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ストーマ(人工膀胱)について

ストーマ(人工膀胱)について

最終更新日 : 2023年5月30日

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目次

Chapter.1: ストーマ(人工膀胱)とは

ストーマとは、手術によっておなかに新しく作られた、便や尿の排泄の出口のことを言います。ストーマには、人工肛門や人工膀胱の種類があります。何か特別な機械を使い管理するのではなく、自分の腸や尿管を直接おなかの外に出して、便や尿の新しい排泄の管理になります。

ストーマは粘膜ですので赤色をしています。例えば、お口の中も粘膜でできていますのでいつ見ても赤いです。ストーマは腸や尿管をお腹に出しますので、「ストーマが乾いたり、触ると痛くないの?」「お風呂に入るときに、お湯が入っていかないの?」と、心配になるかもしれませんが、大丈夫です。

ストーマは痛みを感じる神経が無いため触っても痛くはありません。また、粘膜は常に粘液や腸液が分泌されているため乾くこともないのです。ストーマからお腹にお湯が入っていかないか心配される方もいますがストーマの内側から外に向かって常に圧力がかかっているのでお湯が入ることはありません。

尿路系ストーマの種類

尿路系ストーマ(ウロストミー)は、回腸導管、尿管皮膚瘻、腎瘻、膀胱瘻などの何種類かの手術の方法があります。

今までの尿の管理とストーマでは何か変わるの?

ストーマからの排泄と、手術前までの排泄と何が変わるのでしょうか?膀胱には、尿を貯める働きや、尿が貯まったら排泄したい感覚(尿意)、貯まった尿をある程度我慢できる働き、尿を出す働きがあります。しかし、ストーマは膀胱と同じ働きがありませんので、今までのように尿を貯めて、自分の意志で排泄をコントロールできなくなります。一日中休むことなく腎臓で作られた尿がストーマからずっと流れています。

ストーマから出てくる尿をどうやって管理するの?

一日中休むことなく出てくる尿をどのようにして管理するのでしょうか?

ストーマ用の専用の袋(ストーマ装具)を直接ストーマの周りのお腹に貼って、排泄物を受け止めます。

ストーマ装具は、皮膚保護材という直接皮膚に貼り付ける板(面板)と、排泄物を受け止める袋で作られています。皮膚保護材の作用は、(1)皮膚に直接排泄物が付かないように、排泄物から皮膚を守る作用、(2)汗や排泄物の水分を吸収する作用、(3)皮膚に密着する作用などがあります。つまりは、皮膚を排泄物から保護したり、正常な皮膚の働きを維持する作用があります。装具には防臭効果や防水効果がありますので、臭いの発生や排泄物が漏れて衣服を汚すなどのトラブルはありません。装具を交換する時期は、一般的に週2〜3回になります。装具の交換までは同じ袋を何日か貼っておき、袋に排泄物が貯まったつど今までのようにトイレで出します。

ストーマ装具は、大きく分類すると面板とストーマ袋が一体になっているワンピース(単品系)装具と、面板とストーマ袋が分かれているツーピース(二品系)装具などいろいろな種類があります。ストーマ装具は、自分のストーマやお腹の形にあったものを選びます。排泄物の漏れや皮膚のかぶれなどで管理が上手くできない時は、自分に合うストーマ装具をストーマ専門の看護師に相談するといいでしょう。

夜間は、快適な睡眠を確保するためにも夜用のバック(蓄尿袋)を使用します。コロプラスト社の夜用のバック(蓄尿袋)は、足元に置くだけで尿が自然に流れます。ベッドの下に置く必要はありません。

(※他社の夜用のバックはベッドの下に置く必要があります。)夜用のバック(蓄尿袋)を繋げる際はズボンに切り込みを入れて、膝の上をテープで止めると管のねじれが解消されます。

尿路ストーマ 夜用バックの作り方
夜用のバック(蓄尿袋)

Chapter.2: 入浴について

入浴はどのようにすればよいのでしょうか?温泉にはどうやって入るの?

入浴する直前に、袋に貯まった尿を棄ててから入浴します。
装具には耐水効果がありますので装具を付けたまま、湯船につかっても漏れません。

装具交換しない日

風呂からあがった後は装具が濡れているため、タオルで良く水分をふき取ります。ストーマ袋に紙の布が付いているタイプの装具では、冬場などしばらく装具が湿っていることが ありますので、小さいタオルなどをしばらく装具に巻いておくとよいでしょう。

装具交換の日

入浴する前に、交換の準備をしておきます。

体をきれいに洗って十分に温まったら、風呂場で装具を剥がして装具の交換をします。

逆に冬場は、湯冷めしないように脱衣場をよく暖めてから入浴することをお勧めします。

入浴1〜2時間前から水分摂取を少しひかえると、交換時、あわてずに装具を貼ることが可能です。

温泉に行くときは!

