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食道がん

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がん研有明病院の食道がん診療の特徴

がん研有明病院の食道がん診療の特徴 

専門性の高いチーム医療

食道がんの治療はチーム医療です。

食道がんの治療法には、内視鏡治療、外科手術、放射線治療、化学療法、緩和治療があります。それぞれを組み合わせることで効果が高まることが示されています。しかしながら、各治療法の専門家が個別に治療していても、必ずしもよい成績は得られません。また他の臓器の腫瘍と重複、多発することも少なくありません。当院では全新患症例の診断、治療法の決定をチームで行い、また情報を専門医間で密に連携し、一人一人にあった治療法を選択しています。さらに各診療科でも再度検討を行い、問題がある場合には再度チームで検討しています。

症例数が多い、 診断までの期間は約1週間です

当施設での食道がんで初めて受診されるかたは年間300例以上あります。来院時より直ちに検査を開始して、約1週間で診断をします。その後治療方針の決定、治療に入ります。治療の待ち時間は約2-3週間程度です(治療の内容により異なります)。

最近5年間の食道がんで受診されたかたの総数

初発 他院治療後 合計
2005年 168 23 191
2006年 236 33 269
2007年 240 24 264
2008年 268 56 324
2009年 290 29 319
2010年 283 34 317

治療困難症例にも積極的に対処しています

頭頸部腫瘍合併症例や再発症例など、通常の施設では治療法に悩む症例も豊富に経験しています。臨床試験にも積極的に参加しています。

安全性の高い治療

当然のことですが、医師、薬剤師、看護師による化学療法における薬剤の確認、医師、放射線物理士による照射領域、線量の確認は厳密に行なわれています。また各治療に関しては、専門性を有する医師が担当しています。(手術—消化器外科医、内視鏡治療—消化器内視鏡治療医、化学放射線療法ー腫瘍内科医、放射線治療医)

治療後の定期検査がしっかりしている

食道がんは他の腫瘍と重複することが多い疾患です。治療後の再発のチェックはもちろん、重複しやすいがんの検索もおこなっています。

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食道がんの新しい化学療法

転移が拡がった進行食道がんや手術後再発がんに対しては、主に抗がん剤治療が行われています。現在、食道がんに投与できる抗がん剤はシスプラチン・5FU・ネダプラチン・ドセタキセルなど少数に過ぎず、がんの大きさが半分以下になる可能性は50%以下と満足できるものではありません。

そうした中で、食道がんに対しても大腸がんや乳がんなどに用いられているような分子標的薬剤が期待されており、海外では食道がんに対するさまざまな薬剤の臨床試験が盛んに行なわれています。現時点では著効のある薬剤は見出されていませんが、近い将来、新しい分子標的薬剤が用いられ、治療成績が向上することが期待されています。

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各治療の症例数と特徴

食道がんについての知識

食道がんとは

1 食道はどこにあるの?
食道は咽頭と胃の間にある管状の臓器です。頸部、胸部、腹部に約25cmにわたります。食道の多くの部分は胸の中にありますが、上部は頸部、下部は腹部にあります。(図1) 頸部では甲状腺、気管、頸動脈、反回神経(図2
胸部では肺、気管、気管支、大血管(大動脈、大静脈)、心臓、奇静脈(図3
腹部では肝臓、横隔膜、胃に接しています。  
すなわち、食道の周囲は人間が生きて行くために大変重要な臓器と接しています。
2 食道の役目は?
通り道です
食べ物を口腔、咽頭から胃に送る役目をしています。 胃や腸のように分泌消化吸収機能はなく、運動機能が主の臓器です。食道と胃のつなぎ目(食道胃接合部)は、噴門(ふんもん)と言われ、胃に入った食べ物が逆流しないような機構が備わっています。
3 食道がんはどこに発生するの?
内腔の粘膜から発生します
食道がんは食道内面の粘膜の上皮から発生するがんです。食道の粘膜は扁平上皮という組織から構成されており、多くは扁平上皮がんになります。 日本の場合95%程度が扁平上皮がんと言われています。一方、欧米では胃に近い食道下部から発生することが多く、半数以上がバレット上皮由来の腺がんと言われています。
4 食道がんの原因は?
喫煙、飲酒が最大の因子です
タバコ、アルコール摂取が強い危険因子と言われています。高齢の男性に多く、頭頸部領域のがんに重複することが多いのが特徴的です。
5 食道がんの疫学は?
地域により異なります
日本やアジアでは扁平上皮がんの頻度が高率ですが、欧米では腺がんが多いとされています。扁平上皮がんの発生は胸部中部に多いのですが、腺がんでは下部食道に多く発生します。バレット食道がんは欧米に多く、日本では少ないのですが、近年当院でも増加傾向にあります。

