がんに関する情報
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腎がん

腎がん

最終更新日 : 2024年3月27日
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がん研有明病院の腎がん診療の特徴

腎腫瘍に対する手術

腎に発生する腫瘍は良性腫瘍・悪性腫瘍があります。多くの場合CTやMRIなどの画像診断で良性/悪性の鑑別がつきますが、腫瘍によっては鑑別が難しい症例もあります。手術の対象となるのは「腎の悪性腫瘍および悪性が疑われる腫瘍」です。

腎摘除と腎部分切除について

腎臓は肝臓などと異なり再生する臓器ではないため、一度摘出した腎組織は失われたままとなってしまいます。また、正常の腎組織を温存することは手術後長期にわたる心血管合併症(狭心症や脳梗塞など)の発症をおさえることにつながる、という研究データがあります。以上から当科では、腎腫瘍に対する手術を考えるときにはなるべく正常腎組織を温存する手術、すなわち腎部分切除が可能か検討するようにしています。腎を大きく占めるような腫瘍(目安は7cm以上)や腎の中央部に埋没しているようなケースでは腎摘除、それ以外の正常腎組織を十分残せる場合は部分切除を行うことになります。もちろん患者さんの希望・全身状態・年齢・合併症などを考えて術式を決定します。

腎部分切除

腎腫瘍の部分に一部周囲組織をつけて切除する手術です。腫瘍のない腎臓の正常部分の大半を残すことができますので、腎臓をすべて摘出する場合と比べて腎機能を残すことができるというメリットがあります。

腎部分切除術は、腎臓の血流を一時的に遮断(阻血) → 腫瘍を含む腎臓の一部を切除する→ 切除後の欠損部分を縫い合わせ(腎縫合)阻血を終了する → 切除部位の出血を確認する、という手順で行います。

阻血時間が長くなると腎機能が低下しやすくなるため、速く正確な腎縫合が望まれます。

腎がんの手術

ロボット支援下手術

大きい腎腫瘍や部分切除の適応とならない部位の腫瘍に対して腎摘除をする場合、また転移のない7cm以下の腎腫瘍に対して部分切除をする場合に適応となります。基本的には腹腔鏡手術を手術支援ロボットで行う、という形式です。手術支援ロボットを使用することで、三次元の立体的な画像を見ながら腫瘍と臓器の位置関係を正確にとらえて操作することができます。腹腔鏡手術と異なり、人間の手関節以上に自由度の高いロボット鉗子を用いることで、腹腔内での精密な切開や正確な縫合を素早く行うことが可能です。これまでの研究で腎部分切除においては腹腔鏡手術より阻血時間が短縮し、より多くの腎機能が温存できることが示唆されています。一方でこの手術にも弱点があります。以前に開腹手術や放射線治療などをされた既往のある場合は高度の癒着が予想され、この手術を施行できないことがあること、またロボット鉗子には触覚がないので腫瘍のサイズが大きくしっかりと腫瘍を触って切除部位を確認しながら手術を行ったほうがよい場合などは開腹・ミニマム創手術の方が安全に行うことができます。

詳しくは担当医にお尋ねください。ロボットの操作には熟練が必要なため、執刀はダビンチ手術システムの使用のための認定ライセンスを受けた医師が担当します。

腹腔鏡手術

腹部に通常4〜6ヶ所のキズ(1ヶ所2〜3cm、他はいずれも5〜12mm)をあけて腫瘍を切除します。開腹手術に比べて出血をおさえられ、キズが小さく、術後の痛みが少ないなど利点が多いです。一方、お腹に開けた小さなキズを通して自由度の低い鉗子を操作することから腫瘍の切除や腎の縫合で動きが制限されます。このため、手技が難しく阻血時間が長くなることがあるのが欠点です。ロボット支援手術よりも腫瘍サイズ・部位の点で腹腔鏡手術に適した症例を選択することが重要です。

ミニマム創内視鏡下手術

側腹部(いわゆる「わきばら」)に5-8cm程度の皮膚切開をおいて手術を行います。内視鏡を併用し、小さな創一つで手術が完了します。腎が本来存在する場所である後腹膜腔のみで手術が完了しますので、腹腔内合併症(腸管損傷や腸閉塞など)がほとんど発生しません。腎を冷却してから阻血できる(冷阻血と呼ばれ、腎機能温存に有用とされています)ので術後より多くの腎機能温存が期待できる、というメリットがあります。

開腹手術

これまでに述べた低侵襲手術に適さない症例(例. 嚢胞性とよばれる腫瘍内に水分を多く含む場合、以前受けた手術や疾患のせいで腎周囲に高度の癒着が予想される場合)などに対して行います。多くの場合は側腹部(いわゆる「わきばら」)に 皮膚切開をおいて手術を行います。創部は大きくなりますが腎を冷却してから阻血できる(冷阻血と呼ばれ、腎機能温存に有用とされています)ので術後より多くの腎機能温存が期待できる、というメリットがあります。

腎がんについての知識

腎がんとは

腎臓の実質から発生したがんを腎がんといいます。腎臓の解剖と病因を説明します。

1.腎臓の解剖

腎臓は、尿を造る臓器です。その他に血圧の調節、ビタミンDの活性化、造血ホルモンの生成などにも関わっている臓器です。そら豆のような形をしておもさ130g、長径11〜2cmで、副腎と共に脂肪に包まれています。肋骨に上半分を守られるように、背中側に左右に1つずつあります。腎がんとは腎臓の中の尿細管の上皮細胞から発生すると考えられています。

腎臓の解剖図
2.腎がんの病因

病因としては、腎不全、喫煙、性ホルモン、高血圧、肥満の関与が指摘されています。また、常染色体優性遺伝であるvon Hipple-Lindau病と関連性が知られており、腎がんのうち最も多い組織型である明細胞がんでは3番染色体短腕の欠損がしばしば認められることが知られています。 明細胞がんの他には乳頭状がん、嫌色素性細胞がん、集合管がんなどの組織型があります。

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症状

早期では無症状、最近は人間ドックの腹部超音波検査や、他の病気で精査中に偶然発見される場合が増えてきています。古典的な症状は、血尿、疼痛、腹部腫瘤ですが、骨転移による病的骨折や、肺転移による咳や血痰などの転移による症状で見つかる患者さんも少なく有りません。

また進行にともない発熱、食欲不振、体重減少、貧血(時に多血症)、高カルシウム血症などの多彩な全身症状を伴うことも有ります。

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診断

腹部超音波検査、CT/MRI検査、骨シンチグラフィー、PETCT検査などにより腎がんの病期を診断します。

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薬物治療

術後の病理結果でリンパ節転移や高悪性度のがん、進行がんといった場合、また転移巣も含めて腎がんが全て切除可能であった症例に対して、再発予防として術後補助免疫療法を施行することがあります。それによって再発リスクを約30%低下できたとする報告があります#1。ただし、適応については一定の基準を満たす必要があるため担当医師とよくご相談ください。

転移性腎がんで手術加療が困難な場合、全身薬物治療が用いられます。最近では免疫療法の組み合わせや免疫療法と分子標的薬を組み合わせた治療で良好な効果が報告されています。

#1 Choueiri TK, Tomczak P, Park SH et al. Adjuvant Pembrolizumab after Nephrectomy in Renal-Cell Carcinoma. N Engl J Med. 2021 Aug 19;385(8):683-694.

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