がんに関する情報
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胆膵IVR (胆膵疾患に対する内視鏡的/経皮的インターベンション)

胆膵IVR (胆膵疾患に対する内視鏡的/経皮的インターベンション)

最終更新日 : 2020年7月3日

●内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)関連手技

ERCP は、内視鏡を口から入れて十二指腸乳頭部まですすめ、胆管や膵管に造影剤を直接注入してレントゲン写真をとり、胆のう・胆管や膵管の異常の有無を調べる画像検査ですが、同時に、胆道がんの診断やがんによる胆道閉塞の治療、胆管結石の治療にも応用されています。ERCPは、十二指腸乳頭から胆管・膵管にカテーテルその他の処置具を挿入するのに高い技術が必要な上、急性膵炎などの偶発症が重症化することもあり、慎重な対応が必要ですが、黄疸や胆道感染症に対して緊急で行われることが多く、処置のタイミングが遅れると致命的にもなり得るため、迅速な判断も必要です。以下、当院で行っている代表的なERCP関連処置について説明します。

  1. 管腔内超音波検査(IDUS):胆管・膵管内に細径の超音波プローブを挿入し、がんの拡がり、特に深さや周辺の血管への浸潤などを調べる検査です。
  2. 胆道鏡・膵管鏡検査:胆管・膵管内に3mm径程度の細径内視鏡を挿入し、直接観察する検査です。がんの拡がりの診断や直視下での生検が可能です。
    (ERCP,IDUS,胆道鏡検査)
  3. 内視鏡的経鼻胆道/膵管ドレナージ(ENBD/ENPD):胆管・膵管の閉塞部位の上流に細いカテーテルを留置し、対側を鼻から外へ出して胆汁・膵液を一時的に体外に逃がす治療です。ENBDは黄疸が強い場合や急性胆管炎などの胆道感染症に、ENPDは早期膵がんの診断目的に膵液を連続的に採取する場合などに用います。
  4. 内視鏡的ステント留置術(EBS/EPS):胆管・膵管の閉塞部位にステントというストロー状の短い管を入れて、胆汁や膵液の流れを良くする治療です。病態によってプラスチック製のものや金属製のものを使い分けます。
    (ENBDとEBS)

    胆管ステントは、十二指腸乳頭から胆管をさかのぼり、がんによる狭窄をまたいで上流と下流を橋渡しするように留置しますが、狭窄の位置によって難易度が大きく異なります。肝門部にがんがある場合、狭窄部の上流がいくつにも分断されていることが多く、下流からさかのぼってステントを入れる場合、どの上流枝にステントを留置するか、1本でいいのかなど、難しい判断の下で試行錯誤にならざるを得ないことがあります。
    (遠位胆管へのステント留置)
    (肝門部胆管へのステント留置

    胆管ステントには、内視鏡内のチャンネルを通してそのまま胆管内に留置できる2-3mm径のプラスチックステントと、2-3mm径の鞘の中に納まった状態で内視鏡のチャンネルを通して胆管内まで進め、外鞘を抜くことで8-10mm程度に拡張する金属ステントの2種類があります。細径のプラスチックステントは、留置時のトラブルは少ないものの詰まりやすく、再治療を含めると負担は大きくなります。太径の金属ステントは、詰まりにくいのが最大のメリットですが、太い分だけ腸液が逆流しやすくなることもあり、がんの状態によってはかえってトラブルの原因にもなります。
    プラスチック   金属
    細い(2-3mm) 太い(8-10mm)
    ◎容易 留置手技 〇やや難
    ◎少ない 留置時合併症 〇やや多い
    △詰まりやすい 詰まりやすさ ◎詰まりにくい
    〇少ない 逆流 △多い
    ◎容易 抜去 〇容易〜×不能
    ◎1回28万円
    △2回56万円
    医療費* 〇1回48万円

    (*医療費:ステント代+手技料+5日間の入院基本料金の概算)

