医療安全体制の監査について

最終更新日 : 2026年9月2日

2026年度 第1回

公益財団法人がん研究会有明病院 2026年度第1回医療安全監査委員会 監査結果概要

監査日時 : 2026年7月9日(木)13:00〜16:00
委員長: 長尾 能雅  (名古屋大学医学部附属病院副病院長/患者安全推進部教授(医学博士))
委員 :
大滝 恭弘 (帝京大学医療共通教育研究センター教授(医学博士・法務博士))
瀧澤 邦夫 (がん研有明友の会(医療を受ける者))
参加者 :
公益財団法人がん研究会 有明病院
浅野 敏雄 (公益財団法人がん研究会理事長)
渡邊 雅之 (病院長/病院本部本部長/理事)
米瀬 淳二 (医療安全管理責任者/副院長/泌尿器科部長)
山本 豊 (医療安全管理部長(ゼネラルリスクマネージャー))
古賀 典子 (医療安全管理部看護師長(ゼネラルリスクマネージャー))
鈴木 美智子 (医療安全管理部副看護師長(ゼネラルリスクマネージャー))
根本 真記 (医療安全管理部主任薬剤師(ゼネラルリスクマネージャー)/鎮静管理WG)
馬場 誠一郎 (医療安全管理部臨床工学技士主任(ゼネラルリスクマネージャー))
森 健作 (医療放射線安全管理責任者/画像診断センター長/核医学部長)
三谷 浩樹 (医療機器安全管理責任者/頭頸科部長/MEセンター長)
山口 正和 (医薬品安全管理責任者/院長補佐/未承認新規医薬品等管理部長/薬剤部長)
清水 多嘉子 (看護部長/副院長)
橋 祐  (高難度新規医療技術管理部長/副院長/肝胆膵外科部長)
陳 勁松 (化学療法部長/院長補佐/消化器センター長)
笹平 直樹 (IC委員会委員長/院長補佐/肝胆膵内科部長)
大橋 学  (中央手術部長/院長補佐)
中村 美穂 (患者相談室長 /患者・家族支援部看護師長)
馬場 慎也 (チーフコンプライアンスオフィサー / コンプライアンス室室長 / 法務・知財室 室長)
山本 晃史 (医療クオリティマネジメントセンター事務室長/院長補佐/人事部長/総務部長)
青木 智恵子 (医療クオリティマネジメントセンター事務室長代理)
山口 智美 (医療クオリティマネジメントセンター事務室)
伊藤 穂波 (医療クオリティマネジメントセンター事務室)

1.報告事項

報告資料に基づき当院の医療安全管理体制および、リスク低減に向けた取り組みについて各部署より報告を行った。

1)IAレポートの推移:医療安全管理部

グラフを提示して報告をおこなった。報告数については助言のあった目標値を全て上回る結果であった。重大事象報告については2025年度に開催された調査委員会は8回であり、そのうち重大事象とされるB類型に該当する事例は2件であった。

≪外部委員からの助言・指摘事項≫

  • 以前より助言していた4つの目標値「病床数×6.6以上の総報告数」、「病床数×6.6×0.08以上の医師報告数」、「医師、看護師以外の職種からの報告割合が20%以上」、「3a以上の報告数が病床以上」について、すべて達成されている事が確認でき、報告行動の活性化は合格ラインに到達していると評価する。

2)リスク低減に向けた取り組みについて(疑義照会報告):医薬品安全管理責任者

2025年度下半期の処方変更割合が報告された。処方変更ありが65%、無しが35%であり上半期と大差がない結果となった。疑義照会の件数は上半期よりも減少しているが、割合の変化は見られなかった。その他、内服薬の疑義照会分類や注射抗がん薬の疑義照会分類について報告された。いずれも用法・用量に関する疑義照会件数が多く見られる結果であった。
併せて、下半期ハイリスク薬の処方変更割合について報告された。前項と同様に用法・用量に関する疑義照会が多い結果であった。

