がんに関する情報
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前立腺がん

各疾患別の放射線治療

最終更新日 : 2024年3月19日

放射線治療の概要(根治照射の場合)

前立腺がんの治療方法は、放射線治療や手術などがあります。放射線治療には外から放射線を照射する外部照射法と、中から放射線を照射する組織内照射法(低線量率組織内照射法と高線量率組織内照射法)などがあります。放射線治療は、病期によってはホルモン療法と組み合わせて治療を行うこともあります。

放射線治療の効果は手術と同等と考えられており、尿失禁や性機能障害などの副作用の割合は手術と比べて低いですが、治療中は尿の回数が多くなったり、尿が出にくくなったりすることがあります。必要に応じて薬を内服していただきますが、これらの症状は放射線治療が終了して数週間すれば治療前の状態に戻ります。また、放射線治療後半年~2年頃に、排便の際に直腸から出血することがあります。直腸からの出血が繰り返し起こる場合は、薬の内服や大腸内視鏡にて焼灼術を行います。

外部照射法のスケジュール

放射線治療開始前の準備として2回来院していただきます。

1回目は、前立腺の位置合わせの目安とするために、前立腺内に金マーカーを挿入します。また、前立腺と直腸に隙間を作り、直腸に高線量が当たるのを防ぐためのSpace OARも挿入します(病期によってはこれらを挿入しない場合もあります)。

2回目は、治療計画用CTの撮影を行い、同日の夕方にMRIを撮像します。治療計画用CTを撮影してから概ね2週間後に治療開始となります。

図1. 前立腺内に挿入した位置合わせに用いる金マーカー
図1. 前立腺内に挿入した位置合わせに用いる金マーカー
図2. Space OAR挿入前(左)と挿入後(右)のMRI画像
図2. Space OAR挿入前(左)と挿入後(右)のMRI画像
前立腺と直腸の間に隙間を作ることで、直腸の被ばく線量を低減する

治療計画用CTとMRIの撮影

放射線治療では、正常臓器への影響も考慮して体位や前処置を決定しています。治療計画CTを撮影する際の前処置として、予約時間の1時間前の来院とコップ1杯の飲水をお願いしています。さらに、MRIの予約時間の30分前に排尿し、撮影終了まで蓄尿をお願いしています。治療計画用CTを撮影する前に、体を固定するためのシェル(メッシュ状のカバー)を作成し、シェルを装着した状態で撮影します。また、同日の夕方にMRIも撮像します。MRIは予約時間の30分前に排尿し、検査終了まで蓄尿をお願いしています。MRIもシェルを装着し、治療計画用CT時と同じ姿勢で撮像します。どちらの検査も基本的に造影や呼吸の指示はありません。

治療計画

治療計画CT画像とMRI画像をもとに医師が照射範囲を決定し、患者さん一人ひとりにあった治療計画を立案します。さらに、膀胱や直腸にできるだけ放射線が当たらないように治療計画を立案し、正常臓器への被ばくを最小限にしながら、腫瘍に対して高線量を投与するように努めています。

リニアック

外部照射法の治療は、リニアックという装置を用いて強度変調回転照射(VMAT:Volumetric Modulated Arc Therapy)を行っています。

病期のステージが低~中リスクの場合は、中等度寡分割照射か定位放射線治療(SBRT:Stereotactic Body Radio Therapy)を選択できます。高リスクの場合の多くは、中等度寡分割照射のみの適応となります。

◆中等度寡分割照射

予約時間の1時間前から蓄尿を行いますが、1時間前に来院する必要はありません。予約時間に合わせてご自身で蓄尿の管理をお願いしています。看護師がその日の体調と一緒に蓄尿時間を確認します。

治療前にX線画像を撮影し、前立腺に挿入した金マーカーを目印にして位置合わせを行います。週に1度CTを撮影して腫瘍の位置を確認します。1回の治療は15分程度です。治療回数は20回で、治療期間は4週間程度です。

定位放射線治療(SBRT:Stereotactic Body Radio Therapy)

