顔面の皮膚に浸潤する腫瘍
T4b 咀嚼筋間隙、翼状突起、または頭蓋底に浸潤する腫瘍、または内頸動脈を全周性に取り囲む腫瘍

頸部リンパ節(所属リンパ節)の分類(N分類)

頸部リンパ節への転移の有無、転移の数や大きさ、場所などでN1からN3の大きくは3段階に分類しています。

N0 所属リンパ節転移なし
N1 同側の単発性リンパ節転移で最大径が3cm以下
N2 同側の単発性リンパ節転移で最大径が3cmをこえるが6cm以下、または同側の多発性リンパ節転移で最大径が6cm以下、または両側あるいは対側のリンパ節転移で最大径が6cm以下
N2a 同側の単発性リンパ節転移で最大径が3cmをこえるが6cm以下
N2b または同側の多発性リンパ節転移で最大径が6cm以下
N2c 両側あるいは対側のリンパ節転移で最大径が6cm以下
N3 最大径が6cmをこえるリンパ節転移

遠隔転移の分類(M分類)

肺や肝臓、骨などへの口腔がんからの転移を遠隔転移といいます。遠隔転移の有無により2段階に分類しています。

M0 遠隔転移なし
M1 遠隔転移あり

病期分類

上記の原発腫瘍の分類、頸部リンパ節の分類、遠隔転移の分類をあわせて、以下の表のように病期を分類します。I期からIV期の大きくは4段階の病期に分類しています。

I期 T1 N0 M0
II期 T2 N0 M0
III期 T1 T2 1 M0
T3 N0 N1 M0
IV A期 T1 T2 T3 N2 M0
T4a N0 N1 N2 M0
IV B期 T4b Nに関係なく M0
Tに関係なく N3 M0
IV C期 T、Nに関係なく M1

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治療法

治療法は原則的には病期により決定されます。それに、がんの部位、組織型、年齢、既往歴、合併症、臓器の機能や一般的な健康状態に基づいて、慎重に治療の方法を選択します。口腔がんの治療法には、外科療法、放射線療法、抗がん剤による化学療法、痛みや他の苦痛に対する症状緩和を目的とした治療(緩和治療)などがあります。

手術療法

ほとんど全ての口腔がん(扁平上皮がん)で手術治療(外科的な手法でがんを取り除く治療法)が中心になります。手術法には以下のようなものがあります。

局所切除術

がん全体と周囲の正常組織の一部を切除する手術法。がんが骨まで拡がっている場合には、そうした骨組織の切除も行われることがあります。

頸部郭清術

頸部リンパ節と頸部のそのほかの組織を切除する手術法。最近では術後の後遺症を低減させるため、 これらの組織を可能な限り温存する外科療法が工夫されるようになってきています。

再建手術

体の一部の再建を行う手術。口腔や咽頭、頸部などを修復するために組織移植などを行うことがあります。口腔内の欠損に対しては、通常その患者さんのお体の別の部分(腕の皮膚―前腕皮弁やお腹の皮膚― 腹直筋皮弁、足の皮膚―前外側大腿皮弁など)を使って再建します。この際、術後の機能低下をできるだけ防ぐために、 さまざまな再建外科の技術が駆使されます。

*術後補助療法とは
手術の際に確認できる全てのがんを切除したとしても、患者さんによっては、残っているがん細胞を全て死滅させることを目的として、術後に化学療法や放射線療法が実施される場合があります。治癒の可能性を高めるために手術の後に行われる治療を術後補助療法と呼びます。主に進行したがんに対して術後補助療法は考慮されます。

放射線療法

X線や他の高エネルギーの放射線を使ってがん細胞を殺すものです。
放射線療法は効果を高めるために、化学療法と組み合わせて行われることもあります。一般に口腔がんに対しては放射線療法単独で治療されることは少なく、術後治療など手術の補助療法として放射線外照射療法が行われます。
放射線療法には2種類のものがあります。放射線療法の実施方法は、治療対象となるがんの種類と病期に応じて異なってきます。

外照射療法

体外に設置された装置を用いてがんに放射線を照射する方法です。

内照射療法

放射性物質を針やシード、ワイヤー、カテーテルなどの中に封入し、それをがん組織の内部または周辺に直接留置する方法です。口腔がんに対して、内照射療法(密封小線源治療)を行う施設もあります。

