がんに関する情報
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食道がん

各疾患別の放射線治療

放射線治療の概要

食道がんの放射線治療は、ごく初期のステージ0から遠隔転移を有するステージ4まで幅広く適応があります。抗がん剤と併用されることが多く、抗がん剤治療中は入院での治療となりますが、放射線治療のみの期間は原則外来で行います。初期の病変でも内視鏡治療困難な場合は、放射線治療単独で根治を目指します。また進行がんでも合併症等で抗がん剤投与が困難な場合には、放射線治療単独が選択されることもあります。

その他、術前や術後に放射線治療(抗がん剤と併用することが多い)を行うこともあります。遠隔転移症例では、根治治療は困難ですが、通過障害を改善する目的や、骨転移などによる疼痛緩和を目的とした緩和放射線治療が行われています。上記のような様々な状況に応じて放射線治療の方法や当てる範囲、1回あたりの放射線の量、総治療回数は変わってきます。根治目的の場合は28~30回程度、緩和目的の場合は10回前後が選択されます。

副作用は、放射線を当てる範囲と回数によってリスクは変わります。根治目的の放射線治療の一般的な副作用として、治療中の放射線食道炎、放射線皮膚炎などがあります。また治療後に遅れて出現する副作用、後遺症として放射線肺臓炎、胸水貯留、心嚢水貯留などが問題となることがあります。

スケジュール

根治治療の場合、治療計画用CTを撮影して約1週間後が治療開始予定日となります。強度変調回転照射(VMAT:Volumetric Modulated Arc Therapy)を行う場合は、計画に時間がかかるため、開始にもう少し時間を頂くこととなりCT後1~2週間での治療開始となります。緩和治療や緊急の場合はその限りではありません。

食道は胸部から腹部にわたる臓器であるため呼吸とともに位置が変動します。そのため症例に応じて、特にVMATを用いる場合などには、呼吸性移動対策が必要となります。その際は本番の治療計画CTの数日前に、呼吸移動の確認と練習のためのCTを撮影するため追加で来院していただく必要があります。

治療計画CT

放射線の当てる範囲に応じて、治療計画CTと毎回の治療において前処置が必要とされ、2~6時間程度の食事や飲水の制限を行うことがあります。

食道の位置に影響する体内臓器の動きを評価するために呼吸を止めた状態で撮影するCTと、自然な呼吸の状態で撮影する四次元CTを撮影することがあります。臓器の動きの適切な評価を行い、過不足のない照射範囲設定を行っています。

呼吸性移動対策を伴うVMATの適応となる場合には、息止めをした状態で治療を行うことがあります。その場合は別の日に2回に分けて治療計画CTを撮影し、安定した息止めを行うことができるように練習を行います。

治療計画

食道の放射線治療計画は、腫瘍の進展範囲とリンパ節転移の範囲によって照射範囲と照射方法が大きく変わります。多くは三次元原体照射(3D-CRT)で複数の角度から照射することで照射容積内の線量を均一に保ち、原発巣と予防域をしっかりと含む照射を行います。食道の治療における重要なリスク臓器として脊髄や肺、心臓があり、放射線を当てる範囲と当てない範囲をしっかりと色分けすることで副作用の低減を目指します。

また、当院では3D-CRTでは根治性を保つことや、正常臓器の線量を担保することが困難な場合において、VMATによる照射方法も提案しています。VMATは3D-CRTに比べて放射線が通る範囲は広がりますが、複雑な照射範囲の設定が可能となります。そのため、3D-CRTでは正常臓器と標的の線量のバランスをとることが困難な症例であっても、VMATであれば正常臓器の線量を許容範囲に抑えながら標的に十分な線量を投与することが可能となります。もともと呼吸による動きが大きい臓器であるため、すべての症例でVMATが望ましいわけではありません。症例ごとに専門医が検討して適応を判断します。

 図. 3D-CRT(左)とVMAT(右)の治療計画の比較
図. 3D-CRT(左)とVMAT(右)の治療計画の比較

リニアック

実際の治療は治療計画CTで決められた固定具、前処置に則って行われます。当院では食道がんの照射に際して全例で画像誘導放射線治療(IGRT:Image Guided Radio Therapy)を施行し、日々の照射位置精度を担保しています。また、必要時には治療装置に付随する機器を用いてCTを撮影し、体内の状況を評価することが可能となっており、大きな変化が見られる場合には治療計画の変更を提案しています。VMATの場合には、ExacTracシステムを用いた6軸補正や呼吸波形のモニタリングを行い、治療精度を担保しています。

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