がんに関する情報

精巣がん

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がん研有明病院の精巣がん診療の特徴

 精巣がんは、他の泌尿器がんと比較して、より若い患者さんに発生することが多い疾患です。診断時に既に転移を有している患者さんも少なくありませんが、多くの場合、抗がん剤治療に非常に良く反応し、比較的高い確率で治癒が望めます。
 一方、精巣がんの患者さんの中には、がんの組織型、転移の部位と進行度から厳しい予後が予測され、実際に思うような治療効果が得られない難治例もあります。
 当科は、そのような難治性精巣がん(胚細胞がん)の治療経験も豊富であり、精巣がんを患った全ての患者様において、治癒を目指した積極的治療に取り組んでおります。

当科の特徴

難治性精巣がんに対する積極的化学療法と救済手術療法

精巣がんの治療成績

転移のないステージTには精巣摘除術のみで追加治療せず厳重経過観察を行い、希望があれば補助療法を行います。ステージU,Vの転移例にはまず化学療法を3〜4コース行い、残存腫瘍があれば可及的切除を行います。

5年生存率

図7:精巣腫瘍ステージ別実測生存率曲線

図8:精巣腫瘍進行転移例:IGCCリスク分類別実測生存率曲線ステージTは100%、Uは90%、Vは70%です。『図8』にはステージUとVをまとめ、国際胚細胞腫瘍のリスク分類別にみた生存率曲線を示します。

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精巣がんについての知識

精巣がんとは

精巣がんは精巣内の精子を造る精細管上皮細胞から発生します。精巣の解剖、精巣がんの統計、そして病因を説明します。

精巣の解剖

精巣は精子を造る男性固有の臓器です。精子を造るだけではなく、男性ホルモンも造っています。精巣を栄養する主な血管は、大動脈の腎臓の高さから出て鼠径部を通り精巣に至ります。精巣で造られた精子は、射精時に精巣上体、精管をへて、前立腺部の尿道より射出されます。

精巣がんの統計

10万人当たりの発生率はおよそ1人で決して多くはなく、男性の全腫瘍の1%程度ですが、15〜35歳の男性においては最も多い悪性腫瘍です。

精巣がんの原因

病気の原因は不明ですが、停留精巣患者さんでは、精巣固定術施行の有無に関わらず一般男性に比べ3〜14倍のリスクを有します、片側の精巣がん患者が、反対側に精巣がんを発生する頻度は同じく20倍以上とされています。その他に、外傷や炎症もがん発生の一因とされています。

精巣がんの種類

精巣がんは、細胞の種類によって大きくセミノーマと非セミノーマに分けられます。 後者の方が転移を起こしやすく、より悪性の経過をとります。

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症状

無痛性の精巣のしこりや、腫れが初発症状です。およそ30〜40%で下腹部の重圧感や鈍痛があり、10%で急性の精巣痛があります。 がんが進行し広い範囲に転移が出現すると、腹痛や呼吸困難、首のリンパ節の腫れ、体重減少、腫瘍の産生するホルモンの影響で乳首の痛みや腫れなどもおこります。 好発年齢の青壮年の方は入浴時に自分で触ってみる自己検診をお勧めします。

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診断

触診

ずしりとした重みのある精巣を触れます。反体側の正常な精巣と比較し、精巣上体ではなく精巣そのものにしこりや腫れがあることを確認します。

超音波検査

陰嚢内に水がたまっていて精巣そのものが触れにくい場合、精巣の腫瘍が小さい場合などにとても有効な検査です。

血液検査

精巣がんには、LDH(乳酸脱水素酵素)、 AFP(アルファ胎児性蛋白)、hCG(ヒト縦毛性ゴナドトロピン)、 hCGβ(hCGβサブユニット)などの腫瘍マーカーがあり診断や治療の助けとなります。

組織検査

精巣がんでは、前立腺がんのように手術前に組織検査をして診断を確定することは転移を生じる恐れがあるため禁忌です。

鑑別診断

下記疾患などが鑑別としてあげられます。

1.精巣上体炎

陰嚢内に硬いしこりを触れます、感染症なので急性期には尿中に白血球を認めたり、痛みや発熱などの症状を伴うことが多く鑑別可能ですが、慢性期には診断に苦慮することもあります。

