がんに関する情報
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乳がん

各疾患別の放射線治療

放射線治療の概要

主に手術後に再発を予防する目的で放射線治療を行います。外来で通院しながら治療を行います。病期によって、ホルモン療法や抗HER2療法と同時に放射線治療を行います。副作用には、皮膚炎、全身倦怠感、放射線肺臓炎などがあります。皮膚炎では、照射を受けた範囲の皮膚が一時的に日焼けのように赤くなったり、かゆみやひりひりする症状を伴ったりすることがあります。また、照射を受けた乳房や胸壁が少し腫れたり、硬くなったり、痛くなることがあります。頻度は少ないですが、放射線治療を受けて2~3ヶ月後に放射線肺臓炎が起きることがあります。その他にリンパ浮腫や二次癌のリスクがあります。

スケジュール

治療計画用CTの撮影後、約1~2週間後に治療開始となります。治療回数は治療目的・乳がん細胞の種類・病巣の場所などから、16回~30回以上と異なります。月曜日から金曜日まで週5日で、1日1回毎日行います。

治療計画CT

治療計画CTの撮影時は、基本的に両手挙上の状態で撮影します。手術などの影響により挙上困難な場合、リハビリテーションを行っていただきますが、無理のない範囲で治療が行える姿勢を提案します。特に左側の乳がんでは、心臓障害のリスクを減らすために、息を大きく吸った状態で撮影する場合もあります(深吸気息止め照射, DIBH:Deep Inspiration Breath Hold, 図1)。治療計画CTの撮影は約30~60分の姿勢保持をおこない1日で完了します。

 図1. 通常呼吸時(左)とDIBH(右)の心臓線量の比較(心臓:ピンクのライン)
図1. 通常呼吸時(左)とDIBH(右)の心臓線量の比較(心臓:ピンクのライン)

治療計画

体格や乳房・心臓・肺などの臓器の形や身体の中の位置関係は、個人差があります。乳がんの放射線治療において正常臓器への放射線の影響を最小限にしつつ、乳房や胸壁(および所属リンパ節)に充分な放射線治療を行うために、当院では三次元原体照射(3D-CRT)や強度変調回転照射(VMAT:Volumetric Modulated Arc Therapy)など、複数の照射技術を用意しています(図2)。個々の体の状態に合わせて最適な技術を選択し、副作用を減らすように努めています。また乳房温存手術後の放射線治療においては、腫瘍がもともと存在していた場所を含めて放射線治療をすることも重要です。当院では乳腺外科と協力し、術中に小さなクリップを留置することで腫瘍が存在していた箇所を同定し必要な箇所に追加照射を行っています(図3)。

図2. 乳腺温存照射における3D-CRT(左)と乳房全切除術後照射におけるVMAT(右)の治療計画
図2. 乳腺温存照射における3D-CRT(左)と乳房全切除術後照射におけるVMAT(右)の治療計画
図3. クリップを指標にした追加照射の治療計画
図3. クリップを指標にした追加照射の治療計画(茶色の4つの点が術中に留置するクリップ)

リニアック

CT撮像時と同一の体位・呼吸状態で治療を行います。診療放射線技師による体位の調整や、治療装置に付属するX線撮影装置などを用いて位置合わせを行い、適切な位置で治療をおこないます。乳房全切除術後の放射線治療では切除皮膚面まで十分な放射線を投与するために“ボーラス”と呼ばれるシートを胸部において治療する場合があります。照射技術によりますが、1日約15分~30分で治療を実施します。

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