がんに関する情報

膀胱がん

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がん研有明病院の膀胱がん診療の特徴

がん研有明病院の膀胱がん診療の特徴

迅速かつ正確な診断に基づいて、泌尿器科医を中心に放射線科医、化学療法(腫瘍内科)医、病理医、薬剤師、看護師長など、診断、治療の専門家から成るキャンサー・ボードでの検討を踏まえ、常に最新・最適かつ安全な治療を提供するよう努めています。

迅速性

初診から治療方針決定まで2週間以内を目標に、確定診断および病気の進行度などの検査を行い、最適の治療法を提案できるように心がけています。

正確な診断

エコー、CT 、MRI、シンチグラム、PETなどの画像診断(診断は画像診断部と泌尿器科のダブルチェック)、電子スコピー内視鏡、エコーもしくはCTガイド下経皮針生検など、最新の技術と知識を生かして、確実な診断を心がけています。また、がんの診断で重要な、病理部門、細胞診断部門は特に充実しており、臨床医とのタイアップを密にして、診断の正確性・迅速性を向上する体制を整えています。特に前立腺がんに対する3−D立体多箇所生検は、国内はもとより国際的にも高い評価を得ています。

総合診断

泌尿器科担当医師のみでなく、キャンサー・ボードにて診断、治療に関わる腫瘍内科医、放射線科医、病理医、薬剤師、看護師全員で検討した上で、総合的に診断し、最適な治療法を提供するチーム医療を行っています。担当医師個人の独断による偏った医療にならない体制を整えています。

十分な説明

治療方針に関しては、病名、病状、現在の最新の治療、それを凌ぐ目的の臨床試験、治療により期待される効果や合併症・リスクなど、十分な時間をかけて説明し、ご本人はもちろん、ご家族の方にも十分納得を頂いた上で治療を行うよう心がけています。

最高の医療の提供

豊富な経験と、熟練した技術、関連した医師の知識の集約による最高レベルの医療の提供を心がけています。

安全性

治療開始前に、予定治療の危険性に関する十分な検査を行い、安全性を最重点に治療を実施しています。治療方法ごとに経験豊富な専門医が十分な注意を払って治療します。外科療法に関しては、クリニカルパスという術後の管理方式を徹底させ、手術の安全性はきわめて高いものになっています。

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膀胱がんの治療成績

早期がんには内視鏡的手術と膀胱内注入療法を施行し、浸潤がんには膀胱全摘術を原則として行っています。
全摘後の尿路変向法としては新膀胱造設もしくは回腸導管法が原則ですが、いずれにするかは患者さんの意向も尊重しています。

5年生存率

図2:M0膀胱癌全摘例:pT別全生存率曲線表在がん85%、浸潤がん64%、骨盤リンパ節転移例32%
『図2』に遠隔転移のない膀胱がん全摘例の病理学的進行度(pT分類)別全生存率曲線を示します。国際的にも有数の成績です。

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膀胱がんについての知識

膀胱がんとは

膀胱の解剖

膀胱は尿を溜めたり排泄する臓器です。
腎臓で作られた尿は尿管を通過して膀胱に入り、貯えられ、尿意を感じた時に尿道を通して排泄されます。膀胱は表面の粘膜と厚い筋肉層からできており、粘膜上皮細胞からできた悪性腫瘍をがんと呼びます。筋肉や脂肪細胞からできた悪性腫瘍は肉腫と呼びます。

膀胱がんの統計

日本では、膀胱がんは人口10万人あたり10人程度の発生率と思われます。
膀胱がんは症状が早期より出やすいため早期発見率が高く、また悪性度の低い乳頭状がんと呼ばれるものの割合が多いため、比較的死亡率の低いがんです。男女比は3対1と男性に多く、60歳以降の高齢層に多く見られ、また、若年層より高齢層に悪性度の高いがんが多いのが特徴です。