≪外部委員からの助言・指摘事項≫

  • ハイアラート薬の疑義照会について医師と薬剤師それぞれの受け止め方と行動が視覚的にわかる資料を提示されたい。ハイアラート薬であるため処方変更率が高くなるのか、もしくは医師がこだわりを持って処方を通すため処方変更率が下がるのか等が視覚的にわかると良い。さらには診療科別、主治医別で差異や傾向がわかる資料であればなお良い。

2.当院の医療安全管理体制と取り組みの現状について

当院の医療安全管理体制と取り組み状況について、「自己評価表」を基に報告、外部委員から助言・提言が行われた。

1)組織体制の評価:病院管理者

特定機能病院として求められる医療安全管理体制の継続のほか、患者目線での医療安全についても取り組みを開始した事が報告された。

≪外部委員からの助言・指摘事項≫

  • 安心して医療を受けられるよう、当院の医療安全管理体制について患者にも周知されたい。

2)医療安全管理体制と権限の評価:医療安全管理部

体制に大きな変更はなく、引き続き94部署から選出されたリスクマネージャーと連携して医療安全管理に努める事が報告された。また、リスクマネージャー会議の出席率が昨年度は95.7%であり、恒常的に欠席している部署には適切に対応している事が報告された。

3)平常時における医療安全管理活動:医療安全管理部/患者相談窓口/コンプライアンス室

今年度の年間目標を医療行為実施の際の患者誤認ゼロとして取り組みを継続している事が報告された。また、医療事故調査委員会を開催した事例については各種委員会等を通じて職員と共有している。再発防止策として整備した体制の遵守状況については、B型肝炎管理体制と大量出血ワークフローを例にモニタリングしている事が報告された。

患者相談窓口からは、患者から寄せられた相談や苦情、迷惑行為に対する対応方法が報告された。

コンプライアンス室からは、医療安全に関する通報窓口としてコンプライアンス室のほか、がん研なんでも相談所が紹介され、研修などを通じて職員へ周知している事や通報者の保護について報告された。

上記報告内容について、外部委員との間で以下の質疑応答がなされた。

  • 患者相談窓口に医療安全上重要な問題となる情報が寄せられた場合どのように対応しているか。
    ⇒毎週開催される相談窓口カンファレンスや場合によってはメールなどで医療安全管理部に共有
    している。またこれらは医療安全管理部にも別途報告されている事が多く、同時進行で対応して
    いる事が多い。

≪外部委員からの助言・指摘事項≫

  • 情報の取りこぼしが無く健全な状態である。

4)アクシデント発生時の医療安全管理活動:医療安全管理部

4月よりオカレンス報告の対象にA類型、B類型を組み込んだ形で報告する体制としたこと、医療事故等発生時の対応状況、必要な指導については調査委員会終了後に改善活動を行っていることが報告された。

5)院内救急体制の実際:医療安全管理部

重大事故が発生した際の体制について医療安全マニュアルを基に報告された。本年度よりA類型、B類型に分類して重大事象を把握する体制に変更し、適宜必要に応じて重大事例調査委員会、事例調査委員会を開催していることが報告された。また、院内救急体制としてスタットコールの年間件数、全職員に対するCPR訓練の年間実績数が報告された。

≪外部委員からの助言・指摘事項≫

  • 重大な事象が発生した際、医療事故該当性の判断過程、すなわち、医療起因性と予期性の有無をどのように判断したか、記録を残すよう注意されたい。

6)高難度新規医療技術の導入:高難度新規医療技術管理部

高難度新規医療技術として管理する対象の範囲と申請から承認までの流れ、有害事象発生時の対応等について報告され、外部委員との間で以下の質疑応答がなされた。

  • 昨年度は約20件の申請があった事が確認できた。IC文書の承認フローについて確認したい。
    ⇒最終的にはIC委員会の承認を得て電子カルテに登録となる。
  • 費用負担について保険適応外の場合の費用負担についてどのように説明しているか。
    ⇒IC文書に明記し患者へ説明している。

