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がん研有明病院の大腸がん診療の特徴
がん研有明病院の大腸がん診療の特徴
日本有数の症例数の多さ
- 大腸がん手術が年間500例以上、腹腔鏡手術が年間400例以上
- 早期大腸がん、大腸ポリープの内視鏡的治療数は年間2000例以上、大腸内視鏡検査は年間7200例以上
- 進行がんに対する外来点滴化学療法は、月間のべ約500例
チーム医療による迅速かつ丁寧な治療
- 大腸がん専門の外科医、内科医、化学療法専門医が一緒に診るチーム医療で、2週間以内に方針を決めて直ちに治療を開始する
- 高度に進行した大腸がんでも、化学療法、放射線療法、手術を組み合わせて完治を目指す
患者さんのための体に優しい治療方針
- 大腸がん手術の80%以上が腹腔鏡手術で、体に優しく、入院期間が短い
- 化学療法は専任の医師のもと、大部分が通院治療
大腸がんの治療成績(手術件数・生存率)
手術件数 2004年〜2010年の推移
| 2004 | 2005 | 2006 | 2007 | 2008 | 2009 | 2010 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 初発大腸がん | 209 | 221 | 356 | 402 | 434 | 452 | 492 |
| 再発大腸がん | 30 | 24 | 26 | 22 | 16 | 25 | 27 |
| その他悪性腫瘍 | 16 | 18 | 31 | 47 | 46 | 26 | 30 |
| 良性腫瘍 | 3 | 4 | 7 | 6 | 6 | 1 | 4 |
| その他 | 45 | 40 | 52 | 42 | 66 | 75 | 80 |
| 合計 | 303 | 307 | 472 | 519 | 568 | 579 | 633 |

腹腔鏡手術件数 2004〜2010年の推移
| 2004 | 2005 | 2006 | 2007 | 2008 | 2009 | 2010 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 結腸その他 | 14 | 51 | 133 | 176 | 206 | 204 | 278 |
| 直腸 | 4 | 24 | 81 | 111 | 107 | 158 | 181 |
| 合計 | 18 | 75 | 214 | 287 | 313 | 362 | 459 |

術式別手術件数 2010年
| 直腸がん | 手術件数 | うち腹腔鏡 | ||
|---|---|---|---|---|
| 初発がん | 200 | 174 | ||
| 直腸切断 | 25 | 21 | ||
| ハルトマン | 5 | 1 | ||
| 腹肛門式直腸切除 | 19 | 19 | ||
| 超低位前方 | 38 | 37 | ||
| 低位前方切除 | 51 | 47 | ||
| 前方切除 | 45 | 42 | ||
| 経肛門局所切除 | 5 | 0 | ||
| その他切除 | 4 | 3 | ||
| 非切除(ストーマなど) | 8 | 4 | ||
| 再発がん | 14 | 1 | ||
| 切除 | 13 | 1 | ||
| 非切除(ストーマなど) | 1 | 0 | ||
| 結腸がん | ||||
| 初発がん | 292 | 252 | ||
| 切除 | 289 | 250 | ||
| 非切除(ストーマなど) | 3 | 2 | ||
| 再発がん | 13 | 3 | ||
| 切除 | 8 | 1 | ||
| 非切除(ストーマなど) | 5 | 2 | ||
| その他悪性 | 30 | |||
| カルチノイド | 7 | |||
| GIST | 4 | |||
| 小腸がん | 2 | |||
| 悪性黒色腫 | 3 | |||
| 悪性リンパ腫 | 2 | |||
| その他 | 12 | |||
| 良性腫瘍 | 4 | |||
| その他 | 80 | |||
| ストマ閉鎖 | 42 | |||