2.精巣炎

炎症所見が弱いものや、結核性のものなど注意が必要です。

3.陰嚢水腫、精液瘤

透光性検査や超音波検査で容易に鑑別可能です。

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病期診断

病期診断法

1.原発巣の進行度診断

通常は術前には行いません。原発巣に関しては手術可能であれば、診断後すみやかに、後で述べる高位精巣摘除術を行います。

2.転移巣の検索

精巣がんは大動静脈周囲の後腹膜リンパ節や肺に転移しやすいので胸部と腹部のCTスキャンを行います。

精巣腫瘍の病期

日本泌尿器科学会の病期分類と国際胚細胞共同研究グループによる予後因子分類を表に示します。

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治療法

精巣がんと診断がついたら、まず高位精巣摘除術を行います。 高位精巣摘除術とは、陰嚢ではなく足の付け根の鼠径部を切開し、精巣に向かう血管をまず結紮し、がん細胞が手術操作によって散らばらないようにしてから、精巣、精巣上体、精索を一塊として摘出します(下図)。 精巣摘出後の治療法は、病期によって異なります。


  • 精巣腫瘍(セミノーマ)

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再発の診断と治療

病期I(転移のない場合)

1.無治療経過観察(サーベイランス)

およそ80%の患者さんが、無治療で経過観察をしていても再発しません。しかし、5年程度は指示された間隔でしっかりと腫瘍マーカーや、CT、超音波検査のチェックが必要です。特に2年以内は頻繁な検査が必要です。
再発しても、早期発見であれば、抗がん剤の治療を2〜3ヶ月かけて行うことによりほぼ完治可能です。

2.予防照射

精巣がんの組織型がセミノーマであった場合、転移好発部位の後腹膜に放射線治療をする方法です。95%程度の非再発率が見込めますが、80%の患者さんに不必要な治療をすることになる点、少ないながら放射線の副作用もある点、再発した時点での治療開始でもほぼ救命可能である点などから、最近はサーベイランス(経過観察)が選択される場合も多いようです。

3.予防化学療法

低用量の抗がん剤を2コース行うことにより再発を予防しようとする試みがありますが、まだ一般的ではありません。

4.後腹膜リンパ節廓清

米国では、非セミノーマに対して行われていますが、日本ではあまり行われていません。

病期 II以上(転移のある場合)

1.放射線治療

セミノーマの病期・Aに選択されることがあります。90%程度の治癒率です。

2.化学療法±残存腫瘍切除

抗がん剤治療を3〜4コース行い、腫瘍マーカーの陰性化を待って、残存腫瘍があればこれを摘出します、セミノーマの場合には、3cm以下の残存腫瘍ならば経過観察でも良いとされています。 摘出した残存腫瘍に、生きているがん細胞が認められた場合には、抗がん剤治療を2コース追加します。腫瘍マーカーが陰性化しない場合には、救済化学療法として、別の抗がん剤や、超大量化学療法などが試みられています。

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再発の診断と治療

抗がん剤の副作用と対策

1.吐き気や嘔吐などの消化器症状

抗がん剤使用日に起こるものには、セロトニン受容体拮抗薬が効きます。最近では、ニューロキニン1受容体拮抗薬といった新しい制吐剤を併用することもあります。翌日以降におこる遅延性嘔吐には、ステロイドや従来からある制吐剤、場合により精神安定剤などを使います。

2.白血球減少、血小板減少、貧血などの骨髄抑制

抗がん剤投与後2週間前後で、白血球と、血小板が減ってきます。白血球減少中は、感染症に対する抵抗力が落ちるので個室に入ってもらったり、面会を制限したりするほか、白血球を増やす顆粒球コロニー刺激因子製剤(G-CSF)の注射をする場合があります。血小板減少に関しては、血小板輸血、遅れて出現する貧血に対しては、赤血球濃厚液を輸血する場合があります。

3.腎機能障害

シスプラチンという腎毒性のある抗がん剤を使用することが多いので大量の点滴を(3000ml以上)必要とします。

4.脱毛

ほぼ必発です。治療終了後また生えてきます。

5.造精機能障害(不妊症)

大量の抗がん剤を使うと、回復が遅れたり、回復しない場合があります。精子の凍結保存を行うことも可能です。

6. 末梢神経障害

手足の指先のしびれや耳鳴り、難聴が残ることがあります。

手術による副作用と対策

後腹膜のリンパ節廓清を広範囲に行うと、精液が出なくなったり、逆行性射精といって、精液が膀胱の中へ逆流するようになります。予防法としては、射精に関わる自律神経の温存術式が行われます。精液の逆流そのものは無害です。

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治癒率

当科での1994年以降の5年生存率は、病期Iでは、サーベイランス中の再発例にも死亡例はなく100%。病期II以上では再発例や、予後不良群も含めて72%となっています。

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