がんに関する情報
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膵神経内分泌腫瘍

肝胆膵外科におけるロボット手術

最終更新日 : 2025年6月23日

*待機状況次第では連携施設をご紹介し、速やかに治療を提供する様に調整します。

がん研有明病院の膵神経内分泌腫瘍診療の特徴

がん研有明病院の膵神経内分泌腫瘍診療の特徴

  1. チーム医療
    肝胆膵内科、肝胆膵外科、画像診断部や病理部などを含めた“チーム肝胆膵”として患者さんに適した治療を考え、提供します。特に内科と外科は同じ病棟に勤務しており、常に情報交換しながら診療を行っています。
  2. 診断、治療
    当院では、初診後、進行度をはじめとする全身状態の評価を速やかに行い、治療法を検討します。適宜チーム肝胆膵で治療法を検討し、患者さん一人一人に対して最適と考えられる治療を提供します。
  3. 研究と臨床の架け橋
    がん診療の向上のために、患者さんの自主的なご協力による臨床研究は不可欠です。診断・治療にあたるとともに、同意の頂けた患者さんに関しては、新しい治療法や手術手技などの臨床研究も積極的に行っています。

神経内分泌腫瘍の治療の実績

内科診療の実績

  1. 神経内分泌腫瘍に対する内科治療
    2015年から2024年までに当科で担当した神経内分泌腫瘍に対する内科治療の導入件数の推移を示します(高分化型NETに対する併用療法はそれぞれでカウントしています)。高分化型NETに対しては、2022年より放射線核種標識ペプチド治療(PRRT)を導入しています。また、当院も参加した国内多施設の臨床試験の結果を受けて、2024年以降、エベロリムス+ランレオチド併用療法を積極的に行っています。

神経内分泌腫瘍についての知識

神経内分泌腫瘍とは

神経内分泌腫瘍は、主に神経内分泌分化を特徴とする稀な上皮性腫瘍であり、様々な臓器に発生する可能性があります。本邦における膵臓・消化管由来神経内分泌腫瘍の発生頻度は10万人あたり3.53人であり、発生部位としては直腸が半数を占め、続いて膵、胃の順に多いとされています。好発年齢は60-70歳代であり、全体の約65%を占めます。性別による差はないと考えられています。診断時、半数以上の患者さんは無症状であり、健康診断や偶発的に発見されることが多いとされています。

神経内分泌腫瘍の一部は遺伝性疾患との関連が指摘されており、多発性内分泌腫瘍症1型、von Hippel-Lindau(フォン・ヒッペル・リンドウ)病、神経線維腫症I型に合併する事が知られています。これら遺伝性疾患は、若年発生、多発性腫瘍等の特徴があります。

症状

膵神経内分泌腫瘍は機能性と非機能性に大別されます。機能性腫瘍は特定のホルモンを過剰に分泌し、それにより特徴的な症状を引き起こします。

以下に代表的な機能性腫瘍の概要をお示しします。

  • インスリノーマ
    インスリンを過剰産生する腫瘍です。低血糖発作を起こし、動悸、発汗、震え、意識障害等の症状が出現します。
  • ガストリノーマ
    ガストリンを過剰産生する腫瘍です。消化性潰瘍を合併し、胃部不快感や胸やけ等の症状が出現します。
  • グルカゴノーマ
    グルカゴンを過剰産生する腫瘍です。高血糖、貧血、体重減少や壊死性遊走性紅斑という特徴的な発疹が出現する事があります。
  • VIPオーマ
    VIPを過剰産生する腫瘍です。大量の水様性下痢が出現し、それに伴う低カリウム血症などの電解質異常を合併します。

非機能性腫瘍では、ホルモンの過剰産生に伴う症状は認めません。腫瘍が増大した際に、全身倦怠感、食欲低下、疼痛などの症状を自覚する事があります。

診断

膵神経内分泌腫瘍は、健診や他疾患の検査目的に行われた超音波検査や造影CT検査により比較的小型で発見されることも多く、1cm以下の場合は、疑い病変のまま、経過観察されることもしばしばあります。
確定診断には、超音波内視鏡下穿刺吸引生検(EU−FNA)が行われ、採取した腫瘍組織を病理組織学的に評価することよって治療方針が検討されます。

治療方針の検討に当たっては、造影CTやMRIによる局進展度および転移の検索のほか、ソマトスタチン受容体シンチグラフィー(SRS)により、腫瘍にソマトスタチン受容体の発現検索も重要です。