| その他 | 38 | |||
外科治療の成績

がん研有明病院の大腸がん治療
大腸がんについての知識
大腸がんとは
大腸とは
大腸は、食物の消化吸収を行う消化管の最後の部位を占めます。大腸の始まりは右下腹部にある盲腸で、盲腸の次が右上腹部に向かう部分である上行結腸、その次が右上腹部から左上腹部に向かう横行結腸、その次の部分が左上腹部から左下腹部に向かう下行結腸、さらに左下腹部からSの字の形を描くS状結腸、S状結腸と直腸の間の直腸S状部、大腸の最後の部分である直腸Sという順に食物は大腸を通過していき、最後に肛門から便となって排泄されます(図1)。
大腸は軟らかい蛇腹のような管状の臓器で、内視鏡検査の時に折りたたんでいくと肛門から盲腸まで約70cmで到達しますが、空気を入れて引き伸ばすと2mにもなります。
大腸がんの発生
大腸がんの多くは「腺腫」という良性の腫瘍が悪性化して発生します。したがって、悪性化しそうな腺腫を発見したら、その時点で切除してしまえば大腸がんを予防できることになります。腺腫の多くは「ポリープ」という腸の内腔に盛り上がった形をしており、大腸内視鏡で発見でき、内視鏡で観察しながら切除することができます。
大腸がんの一部は、「腺腫」の時期を経ないで、正常な粘膜からいきなり発生してくると考えられています。このようながんの多くは平べったい形をしており、早期発見には注意深い観察が必要になります。
大腸がんの発生部位
大腸がんが最も多く発生するのは直腸とS状結腸で、次いで上行結腸に数多く発生します。2005年3月から2009年12月までの約5年間にがん研有明病院で外科手術を受けた初発大腸がんの患者さん(初めて大腸がんにかかった患者さん)1833名についてみると、盲腸がん7%、上行結腸がん15%、横行結腸がん8%、下行結腸がん4%、S状結腸がん26%、直腸S状部がん12%、直腸がん28%となっています。全国平均と比べるとがん研有明病院では直腸S状部がん・直腸がんが少し多くなっています。
大腸がんの広がり
大腸がんは粘膜の表面から発生し、大腸の壁に次第に深く侵入していきます。進行するにつれ、リンパ管に入り込んでリンパ節転移を起こしたり、血管に入り込んで肝転移や肺転移などの遠隔転移を起こします。リンパ節転移はがんの存在する局所から始まり、だんだん遠方のリンパ節に広がっていきます。しかし、手術で完全に取り除けないほど広範囲に広がる例は多くありません。また、肝転移や肺転移は遠隔転移ですが、手術で完全に取り除ける場合がしばしばあります。
大腸がんにかかりやすい年齢と性別
大腸がんの患者さんの年齢は50〜75歳が多いのですが、発生頻度は高齢の方ほど高くなります。男女別では「男性:女性」が「1.6:1」と男性に多く発生します。
増えている大腸がん
大腸がんは近年急激に増加しており、2006年の統計では、日本全体で肺がん・胃がんに次いで3番目に大腸がんで亡くなられている方が多くおられ、男性では肺がん、胃がん、肝臓がんに次いで第4位、女性では胃がんよりも多く第1位となっています。大腸がんは元々日本人には少なかったのですが、食生活が肉食中心の欧米型になったことが、大腸がんの増加の原因と考えられています。
大腸がんとがん家系
一部の大腸がんの発生には遺伝的な体質が強く関与していることが知られています。ご家族(血縁者)に2人以上の大腸がんや胃がんなどの消化器がんの方がおいでになる場合には、大腸がんにかかる危険が大きいと考え、45歳ごろから大腸がんの検診を受けることをお勧めします。その他、婦人科がんや尿路のがんなどでも大腸がんと関係が深い場合があるので注意しましょう。
大腸がんの症状
大腸がんの症状として多く認められるのは、血便、便通異常(便秘や下痢)、腹痛、腹部膨満、貧血などですが、血便は直腸がんやS状結腸がんの症状として非常に頻度の高い重要なもので、痔核の症状に似ていますので要注意です。便に混じった微量の血液を検出する便潜血検査は、大腸がんの早期発見のために健康診断でも広く行われています。
大腸がんの診断
大腸がんの診断のための検査