膀胱がんの発生

喫煙は現在、膀胱発がんの最大の原因です。
また、ゴム、皮革、織物や色素工場で使用されるアニリン色素、ナフチラミンやベンチジンなどの染料への慢性接触も重要な発がん要因です。食べ物ではワラビ、ゼンマイ、医薬品では抗がん剤のシクロフォスファミド、最近、発売禁止された鎮痛剤(頭痛薬)フェナセチンなどがあります。中東、北アフリカの地方病である住血吸虫症への感染も危険因子です。
これらの発がん物質との接触により9番染色体や17番染色体などにあるがん抑制遺伝子が変異を来し、それが膀胱がんの発生と進展に関わっていると考えられています。
膀胱がんは形態学的に、大きく乳頭状と非乳頭状に分けられます。前者の多くは表在性(早期)がんであるのに対し、後者はその多くが浸潤性(局所進行)がんですが、一部には上皮内がんと呼ばれる扁平な初期がんもあります。また、膀胱がんはがんの中で最も多発しやすいという特徴を有しています。

膀胱がんの予防

上にあげた発がん要因を遠ざけることが重要です。また、水分を多くとる人はそうでない人に比べ、有意に膀胱発がん率が低いといわれています。尿中の発がん物質を希釈すると共に、膀胱内から早く排泄することに意味があるものと思われます。

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症状

他のがんと違って、比較的早期より症状が出やすいのが特徴です。
血尿および頻尿、排尿痛などの膀胱炎症状が2大症状です。約80%の患者さんは無症候性(痛みなどのない)肉眼的血尿を呈し、膀胱炎症状は20〜30%の人に見られます。血尿の出かたは尿全体が赤くなる全血尿より排尿の終わり頃が赤くなる終末時血尿が多く、血の塊もしばしば排出されます。
一部は無症状で、検診における顕微鏡的血尿の精密検査などにより発見されます。膀胱がんが転移の症状で発見されることは比較的稀です。

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診断

膀胱鏡検査

現在では最も確実性の高い検査です。尿道からファイバースコープを挿入して膀胱内を観察する検査で、男性では多少の痛みを伴うのが難点ですが、ファイバースコープの改良により検査の苦痛は格段に軽減してきました。
下記の(図1)にいろいろな膀胱がんの内視鏡写真を示します。

図1:膀胱がんの内視鏡写真

  • 膀胱浸潤がん:実質性、広基性
    膀胱浸潤がん:
    実質性、広基性
  • 膀胱上皮内がん:扁平な腫瘍
    膀胱上皮内がん:
    扁平な腫瘍
  • 膀胱乳頭状がん(単発)
    膀胱乳頭状がん(単発)

尿細胞診

尿中に剥離したがん細胞の有無を見る検査です。排泄物である尿を用いるため患者さんに負担がかからず、繰り返し行えるのが利点です。
全体では70%の陽性率で、30%の患者さんではがんがあっても陰性です。感度の高い検査とはいえませんが、悪性ながんでは早期より陽性率が高いため、臨床的には極めて有用性の高い検査です。
特に、内視鏡で分かりにくい扁平ながん(上皮内がん)の診断では膀胱鏡よりも感度が高いことが分かっています(図2)。

図2:尿細胞にみられる悪性な膀胱がん細胞
図2:尿細胞にみられる悪性な膀胱がん細胞

レントゲン検査

静脈性尿路造影検査、膀胱造影検査がありますが、腫瘍が大きくないとなかなか診断できません。

超音波検査

1cm以上の腫瘍であればおおむね診断可能ですが、がんの存在部位により死角があるのが難点です。

CT・MRI検査

がんの存在診断よりがんの浸潤度、進行度の診断に有用です。一次検査としては行いません。

鑑別診断

血尿や膀胱炎症状を呈する疾患との鑑別が重要です。数日間、抗生物質を内服しても改善しない、あるいは度々くり返す膀胱炎症状はがんの場合のみならず下記の疾患でも見られます。