7)未承認の医薬品等への対応:未承認医薬品等管理部

導入の手続の流れと課題について報告された。そのほか同意説明文書の整備やモニタリング体制の整備について報告され、外部委員との間で以下の質疑応答がなされた。

  • 事前申請を基本としているが、事後に申請を依頼するケースもあるか。
    ⇒当院では未承認医薬品のほか適応外使用も管理対象としているため、実際は薬剤師の監査によ って拾い上げている状況であり、全てを事前に把握するのは困難である。また、当院の適応外使用はガイドラインや他施設ではすでに使用されている適応外使用が大半である。

8)安全な手術の実施:中央手術部

周術期の熱傷や出血などの安全対策について報告された。出血リスクについて、タイムアウト時に予測の出血量を確認しており、大量出血に関しては1000ml以上の出血を基準に大量出血時フローに基づき対応している事などが報告された。また、術前中止薬については担当医が術前にテンプレートを用いて指示をおこなっている。さらに薬剤師面談にて適否を決定していることが報告された。

≪外部委員からの助言・指摘事項≫

  • それぞれの取り組みを個々の手術室スタッフが十分認識している事が確認できた。

9)安全な化学療法の実施:化学療法部

化学療法を安全に実施するための体制について、化学療法運営委員会にて審議・承認されたレジメンが登録され、未登録の抗がん薬はオーダー・投与が出来ない体制となっている事、過去に発生した重大事例に対するマニュアルの整備をおこない、新入職員にも研修で周知を図っている事が報告され、外部委員との間で以下の質疑応答がなされた。

  • B型肝炎管理について抗がん薬以外の免疫抑制薬の管理体制はどうか。
    ⇒肝炎外来の医師が月に1回第三者チェックを行っているが、抗腫瘍薬に加えステロイドのオーダー歴も管理対象として確認する体制を整備している。

≪外部委員からの助言・指摘事項≫

  • irAEへの対策として、膠原病専門医を中心にマニュアルを整備し電子カルテに掲載している事が確認できた。また、連携により救われた患者が多数いる事も確認できた。

10)安全な患者管理について:医療機器安全管理責任者/鎮静管理WG/医療安全管理部

  • 生体情報モニタアラームを覚知できない事で発生する事故防止、および検査結果見落とし防止、鎮静の安全な実施に関する取り組みについて報告され、外部委員との間で以下の質疑応答がなされた。
  • 生体情報モニタのアラームについて、無駄鳴り防止の取り組みはどうか。
    ⇒無駄鳴りの根本は適切な設定値による管理である。不適切な設定値による管理の防止に注力し
    ている。

超音波検査や内視鏡検査結果の未対応についての取り組みはどうか。
⇒画像検査、組織診断結果と同様の対策をおこなっている。

11)患者誤認防止:医療安全管理部

患者誤認防止に関する取り組みとして、リストバンドの装着やダブルチェックの方法について報告された。

12)口頭指示受け:医療安全管理部

前回の当委員会での指摘を受け、口頭指示受けテンプレートを作成し運用を開始した事が報告された。

≪外部委員からの助言・指摘事項≫

  • 緊急事態においてメモに口頭指示を書く間がない場合の対応についても明文化する事が望ましい。

13)ガーゼ遺残等防止対策:中央手術部

体内遺物遺残を未然に防ぐ手順として「カウントマニュアル」および「体内遺物遺残防止概念・閉創時ワークフロー」について報告された。医師は閉創時に看護師からのカウント結果報告確認のみならず、自ら術野に遺残がないかを確認する運用フローとなっている事、また手術室運用マニュアルには、抜管前に必ずレントゲン撮影する事が明記されていることが報告された。

上記報告内容について、外部委員との間で以下の質疑応答がなされた。

  • 探索に非協力的な医師がいる場合のIAレポート数はどれくらいあるか。
    ⇒ワークフローに則り実践されているため、ほぼそのような事例はない。
  • タイムアウトの際に同意書と術式に相違がある場合はどのように対応するか。
    ⇒同意書に記載されている術式を正としており、事前に看護師が確認し整合性がとれない場合は
    医師に確認する運用となっている。