大腸がんを発見するための検査としては大腸全体をバリウムと空気でうつし出す注腸造影検査が広く行われてきました。しかし、近年では大腸内視鏡検査によって発見される大腸がんが増えてきています。大腸内視鏡は注腸造影よりも技術を必要とする検査で、苦痛をともなうこともありますが、病巣を直接観察できますし、病巣が発見されたら、生検という病巣部から小さな組織を採取する方法によって、がん細胞の有無を調べることができます。

大腸がんの治療方針決定のための検査
大腸がんと診断され、内視鏡で切除できない進行がんの場合には、外科手術の前段階として、病巣の広がりや転移の状況を調べる検査が必要になります。胸部X線検査は肺転移の有無をみる検査で、X線検査で転移が万一疑われる場合には肺のCT検査(コンピューター断層撮影)を行います。 肝転移の有無は普通、造影剤を点滴しながらのCT検査で調べますが、造影剤アレルギーのある方では、代わりに腹部超音波検査や肝臓のMRI検査を行う場合があります。 病巣の局所での広がりや、リンパ節転移の状況はCT検査で調べます。 直腸の早期のがんで、内視鏡で切除できるか否かがギリギリの進行度の病巣に対しては、超音波内視鏡検査で病巣の深さを調べることがあります。
大腸がんの病期診断、ステージ分類
大腸がんの進行程度の分類
大腸がんの進行程度は、大腸の壁をおかしている深さと、リンパ節転移の有無や程度、遠隔転移の有無によって決定されます。大腸がんの進行度の分類法には、日本の大腸がん取扱い規約分類や、国際的に用いられているデュークス分類、TNM分類がありますが、原則は共通です。
| テージ分類* | [デュークス分類] | |
|---|---|---|
| T | デュークスA | 腸壁にとどまりリンパ節転移のないもの |
| U | デュークスB | 腸壁を貫くがリンパ節転移のないもの |
| V | デュークスC | リンパ節転移のあるもの |
| W | デュークスD | 肝、肺などへの遠隔転移をともなうもの |
*日本の大腸がん取扱い規約とTNM分類とで共通
大腸がん切除後の病理組織検査によって決定される組織学的進行度は、術後の再発率や生存率に密接な関連があります。がん研病院における、おのおのの進行度別の術後生存率については、治療成績の項目をごらん下さい。
大腸がんの治療法
大腸がんの治療
早期の大腸がんの中には、内視鏡切除で治療が完了する病巣も多く、がん研病院では毎年約100例の大腸がんを内視鏡で切除しています。粘膜表面にとどまる病巣や、粘膜下の浅い層(1mmまで)の進展で、リンパ管や血管に侵入していないがんでは、がん細胞が通常のタイプのものであれば内視鏡切除のみで根治が可能です。
外科手術の方法には、通常の開腹手術と腹腔鏡手術、経肛門的または経仙骨的な局所切除術の3つの方法があります。このうち、局所切除術は肛門近くに発生した直腸がんでリンパ節転移の危険性がないものに対して、内視鏡切除と同様にがん病巣のみを切除する手術です。一方、開腹切除術や腹腔鏡手術では、がん病巣と一緒に転移を起こしやすいリンパ節を一緒に切除するのが普通です。
直腸がん、特に肛門に近い部位に発生したがんは、リンパ節転移の広がり方や手術後の局所再発など結腸がんとは異なる特徴を持っています。 局所再発を起こさないような確実な切除、肛門近くにできた直腸がんに対しても肛門を温存する手術(トピックス(肛門温存手術))、術後の排尿機能や男性性機能障害を軽くするために自律神経を温存する手術、局所再発を予防しつつ機能温存手術の適応拡大を図るための術前の放射線療法(トピックス(術前化学放射線療法))、仙骨や子宮、膀胱などの直接的に波及した場合の拡大手術など、直腸がんの手術にはたくさんの課題が残されていますが、がん研有明病院ではこれらの課題をクリアするために日々努力を続けています。
大腸がんの腹腔鏡手術
腹腔鏡手術は最近10年間の大腸がん手術の進歩で最も大きなものといえるでしょう。
以前は大腸がんに対する手術では病気の進行度にかかわらず、腹部を大きく切開し(通常は15cm以上)、病変部位の大腸とリンパ節を摘出して、腸と腸とをつなぎ合わせる操作を行っていました。しかし、腹腔鏡手術では、腹部にできる創は、腹腔鏡を挿入するための穴、手術器具を挿入するための穴、切除した大腸を摘出するための小切開(通常は5cm程度)だけになりました。