装具が目立たないように、小さく折ってクリップやテープで固定し、タオルで前を隠すように入るとよいです。

このほか、肌色タイプのストーマ袋や入浴用パウチといって小さく目立たない装具もあります。

人が少ない時間を見計らって入浴するなどのほか、家族風呂などを利用するとよいでしょう。

Chapter.3: 装具の交換方法

1. 交換に必要な物を準備します。

  • 新しい装具 (ツーピースの場合はストーマ袋と面板を合わせておく。排泄口が閉じているか確認をする)
  • 石鹸
  • キッチンペーパー (ストーマやストーマ周囲の皮膚を洗うため)
  • ビニール袋(使用済み装具入れ)

2. 貼っている装具を剥がします。

皮膚と面板の間に指を入れ、皮膚を押さえるような形でゆっくり装具を剥がします。勢いよく剥がしてしまうと皮膚を傷つけてかぶれの原因となります。面板が剥れづらい場合は皮膚用リムーバーを使用します。皮膚と面板の間にしみこませながら剥がします。皮膚用リムーバーは、1回40滴くらいを目安にするとよいでしょう。


※これはモデルであって実際の人物ではありません。

3. ストーマの周りの皮膚をやさしく洗います。

ストーマの周りの排泄物をテッシュやキッチンペーパーで拭き取ります。よくあわ立てた石鹸でストーマの周りの皮膚を優しく洗いシャワーで流します。
石鹸が皮膚に残っていると、皮膚が荒れたり、装具がうまく貼りつかない原因となります。

4. よく皮膚を乾かします

洗った後は、乾いたキッチンペーパーで押さえ拭きして皮膚の余分な水分を取り除きます。
ドライヤーの使用は、皮膚や粘膜を傷めるため絶対に使用しないようにしましょう。

5.装具を貼ります。

お腹の皺やたるみを伸ばして装具を貼ります。面板は体温でくっ付く力が強くなりますので、装具を貼った後は2〜3分押さえると密着が良くなります。また、皺やたるみをきちんと伸ばして貼らないと尿漏れの原因となります。
この時、夏場は、汗をかいたまま装具を貼ると密着が悪くなるので、体のほてりが冷めるまで待ってから装具を貼ります。

装具の交換はどの位でしょうか?

交換の目安は各社の装具パンフレットに、毎日用や3〜5日用、7日用など表示されていますので参考にするとよいでしょう。個人によって発汗量や便の状態によって交換の個人差があります。排泄物が漏れずに貼れるだけでなく、排泄物から皮膚を保護できる自分にあった交換の間隔を決めましょう。

使った装具はどこに棄てるの?

装具はビニール扱いで廃棄します。それぞれの自治体により規定が異なります。
廃棄する際には、装具中の排泄物をトイレに流して、ごみ袋の空気をきちんと抜いて捨てましょう。

Chapter.4: 食事は何を食べればいいの?

ストーマを作ったからと言って、基本的に食べてはいけない食品はありません。ただし、健康を維持するために、バランスよく規則正しい食生活に心がけましょう。もしも、高血圧や糖尿病などで食事制限を行なっている場合は、そのまま食事制限を続ける必要があります。尿量が少ないと、尿路感染や尿路結石を生じやすくなります。そのため、1日の尿量が1500ml〜2000mlになるように水分をとるようにしましょう。
水分は食事の中にも含まれていますので、毎食、食事の他にお茶などを飲むだけで無理しなくても十分に足ります。ただし、心臓や腎臓などの病気で、飲水制限されている方は医師の指示に従ってください。
ビタミンCを多く含む食品は、尿を正常に保ち、尿臭を抑える効果があります。

尿臭いを抑える食品

グレープフルーツ、緑茶、クランベリージュース

Chapter.5: どんな洋服を着ればいいの?

特別ストーマを圧迫したり、こすったりしなければ、今までとおりの服装でかまいません。
ベルトがストーマにあたる場合は、サスペンダーを利用するとよいでしょう。ぴったりとした服装の場合は、袋が膨らんで目立つのではないか、排泄物が上手く袋に入っていかないのではないかと心配になるかもしれませんが、大丈夫です。
基本的に、お腹周りに手が入るゆとりがあれば着物やジーパン、ガードルなどを着ても大丈夫です。
今まで通りにおしゃれを楽しみましょう!

Chapter.6: 外出や旅行は?

