がんに関する情報
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頭頸部がん

各疾患別の放射線治療

放射線治療の概要

頭頸部がんとは「鎖骨から上で脳と眼球、顔面皮膚を除く部位」のがんことを指し、病名としては口腔がん(舌癌・歯肉癌など)、咽頭がん(上・中・下)、喉頭がん、鼻・副鼻腔がん、耳下腺がん、外耳道がん、甲状腺がんなどが含まれます。また、眼科領域は結膜がんや脂腺がんなどがあります。

がんの部位や種類によって放射線の効き方が異なります。近年、中咽頭がんにおいてヒトパピローマウイルス(HPV)が原因のがんが増加しています。このがんは放射線感受性が高いため、放射線治療を中心とした治療を行うことが多くなってきています。

頭頸部・眼科領域は「視る・聞く・臭う・話す・食べる・味わう・飲み込む」など重要な機能が集中している領域であり、QOLを重視した治療が望まれます。手術・化学療法・放射線治療を組み合わせてQOLを維持し、がんの根治を目指します。

頭頸科(外科)、総合腫瘍科(内科)、眼科、歯科、画像診断部、病理部との緊密な連携体制のもと、個々のがん進行状況や、全身状態に合わせた個別化医療を進めています。その中での放射線治療の役割は非常に大きく、放射線治療を単独で行ったり、手術前後に組み合わせたりします。 近年では、化学療法と同時に行う「化学同時放射線療法」や、強度変調回転照射(VMAT:Volumetric Modulated Arc Therapy)の技術により、腫瘍に線量を集中させ、かつ中枢神経(脳・脊髄)、眼球、内耳、耳下腺、口腔内(舌)などの正常臓器の被ばくを避けた照射をすることが可能となり、QOLも含めた治療成績が非常に向上してきています。

スケジュール

放射線治療期間は6~8週程度です。「化学同時放射線療法」を行う場合は入院が必要になります。

副作用は照射範囲によって異なりますが、粘膜炎、味覚障害、口内乾燥、皮膚炎などが起こります。 粘膜炎や皮膚炎は、治療2~3週間目に出現し、治療終了時にピークとなり照射終了後に改善します。粘膜炎の痛みによる経口摂取量の減少、それに伴う、体重減少・体力低下に関して、医師・看護師・栄養士などが全面的にサポートします。 皮膚炎に対しては、日々のケアと皮膚科との連携により、重症化を防ぐようにしています。味覚障害や口内乾燥は、照射範囲や照射線量により程度が異なりますが、VMATにより口腔内や耳下腺への線量の低減に努めています。

リニアック

VMATのような高精度な照射方法は、治療姿勢の位置合わせが重要になります。当院では画像誘導放射線治療(IGRT:Image Guided Radio Therapy)が可能な装置を駆使し、日々ミリ単位の正確な位置合わせを行っています。正確な位置合わせを行うにあたり、頭・首・肩・胸などの体の動きを抑制するためのシェル(メッシュ状のマスク)を治療計画CT撮影時に作成します。治療時は作成したシェルを治療毎に装着し、正確な治療姿勢の保持や位置合わせの補助を行います。また、腫瘍に線量を集中させ、かつ正常臓器の被ばくを避けた照射をする目的で、照射している間に「唾の飲み込まない」「視線を動かさない」などのご協力をお願いすることがあります。

図. 中咽頭がん(左)、副鼻腔がん(右)に対するVMAT治療計画
図. 中咽頭がん(左)、副鼻腔がん(右)に対するVMAT治療計画
正常臓器である脊髄・耳下腺・眼などを避け、腫瘍に高線量を照射している

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