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診療科・部門紹介
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脳腫瘍外科

脳腫瘍外科

最終更新日 : 2024年4月26日

診療科の特徴|スタッフ紹介

2023年4月から脳腫瘍外科診療を行っております

宮北 康二
宮北 康二
脳腫瘍外科部長

脳腫瘍外科は2023年4月に新設された診療科です。これまで当院には脳神経を専門とした外科診療科がありませんでした。従いまして脳腫瘍の疑いで受診された方も、当院で治療経過中に転移性脳腫瘍を発症された方もそのほとんどが他施設に治療をお願いせざるを得ない状況でした。現在は頭蓋内に出来たすべての脳腫瘍を対象として治療方針を検討したうえで納得のいく治療を提供できるようにいたします。

脳腫瘍の分類は脳実質や脳を覆う膜、神経の鞘などから発生する原発性脳腫瘍と、他臓器のがんが脳に進展する転移性脳腫瘍に大別できますが、いずれの分野においてもなすべき治療を適切におこないたいと考えております。脳腫瘍の種類によっては当院での治療ではなく他の専門施設で治療を受けられる方がよいと判断することもあります。その際には本人とも相談をして適切な医療機関へ紹介をいたします。他病院で治療を受けられている方やこれから受ける方へのセカンドオピニオンも対応いたしますので遠慮なく話を聞きに、相談にいらしてください。

診療実績

脳腫瘍外科開設初年度、1年間の総手術件数は49件でした。内訳は下記の通りです。

  全身麻酔(43件) 局所麻酔(6件)
  膠腫 転移性 良性 生検術 脳血管障害
(院内発症)
その他 生検術 その他
2023年度 6 22 7 1 3 4 3 3

転移性脳腫瘍について

がん罹患者数は100万人、がん死亡者数は40万人を超え、治療経過中に10〜30%が脳への転移を指摘され、その30%以上が脳への転移が原因で亡くなるといわれています。がんの治療成績が改善するのはよいことですが結果として脳への転移も増加し、脳腫瘍外科の担う役割はさらに重要になってきております。転移性脳腫瘍の治療のこれまでは、大きさや個数によって手術の必要性を判断して、手術を行わなければ放射線治療のみを行うという方針でしたが、そのような時代は終わりました。もちろん手術治療、放射線治療の担う役割は今も重要でありますが、急速に発達している遺伝子診断とそれに伴う薬物療法の恩恵により、かつては無効とされていた薬物療法も改善されてきております。脳の転移巣を薬物で制御できる場合もありますので、原発巣を担当する各診療科の医師や放射線治療医と密に連携をして治療をすすめてまいります。緩和的治療を選択することが必要となる方もいるかと思いますが、今ある最善の治療を提供できるようにいたします。

原発性脳腫瘍について

脳実質から発生する原発性脳腫瘍、膠腫(グリオーマ)の治療も積極的に行っております。もちろん髄膜腫をはじめとした良性脳腫瘍の手術も行います。悪性腫瘍である膠腫が疑われるときは診断と腫瘍容積減量を目的に手術を行ったのちに放射線治療、薬物療法の両者もしくはいずれかを選択することとなります。診断によっては手術のみで経過を見ることもあります。

中枢神経に安全かつ確実な手術を行うためには、神経機能を正しく評価し、実際の手術ではナビゲーションシステム、脳波測定機器などを使用して神経機能の温存を図り、最大限の腫瘍切除に努めます。また覚醒下手術と呼ばれる脳機能を温存するために、手術中に話をしたり、手足を動かしたりしながら行う手術を行うこともあります。脳腫瘍外科の手術、特に覚醒下手術は、脳腫瘍外科医だけでは成り立つものではなく、麻酔科、リハビリテーション療法士、看護師、臨床工学技士等の協力によって初めて安全にできる手術であり、手術室が一丸となって行うものです。

切除組織はがん研有明病院の病理部(一部では国立がん研究センター中央病院の協力を得て)で遺伝子解析を含めた病理診断の検討を行い正確な診断のもと放射線治療、薬物療法を行います。膠腫の治療を行うに際しては、遺伝子診断なくして治療は進められない時代となっております。

全職種(チーム医療)での治療が大切です

脳腫瘍治療は、われわれ医師だけでできるものではありません。看護師は、家族構成(介護者)と神経機能にあわせた生活環境の確認と整備のための準備を行い、日々の治療や生活における注意点の確認などを行います。診療開始と同時にリハビリテーション療法士と神経機能の評価を行い、周術期におけるその維持、改善を図ることも重要です。薬剤師と一緒に薬物療法の注意点、問題点を理解していただき、栄養士により食事摂取の状況を確認して、嚥下状態に合わせた食事形態の選択も必要となります。放射線技師による適切な質の良い画像検査の提供や放射線治療科医とともに放射線治療を実施します。転移性脳腫瘍の方は原発巣(もともとのがん)の診療を行っている先生と状態を確認しながら協同して治療をすすめます。退院後の生活や社会復帰を視野にいれて、社会福祉士との相談もすすめながら治療を継続していきます。

全職員が一つとなって、より良い治療を提供できるように努力いたします。そして居住地である地域の先生方とも十分な連携を図りながら治療を進めたいと考えております。

脳腫瘍の治療について

脳腫瘍の治療をするためには、他の悪性腫瘍(がん)と同様にわれわれの持っている治療方法、治療のために使うことが出来る手段は大きく分けて三種類になります。一つ目は手術で、二つ目が放射線、三つ目が薬物でいわゆる抗がん剤となります。これらは脳腫瘍の診断がついたらすべて行わなければならないということではなく、またすべて行えば必ず効果があるということでもありません。脳腫瘍の正確な診断の後に、その脳腫瘍を治療するには放射線治療であればどの部位にどの程度の量(単位はグレイといいます)を、抗がん剤であれば何という薬剤をどの位の量、どの程度の頻度で使用するのかを決めます。従いましてまずはその病気が何であるのか、何という脳腫瘍であるのか、診断を決めることが大切で、そのためには病気である脳腫瘍を取ることによって、その病理組織を検査、分析して最終的な診断を決めることとなります。

腫瘍組織を取るということの目的のために手術を行いますが、手術の方法には大きく二通りあります。一つは全身麻酔の後に最低限の範囲で頭部の骨を一部はずして脳の中へ入り、そこにある脳腫瘍を切除します。この際に、周囲の脳が生活に必要な機能を要していない部位(非機能部位)であれば腫瘍を可能な限り切除します。原発性脳腫瘍も転移性脳腫瘍も手術後に腫瘍の残存が少ない方がその後の治療経過は良好といわれています。もう一つの方法は組織生検術と呼ばれ、局所麻酔と軽度の鎮静剤を使用して骨に直径15mm程度の穴をあけて、そこから腫瘍組織を採取してそれにより病理診断を決める手術です。深部に腫瘍が存在していて切除することの方が利益が少なかったり、その後の薬物療法と放射線治療が効果が高いことが予測される腫瘍(リンパ腫や胚細胞腫)であったりした時は、生検術を選択することとなります。

病理組織の診断結果の報告を受けるまでには、通常1〜3週間程度かかります。かつては顕微鏡で組織を観察するだけで診断をしていた時代もありましたが、今は遺伝子解析を行うことではじめて、正確な診断となることもあるために、診断確定まで時間を要することもあります。診断が決まれば、放射線治療行うべきか、薬物療法を行うべきか、両者を併用するかなどが決まり、その後の治療計画を提示できます。

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