がんに関する情報
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肺定位放射線治療

各疾患別の放射線治療

放射線治療の概要

肺定位放射線治療(SBRT:Stereotactic Body Radio Therapy)は、早期肺がんに対する有用な局所治療です。早期肺がんの標準治療は肺葉切除術ですが、心肺機能の問題等で手術不適応の患者さんや、手術治療を希望されない患者さんに適応となります。肺がんのみならず、他のがん種の肺転移(3個以内)に対してもSBRTの適応となります。一般的な放射線治療と比較し、1回の照射線量が大線量(5~6倍以上)のため、放射線治療単独で腫瘍を消失させることが期待できます。腫瘍が小さく抹消型(気管支や心臓等のある胸部中枢側に腫瘍が存在していない)かつ胸壁からの距離もある腫瘍であれば9割以上の局所制御が望めます。

治療期間も一般的な放射線治療では6~7週間(30~35回)要しますが、SBRTは約1週間(4~5回)で、1回あたり40~60分の治療で終了します。基本的には外来にて通院治療を行います(入院して行う治療ではありません)。

主な副作用は、放射線肺炎です。しかし、1回大線量を局所に集中させて行う治療のため、照射される肺容積は少なく、症状の強い放射線肺炎の頻度は5~8%程度です。また肺に対するSBRTに特有の副作用として、胸壁痛や肋骨骨折が報告されていますが、腫瘍が胸壁や肋骨から離れた位置にあれば、起こることはありません。

スケジュール

肺がんは呼吸によって腫瘍が大きく移動する場合があります。その評価と十分な対策を行うために、治療計画用CTを2日に分けて撮影します。治療計画用CTの撮影後、約1~2週間後に治療開始となります。

治療計画CT

1日目は、呼吸による腫瘍の動きの計測と治療時に使用する固定具の作成を行います。腫瘍の動きが大きい場合には、息を止めた状態で治療を行うことがあります。その場合は、安定した息止めを行うことができるように練習を行います。安定した息止めを行うことが困難と判断された場合は、胸部を圧迫し呼吸による腫瘍の動きを抑制する場合があります。圧迫に痛みを伴うことはありません。

2日目は、1日目に決定した呼吸法と固定具を用いて治療計画用CTの撮影を行います。医師の判断により、1日目に決定した呼吸法を変更する場合があります。

治療計画

治療は、三次元原体照射法(3D-CRT)または強度変調回転照射法(VMAT:Volumetric Modulated Arc Therapy) を用いて行います。これらは、呼吸による腫瘍の移動量や腫瘍の場所等を考慮して決定します。3D-CRTは、複数の角度から腫瘍に集中して照射することで照射容積内の線量を均一にできる特徴があり、VMATは腫瘍に隣接した正常組織の線量を低減することができる特徴があります(図)。

図. 3D-CRT(左)とVMAT(右)の治療計画
図. 3D-CRT(左)とVMAT(右)の治療計画

リニアック

2日目の治療計画用CT時に決定した呼吸法、固定具で治療を行います。治療の前に、治療装置に付随する機器を用いてCT撮影を行い、正確な位置合わせをした上で照射を行います。息止めで治療を行う場合は、患者さんの息が安定して止められる範囲内で複数回に分けて照射を行います。

当院では、照射技術にフラットニングフィルターフリー(FFF)を併用しています。この技術を用いることで、3D-CRT, VMATともに従来の約2.4倍早く照射を行うことができるため、治療時間を短縮することができます。

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