がんに関する情報
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椎体定位放射線治療

各疾患別の放射線治療

放射線治療の概要

脊椎骨転移に対する定位放射線治療(脊椎定位放射線治療)

症状緩和に主眼を置き、骨転移に対し緩和線量を照射する従来の一般的な放射線治療と異なり、定位放射線治療は照射部の腫瘍制御により、長期の疼痛改善効果持続や高率な局所制御を可能にする治療方法です。

表1. 脊椎骨転移に対する定位放射線治療と一般的な放射線治療(従来法)の比較
従来法 定位放射線治療
短期間の疼痛緩和は可能 持続する疼痛緩和効果
短期間の局所制御は可能 持続する良好な局所制御
治療の反応性は腫瘍の種類に依存する 治療の反応性は腫瘍の種類に依存しない
広範な病巣部でも治療可能 限局した病巣部に治療可能
5~10回の治療回数 1~3回の治療回数
比較的容易に治療導入可能 治療に至るプロセスは時間を要する
図. 3D-CRT(左)とVMAT(右)の治療計画

図. 第1胸椎骨転移に対する、定位放射線治療(左)と従来の一般的な放射線治療(右)の比較

従来法(右)では病巣外へも広がって均等に放射線が照射されます。定位放射線治療(左)では病巣部に集中して放射線が照射できます。そのため、定位放射線治療(左)では脊髄に放射線が照射されないように調整することが可能で、脊髄の耐容線量を守りながら、病巣部に強度の強い放射線を照射することができます。[線量の広がりを比較するため、処方線量の80%以上放射線が照射されている範囲を表示]

この治療の適応となる主な条件は、脊椎転移病巣も、その他の病巣も比較的限られた範囲であることです。また、非常に強度の強い治療であるため、肉腫、腎細胞癌、悪性黒色腫といった、従来法では制御が難しい放射線抵抗性腫瘍による脊椎骨転移に対しても良好な効果が期待できるため良い適応となります。また、以前一般的な放射線治療を行って、同部位に腫瘍が再燃した場合も良い適応になります。しかし、転移腫瘍による影響で脊椎の圧迫骨折をきたしていたり、脊椎の位置変位が起こっていたりして脊椎が不安定となっている場合、脊椎定位放射線治療は行えません。整形外科的アプローチにより脊椎の安定性を回復する必要があります。そのため、脊椎定位放射線治療の適応判断に関して、整形外科の先生との連携が非常に重要であり、治療適応の判断も十分に考えて行います。1回の治療に要する時間は30分~1時間ほどかかりますが、基本的に通院治療が可能で、通常1回または3回の治療で終了しますので、次の治療として薬物療法を控えている場合も速やかに移行が可能です。脊椎定位放射線治療では、副作用として圧迫骨折が起こる可能性があります。脊椎定位放射線治療後に生じた圧迫骨折に対し全てに治療が必要とは限りませんが、治療介入の必要性の判断においても整形外科の先生との連携が非常に大切です。当院では、各原疾患の主治医、整形外科医、放射線治療医が連携してこの治療にあたっていきます。

近年の全身薬物療法の進歩により、生存期間が延びるとともに、脊椎骨転移を有するがん患者さんは増加し、脊椎骨転移発症後も長期予後が望める患者さんも増えてくると考えられます。そういった患者さんたちには、従来法の緩和照射でなく、より高い局所制御、長期の鎮痛効果が望める局所治療として脊椎の定位放射線治療という有効な手段があります。

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