病期のステージが低~中リスクの場合に適応となります。SBRTの場合は、金マーカー・Space OARを原則挿入します。

1回に当てる放射線の量が多いため、中等度寡分割照射に比べて直腸内ガスや蓄尿量の管理を厳しく設定している関係で、SBRTの場合は治療計画用CT撮影時と同様に1時間前に来院し、浣腸とコップ2杯の飲水をお願いしています。治療前にCTを撮影し、前立腺に挿入した金マーカーを目印にして位置合わせを行います。場合によっては再蓄尿や直腸内ガスを抜く処置を行うこともあります。1回の治療は30分程度です。治療回数は5回で、1週間で終了することができるのが特長です。

外部照射法の副作用

治療後は、残尿、頻尿などが高頻度におこり、排尿困難、排尿時痛、排便回数の増加、勃起障害などが生じることもあります。治療後半年程度でこれらの症状に改善傾向がみられますが、1年以上継続する場合もあります。しばらくしておこる副作用として、尿道狭窄(排尿に時間がかかり、非常に尿が出にくい状態)や直腸出血なども報告されています。

組織内照射法(小線源治療)のスケジュール

組織内照射法には低線量率組織内照射法と高線量率組織内照射法があります。低線量率組織内照射法は1回の治療で行われ(線源個数決定のための受診が1回あり)、高線量率組織内照射法は2回の治療となります。

◆低線量率組織内照射法

前立腺がんの低線量率組織内照射法は、放射線を放出するヨウ素125線源を前立腺内に挿入し、内部から前立腺全体に放射線をあてる治療法です。線源は直径1mm長さ約5mmで、通常前立腺内に50〜100個程度埋め込みます。低線量率組織内照射法は早期の前立腺がんに対して行われ、治療成績は手術や外照射と同程度と考えられています。ヨウ素125線源からは数mmしか十分な放射線が届かないため、直腸などの周辺臓器の線量を最小限にし、前立腺がんに対して十分な放射線をあてられることがこの治療法の利点です。

・低線量率組織内照射法の対象

低線量率組織内照射法では、放射線は線源のすぐ近くの範囲にしかとどきません。そのため、前立腺内にとどまっている早期のがんが対象になります。治療前のPSA*やグリソンスコア*、がんのひろがりを参考にして、がんの悪性度を判断して行います。

注)PSA;前立腺特異抗原とよばれる腫瘍マーカーで、前立腺がんで上昇します。

グリソンスコア;前立腺を生検し、病理検査で診断したがんの悪性度のことです。グリソンスコアは6〜10まであり、悪性度が高いものほど数字が大きくなります。

・低線量率組織内照射法の流れ

小線源治療の流れ

治療前検査

治療が実施可能か、また治療に線源が何個必要かを判断するために直腸から超音波検査を行います。前立腺肥大症などで前立腺が大きく骨盤の骨と前立腺が重なって針が刺せない場合には、低線量率組織内照射法はできません。このような時には他の治療法を選択するか、数ヶ月間ホルモン治療を行い、前立腺を縮小させた後に再度治療前検査を行っています。

治療計画

治療前検査で得られた超音波画像を元に、必要な線源の個数と配置を決定し線源を注文します。線源注文から納入まで約10日かかります。

線源挿入

治療後は微量の放射線が体外に放出されるため、周辺への影響が軽微であることが確認されるまで個室に入院していただきます。

治療当日は、全身麻酔を行い治療計画に従って線源を挿入します。線源挿入にかかる時間は約2時間です。麻酔の影響で当日は歩行できませんが、翌日からは今まで通りの生活をしていただけます。刺入部に痛みがある場合もありますが、通常、痛み止めを内服することで対処できます。

線源挿入後1日程度は、挿入した線源が排尿時に尿と一緒に体外に出る可能性があり、線源挿入翌日の夕方まで個室から出ることはできません。

治療の評価

治療に伴い前立腺が腫大したり、挿入後に線源が移動したりするため、治療後にCTを撮影し、前立腺に対しどの程度放射線があたっているかを評価します。

手術と異なり、外照射や小線源治療では治療後のPSAの低下はゆるやかで、最低値になるまで2〜3年かかることもよく見られます。また、再発が無くても、線源挿入後1〜2年にPSAが一過性に上昇する場合があります。このような場合、無治療でPSAが再度低下してくるため、治療後は定期的に診察を受けてPSAの値を調べる必要があります。

