がんに関する情報
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膀胱がん

膀胱がん

最終更新日 : 2023年5月2日
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がん研有明病院の膀胱がん診療の特徴

膀胱がんの治療は、筋層浸潤を有さない比較的早期のがんと、筋層浸潤を有する浸潤がん(浸潤性膀胱がん)に分けて考えられます。

当科では、特に浸潤がんに対する膀胱全摘術を数多く行っております。リンパ節転移を有する進行がんであっても、遠隔転移(肺、肝臓、骨など他の臓器への転移)がない場合には、積極的に根治を目指した治療に取り組んでいます。

浸潤性膀胱がんであっても、膀胱を温存できる可能性のある一部の患者さんに対して、抗がん剤の治療、放射線療法、手術を組み合わせた膀胱温存療法(低用量化学放射線療法併用膀胱部分切除)にも取り組んでおります。それぞれの患者さんの状況に合わせて、治療方針を提案いたします。

当科における筋層浸潤性膀胱癌の治療

・ダビンチXiによるロボット支援膀胱全摘除(回腸導管/新膀胱造設)

当院ではダビンチXiを使用したロボット支援下での膀胱全摘除を積極的に施行し、手術侵襲の軽減に努めております。全摘後の尿路変向法としては新膀胱造設もしくは回腸導管法が原則ですが、いずれにするかは患者さんの意向を尊重して決定しています。

・膀胱全摘術とは

手術は膀胱全摘除術といって、膀胱、前立腺、精嚢(精子を一時的に貯留する前立腺についている器官)、尿道を全て取る手術を行います。その際に膀胱につながる左右の尿管と、前立腺につながる左右の精管も切断します。その後、尿路変向といって膀胱の代わりに腸を使って尿をためる袋(新膀胱)や、体の外に尿を出す通路(回腸導管、尿管皮膚ろう)を作ります。

手術の時、同時にリンパ節郭清(リンパ管を介してがんがとびやすい骨盤内のリンパ節を採取すること)を行い、がんがリンパ節にとんでいないかどうかを調べます。新膀胱を作る場合や、患者さんの全身状態や病状によっては尿道を摘除しません。

膀胱の外にまでがんが広がっている場合、全身状態が良ければ先に抗癌剤治療を行ってがんを小さくしてから手術を行います。膀胱の筋層までにがんがとどまっている場合、抗がん剤を行わずに手術をしたり、状況に応じて抗癌剤を先に行ってから手術を行うことがあります。また、摘出した膀胱癌の広がり具合によって、術後に免疫治療や化学療法を追加することがあります。

ダビンチXiによるロボット支援下手術は開腹手術と比べて明らかに出血量が少ないことが分かっています。当科でも現在はほとんどの患者さんにロボット支援下手術を行っております。ただしこれまでにお腹の手術や放射線治療をしたことがあるなど、周りの臓器や組織と強くついている(癒着といいます)ことが疑われる時には開腹手術や他の治療法を提案することがあります。

膀胱全摘術に対する術後早期回復(ERAS)プロトコール

膀胱全摘術を施行する患者さんの術後早期回復を目指して2020年よりEnhanced Recovery After Surgery (ERAS)プロトコールを実施しております。具体的には薬剤師、栄養士、理学療法士、麻酔科、歯科、看護師など多職種と連携しながら術後の早期回復を目標に術前、術中、術後を通して患者さんに適切なケア(早期離床や食事再開、鎮痛管理など)を行うプロトコールです。これにより海外では入院期間の短縮や合併症の減少も報告されています [1]

筋層浸潤性膀胱癌に対する膀胱温存療法

筋層浸潤性膀胱癌でも、いくつかの適応基準を満たした患者さんは、膀胱温存療法が選択肢の1つになります。膀胱全摘除を治療方針として他院で提示された方も、当院で膀胱温存できた方も多くいます。セカンドオピニオン/診察に一度来院されて下さい。

当科における筋層非浸潤性膀胱癌の治療

経尿道的腫瘍切除術 (TUR-Bt) +/− 膀胱内注入療法

腫瘍の悪性度が低く、多発傾向の乏しい場合、TURおよび術後24時間以内の抗がん剤(ピラルビシン)単回注入療法とし、通常、その後の補助療法は行わずに経過観察をします。

腫瘍の悪性度が高いか、多発傾向の強い場合には、TURのあとでもう一度TURを行い削り残しや、筋層浸潤の見落としがないかを確認します。これをセカンドTURと呼びます。筋層への浸潤が否定されたならば、再発予防を目的として膀胱内にBCGという薬剤を注入する治療を行うことが一般的です(BCG膀胱内注入療法)。

膀胱がんの治療成績

 

 

膀胱全摘施行例におけるがん特異的生存率

pT1: 粘膜上皮下結合織に浸潤する腫瘍
pT2: 筋層に浸潤する腫瘍
pT3: 膀胱周囲組織に浸潤する腫瘍
pT4: 周囲臓器等に浸潤する腫瘍(前立腺間質、精嚢、子宮、骨盤壁等)
pN0: リンパ節転移を認めない
pN+: 所属リンパ節に転移を認める

※術前化学療法を施行した症例を含んでいます

  1. Wessels F, Lenhart M, Kowalewski KF, et al.Braun V, Terboven T, Roghmann F, Michel MS, Honeck P, Kriegmair MC. Early recovery after surgery for radical cystectomy: comprehensive assessment and meta-analysis of existing protocols. World J Urol. 2020; Dec;38(12):3139-3153.
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