慢性膀胱炎

女性に多く、薬剤アレルギーのこともあります。

間質性膀胱炎

やはり女性に多く、未だ、原因は明らかではありません。

膀胱結石

表面が石灰化したがんとの鑑別に注意が必要です。

膀胱結核

通常の抗生物質の治療には難治性です。

二次性膀胱腫瘍

直腸、子宮、前立腺などに発生したがんが膀胱に進行してきた場合です。

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病期診断

原発巣の進行度診断

膀胱鏡、双手診、MRIなどを用いて行います。
図3のように9段階に細かく分類されます。

転移の診断

腹部CT、MRI、肺のレントゲン写真、骨シンチグラムなどで診断します。

病期分類

O 上皮内がん(Tis)。扁平で悪性度の高い初期がん。
A 乳頭状の形態を示す非浸潤性、もしくは粘膜下浸潤がん(Ta、T1)
B 膀胱の筋肉層に浸潤したがん(T2a、T2b)
C 筋肉層を超えて膀胱周囲の脂肪組織に浸潤したがん(T3a、T3b)
D 前立腺、子宮、直腸などの近接臓器に浸潤(T4a、T4b)、もしくはリンパ節や肺、肝、骨などの遠隔臓器に転移したがん
なお、進行度は筋層非浸潤がん(Tis、Ta、T1)と筋層浸潤がん(T2、T3、T4)の2つに大きく分けることができます。

図3:膀胱がんの浸潤(深達)度分類

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治療法

治療法の選択は、主にがんの進行度と悪性度に基づいて決めます。進行度に応じた治療法は以下のごとくです。

筋層非浸潤性(早期)がんの治療

1.経尿道的腫瘍切除術 (TUR-Bt)

腫瘍の悪性度が低く、多発傾向の乏しい場合、TURおよび術後24時間以内の抗がん剤(マイトマイシンCやアドリアマイシン)単回注入療法とし、通常、その後の補助療法は行わずに経過観察をします。

2. TUR-Bt+膀胱内注入療法

腫瘍の悪性度が高いか、多発傾向の強い場合には、TURのあとでもう一度TURを行い削り残しや、筋層浸潤の見落としがないかを確認します。これをセカンドTURと呼びます。筋層への浸潤が否定されたならば再発予防を目的とした注入療法を行います。注入療法に用いる薬剤としては、BCGもしくはマイトマイシンCやアドリアマイシンなどの抗がん剤です。
BCGの方が有効性は高いのですが、副作用が強いのが欠点です。

3. 膀胱全摘除術

早期がんでも、腫瘍が広範囲に多発していたり、膀胱内注入療法に反応せず再発をくり返す場合には、膀胱全摘除術を考慮します。

浸潤性がんの治療

1.膀胱全摘除術+尿路変向術

膀胱を全摘した場合には尿の始末をつけることが必要になり、これを尿路変向といいます(図4)。方法としては回腸導管造設術が一般的です。しかし、最近では長め(約60cm)の腸管を利用して代用膀胱を造設し、残した尿道とつないで自排尿を可能にする方法(ネオブラダー造設)もよく行われます。膀胱がんが多発性の場合は尿道がんの再発リスクが高くなるので注意が必要です。
がんが膀胱壁を貫いている場合(T3〜4)やリンパ節転移がある場合は術後補助化学療法を奨めています。当院では3コース行っています。大変つらい治療ですが、再発の抑制に有用な結果が得られています (生存率の項参照)。

膀胱尿道全摘標本:多発性乳頭状がん
膀胱尿道全摘標本:多発性乳頭状がん

図4:尿路変向法いろいろ

図4:尿路変向法いろいろ

2.化学療法と放射線治療の併用

まだ研究的な側面がありますが、患者さんのQOLの改善を目指し、試みられています。

進行転移がんの治療

1.全身化学療法

化学療法単独では治癒する確率が低いので有効例には外科的治療や放射線治療を併用する集学的治療を考慮します。リンパ節転移だけなら治癒が期待できますが、肝や骨などに遠隔転移がある場合、現状はかなり悲観的です。

