がんに関する情報
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肺がん

各疾患別の放射線治療

最終更新日 : 2025年5月14日

放射線治療の概要

肺がんの治療方針はがんの種類(病理)と進行病期ごとに治療方針がかわります。放射線治療は早期肺癌に対する根治的な治療から、進行期の緩和的な治療まで、多様な目的で使用されます。肺癌の主な放射線治療の方法について、簡単に解説します。

早期肺癌に対する体幹部定位放射線治療(SBRT: Stereotactic Body Radiation Therapy)

病変が限局している早期肺癌(主に非小細胞肺癌)の標準治療は手術ですが、ご高齢や合併症のために手術が難しい患者さん、手術を希望されない患者さんのための治療として、体幹部定位放射線治療(SBRTと略します)があります。SBRTは放射線治療の技術の発達と照射制度の向上により可能になった、腫瘍に強い放射線治療を集中させて根治を目指す治療です。手術に迫る治療効果と、肺機能の温存やQOL維持を両立できることから、手術の代替治療として普及してきています。

また、最近では進行期であっても少数個の転移のみ活動性を持つ場合(Oligometastasis)、このSBRTの技術を使ってがんの勢いを抑えられることが分かってきています。当院でも適応を慎重に検討した上で、積極的に治療を行っています。

SBRTのスケジュール

初診→(必要な検査)→治療計画CT(2回)→治療(4〜8回)

肺がんは呼吸によって腫瘍が大きく移動する場合があります。当院ではその評価と十分な対策を行うために、治療計画用CTを2日に分けて撮影することが多いです。治療計画用CTの撮影後、約1~2週間後に治療開始となります。治療の回数は、連日4回、1週間程度で行うことが多いですが、肺がんの大きさや場所によって異なります。治療時間は30分程度で、外来通院での治療が可能です。

治療計画CT

1日目は、呼吸による腫瘍の動きの計測と治療時に使用する固定具の作成を行います。腫瘍の動きが大きい場合には、無理のない範囲で息を止めた状態で治療を行うことがあります。その場合は、安定した息止めを行うことができるように練習を行い、2日目に本番の撮影に進みます。治療計画CTは、患者さん一人ひとりの呼吸状態に合った治療方法を見つけて最適な治療を行うための準備であり、丁寧に行うことでより高精度な治療を行うことができます。詳しくは定位放射線治療のページもご覧ください。(定位放射線治療(SRT)|放射線治療|がん研有明病院

局所進行肺癌に対する高精度放射線治療(IMRT:Intensity-Modulated Radiation Therapy)

縦郭リンパ節転移を有する(あるいは腫瘍サイズが大きい)ものの、胸の中にとどまっている状態を「局所進行肺癌」といいます。当院では、この局所進行肺癌に対しても、IMRT、すなわち放射線照射中に、照射野内の放射線の強さに強弱をつけ、可能な限り腫瘍形状に合わせて照射する方法を使用しています。(強度変調放射線治療(IMRT)|放射線治療|がん研有明病院

また、上に挙げた早期肺癌と異なり、化学療法(抗がん剤)と放射線治療の併用で治療を行います。多くの場合で、同時に抗がん剤治療も併用して行うため、入院での治療となります。ただし、抗がん剤治療の同時併用が適さないと判断される患者さんは抗がん剤と時期をずらして行う、あるいは放射線治療のみ行うこともあります。

化学放射線治療のスケジュール

初診→(必要な検査)→治療計画CT(1回)→入院、治療開始

  • 非小細胞肺癌であれば1日1回、週に5日、30回、約6週間
  • 小細胞肺癌であれば1日2回(朝夕)、週に5日、30回(3週間)

SBRT以外は治療計画用CTを1日で完結します。治療中に病変の縮小や位置のずれにより正確な照射が難しくなった場合は、再度治療計画CTを施行することもあります。治療計画においてコンピュータを用いた複雑な線量計算や検証が必要なため、治療計画から治療開始まで1-2週を要することが多いです。

治療計画

肺がんの放射線治療では、副作用を減らすため、肺や食道、心臓等の正常臓器に放射線があたる範囲や量を低減し、同時に標的とするがんへ十分に線量を投与することが重要となります。当院では病態の変化が激しい場合や、呼吸性移動対策を講じることが困難だった場合を除き、すべての治療計画に強度変調回転照射(VMAT:Volumetric Modulated Arc Therapy)を適応しています。VMATの適応により、従来は正常臓器の耐容線量(放射線が照射されても回復可能な線量)を守るために腫瘍の制御に必要な放射線の線量を担保することが困難であった患者さんにおいても十分な線量投与が可能となっています。

 図. 3D-CRT:三次元原体照射(左)とVMAT(右)の治療計画の比較
図. 3D-CRT:三次元原体照射(左)とVMAT(右)の治療計画の比較

リニアック

実際の治療は治療計画CT撮影時に決められた固定具、前処置に則って行われます。当院では肺がんの照射に際して全例で画像誘導放射線治療(IGRT:Image Guided Radio Therapy)を用い、日々の照射位置精度を担保しています。また、肺がんは体内での位置変動や腫瘍径の変化がしばしば見られるため、定期的に治療装置に付随する機器を用いてCT撮影を行い体内の状況を評価しています。必要時には治療装置による毎回のCTでの位置合わせや治療計画の再検討を提案しています。
いずれの治療も、患者さんの病状によって治療の適応や方法の詳細は異なります。当院では呼吸器外科、呼吸器内科、放射線科、病理診断の医師が合同で毎週カンファレンスを行っており、各分野の専門医が知恵を出し合って患者さん毎に最適と思われる治療を提案しています。当院での治療を希望される方だけでなく、治療法に迷っている方へのセカンドオピニオン外来も開設しています。詳しくは病院HPの該当ページをご参照ください。(受診・入院・面会|がん研有明病院

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