腹腔鏡手術は開発された当初は、切除範囲が小さくてすむ早期がんの一部に対して行われていましたが、その後、通常の開腹手術と同様な切除を行う技術が発達した結果、リンパ節の切除を必要とする進行がんに対しても適用できることがわかりました。とくに、直腸がんの手術の時には、腹腔鏡手術の方が通常の開腹手術のよりも手術部位が見やすくなります。もちろん腹腔鏡手術の操作には開腹とは異なる難しさがありますが、経験を十分に積んだ外科医が行えば、通常の開腹手術の場合と安全性に差はありません。
がん研有明病院では現在、がんの大きさが極端に大きくはない・主要臓器に広がっていない・広範囲のリンパ節転移がない場合には、進行がんに対しても積極的に腹腔鏡手術を行うことが多く、2009年では初発大腸がん446例中340例(約76%) が腹腔鏡手術で切除されました。
詳しくはトピックス(腹腔鏡大腸手術)をご覧下さい。
大腸がん治療後の定期検査
大腸がんの根治手術を受けたあとは定期検査のための通院が必要になります。それは、たとえ手術の時点ではがんの取り残しがないと考えられても、術後経過中に再発が起こる場合があり、再発を早期に発見できれば再発に対する治療法の選択肢が増えるからです。(術後の定期検査によって再発を無症状のうちに発見することが術後の生存率を改善させるか否かについては現在も検討が続けられています。)
上腹部のCTは、肝転移再発を早期に診断することを目的としており、ステージT・Uでは年に2回、ステージVでは年3〜4回行われます。CTの際の造影剤にアレルギーがある場合には、腹部超音波検査で代用する場合もあります。
胸部X線は肺転移再発の診断を目的にステージT・Uでは年に2回、ステージVでは年3〜4回行われますが、上腹部のCTの際と胸部までスキャンを行うと、より精度の高い検査となります。
術後の骨盤部CT検査は主に直腸がんの患者さんに行われますが、局所再発の発見を主な目的としています。肝臓のCT検査の際に骨盤部までスキャンすれば、局所再発のチェックも同時に行うことができます。
大腸がんの再発の治療
大腸がんの再発とその治療
大腸がんの再発として最も多いのは肝転移再発です。直腸がんの場合には局所再発がこれに続き、肺転移も比較的多く発生します。結腸がんでは、肝転移以外では肺転移がときに発生し、腹腔内にがん細胞が種をまかれたように発生してくる腹膜播腫が発生することがあります。
肝転移や肺転移、局所再発では、再度の外科的切除でがん病巣全部を取り除ける場合には外科的切除が第一選択の治療となります。外科的切除が不可能な再発病巣に対しては抗がん剤を用いての全身化学療法を行います。また、外科的切除が不可能な局所再発に対しては放射線照射、または抗がん剤を併用しての放射線照射が有効である場合が少なくありません。
近年では大腸がんに有効な抗がん剤治療が次々に開発されています。一種類の薬剤のみで治療されることは少なく、通常は2種類以上の薬剤を組み合わせて治療します。外科的切除が不可能な大腸がんの再発に対する抗がん剤治療は、それだけでがんを根治するほどの効果は残念ながらまだありませんが、治療後の生存期間は年々長くなっており、やがては長期間にわたってがんの進行を抑えることが可能になることが期待されます。
再発大腸がんは、手術と放射線療法、抗がん剤治療の3つを上手に組み合わせて治療していく必要があります。また、積極的ながん治療ではありませんが、食事摂取や便通を改善し、痛みを抑制する治療も重要です。がん研有明病院では、キャンサーボードという、外科、腫瘍内科、放射線科その他多数の診療科の多数の医師による症例検討会を毎週1回開催しており、単純な治療では対応が困難な大腸がんの患者さんの治療方針の検討を行っております。
大腸がんに対するアバスチンの治療について
大腸がんに対する分子標的薬として注目されている抗VEGF(血管内皮増殖因子)ヒト化モノクローナル抗体ベバシズマブ(遺伝子組換え)-販売名『アバスチン点滴静注用100mg/4mL、同400mg/16mL』(以下、「アバスチン」)が、2007年4月18日に厚生労働省より「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん」の治療薬として、承認されました。
