がんに関する情報

胃がんの化学療法と成績

最終更新日 : 2015年6月30日

化学療法とは薬を使った治療です。抗がん剤治療・薬物療法ともいわれます。

このページのTOPへ

当院での胃癌化学療法の特徴

  • 長年、多くの胃癌患者さんに胃癌化学療法を行ってきた実績があります
  • 治療にあたるスタッフ医師は薬物療法の学会認定専門医です 
  • 主治医の独断でなく複数のスタッフが治療方針決定に参加しています
  • 外科など他の専門医との緊密に連携し診療にあたります
  • 医師・看護師・薬剤師・栄養士・ソーシャルワーカーなどがチームで患者さんを支えます
  • 地元医療機関との連携を行い遠方でも安心して治療ができるように努めています
  • 一般治療以外にも条件があえば新薬試験(治験)に参加できる可能性があります
  • 患者さんへの親切な対応に心がけています

このページのTOPへ

当院の実績

  2014年
胃癌化学療法グループ新患数 328
胃癌化学療法施行症例数(新規) 160
進行・再発胃癌に対する化学療法症例数(新規) 92
胃癌治験件数 6(募集中なもの)
日本臨床腫瘍学会薬物療法専門医数 8(当院胃癌化学療法担当医)

このページのTOPへ

当院での実際

初診から化学療法開始への流れ

下記のような治療が選択されます。1次治療で点滴の場合は1週間ほど入院となることもあります。

当院での主な化学療法の内容

化学療法は初回化学療法からまず行い効果がない場合2次3次化学療法を行います。
(* 状態により選択される治療)

初回(1次)化学療法

HER2陰性の場合 HER2陽性の場合
TS-1+シスプラチン(要入院)
TS-1+オキサリプラチン
ゼローダ+シスプラチン*(要入院)
TS-1単独*(内服)
5FU+l−ロイコボリン*
ゼローダ+シスプラチン+ハーセプチン(要入院)
5-FU+シスプラチン+ハーセプチン*(要入院)
TS-1+シスプラチン+ハーセプチン*(要入院)
TS-1+オキサリプラチン+ハーセプチン*

2次化学療法 

初回治療の無効な場合以下薬剤が選択されます。いずれも通院での点滴治療です。

パクリタキセル+ラムシルマブ、パクリタキセル
ドセタキセ*、アブラキサン*、パクリタキセル+トラスツヅマブ*(HER2陽性のみ)
イリノテカン*

3次化学療法以降

これまでの治療で使われていない薬剤から選択します。

イリノテカン
タキサン系(ドセタキセ、パクリタキセル、アブラキサン)
ラムシルマブ

外来での化学療法

副作用が以前より少なくなり入院せずに外来で化学療法が多くの場合は胃癌でも可能となっています。日常生活とより両立しやすい治療をめざすことができます。外来治療の実際の1日の流れを示しました。

治療の効果

初回化学療法でがんの大きさ(CTでの断面積)が半分以下に小さくなる可能性が初回治療は10人中5−6人(奏効率50−60%)です。化学療法をしない場合に比べ生存期間を約10月(中央値での比較)上乗せする効果です。

一定の効果は認められますが、まだ満足できるものではありません。

一方、転移した胃癌(第4期または再発胃癌)に対する化学療法は新薬が一般臨床に使われるようになり治療成績が次第に向上しています。臨床試験での全生存期間の中央値は1990年代と比べ最近の報告では約2倍近くになっています。

5年以上お元気の方は少数ですが最近増えてきている印象です。当院で長期にお元気になさっている方を紹介します。

  1. 50代の女性患者は他院で根治手術不可能とされ治療目的に2008年に当院に紹介されました。スキルス胃癌、多発骨転移・腹膜転移で腹水もたまり亜腸閉塞で食事も十分摂れない状態で放置すれば3か月ほどの余命と考えられる状態でした。中心静脈点滴で栄養を摂りながら化学療法を行いました。その結果腹水もみられなくなり、骨転移も改善しました。食事も十分とれるようになりデパートでの買い物を楽しめるなど通常の日常生活も送れるようになり現在7年を超えて元気に通院治療を続けています。

    下図の解説

    2008年治療前の(右上段)の骨シンチグラム検査で白く見えている骨の部分が骨転移にあたり全身の骨のいたる所に癌が転移している状態です。CTで臓器周囲に腹水(上段左と中央の均一のなやや黒い灰色部分)がみられていましたが、2010年のCT(下段の画像)では腹水は消失しています。

