子宮頸部異形成のDNA診断
最終更新日 :
2025年7月17日
目次
Chapter.1:子宮頚部異形成のHPV-DNA診断のご案内
診断の対象
- 私もこの検査を受けたほうがいいのでしょうか?
- 子宮頚がんの検診で軽度または中等度の子宮頚部異形成と診断された方に、この検査を推奨しています。
子宮頚部異形成とは
- がん検診で『異形成』と診断され、3ヵ月後に再検査と言われました。とても不安です。
- 子宮頚がんは、子宮頚部の正常な細胞が徐々に変化し、最終的にがん化する病気です。その過程の途中に「子宮頚部異形成」という段階があると考えられています。
がん検診はがんの早期発見を目的に行われますが、異形成の段階でも発見されることがあります。軽度異形成の多くは自然に消失するため、すぐに治療が必要になるわけではありません。そのため、通常は経過観察を行い、定期的に検査を受けて変化を確認します。
HPVとは?
近年の研究により、子宮頚部異形成はヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスが原因であることが分かってきました。- HPVは約100種類以上の型が存在し、その中でも「ハイリスク型HPV」(16型、18型、33型、52型、58型など)ががんの発症に関与しています。
- HPVの型によってがんへの進行リスクが異なることが分かっており、HPVのDNAを解析することで、そのリスクを予測できます。
HPV-DNA診断について 検査方法と患者さんへの負担
- 検査は大変ですか?
- HPV-DNA診断は、通常の子宮頚がん検診と同じ方法で子宮頚部の細胞を採取し、その細胞からHPVの遺伝子(DNA)を検出します。そのため、痛みや負担は従来の細胞診検査とほぼ同じです。
検査結果と治療方針の変化
- 検査の結果によって、治療が必要になることもあるのでしょうか?
- この検査の結果は経過観察の参考となりますが、
- HPVの型が低リスク型であれば、異形成が自然に消失する可能性が高く、通常の経過観察を行います。
- ハイリスク型HPV(特に16型、18型、33型、52型、58型など)が検出された場合は、がんへの進行リスクが高いため、より短い間隔での検診や追加の検査を検討することがあります。
当院の研究によると、ハイリスクHPVに感染していても約80%の病変は自然に消失することが分かっています。
Chapter.2:HPV検査の意義と課題
HPV検査の意義
- HPVの型が分かると、がんになるかどうか正確に予測できますか?
- 残念ながら、HPV検査だけではがんの発症を100%予測することはできません。しかし、
- 高リスク型HPVの有無を知ることで、がんへの進行リスクを評価し、適切な検診間隔を設定することができます。
- 長期間にわたりハイリスク型HPVが持続感染している場合、がん化の可能性が高まるため、追加検査や治療を検討する指標となります。
HPV検査の課題
HPV6型や11型はがん化しないことがほぼ確実ですが、
- HPV16型が検出された場合でもがんになるのは約20%です。
- HPV52型や58型は欧米ではあまり注目されていませんが、日本ではがん組織から高率に検出されています。
このように、国や地域によってリスクの高いHPVの型が異なる可能性があるため、日本人に適した診断基準の確立が必要です。
まとめ
- 子宮頚部異形成はがんの前段階であり、適切な経過観察が重要です。
- HPV-DNA診断は、ハイリスク型HPVの有無を調べ、がんへの進行リスクを評価する補助的な検査です。
- 高リスク型HPVが検出されても、約80%は自然消失するため、過度な心配は不要です。
- 定期的な検診を受け、医師と相談しながら適切な対策をとることが大切です。
「異形成と診断されて不安な方は、まずは専門医にご相談ください。」
がんについての疑問や不安がある場合は、がん相談窓口までお気軽にお問い合わせください。