膵神経内分泌腫瘍の病期分類には、UICCによるTNM分類が用いられます。

TNM分類では、下記3つの要素を元に、病期を決定します。

  • T分類
    原発腫瘍の大きさ及び周囲への浸潤の程度を元に分類します。
    T1:腫瘍が2cm以下で膵臓に限局している
    T2:腫瘍が2cm以上かつ4cm以下で、膵臓に限局している
    T3:腫瘍が4cm以上または膵臓の外側への局所的な浸潤があるが、
    大血管(腹腔動脈や上腸間膜動脈)への浸潤はない
    T4:腫瘍が隣接する臓器(胃、脾臓等)または大血管に浸潤している
  • N分類
    所属リンパ節転移の有無を元に分類します。
    N0:所属リンパ節転移なし
    N1:所属リンパ節転移あり
  • M:遠隔転移の有無
    M0:他臓器や所属外リンパ節への転移なし
    M1:他臓器や所属外リンパ節への転移あり

TNM分類に基づく病期分類

病理組織学的分類

膵神経内分泌腫瘍は、消化管由来の神経内分泌腫瘍と共に、WHO分類2019に基づいて分類されます。この分類は腫瘍増殖率(有糸分裂数またはKi-67標識指数) を基にしており、この数値が高い程、腫瘍の増殖スピードが速いことを意味します。

WHO分類2019では高分化型のNET-G1、G2、G3及び低分化型のNEC-G3の4つに分類されています。

WHO分類2019

NETの治療

手術療法

転移がない場合や、転移があっても完全に切除が可能と考えられる場合には、手術が行われます。手術については、膵がんの項を参照ください。

薬物療法

遠隔転移等の進行した状態では、一般的に薬物療法を行います。患者さん一人一人の体調やWHO分類に基づく腫瘍状況に合わせ、適切と考えられる薬剤を使用します。以下に主な薬物治療の概要を説明します。

  • ソマトスタチン製剤
    ソマトスタチンはその受容体を介して腫瘍に直接作用し、細胞死を誘導する他、IGF-1などの腫瘍増殖因子の合成及び産生を阻害します。 また、血管新生阻害作用を有するため、間接的な腫瘍増殖抑制効果も期待されます。薬剤名はランレオチドで、ソマトスタチン受容体との高い親和性を有するソマトスタチンアナログ(合成ペプチド製剤)になります。
  • 分子標的薬
    本邦ではエベロリムス、スニチニブの2種類が使用されています。
    エベロリムスは腫瘍増殖に関与するmTOR経路を阻害する事で抗腫瘍効果を発揮する分子標的薬です。最近の臨床研究の結果、ランレオチドと組み合わせて使用する事により、より高い抗腫瘍効果を発揮する事が報告されています。
    スニチニブは血管内皮増殖因子受容体と血小板由来増殖因子受容体を阻害することで抗腫瘍効果を発揮する分子標的薬です。
  • 細胞障害性抗がん薬
    本邦ではストレプトゾシンがこれまで広く使用されてきました。この薬剤は、がん細胞の増殖過程の初期段階に効果を発揮し、腫瘍増殖を抑えます。ストレプトゾシンは他の細胞障害性抗がん剤と併用することでより高い抗腫瘍効果を発揮することが報告されており、5-FUは最もよく選択される薬剤の一つです。
  • 放射線内用療法(ルタテラ)
    放射線内用療法は、放射性医薬品を体に注入し、体の中から放射線を照射する治療法です。神経内分泌腫瘍ではペプチド受容体放射線核種療法(PRRT)が承認されています。本治療は、ソマトスタチン受容体に結合するソマトスタチン類似物質に、β線及びγ線を放出するルテチウム-177という放射性物質を結合させた薬剤(商品名:ルタテラ)を使用します。腫瘍細胞のソマトスタチン受容体を介し、細胞内部から腫瘍に傷害を与え、抗腫瘍効果を発揮します。

NECの治療

NECは増殖速度の速い腫瘍で、診断時には既に進行した状態であり、多くの場合で薬物療法が選択されます。NECは細胞障害性抗がん薬である白金製剤(シスプラチンやカルボプラチン)が主に選択されます。白金製剤はがん細胞のDNA複製を阻害し、細胞死を誘導する事で抗腫瘍効果を発揮します。イリノテカンやエトポシド等、他の抗がん薬と併用して投与されます。

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