14)転倒・転落防止対策:医療安全管理部

入院時等、適宜転倒・転落のリスク評価をおこないリスクの高い患者に適切に対応している事や転倒・転落が発生した際の対応フローについて報告された。また、外来部門における転倒・転落のリスクが高い患者を識別する仕組みが紹介され適切に実践している事が報告され、外部委員との間で以下の質疑応答がなされた。

  • 年間発生する転倒外傷事例のうち、病院に過失があり賠償に至る事例は年間何件あるか。
    ⇒ここ数年での発生は無い。

≪外部委員からの助言・指摘事項≫

  • 次回、外来転倒発生率を提示されたい。
  • 入院患者、外来患者における重症転倒発生率および、管理不足による転倒外傷発生率をモニタリングされると良い。

15)医薬品に関する安全管理体制:医薬品安全管理責任者

医薬品安全管理研修会を年2回開催し、受講率100%を達成している事や、手順書を定期的に更新し、遵守状況を確認している事などが報告され、外部委員との間で以下の質疑応答がなされた。

  • 他施設で発生した抗がん薬髄腔内誤投与事例について、類似事例が発生しないようにがん研有明病院ではどのように防止策を図っているか。
    ⇒当院ではビンクリスチンはすべて輸液ボトルに調製され、静脈内投与と髄注レジメンは別のフロー動く仕組みであるため、薬剤部から払い出し以降の工程で取り間違い事例は発生
    しない仕組みとなっている。
  • 故意の犯罪行為を防止する方法はあるか。
    ⇒安全キャビネット内を映している監視カメラは設置していない状況である。ダブルチェックで調製はされているが、事後検証することは困難な状況である。。

≪外部委員からの助言・指摘事項≫

  • 医療犯罪を完全に防ぐ事は困難であるが、一方で、患者安全活動が活発になると、違和感の早期報告と共有、医療安全部門および公的機関との連携が有機的に進み、犯人確保も可能となるケースを経験する。現在の報告と連携体制を維持し、医療犯罪を起こり得ることとしてモニターしていくことが重要である。

16)薬剤の保管・管理:医薬品安全管理責任者

ハイリスク薬や麻薬、向精神薬、抗がん剤などの管理基準や手順について報告され、外部委員との間で以下の質疑応答がなされた。

  • インシデント・アクシデントの発生を減らすプロジェクトの取り組みはあるか。
    ⇒薬剤部内にある医療安全チームが該当する。
  • ここ数年のうち、成功事例はあるか。
    ⇒内視鏡室で使用する染色液の取り違い事例の発生を受け、医薬品安全管理委員会サポートのも
    と調製手順書を作成し体制整備をおこなった事例がある。

≪外部委員からの助言・指摘事項≫

  • 名称類似、外観類似薬でインシデントの発生が多い薬剤についてはハイアラート薬に分類する事も検討されたい。
  • 手順書は定期的に見直しを図る事をルール化する事が望ましい。

17)調剤に関する安全対策:医薬品安全管理責任者
院内処方交付の場面においてはの患者確認を氏名、生年月日の2識別子で行っている事、ハイリスク薬の監査項目と監査業務手順を適切に実施している事が報告された。

18)抗がん薬調製に関する安全管理体制:医薬品安全管理責任者

抗がん薬調製を担当する職員へのトレーニングを実施している事、抗がん薬調製手順についてはマニュアルを作成し薬剤部全職員が統一した手順で実施できるよう標準化を図っている事などが報告された。

19)医療機器に関する安全管理体制:医療機器安全管理責任者

医療機器を使用する際の使用手順と注意点を医療安全マニュアルに掲載し職員へ周知していること、また、新しい医療機器を使用する際には研修をおこない対象職員全員の受講を義務付けている事が報告された。その他、必要な情報の収集および適切な管理を行い、不具合等が発生した場合はPMDAへ報告をおこなっている事が報告された。

