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診療科・部門紹介
診療科・部門紹介

肝・胆・膵外科

肝・胆・膵外科

最終更新日 : 2020年6月25日

診療科の特徴|診療実績スタッフ紹介業績紹介

診療科の特徴


橋 祐
肝胆膵外科部長

はじめに(がん研有明病院胆肝膵外科の体制・手術実績)

肝臓領域(概要)

  • 原発性肝がんの診断と治療
  • 転移性肝腫瘍の手術と成績

胆道領域(概要)

  • 胆道がんの手術と成績
  • PERICANプログラム

膵臓領域(概要)

  • 膵臓がんに対する外科治療
  • 当院が提唱する新しい膵切除式
  • 進行膵癌に対する集学的治療
  • PERICANプログラム

低侵襲手術(腹腔鏡下手術)

はじめに

がん研有明病院肝胆膵外科は、高橋祐部長(H7卒)を中心とした、スタッフ6人/医員10人の若く活気あふれるグループです。肝胆膵外科領域は手術の難易度が高く予後も厳しい、いわゆる難治癌が多くを占める領域ですが、豊富な症例数(肝切除:年間約230例、膵切除:年間約210例)と、診療科を越えた院内の緊密な横断的連携を生かしたチーム医療をすべての患者さんに提供しています。従来から行ってきました高度進行癌に対する血行再建や他臓器合併切除を伴う根治を目指した拡大手術と並行して、近年では積極的に低侵襲手術(腹腔鏡手術)も取り入れ、手術件数を拡大しています。

肝切除・膵切除・腹腔鏡手術の過去10年間の症例数推移を下にまとめております。今後も、一人でも多くの患者さんに、迅速かつ最良な治療をご提供できるよう、努力を続けております。

当科の特徴は、@領域横断的な周術期治療、A根治性と安全性を両立した外科治療、そしてB徹底した術後管理です。たとえば、肝両葉に及ぶ多発転移性肝腫瘍に対して、まず切除可否判定を初診時に行い、手術の難易度やリスクに応じて、術前化学療法や、肝動注療法を先行した後に切除を行う、いわゆる集学的治療を実践しています。このためには、化学療法科や肝胆膵内科との連携が不可欠ですが、毎週行っている外科・内科・放射線科合同のグループカンファレンスに加えて、外来も隣同士のブースで行うように配置されており、横の風通しが非常に良い環境です。術後管理も、休日深夜問わず24時間体制で術後重症患者の管理を行い、ICU専属Dr.(集中治療部 望月俊明医長)や、感染症対策チーム(感染症科 羽山ブライアン副医長)、画像診断・画像下治療(画像診断部 松枝清部長)、さらには疼痛管理グループ、栄養管理科、メンタルサポートチームらの専門グループと常に連携した医療を実践しています。

【肝臓領域】

昨今本邦では、肝切除術は安全な腹部内臓器手術として確立されており、過去5年間における当院での肝腫瘍切除術の周術期死亡率は0.2%(全国平均:約3%)です。肝切除の安全性においては、術前の肝機能評価と、切除プランの徹底した検討が非常に重要です。

当院では、術前に2種類の肝機能評価モダリティ(GSA-肝受容体シンチグラフィーとICG停滞率テスト)を原則として全ての患者さんに施行し、肝機能評価の精度を高めるとともに、切除のプランニングには3-Dシミュレーションソフト(VINCENT®)を駆使し、毎週の術前検討会で術式を決定しています(図1,2)。

原発性肝癌(肝細胞癌、肝内胆管癌など)に対しては、従来の系統的肝切除をより高精度に行うための工夫として、開腹手術(図1,2)・腹腔鏡手術(図3)ともにICG蛍光法を駆使した技術を開発し、実践しています。また、以前は術前治療の選択肢の乏しかった肝細胞癌に対しても、抗がん剤(レンバチニブなど)や肝動脈注入療法を組み合わせた集学的治療を施して、脈管侵襲を伴う超進行癌でも根治切除を目指しています。

転移性肝腫瘍においては、両葉を埋め尽くすような多発肝転移や、癌種によって黄疸をきたしている場合、また他の施設で切除不能と診断された患者さんも含めて、少しでも可能性があれば、粘り強く術前治療を行ったうえでの切除を実現しています。一般病院で切除不能と診断される転移性肝腫瘍の中にも、肝胆膵外科・消化器化学療法科・画像診断部と、各領域のエキスパートがそれぞれの役割を最大限に発揮し、かつ緊密に連携することで、切除の実現が可能となる場合が少なからず存在します。がん研肝胆膵外科は、そんな患者さんの最後の砦として「あきらめない外科」をモットーに診療を行っています。