  2. 60代の男性で、2002年に首のしこりがあり近くの医院を受診しました。精密検査で胃癌が首や腋の下、腹部のリンパ節に転移していました。受診時は4期の根治手術ができない胃癌でした。

    示した写真はお腹のCT写真でお臍付近の断面です。左が治療前、右がTS-1治療2年後の写真です。下の白く丸く移っている大動脈という太い血管の周囲に灰色のリンパ節に胃癌が転移してできたかたまり()がいくつもみられますが、右にはみられなくなりました。

    約2年間抗癌剤を行い転移したリンパ節が首も含めてすべて消え胃のみに癌が残ったため胃のみ切除する手術をしました。手術の時、お腹の中をよくみましたが転移していたリンパ節は消えていました。現在抗癌剤を開始後すでに8年を超えましたが癌は消え再発もない状態で、手術後抗癌剤はしないでお元気に暮らしています。

新薬開発に力をいれています

当院では、患者様の体調や病状によって通常の治療以外に新薬試験治療を患者様にお勧めすることもあります。新規薬剤の臨床試験も増えており、2014年に治験として当院で参加可能なものは6件ありました。

期待できる薬剤が本当に胃癌患者様に有効なのかを試験を通して評価する必要があります。1つの薬剤による改善は少ないかもしれませんが積み重ねが長生きの方を増やしていくことにつながることだと思います。

よくある質問

化学療法とは?

よくがんは芝生に生えた成長の早い雑草に例えられます。芝生があなたの体で雑草ががんにあたります。放っておくと雑草は根を張らせ種をばら撒いて広がり芝生を枯らしてしまうことになります。化学療法は雑草に対する除草剤にあたります。広い範囲に雑草が広がると(転移)見える範囲で雑草を抜いても(手術)取り除くことができない上芝生が痛んできます。雑草を抜くことで手におえない状況で使われる除草剤は広がった雑草全体への効果が期待できます。胃癌では、胃から離れた部位に転移した第4期や再発した方には化学療法が最も信頼できる治療です。また、手術後でも2−3期の病期の方には目に見えない癌細胞が体に残っている可能性がありそれらを死滅させ再発を抑える目的でも使われます。

どんな再発、どんな転移に化学療法は効くの?

胃癌が転移再発しやすい部位として、リンパ節、腹膜、肝臓転移などです。どのような場所に転移していても化学療法が全く期待できないということはありません。例外として、重要臓器である脳は抗癌剤などの外来物質を届きにくくする防護機能としてのバリアーが脳には備わっているため、脳転移には内服や点滴で抗癌剤を投与しても効果は期待できません。ただし、胃癌が脳に転移・再発することは稀なことで、それらの転移には病状により放射線治療を用います。転移した部位による効果に大差はないと考えていいと思います。

肝転移になぜ胃癌の化学療法なのか? 肝臓癌の治療ではないのか?

胃癌の性質をもったがん細胞に効く薬剤を選択するためです。 

元々は胃癌のがん細胞であることから、それが他の臓器に転移していても胃癌の性質を持つことになります。肝臓から発生した原発性の肝臓癌とは細胞の性質が異なります。

主な薬剤はどのようなものがありますか?

胃癌の化学療法に使われる薬剤は主に6種類あります。

  1. フッ化ピリミジン(5-FU)系(S-1(TS-1)、カペシタビン(ゼローダ)、5−FUなど)
  2. プラチナ系(シスプラチン、オキサリプラチン(エルプラット))
  3. イリノテカン(CPT-11)
  4. タキサン系(パクリタキセル・ドセタキセル・アブラキサン)
  5. トラスツズマブ(ハーセプチン)(HER2陽性胃癌のみ)
  6. ラムシルマブ(サイラムザ)です。

化学療法を受けるためにはどれほどの体力が必要ですか?

おおまかに下記の程度の体調が化学療法を受けるためには必要です

  • 身の回りのことは可能で、日中の半分以上は床から離れ起きていられる程度の体力
  • 採血結果で骨髄や肝臓・腎臓機能など主要な臓器機能に大きな異常値を認めない。
  • 手術の影響やこれまでの副作用が落ち着いている。
  • その他の病気(糖尿病、高血圧、心疾患など)が落ち着いている。

元気な人程化学療法は効果がでやすいとされており、体力や内臓の機能が保たれていることが重要です。状態が悪い場合は副作用を伴う化学療法を行うよりも症状を和らげる緩和治療に専念するほうが患者様の幸福につながります。

このページのTOPへ