20)医療機器の購入・更新:医療機器安全管理責任者

医療機器の新規購入については医療機器等整備計画小委員会で審議のうえ決定している事や、医療機器の不具合、破損についてもIAレポートで報告する体制をとっている事、また、医療機器にトラブルが発生した場合、夜間休日の発生に備えオンコール体制をとっている事が報告された。

≪外部委員からの助言・指摘事項≫

  • 当該委員会で医療機器に関する患者安全上の年度目標を明確な数値目標として掲げると良い。
  • 過去に発生した重大事例の再発防止策の中からいくつかを選定し、それらがどの程度正しく遵守できているか、測定すると良い。これは、医療機器に限らず医薬品や手術関連においても同様である。

21)医療放射線に関する安全管理体制:医療放射線安全管理責任者

放射線従事者に対する職員研修を年1回実施している事、安全管理に関する指針や体制の整備が図られており、事故が発生した際の原因究明、防止策を検討する体制、フローが整備されている事が報告された。

22)医療放射線の管理:医療放射線安全管理責任者

急性放射線皮膚障害の可能性がある被ばく線量を適切に管理し、過剰被ばくなど放射線診療に関する事例が発生した際の対応について報告された。

また、放射線機器ごとの線量管理と記録を適切に実施しており、患者の求めに応じて説明する対応方法については現在検討中であることが報告された。

当院から外部委員への質問事項として、前回の外部監査委員会において生涯被ばく線量として放射線治療と画像診断の被ばく量を合算して管理する事が推奨され医療放射線安全管理委員会で対応を検討中であるが、当院で使用しているシステム上、合算が困難であるうえに、それぞれ被ばく線量は管理しているが用途が異なるため合算する事について理解が得られず、現在未対応の状態である。被ばく線量を合算する意義を改めて確認したい旨、要請があった。

≪外部委員からの助言・指摘事項≫

  • 近年、他施設の監査で、照射線量を検査別、患者別、主治医別などで集計するといった取り組みの報告を、複数受けた。その結果、透視の被ばく線量が担当する医師によって大きく異なる事が判明し、適正化に向け介入を始めたという施設もあった。近い将来、病院の質管理として求められる事を想定し、素地づくりをしておく事が望ましい。放射線の使用用途が異なることは理解するが、少なくとも自施設の被ばく線量上位に位置する患者を把握し、被ばく線量の適正化に向けた方略などを検討されたい。

23)インフォームドコンセントの適正な実施:IC委員会

インフォームドコンセントの実施方法を標準化し実践している事や、患者の理解度の確認、同席率の把握、適切な熟慮時間を設けている事が報告された。

同意書の総数は1030種類あり、今年度内に予定している電子カルテ更新の際に使用頻度を確認する予定である事、
同席件数の実績としては一昨年度が約350件/月、昨年度が約500件/月であり、今年度は同席基準に加え同席目標として高齢患者や入院期間の長い手術までを同席対象の範囲に広げ、現在600件/月を超える実績を確認している事が報告された。