常に、緊急時の対応に備えて装具一式を持ち歩く習慣をつけましょう。
持ち歩く装具一式は、装具1枚、不透明なビニール袋、アルコールの入っていない濡れテッシュ、乾いたテッシュ、下着1枚、服を抑える洗濯ばさみなどです。旅行に行く場合は、旅行日数分プラス2〜3枚少し多めに持っていくことをお勧めします。

海外旅行の心得

まず出発前に・・・

装具交換の準備
  • 旅行中に交換する回数よりも多めに装具を準備します。
  • 夜間用のウロバックも忘れずに!
    (ウロバックが大きくていやな場合は、旅行用にレッグバックを使用する。)
  • スーツケースと機内持込のバックに交換用具一式をいれます。
    スーツケースに装具を詰める場合は、破損しないように購入時の箱のままか、つぶれない箱に入れます。
  • 機内持込用には、濡れティッシュやビニールテープ、ビニール袋も忘れずに。緊急時の対応で、トイレの中での交換になっても対応できるようにします。また、すぐ使用できるように土手や切り込みも切って準備しておきます。
  • はさみは機内持込バックにいれないで下さい。
    (テロ以降警戒が厳しくなり没収されるため、スーツケースに入れて置く)
  • 機内の座席の希望をする。
    (身体障害者手帳と人工膀胱であることを説明すると、優先的にトイレの近くの座席や、足が伸ばせる座席を選べます。)

機内の中で・・・

  • 離陸、着陸時には、必ずトイレに行き排泄物を空にする。
    (機内は気圧調整があるため、突然離陸時にパウチ内が膨らむ可能性があります。)
  • 長時間機内にいる場合、心配な方はレッグバックを使用する。
    (エコノミー症候群予防のため、長時間のフライトでは多く水を飲みます。
    そのため、休息中、もしくは入眠中に何度もトイレにいきたくない場合にレッグバックを使います。)
  • 機内のトイレで排尿の匂いが気になる場合は、消臭スプレー(匂いを分解するタイプ)を持参する。

ホテル、現地で・・・

交換後の装具はビニール扱いで廃棄しますが、ホテルでは女性用の生理用くず入れに入れるとよいでしょう。この際、不透明なビニール袋もしくは新聞紙にくるんですてるとよいでしょう。

役に立つストーマ英語

人工膀胱 Urostomy
ストーマ Stoma
装具 Pouch
ストーマ保有者 Patient with Stoma/Ostomate

Chapter.7: どんなスポーツができるの?

基本的に柔道、レスリングなど激しく体をぶつけるスポーツ以外は可能です。
まずは手術後の体力に合わせて、散歩や軽いジョキングなどから始めるとよいでしょう。
腹筋やスクワットなど強い腹圧をかける運動はさけて下さい。

Chapter.8: 仕事や学校は?

退院してどのくらいで会社や学校に復帰するかは、個人差があります。基本的には体力が回復するのを待ってからですので、無理せず焦らずに、まずはゆっくり体力の回復に努めることが大切です。具体的には、退院後の日常動作から始めて、散歩程度の運動が楽に行えるようになれば、電車やバスなどの交通機関を利用して外出するなど少しずつ体をならしていきます。
可能であれば、出勤・通学時間に合わせて勤務先や学校まで行ってみるなど事前に練習することもよい方法です。

就学中の留意点

担任の先生と事前に連絡をとり、漏れた時の装具交換の場所を確保することや、ストーマ管理についての打ち合わせをしておくことが大切です。必要に応じて、医療者との連携をとることもあります。

Chapter.9: 性生活について

手術の方法によっては、男性では勃起障害、射精障害、女性では分泌物の減少による性交痛、開脚障害(足が開きにくい)などの性機能障害が見られる場合もあります。

機能障害の程度によっては、薬や手術で良くなることもあるので、主治医やストーマ専門看護師に相談してみましょう。この他、精神的にストーマを持つことに引け目を感じて、精力減退や性機能障害が起こる場合があります。性生活は単なるセックスだけではありません。日頃から、コミュニケーションを良くしてスキンシップを図り、お互いを思いやる気持ちで満足感を得ることもあります。

性交時の工夫

  1. ストーマ袋に貯まった排泄物は棄てる。
  2. 目立たない肌色や袋が小さい装具、パウチカバーなどを使用する
  3. 横向きや、後ろ向きになるなどしてストーマが気にならない体位をとる

Chapter.10: 装具はどこで買うの?