食道がんの症状 がんの深さにより異なります

表在がんでは自覚症状が出ることは少なく、健康診断や人間ドックなどで指摘されることが多いようです。食道学会の全国登録では粘膜下層までの浸潤では約60%の方に自覚症状がないと報告されています。食道がんが進行すると食道がしみる感じやつかえる感じが出現します。さらに進行すると嚥下困難や嘔吐を繰り返すようになります。また他の症状として、胸痛や背部痛、声のかすれなどが出現することがあります。

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食道がんの診断

各種画像診断により、腫瘍の壁深逹度の診断、リンパ節転移診断、遠隔転移診断によりがんの進行度診断をおこないます。

上部消化管内視鏡、超音波内視鏡

食道と周辺臓器との関係主病変の確認、表在病変の範囲を観察し深逹度の予測を行います(図4)。ルゴール染色(ヨード染色)による多発病巣の確認も行います(図5)。さらに病理組織確定の目的で病変の一部の生検検査も行います。微細な病変の観察にNBI(Narrow Band Imaging)でも評価を行います。また超音波内視鏡は、先端に超音波装置が装着されており、内腔から壁の構造や壁外のリンパ節転移診断を行います。なお、内視鏡挿入に対する苦痛に対しては鎮静剤を使用します。

CT検査

周囲臓器浸潤、リンパ節転移、遠隔転移診断、治療効果判定に用いられます。進行度を判定する最も重要な検査です。造影剤使用時に静脈内注射をします。

PET検査

全身の転移評価のため、治療の効果判定の目的としてPET検査やPET-CT検査が行われています。平成18年より食道がんに対しても保険適応となりました。CTに比較して診断精度は高いとされていますが、分解能の限界や生理的集積や炎症、良性疾患でも集積がみられるので注意が必要です。

上部消化管造影検査

造影剤が食道を通過する状況をX線透視下に多方向から観察し、病変の部位、肉眼型、広がり、瘻孔の有無を判定します。 食道内は造影剤の通過が早いために、表在がんの場合は胃チューブを挿入して検査を行います

超音波検査

体外式超音波検査を行います。頸部では頸部リンパ節転移の検索を、腹部超音波検査では肝臓への転移や、腹部リンパ節転移の有無を検索します。苦痛はありません。

頭頸部腫瘍のスクリーニング

当院では食道がん手術前後に約3割の方が頭頸部腫瘍を合併しており、初診時の頭頸部領域のスクリーニングは必須としています。

全身状態の把握

食道がん患者は加齢、喫煙歴が危険因子となっており、慢性閉塞性肺疾患の罹患率が高いと言われています。活動状態の評価(PS ; Performance status)、心、肺、腎、肝機能検査、耐糖能検査などが行われ、総合的に判断します。

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食道がんの病期診断、ステージ分類

各種画像診断を行い、食道がんの病期診断(ステージ分類)を行います。がんの占拠部位と深さ(深逹度)、リンパ節転移の有無、遠隔転移の有無が病期を決定する因子となります。日本では日本食道学会が食道がん取り扱い規約に基づいて進行度の分類をしています。

1.がんの深さの判定

T0 原発巣としてがんを認めない病変をいいます
T1a がんが粘膜内にとどまる病変をいいます
T1b がんが粘膜下層にとどまる病変をいいます(SM)
T2 がんが固有筋層にとどまる病変をいいます(MP)
T3 がんが食道外膜に浸潤している病変をいいます(AD)
T4 がんが食道の周囲臓器に浸潤している病変をいいます(AI)