「アバスチン」は、2005年7月に開催された第5回未承認薬使用問題検討会議の要請を受け、国内第T相臨床試験、海外第U相および海外第V相臨床試験に基づき、2006年4月21日に承認申請されました。国内で実施された臨床試験は、第T相臨床試験(5-FU/l-LVに「アバスチン」を併用)、および安全性確認試験(FOLFOX4療法に「アバスチン」を併用)で、日本人における薬物動態および忍容性が確認され、これら国内2試験の成績と海外臨床試験の成績を基に本邦での承認に至りました。
「アバスチン」は、血管新生を阻害するという新しい作用機序を持つ薬剤です。承認条件として、「国内での治験症例が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施することにより、本剤使用患者の背景情報を把握するとともに、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること」が付与されております。そのため、患者さんの安全性確保ならびに「アバスチン」の適正使用推進を最優先とし、発売後一定期間は、がん化学療法に精通し、かつ消化管穿孔、出血等の副作用への緊急対応が可能であり、全例調査に協力可能な医療機関にのみ投与ができます。なお全例調査にあたり、患者様の個人情報は守られます。プライバシーは保護されます。がん研有明病院では国内でのアバスチンの臨床試験に2005年から参加していました。
アバスチンは単剤では使用されず、他の化学療法と併用します。
1)FOLFOX4+アバスチン
世界で標準治療として施行される治療です。オキサリプラチン+5-FU+ロイコボリンの併用療法です。当院では第一治療として施行します。
2)FOLFIRI+アバスチン
これも世界中で施行される治療法です。イリノテカン+5-FU+ロイコボリンの併用療法です。当院ではセカンドライン、第2次治療として施行します。
3) 5-FU/LV+アバスチン
高齢の方、リスクの高い方のための治療方法です。副作用は少ないですが、治療効果も他の治療より低いです。秋頃からの使用開始を検討中です。
以下の条件の患者様はアバスチンの投与が困難なことが多いです。
- 胃潰瘍などがある方
- 大きな手術を受けてまもない(1カ月以内)方
- 血が止まりにくい体質の方
- 血をかたまりにくくするお薬による治療を行っている方
- 動脈や静脈の中にちのかたまりができる病気(脳梗塞、心筋梗塞、深部静脈血栓症、肺塞栓症)にかかったことのある方
- 不整脈のある方
- 腹水のある方
- 高血圧の方
- 高齢の方
- 妊婦または妊娠している可能性のある方
治療費
この薬剤は高価になることが予想されます。投与予定の方は医事課に御相談されることをお勧めします。
新薬アービタックス、新薬セツキシマブ(アービタックス®)
セツキシマブ(アービタックス)について
セツキシマブは2008年7月に、結腸・直腸がんに対して承認された新しいタイプの抗がん剤です。現在、「EGFR陽性の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん」に対して使用されており、大腸がんの抗がん剤治療の中では2番目以降の治療として位置づけられています。本剤の特徴は、がん細胞の表面に存在するヒト上皮細胞増殖因子受容体(Epidermal Grouth Factor Receptor:EGFR)に結合するモノクローナル抗体であり、EGFRの刺激を通して起こるがん細胞の増殖をブロックして作用を発揮します。これまでに行われた2次・3次治療の臨床試験結果(BOND試験)では、イリノテカンとセツキシマブの併用療法にて病気の進行までの期間が約4月で22.9%の方に腫瘍の縮小効果が認められました。同様に3次治療の臨床試験(NCIC CTC CO.17試験)結果では、セツキシマブ単剤で病気の進行までの期間が約2ヶ月との結果がみられています。
FOLFIRI療法(CPT-11/FU/LV)との併用療法でFOLFIRI療法単独の場合にくらべて腫瘍の縮小効果と病状進行までの期間の延長効果が認められており病気の進行までの期間が約9ヶ月で、46.9%の方に腫瘍の縮小が認められています。