化学療法

薬を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによって、がんの増殖を阻止する治療法です。
化学療法は、化学療法が経口投与や静脈内または筋肉内への注射によって行われる場合、投与された薬は血流に入って全身のがん細胞に到達します(全身化学療法)。一般に口腔がんに化学療法を行う場合、全身化学療法が実施されます。外科療法や放射線療法が局所治療であるのに対し、抗がん剤による化学療法は全身治療となります。
口腔がんに対して病変を栄養する動脈内に直接薬剤を注入する化学療法を行っている施設もあります。薬はその領域にあるがん細胞に集中的に作用することを期待されます(局所化学療法)。

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再発の診断と治療

再発口腔がんとは、治療後に再び発生(再発)したがんのことをいいます。
再発は口腔に起こることもあれば、身体の別の部位におこることもあります。再発が疑われた場合、視触診や画像検査などで診断されます。
治療は再発病変の位置や大きさ、先行治療によっても左右されます。
一般的には、口腔がんの治療後の再発であった場合、以下のことが検討されます。

  • 最初に放射線療法が行われていれば、可能であれば手術が選択されます。
  • その病変を治療するために最初に手術を施行していれば、手術や放射線療法またはこれらの併用が考慮されます。
  • 化学療法が効果的である場合もあります。

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治療の副作用と対策

がんに対する積極的な治療で苦痛や副作用を伴わない治療はほとんどないといってよいくらいです。

栄養支援について

口腔は、摂食・嚥下、構語(言葉を発すること)などの機能をつかさどる器官です。口腔がんの治療により摂食・嚥下、構語に悪影響を与えることが少なくありません。とくに摂食・嚥下は生命を維持する上で不可欠ですので、これらの障害に対してはその程度によって栄養支援が考慮されます。栄養支援の方法には流動食と経腸栄養があります。経腸栄養には、細い管を鼻を通して胃などに配置したり、腹部外側に作った開口部を通して胃や腸管に配置して、その管から栄養を補給する方法があります。

手術療法

手術による副作用(後遺症)は主に切除した部位と範囲、その患者さんが持っているもともとの能力によって、その種類と重症度が異なります。
初期のがんだと切除後に重い後遺症がでることはあまりないでしょう。しかし、進行がんの手術で切除する範囲が広くなると言葉や食事に悪影響が出ますので、各種リハビリテーションが提案される場合があります。たとえば、各種の摂食嚥下訓練、頸部運動訓練などです。

放射線療法および化学療法

放射線治療中の副作用には、のどの痛みや味覚障害、唾液の出にくさなどがあります。
のどの痛みは、治療終了後は徐々によくなっていきますが、その間、うがいや痛み止めの薬を使用したり、上記の栄養支援を含め、食事内容を工夫したりする(軟らかい食事にする、刺激のある食物は食べないなど)ことで対応します。症状が強い場合は点滴などでの栄養管理が必要になることがあります。
味覚障害や唾液の出にくさは治療終了後も残る場合が少なくありません。ガムをかんで唾液を促したり、水などを携帯して口を潤したりしている方も多いようです。市販の口の中の保湿剤や薬などを使う場合もあります。
口腔内環境が悪くなるので、虫歯ができやすくなります。口腔内を清潔に保つ必要があります。歯科医師により虫歯の治療を照射前からしてもらうなど口腔衛生管理が薦められます。

化学療法

病気の種類や患者さんの年令、全身状態、これまでに受けられた治療法などで使われる薬剤は異なってきます。副作用は薬剤の種類などによっても異なりますが、主に吐き気や、腎臓機能の低下、骨髄機能の低下、口内炎などがあります。これらに対して、制吐剤ほか薬剤や点滴、各種感染対策などが対策として考慮されます。化学療法の副作用はさまざまです。担当医師より十分にお話をお聞きください。

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治癒率

一般的にはがんの治癒率は個々の病変の大きさや広がり、またがん細胞のもつ性質によって左右されます。腫瘍が割と小さく頚部のリンパ節転移のないものは通常良好ですが、より大きい腫瘍や頚部リンパ節転移のあるものはそれだけ治癒率は悪くなります。
がん研有明病院頭頸科における舌がんの各病期別の5年生存率は I期 約80%、II期 約70%、III期 約60%、IV期 約30%です。

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