2.対症療法

患者さんの全身状態が良くない場合などは、つらい化学療法を行うより、まずは最善の支持療法により症状緩和を目指します。

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再発の診断と治療

膀胱内再発

表在性がんではTUR後、1年目は3ヶ月ごとに内視鏡検査と尿細胞診検査を行います。
再発がなければその後の2〜5年間は6ヶ月ごとに行います。5年以降は1年に1回ですが、原則として10年以上続けます。腎臓(腎盂)・尿管などの上部尿路腫瘍発生に対する診断検査は1年に1回くらいです。
膀胱内再発が見られたら再びTURを行うことが多いのですが、場合によってはBCGや抗がん剤の膀胱内注入療法を行います。注入療法に抵抗性を示し、腫瘍が広範囲に再発したり、尿道や下部尿管に進展したり、浸潤がんに進行したりした場合は膀胱全摘除術を考慮します。

遠隔転移

浸潤がんの治療後には最も注意すべき事項です。
腹部CT、肺のレントゲン写真などで診断します。転移が認められたら、化学療法が第一選択の治療となりますが、場合によっては手術や放射線治療、もしくはこれらの併用治療などを考慮します。

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治療の副作用と対策

経尿道的腫瘍切除術(TUR-Bt)

1.後出血

術後3週間以内に、力んだり、尿を膀胱内にため過ぎたり、アルコールや刺激物の取りすぎなどにより、切除部位から出血することがあります。
出血したら数日間、尿道カテーテルを再留置し、膀胱を安静に保ちます。

2.TUR後症候群

TURという手術は、膀胱内を潅流液で洗いながら行いますが、その潅流液が出血部位から血液中に多量に吸収されると血液がうすまり(水中毒)、呼吸困難や胸部不快感、ショック症状を起こすことがあります。利尿剤や副腎皮質ホルモンの投与、適正な輸液などを行います。

3.前立腺炎、精巣上体(副睾丸)炎、腎盂腎炎

細菌感染が起こると、高熱や痛みが生じます。抗生物質の投与などが必要です。

4.尿道狭窄

手術用内視鏡器具の挿入による尿道損傷が原因となります。尿道拡張(ブジー)もしくは内尿道切開術で対処します。

膀胱内注入療法

1.膀胱刺激症状

尿の回数が多くなったり、排尿時の痛みや血尿がみられます。
程度が強い場合は、治療を中断し、痛み止めなどを使用します。

2.萎縮膀胱

膀胱が不可逆的に小さくなると、激しい頻尿と下腹痛に悩まされます。
膀胱刺激症状を我慢して無理に治療を継続した場合などに起こります。尿路変向術が必要になることもあります。

3.発熱、倦怠感、敗血症、肝障害、アレルギー(ショック)など

BCG注入療法ではこのような危険な副作用がみられることがあります。体力が低下し、免疫状態の低い方、あるいは重度な結核感染の既往のある方にはBCGは禁忌です。症状がひどい場合は、抗結核薬や副腎皮質ホルモンによる治療が必要です。

膀胱全摘除術

尿路変向術を含めますと、出血、腸閉塞、インポテンス、縫合不全による尿瘻、腹膜炎、尿管回腸吻合部狭窄(水腎症)、腎盂腎炎、創感染、その他ストーマに関するもの、などいろいろあります。
詳細は省きますが、インポテンスは勃起神経温存手術により防止できる可能性があります。

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治癒率

生存率に最も影響するのは、がんの浸潤度と組織学的悪性度です。
膀胱がんによる死亡に限定して5年生存率を見ると当院での最近8年間の患者さんでは、ステージAが94.4%、Bが87.5%、Cが68.6% そしてDが27.3%となっています。
Cの成績が改善したのは、拡大手術と術後補助化学療法の併用治療が奏功しているためと思われます。

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