前立腺がんの小線源治療
目次
Chapter.1: 前立腺がんの小線源治療とは
前立腺がんの小線源治療には、高線量率組織内照射法と低線量率組織内照射法があります。高線量率組織内照射法は2回の治療で行われ、低線量率組織内照射法は1回の治療(線源個数決定のための検査の受診が1回あり)となります。
高線量率組織内照射法は、前立腺内に針を挿入し、放射線を放出するイリジウム192線源(直径0.9mm)をその針の内腔に一時的に停留させることで、短い時間でたくさんの放射線をあてる治療法です。線源の位置およびその停留時間を変化させることにより自由な線量分布を作成することができるため、尿道、直腸や膀胱などの線量を最小限にし、病巣(前立腺や精嚢)に対して十分な放射線をあてられることがこの治療法の利点です。
低線量率組織内照射法は、放射線を放出するヨウ素125線源を前立腺内に挿入し、内部から前立腺に放射線をあてる治療法です。線源は直径1mm長さ約5mmで、前立腺内に50〜100個程度を永久に埋め込みます。
Chapter.2: 小線源治療の流れ
高線量率組織内照射法では、治療前検査はありません。
治療当日は、全身麻酔を行い前立腺に針を挿入します。針を挿入後に治療計画CTを撮像し、MRI画像をもとに患者さん一人ひとりにあった治療計画を立案します。さらに、尿道や直腸、膀胱にできるだけ放射線が当たらないように治療計画を立案し、正常臓器への被ばくを最小限にしながら、腫瘍に対して高線量を投与するように努めています。治療にかかる時間は約3時間程度です。
麻酔の影響で当日は歩行できませんが、翌日からは今まで通りの生活をしていただけます。刺入部に痛みがある場合もありますが、通常、痛み止めを内服することで対処できます。高線量率組織内照射法では線源を体内に留置しないため、個室に入院する必要はありません。

Chapter.3: 副作用
治療後は、穿刺部の腫脹や軽い痛み、血尿、排尿困難、排尿時痛などが数日続きます。その後、残尿、頻尿などがおこったり、排便回数の増加、勃起障害などが生じることもあります。治療後半年程度でこれらの症状に改善傾向がみられますが、1年以上継続する場合もあります。しばらくしておこる副作用として、尿道狭窄(排尿に時間がかかり、尿が出にくい状態)や直腸出血なども報告されています。
Chapter.4: 小線源治療後の生活
患者さんの体表面には会陰部に針を刺した小さなかさぶたが20か所程度確認できるだけです。場合によっては会陰部が内出血や浮腫で腫れる場合がありますが、数日〜数週間で元に戻ることがほとんどです。高線量率組織内照射法では、体から放射線は放出されないため、身近な人への放射線の影響はなく、小さいお子さんや妊婦さんなどを避ける必要は全くありません。