◇詳細情報

【胆道領域】

胆道にできる癌は肝臓内から胆汁の流れの順番に@肝内胆管癌、A肝門部領域胆管癌、B胆嚢癌、C遠位側胆管癌、D十二指腸乳頭部癌(Vater乳頭部癌)、ならびに広い範囲の胆管に広がるE広範囲胆管癌に分類されます(図6)。

なかでも、肝門部領域胆管癌は肝臓を半分以上切除するいわゆる大量肝切除や、肝に流入する血管の合併切除再建等を要する、非常に手術の難しい領域です。当院では、肝門部領域胆管癌にも積極的に取り組んでおり、シミュレーションソフトを用いた綿密な手術プランニングと、胆道ドレナージ、門脈枝塞栓術などを駆使した万端の準備を患者さんに実践し、片肝切除+膵頭十二指腸切除や、左三区域+肝動脈再建など、腹部悪性腫瘍手術で最も難度が高い術式を毎年安定的に施行しています(図7)。

また胆道癌の外科治療には、高度な手術手技はもちろんのこと、周術期の徹底した全身管理が必須です。当院では、大侵襲手術の安全性を高めるため、術前から体力づくりのリハビリ療法、齲歯(虫歯・歯周病)治療による口腔内清潔化による肺炎の予防、腸管免疫強化等の準備を総合的に実践しています(PERICANプログラム)。がん研有明病院での肝門部胆管癌の手術関連死亡率は 2.3%と、全国平均を大きく下回っています。

◇詳細情報と関連項目

【膵臓領域】

本邦における膵癌は現在増加の一途をたどっており、あらゆる癌の中で最も治療の難治度が高いことから、癌の王様と呼ばれています。がん研では、この難治癌に対して外科的アプローチと内科的アプローチの両輪で取組み、一人でも多くの膵癌患者さんを救うべく尽力しています。

当院では、かねてから主要血管浸潤を伴うような進行膵癌に対しても血管合併切除と血行再建を伴う拡大手術を積極的に行うことで根治切除に努め、その術式や成績を世界に発信してきました。2019年の膵切除件数は210件、うち膵癌切除数は140件に及びます。膵臓の手術は、その根治度と安全性を両立させる必要があり、当科では、代表的術式である膵頭十二指腸切除および膵体尾部切除の新術式(図4,5)を提唱・実践し、高い評価を得ています。

このように発展的かつ定型化された切除術式の徹底により、手術の根治性と安全性を追求すると同時に、周術期の体調管理・栄養管理・手術に関する知識付けを包括的に行うプログラム(PERICANプログラム)を2015年より導入し、患者さんが最良の状態で手術に臨めるように努めています。

以上の努力により、現在年間200例を超える膵切除で術関連死亡率0.5%以下を保っています。

【集学的治療による進行膵癌への取り組み】

手術療法は唯一の根治治療ですが、残念ながら現在でもその効果は十分とは言えません。そのため、手術後に補助化学療法(再発予防のための抗がん剤治療)を併用するのが一般的ですが、さらに近年の化学療法の進歩により、以前なら根治が難しいとされていた進行膵癌であっても、術前の化学療法と組み合わせることで根治的切除が可能となる場合があります。
主要血管に浸潤のある膵癌を切除可能境界域膵癌(Borderline resectable pancreatic cancer)と呼びます。切除可能膵癌と比べてその長期成績は非常に悪く、5年生存率は20%に満たないのが現状であり、予後の向上のためには、切除と周術期治療とを組み合わせた集学的治療が必要であるといわれています。当院では、2015年よりジェムザール+ナブパクリタキセル療法4コースによる術前化学療法を行っています。

切除可能境界域膵癌よりもさらに進行し、初診時点では切除不能である癌を切除不能癌(Unresectable pancreatic cancer)と呼びます。切除不能癌は長らく有効な治療法がないと言われていましたが、近年の化学療法の進歩に伴い、化学療法が長期奏効して腫瘍が縮小した場合や、遠隔転移が消失するなどして切除が可能となった患者さんが少しずつ増えてきています(Conversion切除といいます)。このデータは、初診時に切除不能と診断されても、最終的に切除に持ち込める可能性があると信じて集学的治療に取り組む患者さんの、大きな希望となっています。