治療の評価

・低線量率組織内照射法後の生活

治療後、体から弱い放射線が放出されます。このため、身近な人への放射線の影響を計算し、問題がないかを確認しています。通常は一緒に生活をする人や周囲の人への影響はありませんが、半年程度は小さいお子さんや妊婦さんなどのすぐ近くに、長時間いるのは避けていただいています。

治療後1年間は、治療を受けたことを示すカードの携帯が義務づけられています。また万一、1年以内に他の病気などで死亡された場合には、前立腺を摘出することが法令で定められています。

◆高線量率組織内照射法

前立腺がんの高線量率組織内照射法は、前立腺内に針を挿入し、放射線を放出するイリジウム192線源(直径0.9mm)をその針の内腔に一時的に停留させることで、短い時間で非常にたくさんの放射線をあてる治療法です。高線量率組織内照射法は低〜高リスクの限局性前立腺がんに対して行われ、治療成績は手術や外照射と同程度かそれ以上と考えられています。線源の位置およびその停留時間を変化させることにより自由な線量分布を作成することができるため、尿道、直腸や膀胱などの線量を最小限にし、病巣(前立腺や精嚢)に対して十分な放射線をあてられることがこの治療法の利点です。

治療前検査

低線量率組織内照射法のような線源個数決定のための治療前検査はありません。低線量率組織内照射法のときには前立腺が大きいために骨盤の骨と前立腺が重なって針が刺せないことがありますが、高線量率組織内照射法では自由な線量分布を作成することができるため問題になりません。

治療計画

治療当日は、全身麻酔を行い前立腺に針を挿入します。針を挿入後に治療計画CTを撮像し、MRI画像をもとに患者さん一人ひとりにあった治療計画を立案します。さらに、尿道や直腸、膀胱にできるだけ放射線が当たらないように治療計画を立案し、正常臓器への被ばくを最小限にしながら、腫瘍に対して高線量を投与するように努めています。治療にかかる時間は約3時間程度です。

麻酔の影響で当日は歩行できませんが、翌日からは今まで通りの生活をしていただけます。刺入部に痛みがある場合もありますが、通常、痛み止めを内服することで対処できます。低線量率組織内照射法のときのように個室に入院する必要はありません。

・高線量率組織内照射法後の生活

患者さんの体表面には、会陰部に針を刺した小さなかさぶたが20か所程度確認できるだけです。場合によっては会陰部が内出血や浮腫で腫れる場合がありますが、数日〜数週間で元に戻ることがほとんどです。治療後に本人から放射線が体外に放出されることはありません。このため、身近な人への放射線の影響はありません。この治療を計2回行います。

組織内照射法の副作用

治療後は、穿刺部の腫脹や軽い痛み、血尿、排尿困難、排尿時痛などが数日続きます。その後、残尿、頻尿などが高頻度におこり、排便回数の増加、勃起障害などが生じることもあります。治療後半年程度でこれらの症状に改善傾向がみられますが、1年以上継続する場合もあります。しばらくしておこる副作用として、尿道狭窄(排尿に時間がかかり、非常に尿が出にくい状態)や直腸出血なども報告されています。

◆術後照射

予約時間の1時間前から蓄尿を行いますが、1時間前に来院する必要はありません。予約時間に合わせてご自身で蓄尿の管理をお願いしています。看護師がその日の体調と一緒に蓄尿時間を確認します。
金マーカー・Space OARは挿入しません。照射開始までの準備は1回来院だけ(治療計画用CT・MRI)となります。

治療前にCTを撮影し、位置合わせを行います。1回の治療は15分程度です。治療回数は32~33回で、治療期間は7週間弱となります。

術後照射は外部照射法にて行い、リニアックという装置を用いて強度変調回転照射(VMAT:Volumetric Modulated Arc Therapy)を行っています。

 

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