2.リンパ節の分類

がんの中心が食道のどこにあるかにより、対象となるリンパ節群が異なります。0群から4群にまで分類されますが、番号が高くなる程、転移しづらく、たちの悪いリンパ節であると考えて下さい。  

N0 リンパ節転移がない
N1 第1群のリンパ節のみに転移を認める
N2 第2群のリンパ節まで転移を認める
N3 第3群のリンパ節まで転移を認める
N4 第3群のリンパ節より遠位のリンパ節に転移を認める

3.遠隔転移

食道とは離れた臓器に転移することを言います。肝臓、肺、骨などが転移の好発部位です。

M0 遠隔転移を認めない
M1 遠隔転移を認める。

4.病期診断

腫瘍の深さ、リンパ節転移の状況、遠隔転移の有無により、病期が決まります。 (図9)

図9

病期の分類には、我が国の食道がん取り扱い規約と国際的な分類のUICC分類があります。リンパ節転移の判断や病期の判定に多少の違いがあります。
日本での食道がん取り扱い規約での病期分類を示します。

0期 がんが粘膜にとどまり、リンパ節転移や遠隔転移がないものです。
1期 がんが粘膜下層に浸潤している場合、あるいは粘膜にとどまり近いリンパ節に転移をあるものになります。
2期 がんが筋層をこえて食道の壁の外に浸潤している場合、食道の近くのリンパ節に転移がある場合になります。
3期 がんが食道の外に浸潤して、周囲のリンパ節にリンパ節転移を有する場合を言います。
4期 がんが食道周囲の臓器に浸潤しているか、遠く離れたリンパ節に転移がある場合、他の臓器に転移を有する場合を言います。

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食道がんの治療法

食道がんの治療に対してEBMを重視した標準治療を示すこと、治療の安全性と治療成績の向上をはかること、無駄な治療をなくすことなどを目的に、食道がん治療ガイドラインがあります。

進行度診断に加え、全身状態の把握を行い、治療方針(食道がん治療のアルゴリズム)を提示します。

図10

1.食道がんの治療方針

食道がんの進み具合と組織型(がん細胞の型)、患者様側の全身状態(併存する病期の状態や内臓機能)に応じて治療が選択されます。 一般的な方針を下記に示します。

国際分類(UICC-TNM(第6 版))進行度と治療方針
0期内視鏡治療
1期
  • 小さい場合
    内視鏡治療をまず行い手術
    内視鏡治療をまず行い化学放射線療法(抗がん剤と放射線療法の同時治療)
  • 大きいまたは深い場合
    手術
    化学放射線療法
2期
  • 5-FU/シスプラチン化学療法(抗がん剤治療)後手術
    手術のみ
    化学放射線療法
3期
  • 周囲の他の内臓にがんがくっついてない場合(T1-3)
    5-FU/シスプラチン化学療法後手術
    手術
    化学放射線療法
  • 周囲の他の内臓にがんがくっついている場合(T4)
    化学放射線療法
4期
  • 4A期
    化学放射線療法
    化学療法後手術
  • 4B期
    化学療法
    化学放射線療法
    化学療法後手術

2-3期は手術や化学放射線治療が主な治療です。現在は化学療法後手術が最良な治療法で化学放射線治療は手術を希望しない(できない)際の第2の選択肢として行われます。化学放射線治療は手術単独の成績に匹敵する効果が示されていますが、化学療法後に手術を行う成績の方がよりよい生存率を示しており治療後年単位の経過で心肺機能の低下が進行する場合があり安全性にも問題があります。