≪外部委員からの助言・指摘事項≫

  • 同意書の総数1030種類は立派な件数である。
  • 重要なのは患者の適切な自己決定環境の確保である。そのために同席していた方が良いケースを定めたうえで、実際に遵守されていたか計測する事が望ましい。同席が必要とされる件数を分母として、そのうち実際に同席されていた件数を分子として集計した場合の同席率を提示されると良い。
  • 『熟慮期間』について、近年は『熟慮機会』と言われることが増えてきているため、修正されたい。単なる説明からサインまでの時間ではなく、断れる段階で熟慮できる機会を与えられているかが重要である。
  • インフォームドコンセントの意義・意味は「患者の自己決定権の確保」に加え、「事故防止機能」があると言われている。さらに「事故防止機能」には二つあると言われている。第一は、患者が過不足なくリスクを共有することで無謀な医療を断ることができること、第二は、医療者側がIC文書に沿って説明する事でチェックリストとして機能し、医療者側の備えに繋がることである。同席者は、医師がこれらの意義を理解し、インフォームドコンセントに臨んでいるか、チェックリストとして機能しているか、など、確認する事も検討された
  • また、患者の理解度を確認するために説明直後にteach backさせる方法があるが、それについても同席者のチェックが有用である。インフォームドコンセントの本来の目的を達成するために、同席者の役割を工夫されると良い。
  • インフォームドコンセントの意義について、前述の2つの機能に加え「紛争予防」も明確にある。単に文書を渡しただけでは全く役に立たず、ちゃんと説明しているかどうかでその後の経過が大きく変わる。現在、インフォームドコンセントに関する苦情が無い事から、きちんと説明されていると理解する。

24)インフォームドコンセントにおける説明事項:IC委員会

インフォームドコンセントで使用する全文書の確認を今年度中に実施する事が報告された。また、難易度の高い手術はキャンサーボードで個別のリスクを含めて適応を検討し、高齢者には高齢者機能評価を行い必要に応じて看護師同席のもと説明を実施している事が報告された。

25)セカンドオピニオンの積極的導入:IC委員会

全ての同意書にセカンドオピニオンについての説明文を記載し、患者へ周知を行っている事が報告された。

3. 監査結果(総評)

(長尾委員長)

  • 報告行動について、透明性の観点から合格ラインである事が確認できた。そのうえで、人為的なエラーによる人体被害をゼロにすることを最終目標とし、次の段階へ進まれたい。
  • 人為的なエラーによる人体被害を正確に判断できるかが課題である。集められたIA報告から、事例を検証し、防止策を検討している事は確認できたが、この事例は医療提供側の責任であり、新たに発生した医療費を病院が負担するという意思決定にバラつきがある、あるいはその意思決定を遠ざけている可能性を否定できない結果とも読める。職員一丸となって最終目標に向け、事故調査制度やA類型、B類型を上手に活用し、何を減らすのか、何のための患者安全活動なのかを職員、あるいは患者とも共有し、一歩先へ踏み出されたい。
  • 患者安全確保に向けた最終目標(人為的なエラーによる人体被害をゼロにする)のため各部門、部署が個々に目標を設定し、各部署の職員が目標を認識し達成のために努力している姿が望ましい。
  • 今後の外部監査委員会の進め方について、可能であれば各部署、各項目において年度初めに数値目標を設定し、1年間かけて取り組んだ結果を測定し第2回外部監査委員会で報告、その結果により次年度の目標値を変更、あるいは継続する事を報告する流れで監査を進められると良い
  • 外来転倒対策についてアウトカムを測定されると良い
  • 今回、仮に院内ラウンドを行った場合、現地で職員に確認したと思われる事項を追記する。
    患者相談窓口の役割、行っている事を職員が認識しているか
    A類型、B類型が職員に浸透しているか。概念および視点がもたらされた事を認識しているか
    手術部の目標(監査項目)を手術室のスタッフが認識しているか
    外来化学療法でirAE対策をどのように行っているか
    口頭指示でリードバックできない場合の対応方法をどのように認識しているか
    自部署の目標設定
    非麻酔科医が行う鎮静行為についての安全確保 など

(大滝外部委員)

  • 医療事故調査制度への報告の該当性について院長が判断しているとの事であったが、非該当と判断された事例について次回提示されたい。
  • インフォームドコンセントについて、前回の報告では提示されなかった管理数や同席率などが報告され、非常に高い同席率と管理数であったことから、担当者の努力が推察される結果であった。がん研有明病院の安全管理体制のレベルの高さを確認する事ができた。

(瀧澤外部委員)

  • インシデント・アクシデント報告の件数が毎年増加傾向であり、良い結果である。今後は報告したくないような内容、良くない報告についても積極的に報告するような文化の醸成を目指されたい。

 

以上

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