大腸がんの化学療法と実績
大腸がんの化学療法と実績
化学療法とは薬を使った治療です。抗がん剤治療・薬物療法ともいわれます。
当院での大腸癌化学療法の特徴
- 長年、多くの大腸癌患者さんに化学療法を行ってきた実績があります
- 治療にあたるスタッフ医師は薬物療法専門医です
- 複数のスタッフが治療方針決定に参加しています
- 外科など他の専門医との緊密に連携し診療にあたります
- 医師・看護師・薬剤師・栄養士・ソーシャルワーカーなどがチームで患者さんを支えます
- 地元医療機関との連携を行い遠方でも安心して治療ができるように努めています
- 一般治療以外にも条件があえば新薬試験(治験)に参加できる可能性があります
- 患者さんへの親切な対応に心がけています
当科の診療実績
当院での実際
初診から化学療法開始への流れ
下記のような治療が選択されます。1次治療で点滴の場合は1週間ほど入院となることもあります。
当院での主な化学療法の内容
化学療法は初回化学療法(1次治療)からまず行い、効果がないもしくは耐性が生じた場合、2次、3次化学療法に移行していきます。以下に当院で主に施行される治療レジメンを記載いたします。
(* 状態により選択される治療)
1次化学療法
大腸癌の1次治療は、遺伝子変異・腫瘍の局在などを考慮して選択しています。初回治療は入院で、CapeOx以外は皮下にカテーテルを埋め込み(ポートといいます)行われます。以下に当院で行われる主な治療レジメンを記載いたします。
直腸・S状結腸・下行結腸 | 横行結腸・上行結腸・盲腸・虫垂 | |
RAS変異なし BRAF変異なし |
FOLFOX+セツキシマブ療法 | FOLFOX+ベバシズマブ療法 CapeOx+ベバシズマブ療法 |
RAS変異あり | FOLFOX+ベバシズマブ療法 CapeOx+ベバシズマブ療法 |
|
BRAF変異あり | FOLFOXIRI+ベバシズマブ療法 | |
MSI-high/dMMR | ペンブロリズマブ |
2次化学療法
初回治療の無効な場合、以下薬剤が選択されます。通院での点滴治療です。
BRAF変異なし | FOLFIRI+ベバシズマブ療法 FOLFIRI+ラムシルマブ療法 FOLFIRI+アフリベルセプト療法 |
BRAF変異あり | セツキシマブ+ビニメチニブ+(エンコラフェニブ) |
MSI-high/dMMR | ペンブロリズマブ/ニボルマブ/ニボルマブ+イピリムマブ |
3次化学療法以降
これまでの治療で使われていない薬剤から選択します。
RAS変異なし | パニツムマブ+(イリノテカン)(1次治療で未使用) トリフルリジン・チピラシル+(ベバシズマブ) レゴラフェニブ |
RAS/BRAF 変異あり |
トリフルリジン・チピラシル+(ベバシズマブ) レゴラフェニブ |
HER2陽性 | ペルツズマブ+トラスツズマブ |
2022年の主な治療導入件数
FOLFOX+ベバシズマブ療法 | 19件 |
CapeOx+ベバシズマブ療法 | 82件 |
FOLFOX+セツキシマブ療法 | 31件 |
FOLFOXIRI+ベバシズマブ療法 | 7件 |
FOLFIRI+ベバシズマブ療法 | 41件 |
FOLFIRI+ザルトラップ療法 | 5件 |
トリフルリジン・チピラシル+ベバシズマブ療法 | 58件 |
外来での化学療法
副作用のコントロールが以前より良好となったため、多くの化学療法は外来で可能となっています。より日常生活と治療が両立しやすくなってきています。
治療の効果
初回化学療法でがんの大きさ(CTでの断面積)が半分以下に小さくなる可能性が初回治療は10人中5−6人(奏効率50−60%)です。化学療法をしない場合に比べ生存期間の延長が見込めます。
一定の効果は認められますが、まだ満足できるものではありません。
新薬開発に力をいれています
当院では、条件が揃った患者さんにおいて、通常の治療以外に新薬の臨床試験(治験)の参加をお勧めすることもあります。新規薬剤の臨床試験(医師主導治験や、医師主導臨床試験)も増えています。詳しくは担当医にお尋ねください。
よくある質問
主な薬剤はどのようなものがありますか?
大腸癌の化学療法に使われる薬剤は主に11種類あります。
- フッ化ピリミジン系:(S-1、カペシタビン、5-FUなど)
- プラチナ系(オキサリプラチン)
- イリノテカン
- ベバシズマブ
- ラムシルマブ
- アフリベルセプト
- トリフルリジン・チピラシル
- レゴラフェニブ
- ビニメチニブ+(エンコラフェニブ)
- ペルツズマブ+トラスツズマブ
- ペンブロリズマブ/ニボルマブ/ニボルマブ+イピリムマブ
化学療法を受けるためにはどれほどの体力が必要ですか?
おおまかに下記の程度の体調が化学療法を受けるためには必要です
- 食事が十分に摂取でき、外来通院が可能な体力。
- 採血結果で骨髄や肝臓・腎臓機能など主要な臓器機能に大きな異常値を認めない。
- 手術の影響やこれまでの副作用が落ち着いている。
- その他の病気(糖尿病、高血圧、心疾患など)が落ち着いている。
元気な人程化学療法は効果がでやすいとされており、体力や内臓の機能が保たれていることが重要です。状態が悪い場合は、副作用を伴う化学療法を行うよりも症状を和らげる緩和治療を主体に行った方が良いとされています。