2.食道がんの内視鏡治療

食道がんの治療には、①外科手術、②放射線化学療法、③内視鏡治療があり、がんの進行具合(stage分類)によっていずれかの治療法が選択されます。Stageは、病変の深さ(深達度)と転移の有無・広がりによって決められており、がんの深達度が深いほど転移のリスクが高くなります(図11)。粘膜固有層までの深達度であれば転移のリスクはきわめて低く、内視鏡治療が第一選択とされています。深達度が粘膜筋板〜粘膜下層1までの場合は、転移のリスクが10-20%出現しますが、80-90%は転移しないと言うことでもあるため、まず内視鏡治療を行うことが多くなっています。ただし、切除後の評価によって、転移を予防するために外科手術や化学放射線療法が必要と判断されることもあります。
 内視鏡治療は、通常の検査室で鎮静剤を使用し、意識がないような状態で行います。ヨード染色により食道がんの範囲は明瞭となり(図12・13)、病変の周囲に印をつけたあと(図14)、粘膜下に水を注入し病変を持ち上げた状態で、特殊なナイフで病変周囲を切開、病変の粘膜下層を剥離し切除します(図15〜18)。出血や穿孔と行った偶発症は数%の確立で起こりえます。また、切除部位に人工的な食道潰瘍ができますので、1週間ほどの入院治療は必要となります。また、食道の2/3周以上の切除となった場合には、切除後の潰瘍が治癒する過程で高率に食道狭窄を来します。食道狭窄を来すことが予想される場合には、予防的に内視鏡的に拡張術を行います。
 内視鏡治療の適応と判断された食道がんは、内視鏡治療を行うことでほとんどが完治しています。食道がんは進行が早く治らない病気と言われていましたが、より早期に発見し内視鏡治療を行えば決して治らないがんではないのです。
 内視鏡治療は低侵襲でがんを治すことの出来る治療法です。そのためには早期発見が必須であり、食道がんのリスクの高い方は、ぜひ内視鏡検査を受けておきましょう。

図11 表在がんの深達度と転移率
図11

  • 図12
  • 図13
  • 図14
  • 図15
  • 図16
  • 図17
  • 図18

3.外科治療

がんの発生部位、深逹度、転移の有無、患者様の全身状態などにより、治療方針は大きく異なります。深逹度が深くなる程、転移率は上がります。

食道がんの手術

食道がんに対する外科手術は7〜8時間必要な、大きな侵襲を伴う手術です。ですが、最近では、手術手技、手術器具の進歩、手術前診断の精度の向上、麻酔管理の進歩、術後の鎮痛薬や他の薬の進歩、術前術後の栄養管理の向上等により、安全に行えるようになっております。
食道は胸の奥にある約25cm長の筒状の臓器です。上はのどに繋がり、下は胃に繋がっているため、食道がん手術は頚部、胸部、腹部の3つの領域にまたがる手術が必要です。食道がんは周囲のリンパ節に広がりやすい病気ですが、食道のすぐ近くの胸のリンパ節だけではなく、腹部や頚部のリンパ節にも広がりやすいことがわかっています。従って、食道がんを切除するだけでなく、頚部胸部腹部のリンパ節を過不足なく外科的に切除することが非常に重要です。(図19、20、21) 術後は一時的に肺炎などの合併症が起こりやすい状態となるため、きめ細かな術後管理が必要となります。そのため、術後数日間はICU(集中治療室)にて管理します。

当院の食道がん手術

頚部胸部腹部のリンパ節を含めて切除する、いわゆる3領域リンパ節郭清を伴う食道切除術を基本としております。手術成績は極めて安定しており、2008〜2010年での食道手術例269例中、手術死亡例(術後30日以内に亡くなった例)1例(0.4%)、在院死亡(術後30日以降に退院できずに亡くなった例)3例(1.1%) です。
リンパ節に広がっている可能性が低い早い段階の食道がんに対しては胸腔鏡や腹腔鏡を用いた低侵襲手術を始めております。(図22)
ステージ2およびステージ3の患者さんに対しては手術前に抗がん剤治療を2回行った方がよいことが明らかになりました。当院でもステージ2、3に対しては抗がん剤治療→食道切除という方針で治療しております。

4.化学療法あるいは化学放射線治療

化学放射線治療

5-FU/シスプラチン点滴と放射線を同時に行うこの化学放射線治療は放射線のみの治療よりも生存率がよくなります。副作用は増えますが元気な方であれば多くの場合耐えうる範囲です。食道を切除しないため治療後の食事も問題が手術よりも少ないことが長所です。進行度が1-4A期の場合の手術以外の第2の選択肢として行われます。

