子宮がん
最終更新日 :
2025年6月19日
がん研有明病院の子宮がん診療の特徴
子宮がんについて
子宮がんとは
子宮は女性の骨盤中央に位置し、左右に卵巣があります。子宮は「子宮頚部」(子宮の出口)と「子宮体部」(子宮の上部)に分かれており、これらの部位に発生する悪性腫瘍を「子宮がん」と呼びます。
子宮がんには大きく分けて「子宮頚がん」 と 「子宮体がん」があります。
- 子宮頚がん: 子宮頚部に発生するがんで、主にヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因とされています。がんの種類には「扁平上皮がん」と「腺がん」があり、日本では腺がんの割合が比較的多い傾向にあります。
- 子宮体がん: 子宮体部(子宮内膜)に発生するがんで、ほとんどが「腺がん」に分類されます。ホルモン環境が発症に関与し、特に閉経前後の女性に多くみられます。
子宮がんの発症率と年齢分布
2019年のデータでは、
- 子宮頚がんの新規罹患者数は 11,283人、死亡者数は 2,871人
- 子宮体がんの新規罹患者数は 17,880人、死亡者数は 2,863人 となっています(2022年統計)。
特に 子宮頚がんは20代から急増し、妊娠を希望する若い世代に影響を与えることが分かっています。一方、子宮体がんは50〜60代で発症のピークを迎えます。
子宮がんの原因
子宮頚がんの主な原因はHPV感染です。HPVは性行為を介して感染し、高リスク型HPV(16型、18型、33型、52型、58型など)ががんの発症に関与します。しかし、感染した全ての人ががんになるわけではなく、免疫の働きによってウイルスが排除されることもあります。
子宮体がんの主な要因はホルモン環境です。特にエストロゲン(女性ホルモン)の影響を受けやすく、未婚・未妊、排卵障害、多嚢胞性卵巣症候群などがリスク因子とされています。子宮体がんは「エストロゲン依存性(I型)」と「非依存性(II型)」に分類され、I型は比較的予後が良いとされています。
診断方法
検査
子宮がんの診断には、以下の方法があります。
- 細胞診検査(がん検診)
- 子宮頚部や子宮体部の細胞を採取し、がん細胞の有無を調べます。
- 子宮頚がんの診断率は約95%ですが、子宮体がんの場合は約50%です。
- 組織診(生検)
- 子宮頚部や子宮内膜の一部を採取し、より詳しい検査を行います。
- 画像診断(MRI・CT・PET)
- がんの進行度や転移の有無を確認します。
- HPV検査
- 子宮頚部の異形成(前がん病変)を発見し、ハイリスク型HPVの有無を調べます。
治療方法
子宮頚がん
- 初期段階(IA・IB期): 子宮温存手術(円錐切除術・広汎子宮頚部摘出術)を検討できます。
- 進行期(IB期以降): 広汎子宮全摘術 や 放射線治療を行います。
- V期以降: 放射線療法と化学療法の併用が一般的です。
子宮体がん
- 基本治療: 子宮全摘術が標準治療です。
- 早期で妊娠を希望する場合: ホルモン療法による経過観察が可能です。
- 進行期・転移がある場合: 化学療法や放射線療法が行われます。
ロボット支援手術・腹腔鏡手術 近年、手術支援ロボット「ダヴィンチ」による低侵襲手術が増えています。傷が小さく、術後の回復が早いことがメリットですが、適応には慎重な判断が必要です。
予防策
- HPVワクチンの接種
- 9価ワクチン(シルガード9)が90%の予防効果を持ちます。
- 日本では小学6年生〜高校1年生の女子を対象に定期接種が行われています。
- 定期的ながん検診
- 20歳以上の女性は2年に1回の子宮頚がん検診を推奨。
- 閉経後の女性は子宮体がんの検診も考慮。
まとめ
子宮がんは早期発見・適切な治療で十分に対処可能です。特に HPVワクチンの接種や定期的な検診を受けることで予防・早期発見が可能になります。ご不安な点があれば、がん研有明病院のがん相談窓口までお気軽にご相談ください。