がんに関する情報
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肝胆膵がん

各疾患別の放射線治療

放射線治療の概要

肝臓の腫瘍に対しては手術、抗がん剤や血管塞栓物質を使用した血管内治療、ラジオ波での凝固療法などが行われています。しかし、このような外科的、内科的治療が難しい症例に対しては放射線治療が選択されることがあります。また膵臓の腫瘍に対しては手術が治療の中心となりますが、切除可能症例は限られており、放射線治療が選択肢になり得ます。現在切除が困難と考えられる症例には抗がん剤治療単独、もしくは抗がん剤と放射線治療の併用療法がおこなわれています。

放射線治療の方法は大きく分けて、1回線量を少なく、25~28回程度に分割して行う通常照射と、1回大線量を用いて5回程度の短期間で集中的に治療する定位放射線治療に大きく分かれます。当院で使用できる放射線はX線のみですが、施設によっては陽子線や重粒子線の特性を生かして腫瘍への線量集中性を高めた治療も行われています。

この領域における当院においての定位放射線治療は、原則単発の肝細胞癌、もしくは肝臓の転移性腫瘍に対して行っています。肝臓は腹部の臓器であり、呼吸による横隔膜の上下移動に伴い大きく位置が動くことから、副作用を低減するためには呼吸を管理しながら治療を行うことが必要となります。

肝臓や膵臓の放射線治療の副作用は、急性期には倦怠感、嘔気や食欲不振が懸念されますが、治療終了とともに改善していきます。抗がん剤と同時併用の場合には増強する可能性があります。治療終了後、通常数ヶ月以降に現れる晩期の副作用としては、十二指腸などの消化管の潰瘍・出血・穿孔や狭窄、胆道系の狭窄による黄疸、肝機能障害などがあげられます。

以下では、肝臓の腫瘍に対する定位放射線治療(SBRT:Stereotactic Body Radio Therapy)をご紹介致します。

治療期間は5日程度で、その際の入院は必要ありません。

スケジュール

肝臓の腫瘍は、通常のX線画像やCT画像(造影剤を使用しない)では判別しにくいため、放射線治療を行う際に腫瘍の位置が分かるように、腫瘍近傍に長さ3mm程度の金属マーカーを3個ほど、超音波画像を用いて刺入します(図1)。その後、約1週間後に治療計画用CTを撮影します。肝臓は呼吸によって動きますので、その評価と対策を十分に行うために、この治療計画用CTを2日に分けて撮影します。治療計画用CT撮影後、約1~2週間後に治療開始となります。

 図1. 金属マーカー刺入後のX線画像(赤枠内の白い3つの点が金属マーカー)
図1. 金属マーカー刺入後のX線画像(赤枠内の白い3つの点が金属マーカー)

治療計画CT

1日目は、呼吸による腫瘍の動きの計測と治療時に使用する固定具の作成を行います。基本的には呼吸停止下で治療を行いますので、安定した息止めができるように練習を行います。

2日目は、1日目に作成した固定具を用い、呼吸停止下で治療計画用CTの撮影を行います。1日目、2日目共にCT撮影する際には造影剤を使用致します。また、同日に同じ固定具・呼吸停止下で撮像する治療計画用MRIも造影剤を用います。

治療計画

治療は、三次元原体照射法(3D-CRT)または強度変調回転照射(VMAT:Volumetric Modulated Arc Therapy)を用いて行います。これらは、腫瘍の場所等を考慮して決定します。3D-CRTは、複数の角度から腫瘍に集中して照射することで照射容積内の線量を均一にできる特徴があり、VMATは腫瘍に隣接した正常臓器の線量を低減することができる特徴があります。線量分布の違いは、定位放射線治療(SRT:Stereotactic Radio Therapy)をご参照下さい。

図2. 肝臓SBRTの治療計画
図2. 肝臓SBRTの治療計画

リニアック

治療計画用CT時に作成した固定具を用い治療を行います。腫瘍の位置によっては、治療3時間ほど前から食事制限を行う場合もあります。実際の照射においては、装置に付随する機器を用いてX線撮影やCT撮影を行い、金属マーカーを指標に正確な位置合わせをした上で照射を行います。照射中もX線撮影を行い、金属マーカーの位置を確認しながら治療していきます。もしも、金属マーカーの位置がずれた場合は自動的に照射が停止する設定になっています。呼吸停止下で治療を行うので、患者さんが安定して息を止められる範囲内で複数回に分けて照射を行います。当院では、フラットニングフィルターフリー(FFF)と呼ばれる照射技術を併用することで、従来の照射法に比べ約2.4倍早く照射を行うことができます。

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