具体的な治療法を次に示します。

  • 化学放射線治療の内容と方法
    この治療は抗がん剤治療と放射線治療を同時に行います。
    抗がん剤を点滴する間、入院が必要です。放射線治療のみの時は外来通院が可能です。
    放射線治療は週5回(5日間)を6週間繰り返して、合計30回行います。
    1回の放射線の量は2.0Gy(グレイ:放射線の単位)です。約5分で治療は終わります。
    抗がん剤治療は、1週目と5週目に5-FU(ファイブ−エフユー)とシスプラチンという2種類の抗がん剤の点滴を行います。
    5-FUは1日24時間の持続点滴で4日間連続して、合計96時間連続で行います。
    シスプラチンは1週目と5週目のそれぞれ1日目に2時間ほどで点滴します。
    抗がん剤以外にも、尿量(おしょう水の量)を確保するための点滴も行います。
    1週目の抗がん剤の点滴が終了して、退院可能であれば一旦退院となり5週目の前に再度入院していただくことになります。
    治療期間中は、およそ1週間に1回の定期的な採血検査を施行します。
治療スケジュール
治療内容 投与量 治療法 治療日
1週目 2週目 3週目週目 4週目
5-FU 700 mg/m2 点滴 ↓↓↓↓
(1〜4日目)
シスプラチン 70 mg/m2 点滴
(1日目)
放射線 2.0Gy 照射 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
薬剤 薬剤量 治療法 治療日
4週目5週目6週目7週目
5-FU 700 mg/m2 点滴 ↓↓↓↓
(29〜32日目)
シスプラチン 70 mg/m2 点滴
(29日目)
放射線 2.0 Gy 照射 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ↓↓

↓:点滴もしくは照射施行日

抗がん剤+放射線治療終了後
治療効果判定のために、治療終了日から1-2月後に内視鏡検査、CT検査等を行います。
治療効果のあった場合は同じ抗がん剤(5-FUとシスプラチン)の5日間の点滴治療を1-2ヶ月毎に2回以上追加します。
これらの治療が終了し、検査にてがんが消えていれば治療は終了します。
がんが消えずに残る場合はこのままでは治るのは難しくなり、可能なら食道を切除する手術も考えます。
手術をしない場合はさらに抗がん剤治療を続けるか一時治療中止経過観察となります。、効果と副作用とを考えて判断することになります。

抗がん剤+放射線治療終了後までのスケジュール
 
123456
123456789 101112131415161718
放射線治療                  
抗がん剤治療1-4日目29-32日目 追加治療 追加治療  
   

(病変が消えていれば追加治療は2回のみ、最大4回)
射線化学療法終了後の追加治療は患者様の状態により回数は変更されます

化学療法

化学療法とはがんを抑える薬物による治療のことをいいます。抗がん剤治療と同じ意味です。
食道がんに有効な主な薬剤は
①シスプラチンまたはネダプラチン
②5-FU
③ドセタキセルの主に3種です。
①②の組み合わせや③の単独治療がよく行われる治療です。化学療法でがんが縮小させ進行を遅らせる効果が期待できます。

代表的な化学療法を次に記します。

化学療法を使う病状としては手術前に行う場合や手術で切り取れる範囲を超えてひろがったがん(手術後再発や進行度4期)に対して行う場合が考えられます。
手術前の化学療法は進行度2-3期方には積極的にすすめています。日本での臨床試験の結果で5-FUとシスプラチン併用療法を手術前に2回(効果がない場合は1回)行うことで手術のみや手術後に化学療法を行うよりも長生きする方がより多いことが示されています。

5-FUとシスプラチン併用療法: FP療法

食道がんに対し世界中で用いられている最も代表的な化学療法です。 手術効果を高めるために手術前にも用いられます。

治療の日程
治療開始後の日数 1日目 2 3 4 5 6—28
日目
29日目
以降
5−FU (点滴)
800mg/m2 24時間
なし ●(次コース)
シスプラチン(点滴)
80mg/m2  2時間
なし ●(次コース)

1コースは5日間の点滴治療です。次コースは28日以上あけて繰り返し行います。つまり次コースは早くて投与開始日から29日目以降に行います。
点滴時間が長いため入院が必要です。入院期間は7−14日間ですが、副作用などの症状によりそれより長くなることもあります。 手術前・後の治療の場合2コースで終了になります。 もしも強い副作用がみられた場合は、治療を中断し回復を待ちます。その場合は予定通りに治療をすすめません。