セツキシマブには一般的な抗がん剤と異なる特有な副作用がいくつかあります
@infusion reaction(インフュージョンリアクション)と呼ばれるアレルギー様の反応があります。投与を受ける約25%の方に反応がみられ、特に初回投与時に吐き気、発疹、呼吸困難感などの症状が出現します。まれですが、重篤なアレルギー反応を引き起こす場合もあります。予防を目的として抗アレルギー薬を使用します。
A皮膚症状は上記のEGFRに結合する治療薬でみられる副作用のひとつです。国内で行われた臨床試験でもにきびのような皮膚の発疹が約97%の方に生じています。発疹が強くでるほど治療効果が高いことが知られています。
セツキシマブを使用する場合には、EGFR検査を行い、EGFR陽性であることを確認することが必要です。また、セツキシマブではKRASという遺伝子の有無によって治療効果が異なることが知られておりますが、現在のところKRAS遺伝子の測定が保険にて認められておらず、通常診療ではおこなっておりません。
FOLFIRI+セツキシマブ療法について
当院では前述のFOLFIRI (CPT/FU/LV) 療法との併用で2次治療の選択肢のひとつとして治療を行います。2次治療でのFOLFIRI+セツキシマブ療法の臨床試験成績は明らかではありませんが、1次治療における臨床試験(CRYSTAL試験)ではFOLFIRI療法にセツキシマブを併用することで腫瘍の縮小効果と病状進行までの期間の延長効果が認められています。
XELOX療法について
XELOX + ベバシズマブ 療法
当院では2009年10月より、転移・再発大腸がんに対する新しい治療法であるXELOX(ゼロックス)療法とこれに分子標的薬を加えたXELOX + ベバシズマブ(アバスチン®)療法を開始しました。これまで行われていた標準治療の1つであるFOLFOX(フォルフォックス)療法が2週に1回の外来通院を必要としたのと比べ、XELOX療法は経口薬であるカペシタビン(ゼローダ®)を用いることで3週に1回の外来通院で済ますことができます。また、海外と国内で行われた臨床試験の結果から、治療効果や安全性がFOLFOX療法と同等であることが証明されています。したがって、患者さんにとってより通院負担の少ないXELOX療法が今後の主流となると考えられています。注意点としては、経口抗がん剤を忘れずに内服すること、特有の副作用である手足症候群の予防を行うことが挙げられます。当院では、これらの点を踏まえ治療を円滑に行うために主治医の他、専任の薬剤師と看護師が対応に当たっています。
治療スケジュール
XELOX療法は、経口フッ化ピリミジン系抗悪性腫瘍薬のカペシタビンと白金錯体系抗がん剤のオキサリプラチン(エルプラット®)とを併用する治療法です。投薬は21日間を1サイクルとして、1日目にオキサリプラチン130mg/m2を点滴投与、1日目の夕食後よりカペシタビン1000mg/m2を朝・夕食後に1日2回、14日間続けて内服し、以後21日目まで休薬します。ベバシズマブと併用する場合には7.5 mg/kgを1日目に追加投与します。
カペシタビン(ゼローダ®)
カペシタビンは全身への毒性を最小限に抑えながら、高用量の5-FUを腫瘍選択的に供給するようにデザインされた薬剤です。特徴的な副作用としては、手足症候群、消化器毒性、血液毒性が挙げられます。手足症候群は手足の末端部に紅斑や色素沈着を起こし、高度なものは疼痛を伴う発赤・腫脹、水疱、びらん等を形成することがあります。当院ではXELOX療法を行う患者さんに、外用薬を用いた保湿を習慣付けるよう説明することで予防を行っています。また、消化器毒性としては食欲不振、悪心、下痢、便秘、口内炎などを認めることがあります。特に口内炎は治療継続への影響が大きいため、柔らかい歯ブラシによる入念な口腔ケア、含嗽薬による口腔内の清潔保持などの予防と発症早期からの対応を行っています。
オキサリプラチン(エルプラット®)
