がんに関する情報
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卵巣がん

卵巣がん

最終更新日 : 2025年6月19日
外来担当医師一覧

がん研有明病院の卵巣がん診療の特徴

がん研有明病院 婦人科では、化学療法部や放射線治療部と連携し、患者さんの状況に応じた最適な治療方針を決定する集学的治療を提供しています。

診療の特徴

  • 個別化治療:患者さんごとのがんの特徴・身体的状況・精神的状況・希望に応じた治療を実施。
  • 正確な診断に基づく治療:細胞診・組織診を活用し、的確な診断と治療方針を決定。
  • 治療後の検診・フォローアップ:再発の早期発見に努める。
  • QOL(生活の質)の向上に配慮:
    • 内分泌・骨外来(骨粗鬆症対策)
    • リンパ浮腫予防外来(むくみ・血流障害のケア)
    • 帽子クラブ(抗がん剤治療に伴う脱毛対策)

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卵巣がんについて

卵巣がんとは

卵巣がんにはいくつかの種類がありますが、特に「上皮性卵巣がん」は40〜60代の女性に多く発生します。

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卵巣がんの症状

  • 初期はほとんど自覚症状がない ため、進行してから発見されることが多い。
  • 腫瘍が大きくなると腹部の膨満感・圧迫感が出現。
  • 腹水が増えると、お腹の張りや呼吸困難を伴うこともある。
  • 卵巣腫瘍の茎捻転・破裂による急激な腹痛が起こる場合もある。

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卵巣がんの治療法

卵巣がん(上皮性卵巣癌)は、婦人科がんの中でも最も化学療法(抗がん剤治療)の感受性が高く、その治療は"手術療法と化学療法の組み合わせ"によって形成されます。初診時の進行期(腫瘍の広がり)が重要で、これによって治療法が大きく異なります。

T期(卵巣に限局)卵巣がんの治療

  • 手術が基本治療。
  • 子宮全摘・両側付属器切除・大網切除・骨盤リンパ節・傍大動脈リンパ節郭清を実施。
  • 腹水細胞診を行い、がんの転移有無を評価。
  • 術後の抗がん剤治療が必要かどうかは、がんの拡がりや細胞診の結果に基づき判断。

U期(骨盤内に広がる)卵巣がんの治療

  • 手術に加え、がんが広がっている部位の切除を実施。
  • 腸管・膀胱の一部を合併切除するケースもあり、術後の回復を考慮しながら治療を進める。
  • ほぼすべての症例で 術後の化学療法が必要となる。

V期(上腹部またはリンパ節に広がる)卵巣がんの治療

  • 腹膜播種(腹腔内に広がるがん)やリンパ節転移があるケース。
  • 最大残存腫瘍径を1cm未満に抑える「optimal surgery」を目指す。
  • 手術と化学療法を組み合わせ、他臓器合併切除も積極的に実施。
  • 腹腔鏡手術で術前評価を行い、化学療法後に完全切除を目指す場合もある。

W期(遠隔転移を伴う)卵巣がんの治療

  • V期と同様の治療戦略を取り、化学療法と手術を組み合わせた治療を実施。
  • 遠隔転移がある場合でも、可能な限り病変を切除し腫瘍量を最小限に抑えることが予後改善につながる。

 

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卵巣がんの最新治療と遺伝子検査

維持療法の導入

  • PARP阻害薬(オラパリブ・ニラパリブ
    • がん細胞のDNA修復を阻害し、がんの増殖を抑える。
    • BRCA遺伝子変異や相同組換え修復欠損がある患者に有効。
    • 副作用として吐き気・貧血・疲労感などが報告されている。
  • ベバシズマブ(血管新生阻害薬)
    • がん細胞の血管形成を阻害し、がんの成長を抑制。
    • 副作用として高血圧・タンパク尿・消化管穿孔などがあるため、慎重に投与。

遺伝子検査の活用

  • BRCA遺伝子検査(BRACAnalysis)
    • 卵巣がん患者全員が対象。
    • 生まれつきのBRCA遺伝子変異がある場合、発症リスクが高い。
  • 相同組換え修復欠損(HRD)検査(myChoice診断)
    • がん細胞のDNA修復能力を評価し、PARP阻害薬の適応を判断。

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卵巣がん治療のまとめ

  • 初期(T・U期)では手術を中心とし、術後のリスクに応じて抗がん剤を検討。
  • 進行期(V・W期)では手術と化学療法の組み合わせが基本。
  • 「最大限の腫瘍切除」が予後の改善に直結するため、当院では多科連携で積極的な手術 を実施。
  • 遺伝子検査を活用し、適切な維持療法を選択。

卵巣がんの治療に関して、ご不安なことがあれば、がん相談窓口までお気軽にご相談ください。

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遺伝性乳がん卵巣がん

BRCA1遺伝子とBRCA2遺伝子は、誰でも持っている遺伝子ですが、そのいずれかに生まれた時から「がん発症と関係する変異」を持っていることを遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC; Hereditary Breast and Ovarian Cancer)と言います。卵巣がんの約10-15%の患者さんはHBOCであると言われています。また、生まれながらにBRCA1 又はBRCA2 遺伝子に「がん発症と関係する変異」を有する場合、乳がん及び卵巣がんを発症するリスクが非常に高くなり、70 歳までに乳がんを発症するリスクはBRCA1遺伝子変異46-57%、BRCA2遺伝子変異で38-84% 、卵巣がんを発症するリスクはBRCA1遺伝子変異で39-63%、BRCA2遺伝子変異で16.5-27% まで上昇するといわれています。

BRCA遺伝子の検査は血液検査(BRACAnalysis)で行います。BRACAnalysisを保険で施行できるのは以下のような患者さんです。

  1. 乳がんを発症している患者さんで45歳以下の方、60歳以下でトリプルネガティブ乳がんの方、2個以上の原発性乳がんの方、第3度近親者内に乳がんまたは卵巣がん発症者が1名以上いる方
  2. 卵巣がん・卵管がん・腹膜がんにかかったことのある方
  3. 男性乳がんの方
  4. PARP 阻害薬使用の適格基準を判断する場合。腫瘍組織の検査で、BRCA1 または/ かつBRCA2 遺伝子のがん発症と関係する変異を保持していると疑われる場合

2020年4月から、HBOCと診断された乳がん患者さんのサーベイランス、リスク低減卵管卵巣摘出術(risk reducing salpingo-oophorectomy:RRSO)には健康保険が適用されています。当院でも臨床遺伝医療部を中心にHBOCの診療を行っており、乳腺外科や婦人科が参加するHBOCカンファレンスを定期的に行っております。RRSOは婦人科で対応をしており、年間30-50例程度の実績があります。乳腺外科や形成外科との合同手術も可能です。HBOC患者さんの診療に関して詳しくは臨床遺伝医療部のホームページをご参考ください。

 

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