がんに関する情報
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子宮がん

各疾患別の放射線治療

放射線治療の概要

婦人科領域の放射線治療は主に子宮頸がん・子宮体がん・膣がんおよび外陰がんを対象としています。特に子宮頸がんでは手術と並ぶ治療法とされています。婦人科領域の根治的治療における放射線治療は、リニアックで行う外照射(一般的に放射線治療と呼ばれる)と遠隔操作密封小線源治療(RALS:Remote After Loading System)を併用します。

このページでは、リニアックによる放射線治療を「外照射」、遠隔操作密封小線源治療を「腔内照射」と記載しています。

腔内照射とは、子宮や膣など人体の空洞部分に専用の器具を挿入し、その器具内を線源が通過することで治療を行います。体の内部から放射線を照射するため、効率的に腫瘍へ放射線を照射することが可能です。

図1. 腔内照射における通常の腔内照射(左)、ハイブリッド照射(中央)、組織内照射(右)の治療計画
図1. 腔内照射における通常の腔内照射(左)、ハイブリッド照射(中央)、組織内照射(右)の治療計画

また、手術での病理結果で術後再発リスクが中等度以上だと判断された場合は、術後放射線治療も術後治療の選択肢の一つとなります。根治的放射線治療でも術後放射線治療でも化学療法と併用する場合は入院で行いますが、放射線治療単独の場合は通院での治療が可能です。

スケジュール

@根治的放射線治療

外照射から開始し、途中で外照射と腔内照射を併用します。外照射は放射線治療計画用CT撮影後、1週間程度で治療開始となります。また、腔内照射開始日の1週間~前日の間に治療評価用MRIを撮像し、腫瘍の大きさなどの確認を行うことで、より効果的で副作用の少ない腔内照射の方法を検討していきます。

A術後放射線治療

外照射のみの治療となります。強度変調回転照射(VMAT:Volumetric Modulated Arc Therapy)で治療を行う場合、放射線治療計画用CTを撮影後、10~14日間程度で治療開始となります。また、膀胱容量を一定に保つために蓄尿時間の管理を行い、ヨード造影剤を用いた放射線治療計画用CTを撮影します。手術日から概ね2か月以内には治療を開始する予定です。

治療計画

@根治的放射線治療

特に準備は必要ありません。1回の治療計画CTで外照射(全骨盤照射と中央遮蔽照射)の治療計画を立案します。

外照射は三次元原体照射(3D-CRT)で行います。外照射は全骨盤照射から開始し、途中で中央遮蔽照射(腔内照射で線量が多く照射される可能性がある腸管の線量を少なくした照射)を行います。中央遮蔽照射と腔内照射は併用して治療を行います。また、当院では腔内照射治療室内にCT装置を設置しています。腔内照射は、CT画像を基に三次元的画像誘導小線源治療(3D-IGBT:3D-Image Guided Brachy Therapy)を行っています。

A術後放射線治療

蓄尿時間の管理や尿道カテーテルを留置することがあります。便がたまりやすい場合は、必要に応じて浣腸も行います。術後放射線治療ではVMATで腸管や骨髄の線量を低減させることにより、晩期有害事象を少なくするように努めています。

図2. 腔内照射治療室CT(左)と、子宮頸がん術後全骨盤VMATの治療計画(右)
図2. 腔内照射治療室CT(左)と、子宮頸がん術後全骨盤VMATの治療計画(右)

外照射

根治放射線治療と術後放射線治療で照射方法や治療回数、蓄尿の管理などは異なってきますが、治療計画CTを撮影した時と同じ姿勢で治療を行います。正確な治療を行うために適切な位置合わせを行って治療しています。1回の治療時間は15分程度です。

腔内照射

腔内照射は、少なからず痛みも伴うため、静脈麻酔を用いて行うことがあります。腔内照射は根治的治療には欠かせない大切な治療です。当院は医師を中心に専門の資格を持った診療放射線技師と経験豊富な看護師が担当し、痛みや不安などが少しでも和らげるように目指していきます。腔内照射が特にご心配な方は放射線治療担当医にご相談ください。

当院の特徴

当院では、小線源治療室内にCT装置があり、全身麻酔が可能な麻酔器を設置しています。そのため、大きな腫瘍・不整な形の腫瘍・膣に強く浸潤している腫瘍・通常の腔内照射ではやや困難と判断される腫瘍に対しても、組織内照射や通常の腔内照射と組織内照射を併用するハイブリッド照射を提案することが可能です。

ハイブリッド照射では、通常の腔内照射では十分な線量投与が困難な比較的大きな腫瘍などに、より効果的な線量投与が可能で、正常組織への影響をより少なく抑えることができます。通常の腔内照射のアプリケータに追加して、径2mm程の空洞状の針を経腹部超音波やCTを用いて線量投与が不十分な領域を目指して刺入していきます。治療評価MRI後や初回の腔内照射後に放射線治療担当医が必要に応じて提案します。

組織内照射では、通常の腔内照射やハイブリッド照射では十分な線量投与が困難な大きな腫瘍や不整形な腫瘍、膣に強く浸潤している腫瘍に対して選択されます。全身麻酔下で経腹部超音波やCTを用いて空洞状の針を腫瘍の形に合わせて刺入していきます。刺入後は3~4日間のベッド上で安静にしていただき、1日2回の照射を行います。組織内照射は腫瘍の形に合わせた治療が可能であり、治療効果や正常臓器に対する有害事象の観点から必要と判断される場合もあります。こちらも放射線治療担当医が必要に応じて提案します。