オキサリプラチンは大腸がんに対して唯一抗腫瘍活性を有する白金錯体系抗がん剤です。特徴的な副作用としては、末梢神経障害と過敏症、血液毒性などが挙げられます。末梢神経障害は投与直後に出現する急性神経障害と繰り返し投与により出現する慢性神経障害があります。急性神経障害は手足や口唇周囲のしびれ感として現れますが、通常3日程度で消失します。寒さへの暴露により誘発・悪化することが知られているため、冷たいものを触らない、冬場は手袋を着用するなどの点に注意する必要があります。一方、慢性神経障害はオキサリプラチンの蓄積により出現する手足の知覚異常です。治療を進めていく間に、文字が書きにくい、ボタンが掛けにくい、飲み込みにくい、歩きにくい等の症状が出現する場合があります。その際には、オキサリプラチンを減量、または中止する必要があるため、主治医には症状を正確に伝えてください。また、過敏症はオキサリプラチン投与直後に発症するアレルギー反応で、発疹、掻痒、めまい、意識障害、時に血圧低下を伴うことがあります。入院を要するほどのものは0.3%〜7.3%と報告されています。
ベバシズマブ(アバスチン®)
大腸がんに対する分子標的薬として注目されているベバシズマブは、血管内皮細胞増殖因子(VEGF: Vascular Endothelial Growth Factor)に作用することで、腫瘍の成長に必要な血管の新生を抑え、腫瘍の増殖や転移を抑えます。また、不整な構造をもつ腫瘍内の血管を再構築することで、併用する抗がん剤の腫瘍への到達を改善し、抗腫瘍効果を発揮すると考えられています。ベバシズマブはその特徴的な副作用から、次の項目にあてはまる患者さんへの投与は慎重な検討を必要とするため、主治医とよくご相談ください。
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍などがある方
- 大きな手術を受けてまもない(1カ月以内)方
- 血液が止まりにくい体質の方
- 血液をかたまりにくくするお薬による治療を行っている方
- 脳梗塞、心筋梗塞、深部静脈血栓症、肺塞栓症等の既往のある方
- 不整脈のある方
- 腹水のある方
- 高血圧の方
- 高齢の方
- 妊婦または妊娠している可能性のある方
大腸がん治療後の生活
内視鏡切除だけで治療が完了すれば後遺症は全くありません。結腸がんの手術後には、術後しばらく便通異常の症状が残ることがありますが、長引く後遺症はほとんどありません。
大腸内のうちでも直腸は、便を一時的にためて、タイミングよく排泄するという重要な機能を持っています。したがって、肛門に近い直腸がんの場合には、直腸のこのような機能が失われ、便通のコントロールに問題を生じることがしばしばあります。具体的には、少量ずつ頻回の排便、便意の我慢の困難、少量の便失禁、排便困難などが術後の症状としてしばしば見られます。多くの場合には術後の時間経過にともなって症状が改善していきますが、術前の健康な状態に戻ることは原則としてありません。また、直腸の周囲には膀胱や性器に分布する自律神経が存在し、直腸切除の際にやむを得ず同時に切除することがあります。最近は自律神経を完全に切除する手術はほとんど行いませんが、部分的な切除が必要になることは時々あります。このような場合、排尿機能が長期間に渡って障害されることはありませんが、元々前立腺肥大で排尿が困難な方では、術後の排尿症状が長引くことがあります。また、男性の性生活の機能は排尿機能よりも障害されやいのが実情です。
食事に関しては特別な注意は必要ありませんが、術後約3ヶ月間は繊維分の少ない消化の良い食物が奨められます。この時期には、腹部手術後の合併症の1つである腸閉塞が起こることが時にありますので、海藻のような消化の悪い食物が、腸管の通過状態があまりよくない部位にひっかかって腸閉塞の引き金になることがあります。
また、過食も禁物です。大腸の主な機能は、腸内容を運搬しつつ水分を吸収することですので、もし大腸が全部切除されたとしても、栄養面の問題はありません。術後の体力回復のためにと食餌を増やす患者さんがいらっしゃいますが、大腸がんの術後の患者さんの多くは、術後2年もすると体重は手術前、あるいは手術前以上になります。体重の増加は、高血圧や糖尿病などのがん以外の成人病にとっても良いことではありません。





