がんに関する情報
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胆道がんの手術と成績

胆道がんの手術と成績

最終更新日 : 2019年4月24日

胆道にできるがんは肝臓内から胆汁の流れの順番に@肝内胆管がん、A肝門部領域胆管がん、B遠位側胆管がん、C胆嚢がん、D十二指腸乳頭部がん(Vater乳頭部がん)、ならびに広い範囲の胆管に広がる、E広範囲胆管がんに分類されます。胆道癌の手術は一般に難しいと言われております。その理由として解剖が複雑である、肝・膵臓といった血流豊富な臓器を共に切除する必要がある、病変の発生部位によって術式が変わってくる、などがあげられます。ここではそれぞれのがんに対する手術方法について解説します。

胆道癌の手術

@肝内胆管がん

肝内胆管がんは特異的な症状がなく、比較的大きな腫瘤となってから見つかることが多い疾患です。肝臓を半分前後切除する、右肝切除や左肝切除を選択することが多くあります。胆管の左右合流部を巻き込んでいる場合は次に解説するA肝門部領域胆管がんと同じような術式となります。

肝内胆管がん

A肝門部領域胆管がん

胆管がんの中で最も発生頻度が高いのが肝門部領域です。ここは肝内の胆管が集まり1本になって肝外に出てきます。いわゆる『扇のかなめ』のようなところです。

肝門部領域胆管がん

そのため、肝門部領域胆管がんでは病変(扇のかなめ)をまわりの肝臓ごと切除する術式になります。病変の拡がりによって肝切除術式が決まりますが、8〜10時間かかる手術になります。術式によって肝臓の60〜70%を切除する場合もあります。また胆管の周りには肝臓に流入する肝動脈、門脈といった重要な血管があり、がんの浸潤を受けている場合は血管の合併切除を行います。

肝門部領域胆管がん

B遠位側胆管がん

がんが肝臓と膵臓の間の中部胆管にできた場合は、左図のように、胆管を一部だけ取る手術(胆管切除)が可能です。しかし、多くのがんは見かけよりも拡く進展していることが多く、この手術を行う頻度は少ないのが現状です。胆管は肝臓の外に出てきた後、膵内に入り(膵内胆管ともいう)最終的に十二指腸乳頭部に行きつきます。十二指腸乳頭部がんも含め、多くの遠位側胆管がんに対する手術は膵頭部、十二指腸ごと切除する膵頭十二指腸切除を行います。この手術も6〜8時間かかる大手術のひとつです。

遠位側胆管がん

C胆嚢がん

胆嚢がんだけでも小さな手術から大きな手術まで幅広くあります。早期の胆嚢がんの場合、胆嚢のみ切除する術式で済みますが、周囲臓器への進展度合いにより胆嚢と肝臓の一部の切除、または肝門部領域胆管がんのような拡大手術まで行う必要があります。

胆嚢がんの基本術式

D十二指腸乳頭部がん

多くの場合、遠位側胆管がんと同様、膵頭十二指腸切除術を行います。

E広範囲胆管がん

また数は少ないですが、広く進展している胆管がんや胆嚢癌の一部では肝臓と膵臓をまとめて取ってくる手術があります。これは腹部手術の最大もので12時間以上かかります。

広範囲胆管がん

肝門部領域胆管がんの周術期管理

胆道がん手術は大手術であり、患者さんにかなりの負担をかけます。また複雑な再建、大量肝切除・膵切除など重症合併症がおこりうる術式です。過不足ない手術を行い、無事に元気に退院してもらうために、がん研有明病院では術前から様々な取り組みをしております。

1. 術前管理

がんを確実に切除するためには確実な診断が必要です。また胆管がんは黄疸で発症することが多く、肝機能が悪化します。まずは適切な温存肝への胆道ドレナージを行うことが重要です。当院の経験豊富な画像診断医、胆膵内視鏡医と綿密な連携を取り、チームとして術前管理を行います。

肝門部領域胆管がんの周術期管理

2. 胆道ドレナージ

肝門部領域胆管がんの肝切除は全体の60〜70%を切除するため、黄疸のある肝臓を正常化しておく必要があります。そのためには黄疸を取る処置(胆道ドレナージ)を行わなければなりません。現在、わが国では内視鏡的胆道ドレナージが主流です。2014年ころまではドレナージチューブを鼻から出す経鼻胆道ドレナージを主に採用しておりましたが、2015年以降は胆管内に短いカテーテルを埋め込む『Inside-stent』を使用し、患者さんの負担を少ないものにしております。まだ全国的に標準治療ではないため、2017年からは安全性・有効性を確認する臨床試験として使用しております(UMIN試験ID:000025463)。

