がんに関する情報
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内視鏡治療と成績

内視鏡治療と成績

最終更新日 : 2020年5月18日

食道表在がんの内視鏡的治療

食道におけるEMRの代表的な手法の1つに透明プラスチックキャップを用いたEMR( Endoscopic Mucosal Resection-using a Cap fitted endoscope; EMR-C)法があります。病変が小さい場合に用いられる治療法で、簡便、短時間に安全かつ確実なEMRが可能な方法です。ただし、この方法では大きい(広範囲な)病変を一括して切除することができないことが難点です。大きい病変に対しては、ESD(Endoscopic submucosal dissection; 内視鏡的粘膜下層剥離術)法で治療を行われており、当科でも症例に応じて選択しており、多い年では90%以上の症例で行われています。ESD法は、食道がんに対しては、2008年4月に保険収載され、それ以来、10年以上経過していますが、手技に伴う偶発症および合併症の危険性は0(ゼロ)にはならないのが現状です。より安全な手技を行うために、当科では日々、研鑽を積み治療を行っています。

また、より広範囲の病変を切除した際には、創傷治癒過程において瘢痕狭窄(管腔が狭くなること)が生じ、嚥下障害をきたしてしまう場合があります。当科ではステロイドを用いた瘢痕狭窄予防を行っており、良好な成績を得ています(狭窄の割合が、予防以前の1/2以下になりました)。また、亜全周切除などの広範囲切除後は、ステロイド局所注射療法に加えてステロイド内服療法を行い、狭窄予防に努めています。

EMR(EMR-C)法の実際

  1. 食道表在がんは、通常観察では淡い発赤面として見えます(図1・矢印)。
  2. 食道がんは、ルゴール(ヨード)を撒布することにより、ヨードで染色されない不染帯として、病変の範囲がより明瞭となります(図2・矢印)。
  3. ヨード不染帯を指標にして、病変の周囲に切除すべき範囲の印付け(マーキング)を行います(図3)。
  4. 次に、病変下に生理食塩水を注入(局所注射;局注)して病変を膨隆させ(図4)、内視鏡の先端に取り付けた透明な筒(Cap)に膨隆させた病変を吸い込み、基部をスネアと呼ばれるワイヤーで絞扼します(図5)。
  5. 絞扼後、高周波電流で通電切除します。
  6. 切除後の食道粘膜には人工的な潰瘍ができます(図6)。潰瘍周辺には最初につけたマーキングはなく、目的の病変が完全に切除できたことがわかります。また、切除標本をヨード染色すると、病変を肉眼的に確認できます(図7)。
  7. 切除後に、この標本を病理組織学的に調べ、病変の拡がりや深達度を診断し、追加治療が必要か否かを決定します。

ESD法の実際(図1.〜6.)

当院では,主にSBナイフ(住友ベークライト社製)やITナイフnanoおよびDualナイフ(オリンパス社製)を用いて行っています。SBナイフを用いた切除手技の実際は以下の通りです。

  • 図1. 通常観察像です。病変は発赤面として認識されます。
  • 図2. ヨード染色後に切除範囲にマーキングを行います。
  • 図3. 生理食塩水で2倍に希釈したヒアルロン酸ナトリウム液(ムコアップ○R)を用いて、マーキングの外側近傍に 局注を行い、針状メスおよびSBナイフで粘膜切開を行います。
  • 図4. 粘膜切開を病変の全周に行ったのちに、粘膜下層に局注を追加します。引き続きSBナイフで粘膜下層を把持 して、高周波電流を流して剥離します(粘膜下層剥離)。
  • 図5. 切除後の人工的な潰瘍です。出血や穿孔などの偶発症なく手技が終了しました。
  • 図6. 切除後の標本です。ヨード染色を行い病変範囲の確認を行います。その後、病理組織学的検索を行います。

広範囲切除後の狭窄予防法の実際(ステロイド局所注射療法)(図1.〜4.)

ESD法による切除範囲が広範囲におよんだ場合には、切除後の人工的な潰瘍底にステロイド(トリアムシノロン)液を局所注射し、狭窄予防を行う方法です。

  • 図1. ヨード染色を行い、切除範囲にマーキングを行います。
  • 図2. ESD後の人工的潰瘍。切除範囲が約5/6周性と広範囲な粘膜欠損となっています。
  • 図3. ESD後の人工的潰瘍の辺縁および潰瘍底にステロイド液を膨隆ができる様に局所注射します。
  • 図4. ESDより6ヶ月後の内視鏡像です。狭窄なく治癒しています。

当科の内視鏡治療における特色

  • 内視鏡治療症例
    年間約250件を超える内視鏡治療症例があります。 また、治療後の合併症(予防も含め)にも症例経験に基づき対応が可能です
  • 食道治療チームが独立
    食道内視鏡治療チームが独立しており,同じスタッフが,ほぼすべての内視鏡治療に携わっています.チーム内での情報共用も十分になされており,迅速な対応が可能です。
  • 治療困難例にも対応
    部位的に手技が困難な食道入口部の症例や放射線照射後の再発症例,また 異時性多発症例における瘢痕合併症例などの治療困難例に対しても適切な治療を提供しています。
  • 食道カンファレンス
    内視鏡医だけではなく、腫瘍内科医、消化器外科医および放射線治療医が週1回集まり、合同で検討会(食道カンファレンス)を開催し、治療方針を決定しています。また,内視鏡部門においても,さらに詳しく検討を加えています。
  • 臨床研究
    日本臨床腫瘍研究グループにおける研究への積極的な参加だけではなく、当科主体での研究も積極的に行い、先進的な医療開発に貢献しています。

治療成績

最近5年間の内視鏡治療症例数です。近年は、総数では年間250件を超えています。
また、多い年では、ESD法の割合が90%以上を占めています 。

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