1-4ヶ月ごとに検査(主にCT,時に内視鏡検査・超音波検査など)を行い、がんに対する効果を確認します。検査の結果、無効でなければ(縮小または不変)この治療を続けます。

ドセタキセル抗がん剤治療

ドセタキセルは商品名でタキソテールとも呼ばれています 先述の5-FUとシスプラチン併用療法が無効な場合や使用できない場合に行う治療です。

日程
日付1日目23

22–29日目

ドセタキセル 点滴
約2時間 70mg/m2
  ●22日から29日目に次回の点滴

1回あたり約2時間のドセタキセルの点滴治療を3-4週ごとに行います。

外来での通院治療が可能です。
点滴治療の日以外にも副作用の状況を見るために1-2週毎の通院が必要です。
治療の効果を確かめるため1-4ヶ月ごとに検査(主にCT,時に内視鏡検査・超音波検査など)を行い、がんに対する効果を確認します。
病状の悪化や重い副作用がなければ特に期限はもうけずに治療を継続します。
お酒が弱い方は申し出てください。

どのような時にこの治療を中止するのか
  • この治療をやっていても病気が悪化する(治療無効)時
  • 医学的に重大な副作用が生じた時
  • 患者さんが耐え難いと感じる副作用等のため治療中止の希望がある時、など
その他の治療法

その他の抗がん剤治療としてはフッ化ピリミジン系、5−FUやシスプラチンなどの薬剤を使った治療が考えられますが病状により投与できないこともあります。
手術と異なり完治を目指せる治療でないこと、副作用などマイナス面があることから抗がん剤治療を希望しないで症状を改善する治療(緩和ケア・対症療法とも言われます)のみを選択する方もいます。

5.放射線療法

基本的には手術が行われますが、最近では放射線治療と化学療法を同時に行う治療法が注目されています。年齢や心疾患など他の病気で手術ができない場合にも放射線治療が行われます。また食道の狭窄が強く、食事がとれない場合には、症状の改善を目的に放射線治療を行う場合もあります。おおよその治療期間は5−8週です。タバコは治療の効果が低下する可能性があるため、放射線治療中・治療後も禁煙を心がけてください。 詳細は放射線治療科HPへ

6 緩和ケア

高度に進行して上記のような治療の適応が厳しい場合、また合併症(年齢、心臓、肺、その他の臓器に問題がある場合)が重度で通常の治療に耐えられないと判断した場合などは緩和ケアを中心とした治療をしていきます。もちろんがんに対する治療途中でも緩和ケアや地元施設とも協力して、安心して治療ができるように、また困った時に対処できるように取りはからいます。詳細は緩和ケア科HPへ

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食道がんの再発の診断と再発後の治療

食道ガイドラインによる根治手術後の再発は27〜50%に見られると報告されています。診断としては、臨床症状の他、CT検査や内視鏡、PET/CTなどの画像診断が用いられています。再発形式の差はありますが、予後はあまり良いものではありません。1年生存率がリンパ節再発例で33〜50%、臓器再発が25%と報告されています。
根治治療後(手術や化学放射線療法、内視鏡治療含め)の再発に対しては、再発時の全身状態や再発部位により治療法が選択されているのが現状です。当院ではその症例毎に可能であると思われる治療を検討しています。

食道がんサルベージ手術とは?

根治目的に放射線化学療法を行った後に遺残、再発に対して外科手術を行う手術のことをいいます。(手術を目的とした術前放射線化学療法とは異なります)。術後合併症の多いことや手術手技の困難さなどからその意義については議論の余地があります。当院では約50例のサルベージ手術の経験があります。進行した症例やリンパ節転移がある症例では未だ予後は不良です。

ステント挿入

上記のような標準治療(内視鏡治療、外科切除、化学放射線療法など)が施行できない症例あるいは治療後の再発したかたで通過障害があるかたが対象になります。挿入に関しては短期(出血、誤嚥性肺炎、縦隔炎)、長期的な合併症(瘻孔形成、気管支狭窄、縦隔炎)もあります。

バイパス手術の適応

本手術はサルベージ手術が適応とならず、ステント挿入も困難と思われる症例が対象となります。がんに対する治療ではなく、目的は残された時間のQOLを上げることにあります。

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食道がんの治療の副作用と対策

Q3 治療に伴うリスクと副作用は?