3. 門脈塞栓術

術後最大の合併症は大量肝切除後の肝不全です。この予防に切除側の肝臓の門脈血流を落し、予定温存肝を肥大させておく門脈塞栓術を行っています。これは肝の再生能力を利用したものです。門脈塞栓後2〜4週間待機し、予定温存肝を10%ほど大きくしてから手術に臨みます。

肝門部領域胆管癌に対する述前処置

肝門部領域胆管癌に対する述前処置 門脈塞栓術

4. 栄養管理、体力強化、術後リハビリ

胆管がんの患者さんは黄疸のため食欲が落ち、また病院受診後は胆道ドレナージや各種画像検査で食事摂取が制限されることがあり、どうしても栄養不足や体力の低下が起こります。大きな手術を乗り越え退院していただくためには術前の状態をできるだけ改善させることが重要です。がん研有明病院では外科医、看護師だけではなく、腫瘍精神科、疼痛コントロールチーム、栄養士、リハビリ科、歯科チームなどそれぞれの専門科と連携し、病院を上げてこの難治がん治療に立ち向かっております(通称ペリカン)。肝門部領域胆管がんをはじめとする胆道癌手術後でも、病気になる前と同じような生活を送っていただくことが目標です。

シンバイオティクスペリカン

胆道がんの術後合併症

胆道癌手術は拡大肝切除・胆管切除、膵頭十二指腸切除など複雑で長時間かかる手術が多くあります。残念ながら臓器の特徴により術後合併症が発生する割合も胃手術、大腸手術など腹部のほかの臓器の手術に比べ多いと言わざるを得ません。重要なことは合併症をできるだけ起こさないように術前から準備すること、また合併症が発生した場合の早期発見・早期対処であります。がん研有明病院では前述したように周術期管理チーム『ペリカン』のプログラムをはじめ、24時間体制で術後管理を行っております。また膿瘍ドレナージ、術後出血などに対する迅速なIVR対応、重症化した場合の集中治療専門医、ICUも備え、常時専門科と連携を取れる体制を整えております。胆道癌における代表的大手術、肝切除・胆管切除(Hx)、肝膵同時切除(HPD)、膵頭十二指腸切除(PD)の過去7年間の術後合併症を表に示します。

胆道癌(胆管癌、胆嚢癌)切除後の合併症(2010〜2016)

  因子 Hx HPD PD
n = 91 n = 24 n = 55
年齢、歳 71 (38-85) 71 (38-80) 71 (34-86)
性差、男性:女性 66 : 25 12 : 12 20 : 35
Body mass index, kg/m2* 21 (15-30) 23 (17-27) 22(16-32)
疾患、胆管癌(%) 83 (91) 18 (75) 51 (93)
手術時間、分* 582 (425-914) 661 (569-913) 497 (309-768)
出血量、g* 893 (330-5750) 1137 (550-3370) 515 (50-2150)
肝切除、右側:左側 47 : 44 19 : 5
血管合併切除(%) 31 (34) 6 (25) 4 (7)
手術関連死亡(%) 3 (3) 0 (0) 3 (5)
重症合併症(%) 25 (27) 10 (42) 13 (24)
腹腔内感染症(Organ/space SSI) 34 (37) 18 (75) 33 (60)
胆汁漏 23 (25) 3 (13) 3 (5)
肝不全 21 (23) 7 (29) 2 (4)
菌血症 14 (15) 4 (17) 6 (11)
創感染(Incisional SSI) 11 (12) 8 (33) 17 (31)
膵液瘻(Grade B, C) 10 (11) 10 (42) 27 (49)
胃排泄遅延 9 (10) 11 (46) 13 (24)
腹腔内出血 9 (10) 2 (8) 4 (7)
術後入院期間、日* 30 (13-158) 51 (22-97) 34 (16-127)

以上のように、胆道がんの外科治療は術前、手術、術後すべてが大切です。手術は高度な技術を必要とします。胆道がん手術に慣れた外科医、それに加え胆膵内科、IVR、ICUなど病院の総合力が備わっている施設での治療をお勧めします。

2010年から2017までの8年間に行った胆道がん切除手術件数と胆道がんの手術後の生存率を示します。

 

胆道がん切除件数

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