◇詳細情報と関連項目

低侵襲手術

癌を根治するためには、正確な画像診断による切除適応の決定、癌の進展に応じた正確な癌郭清を行うと同時に、患者さんの術後回復をスムーズにする努力も必要です。周術期のリハビリプログラム、栄養管理、Artery-first approach(動脈先行処理法)などによる出血量の低減といった取り組みとともに、近年当院でも力を入れているのが、鏡視下手術による手術の低侵襲化です。がん研有明病院では、2005年から腹腔鏡下肝切除術(小範囲切除)・腹腔鏡下膵切除術(良性疾患)を開始し、疾患・術式ごとの保険収載に則って適応を拡大してきています。肝切除では、病変周囲をくりぬく部分切除はもちろん、肝内亜区域を系統的に切除する解剖学的切除、区域切除や葉切除にも適応を拡大しています。膵切除では、2016年の膵頭十二指腸切除(良性・低悪性度疾患)、膵癌に対する膵体尾部切除への保険適応拡大に伴い、どちらも実地診療にて腹腔鏡手術を導入済みです。一人一人の患者さんに対し、手術の方法(切除術式・腹腔鏡手術か開腹手術か)についてまずグループカンファレンスで協議し、必要があれば消化器センター全体の会議(キャンサーボード)でも検討することで、個々の患者さんにとって至適な術式を選択しています。

癌の患者さんが大半を占める当院の特性から、まずは根治性と安全性を重視しておりますが、保険適応の拡大と同時に腹腔鏡下手術技術と機器の発展により、従来は開腹しないと難しかったような手術でも鏡視下に安全に実施できるようになってきました。当院では、肝切除・膵切除ともに鏡視下手術の割合が増加傾向にあります。

肝切除手術件数

 

膵切除手術件数腹腔鏡下手術の割合

腹腔鏡下肝切除

転移性肝腫瘍、肝細胞癌、その他肝良性腫瘍が主な適応となります。5mmから12mmのポート創(穴)を5か所程度設置し、高解像度カメラスコープ、腹腔鏡用鉗子、エネルギーデバイスを挿入して肝離断を行います。保険適応の拡大に伴い、かなり大きな肝切除も腹腔鏡下に実施できるようになりました。開腹と比べると創の総延長は3分の1以下で済み、疼痛が少なく、術後の回復も早いことから、我々も積極的に行っています。肝切除の術中診断に重要な触診ができない点が課題ですが、これを補うために、当科では術中造影超音波を全例施行し、ICG蛍光法も併用した正確な術中診断を追求しています。ただし、多発肝転移や大きな肝腫瘍を持った患者さんに対しては、まだまだ歴史の長い開腹術に利点があります。根治性・安全性・低侵襲性のバランスを最適化し、一人一人病状の異なる患者さんに合わせた最適な治療を提供できるよう努めています。当院では2019年末までに、310名の患者さんに腹腔鏡下肝切除術を実施しております。

腹腔鏡下肝切除

腹腔鏡下膵切除

・腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術:リンパ節郭清を要さない疾患(膵頭部の良性腫瘍、境界域悪性病変、早期の胆道癌)を適応としています。当科では、全国に先駆け2013年に腹腔鏡下膵頭十二指腸切除を外科phase I臨床試験として導入し、腹腔鏡下でも開腹術と同等に安全な膵頭十二指腸切除が可能であることを報告しています。膵頭十二指腸切除は開腹では20cm以上の切開を必要としますが、腹腔鏡下手術では通常7cm前後の再建創が最大であり、術後の創痛が少なく、リハビリの達成もスムーズに行える印象があります。手術の難易度が高い点と厳格な施設基準により現時点では一般的に行われる手術ではありませんが、2016年に腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術が保険収載され、当院では2019年末までに28名の患者さんに実施しております。

・腹腔鏡下膵体尾部切除:良性の疾患と低悪性度疾患に対する手術は以前から行っておりましたが、保険適応の拡大を受けて、2018年から膵体部癌と膵尾部癌に対するリンパ節郭清・後腹膜一括郭清を伴う腹腔鏡下膵体尾部切除を開始しました。痛みが少ない点や回復が早い点により、術後在院日数は19日→14日に短縮しています。膵癌術後の補助化学療法の早期導入につながり、膵癌切除後の予後の向上につながることも期待されている術式で、2019年は38名の患者さんに実施しました。膵頭十二指腸切除術と合わせて、2019年末までに累積で110名の患者さんに腹腔鏡下膵切除術を実施しております

腹腔鏡下膵切除

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