1.内視鏡的切除

出血や穿孔と行った偶発症は数%の確立で起こりえます。また、切除部位に人工的な食道潰瘍ができますので、1週間ほどの入院治療は必要となります。また、食道の2/3周以上の切除となった場合には、切除後の潰瘍が治癒する過程で高率に食道狭窄を来します。食道狭窄を来すことが予想される場合には、予防的に内視鏡的に拡張術を行います。

2.外科手術

周術期の合併症として肺炎などの呼吸器合併症、縫合不全、反回神経麻痺が重要です。食道切除後の術後管理は多くの経験と、速やかな対処が要求されます。1999年全国食道がんがん登録調査による手術直接死亡は3.6%でしたが、近年はさらに減少し、2%程度と報告されています。  中長期的な合併症として、誤嚥性肺炎、逆流症状、ダンピング、吸収障害、重複がんの発生に注意を払う必要があります。

3.化学放射線治療

副作用を最小限とするために、あらかじめ副作用予防のための、吐き気止めなどのお薬を使用します。しかし、副作用は個人差が大きく、また症状の程度も様々であるため完全には予防できません。副作用が、全く出ないという事はないと思いますが、過去の経験からほとんどが耐えうる範囲の症状です。 (以下、下線が生じやすい症状です)

患者さんが自覚する副作用

吐き気・嘔吐・食欲不振(特に シスプラチン後の数日間)、下痢、口内炎、手足の皮膚の黒ずみ・ひび割れ、しびれ感、難聴、しゃっくり、脱毛(治療が終わると生えてきます)、食道のただれ(胸焼け)、食道穿孔、食道狭窄、息切れ・咳・動悸(放射線による心臓・肺障害:終了後に起こることが多い)、皮膚のただれ(主に頸部や胸部:放射線による皮膚障害)、アレルギー、等があります。

採血するとわかる副作用

血液成分の減少:白血球減少(=抵抗力低下);かぜをひかない様に注意が必要、血小板減少(=止血困難)、貧血;ひどいとふらつきなどの症状(輸血が必要な場合もあり)、肝障害、腎障害などがあります。適宜採血検査を行い、対処していきます。

後遺症を残す副作用、致死的にな副作用として、約1%生じる可能性があります。食道穿孔、放射線による心臓・肺障害などが誘引となります。

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食道がんの治癒率

予後について

日本食道学会の集計では2002年の食道がんに対して食道切除を施行した症例の5年生存率は44.1%です。
これを進行度別にみると、Stage 0:82.5%, Stage I: 75.7%、Stage IIA:52.4%、Stage IIB:43.9% Stage III:20.5%、Stage IV:11.1%でした。
当院での1993-2003年までの前治療なしの食道がん手術成績(TNM分類)
Stage 0 100%, Stage I 78.2%, Stage IIA 67.4%, Stage IIB 56.2%, Stage III 36.9%, Stage IVa33.3%, Stage IVb 25.5%でした。これらの生存率は全身合併症や年齢にも影響されますのであくまでも参考値とお考え下さい。

化学放射線療法

臨床病期別治療成績:日本での前向き臨床試験結果からの引用です。

  1. 1期:CR(がんが消える)率 87.5% 4年生存率は80.5% Jpn J Clin Oncol. 2009 ;39:638-43. 2009
  2. 2期と周囲臓器の浸潤(T4)のな3期(T3N1M0): CR率62.2 % 、MST29月、3年生存率44.7%、5年生存率36.8%
      Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2010
  3. 3期で周囲臓器の浸潤あり(T4 anyN M0)と 4A 期の治療効果: CR率33%,3年生存率23%と良好な成績を得ている。5年生存率は17% 
    J Clin Oncol, 1999; 17 : 2915-2921 
    少量分割のFP療法併用放射線治療と通常投与法のFP化学放射線治療の比較試験の報告では、3年生存率は30/26%と報告されています。 
    J Clin Oncol 28:15s, 2010 (suppl; abstr 4053)

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