装具代は医療保険が適用されませんので、基本的には自己負担となります。永久的なストーマを作られた場合は、社会保障制度(社会保障の項参照)によって国から装具代が支給されます。装具の購入場所は、ストーマ装具専用の代理店で購入します。ストーマ専門の代理店は、退院時に病院や市区町村の福祉課で紹介します。

装具購入時には・・・

  1. 装具の会社名、製品名、製品番号で注文します。
  2. ストーマサイズや体重などが安定してきたら、3〜6ヶ月分まとめて注文してもよいです。しかし、製品には品質保障期間がありますので、買いすぎて古い製品がたまらないようにし、1年以内を目安に使いきることをお勧めします。
  3. 装具の管理は、高温多湿を避けた場所で保管しましょう。

Chapter.11: 災害に備えて

いつ発生するか予期できない震災に備えて、日頃から準備しておきましょう。

  1. 非常用持ち出し袋に2週間分の装具を入れておく。
    交換用の装具の他に、濡れテッシュやビニール袋を入れておくと便利です。また、近辺に住んでいる家族や親戚の家にも装具を2・3枚置かせてもらうと安心です。装具は、品質保障期限がありますので非常用袋に入れっぱなしではなく、年に1回は新しい製品と交換をしましょう。
  2. 使用中の装具の会社名、製品名、製品番号、ストーマサイズ、身体障害者手帳番号などをメモして非常用袋と一緒に入れるか、財布のなかに入れるようにしておきましょう。
    震災後は、精神的にもかなり影響を受けると考えられます。 とるものを取らずといった状況で非難してくる可能性もあるので、落ち着いて装具の注文や援助が受けられるように、メモをつくりましょう。

私のストーマ手帳をご利用ください

Chapter.12: 社会保障制度について

ストーマを作った場合に利用できる社会保障には、以下のものがあります。

  1. 身体障害者手帳
  2. 障害年金
  3. 医療費控除

身体障害者手帳

永久的なストーマを作った全ての方に、手術直後から身体障害者の内部障害4級が受けることが可能です。 身体障害者手帳が交付されると、世帯所得に応じて装具の支給(便:月8856円、尿:11300円分)、税金の控除や減額、交通運賃の割引などのサービスを受けることができます。

1ヶ月あたりの装具の給付額
人工膀胱の場合 約11,300円

身体障害者手帳の申請方法
  1. お住まいの地域の福祉事務所、もしくは区市町村役所に属する福祉課の窓口で、身体障害者手帳交付申請書と身体障害者診断書(膀胱・直腸用)をもらいます。
  2. 手術をした病院の指定医に、身体障害者診断書を記入してもらいます。
  3. お住まいの地域の福祉事務所、もしくは区市町村役所に属する福祉課の窓口で手続きをする。
    準備するもの
    1. 障害者手帳交付申請書
    2. 身体障害者診断書
    3. 写真(タテ4cm×ヨコ3cm)×2枚
    4. 印鑑
  4. 1〜2ヵ月後に身体障害者手帳が交付されます。この時に、交付券の申請を行います。交付券とは、装具を購入できるチケットで、一切お金は支給されません。
  5. ストーマ装具を購入している代理店に電話して装具代の見積書を取り寄せます。
  6. お住まいの地域の福祉事務所、もしくは区市町村役所に属する福祉課の窓口で手続きをします。
    準備するもの
    1. 交付券申請用紙
    2. 源泉徴収票または確定申告書
    3. 装具代の見積書
    4. 身体障害者手帳
  7. お住まいの地域の福祉事務所、もしくは区市町村役所に属する福祉課の窓口で、装具の交付券を発行してもらいます。
  8. 交付券に必要事項を記入して代理店に送り装具を購入します。

障害年金

国民年金に加入している方は障害基礎年金、厚生年金に加入している方は、障害厚生年金の支給を受けることが可能です。詳細は、国民年金については区市町村の国民年金課、厚生年金については社会保険事務所までお問い合わせください。

医療費控除

ストーマ装具の自己負担金は、医療控除の対象になります。
手続きは、ストーマ装具の使用証明書と装具代の領収書をそろえて税務署に提出してください。ストーマ装具の使用証明書は、購入先の代理店や病院でもらえます。

Chapter.13: 患者会

ストーマをもった方が集まってできた会です。
定期的に情報誌の発行や勉強会など情報交換がおこなえます。
また、災害時には装具の供給などについての情報や救護体制が受けられます。

問い合わせ先

全国版 社会法人 日本オストミー協会

〒124-0023 東京都葛飾区東新小岩1-1-1-901
電話03-5670-7681
https://www.joa-net.org/

当院の患者会 ガン研療友会

当院の患者会は日本オストミー協会の支部になっているので、入会されますと自動的に日本オストミー協会の会員になります。
年1回総会年3〜4回の懇談会で交流を深めている他、年に1回温泉旅行に行っています。
この会には、当院の医師やストーマ専門看護師も参加しています。

〒335-0021 埼玉県戸田市新曽799-7ワタナベ機設内(株)
電話048-441-0326

Chapter.14: 関連リンク

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