がんに関する情報
がんに関する情報

印刷

直腸がんに対する肛門温存手術

直腸がんに対する肛門温存手術

直腸がんの肛門温存手術

『直腸がんはこわい、なぜなら人工肛門になるから』という声をしばしば耳にしますが、本当でしょうか?

直腸は、食物の通り道である消化管の最後の部位で、大腸のうちで一番肛門に近いところにあります。がんを治すための手術では、がん周囲の正常な部分を含めて広く切除しますので、直腸がんが肛門のすぐ近くにできてしまうと、直腸と肛門を一緒に切除して人工肛門を作らざるを得ない場合があるのは事実です。

しかし、直腸がんでは病巣から2cm以上離れた肛門側まで、がん細胞が広がることはほとんどありません。また肛門の近くで腸と腸をつなぎ合わせる操作を、自動吻合器という手術器械を使って安全に行えるようになりました。さらに最近では、肛門のすぐ近くにできたがんであっても、比較的早い時期のものであれば、肛門括約筋(肛門を締める筋肉)を部分的に切除したうえで腸と肛門を縫合し、肛門から排便する機能を温存する技術も発達してきました(図1)。そのうえ、当消化器センターで行っている手術前の放射線治療はがん病巣を小さくし、肛門を温存できる可能性を高めます。

図1: 外肛門括約筋を温存し内肛門括約筋を部分的に切除する手術
図1: 外肛門括約筋を温存し内肛門括約筋を部分的に切除する手術

こうした手術技術や補助的治療法の進歩により、永久的な人工肛門が必要になる直腸がんの患者さんは最近激減しています。がん研有明病院では、2005年からの最近7年間で約1000例以上の直腸がんの患者さんの切除手術を行いました。直腸がんといっても、発生する部によって大きく違っています。図2のように直腸S状部(RS)・上部直腸(Ra)・下部直腸(Rb)と分類されて、発生頻度は30%・28%・42%でした。そして、肛門を温存できる確率が、図3のように違っていました。多くの場合、直腸がんの手術をしても肛門を温存することが出来ます。直腸がんを切除し腸をつなぎ合わせたところが肛門に近い場合には、一時的な人工肛門を作ることがありますが、約3−6ヶ月後に一時的な人工肛門を取り除いて、本来の肛門から排便できるようになります。永久的な人工肛門が必要になった患者さんは、下部直腸がんで24%、直腸がん全体でわずかに12%にすぎませんでした。直腸がん・人工肛門と診断されたら、がん研有明病院をおたずねください。

図2: 直腸がんの部位別発生頻度
図2: 直腸がんの部位別発生頻度
(がん研有明病院 2005-2011年 1046症例)

図3: 直腸がんの肛門温存率
図3: 直腸がんの肛門温存率
(がん研有明病院 2005-2011年 1046症例)

外来担当医師一覧 外来担当医師一覧

このページのTOPへ