がんに関する情報
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オリゴメタスタシス

各疾患別の放射線治療

放射線治療の概要

遠隔転移のある患者さんの中には、転移病巣が限局的な数、かつ限局的な臓器に限られている病期の方もおられます。限局的な転移状態をオリゴメタスタシスといい、オリゴメタスタシスの状態にある患者さんの中には、限られた転移箇所への局所治療により、予後が改善する可能性があります。欧米の複数のランダム化比較試験でオリゴメタスタシスの患者さんに対する放射線を用いた局所治療により予後を改善することが示されています。転移病巣部への治療戦略は、従来、緩和的、対症療法的なアプローチであり、転移病巣部への放射線治療は、痛みを和らげる等の症状緩和を目的とし、中等度以下の強度の放射線治療が行われています。しかし、オリゴメタスタシス状態の患者さんでは、症状緩和が目的ではなく、病巣部の制御が目的であるため、強度の強い放射線治療が行われます。強度の強い放射線治療を行うと副作用が懸念されますが、定位放射線治療(いわゆるピンポイント照射)の技術を用いることで、病巣部の周囲の正常組織に照射される放射線量を低減しながら、病巣部へは強い放射線を照射することができます。そのため、重篤な副作用の頻度は少なく、効果の高い治療を行うことが可能です。

治療期間は、一週間程度で通院にて治療可能です。また、一回の治療はおよそ30分程度で終了します(治療室への入室から退室までの合計)。

スケジュール

治療計画用CTから照射開始までは、10日間程度を必要とします。照射部位により異なりますが、腫瘍が呼吸などによって動く場所に存在する場合は、その評価と十分な対策を行うために、治療計画用CTを2日に分けて撮影することがあります。

治療計画CT

1回に大線量を投与する高精度な定位放射線治療を行うため、照射中に体が動かないように、専用の固定具の作成を行います。また、呼吸によって動くような腫瘍の場合には、息を止めた状態での撮影や、四次元CTを撮影することで、腫瘍の動きに対応できるような準備を整えます。

治療計画

治療計画は、照射範囲を可能な限り現局させ、周囲の正常臓器への被ばく線量を低減させるようにします。治療部位により、放射線を当てる範囲や方向を調整して計画を立案します。下図は、肋骨転移に対する定位放射線治療の一例ですが、肋骨部分の腫瘍には高線量を投与し、肺、脊髄、気管などの正常臓器を避けた線量分布図となっています。また、放射線を当てる方向も、患側(腫瘍側)のみからに制限し、反対側の肺などの被ばく線量を低減しています。

図. 肋骨転移に対する定位放射線治療の一例
図. 肋骨転移に対する定位放射線治療の一例

リニアック

実際に放射線が照射されている時間は、2~3分程度になります。しかし、高精度の治療になりますので、位置合わせなどの時間を含めると、20分程度寝台上で動かずに寝ていただく必要があります。痛みなどがある場合は、医師、看護師と相談し、痛み止めの服用を行い、無理なく安全に治療を進めていくようにします。

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