  5. バルーン内視鏡を用いたERCP: 胃や胆道・膵臓の術後の場合には、バルーン内視鏡という特殊な長い内視鏡で小腸をたぐり寄せながら乳頭部または胆管と腸の吻合部まで内視鏡を進めることで、ようやくERCPが可能となります。

当院のERCPは、そのほとんどをがんによる胆管狭窄の精密検査と黄疸の治療が占め、金属ステントの留置件数が多いのが特徴です。また、バルーン内視鏡の登場により、胃切除後の症例や膵頭十二指腸切除術後の症例も増加しています。

経皮経肝胆道ドレナージ(PTBD)関連手技

PTBDは、体外から肝臓内を走る胆管に針を刺し、細い管を入れて胆汁を体外に導き出す(ドレナージ)治療です。これにより黄疸や胆管炎の改善が期待できます。ERCPによる胆道ドレナージが優先されますが、内視鏡治療が困難な場合や治療効果が期待できない場合にPTBDが選択されます。体外に誘導された胆汁を貯めるための袋をぶら下げる必要があり、日常生活に制限が加わりますが、可能なら以下のような追加処置を行います。

  1. 胆道内瘻術:胆管の閉塞部位を越えて下流までカテーテルを進めることにより、上流の胆汁を下流(生理的な向き)に流れるようにします。理論どおりに胆汁が下流に流れてくれれば、体外に出ているカテーテルの一端に栓をすることで、胆汁をためるための袋をぶら下げる必要がなく、日常生活の制限も軽くなります。
  2. 胆管ステント留置術:PTBDのルートからでも胆管の閉塞部位にステントを埋め込むことができます。これにより、体外には何も出ていない状態になり、通常の日常生活を送ることが可能です。

超音波内視鏡検査(EUS)関連手技

EUSとは、先端に超音波プローブ(超音波発生装置)のついた内視鏡で消化管内から膵臓、胆嚢、胆管、リンパ節などの消化管周囲の臓器や、消化管粘膜下の病変を観察する検査です。体外式超音波検査と比べ、EUSでは目的とする臓器のすぐ近くから観察するため、より鮮明な画像を得やすくなります。ただし内臓脂肪が多い場合や胃の手術をされた方では観察が難しい場合もあります。EUSを利用して、近年、生検検査(EUS-FNA)や、穿刺治療(Interventional EUS, I-EUS)が可能になってきました。

  1. 超音波内視鏡下穿刺吸引生検(EUS-FNA): EUSで病変を観察しながら、専用の針を病変に刺し(穿刺)、組織を採取する検査です。採取した組織や細胞を用いて病理診断を行います。消化管周辺の腫瘍、消化管粘膜下腫瘍、腫大リンパ節・腹水などが対象となります。画像検査のみで診断が困難な場合や、組織により診断を確定させる必要がある場合にこの検査が必要となります。90%以上の確率で十分な組織が採取でき、正確な診断が可能になります。
  2. EUS下ドレナージ術: EUS-FNAで培ったEUS下穿刺の技術と、ERCPで培ったドレナージ・ステント留置技術を生かして、これまで経皮的に行っていた様々なドレナージを消化管から行えるようになってきました。
    EUS下胆管ドレナージ術(EUS-BD)には、胃(G)から肝臓(H)内の胆管を穿刺して両者をつなぐEUS下肝内胆管−胃吻合術(EUS-HGS)と、十二指腸(D)から総胆管(C)を穿刺してつなぐEUS下胆管―十二指腸吻合術(EUS-CDS)があります。これらは、ERCPによるステント治療が不向きな病態で、PTBDの最大の欠点である“体外にカテーテルが出る状態”を回避しうる新たなドレナージ方法として注目されていますが、合併症が起きた場合に重症化する可能性があり、十分な注意が必要です。
    このほか、EUS下に十二指腸から胆嚢(GB)をドレナージするEUS下胆嚢ドレナージ術(EUS-GBD)や、急性膵炎等に伴って生じた仮性のう胞(PC))を胃や十二指腸からドレナージするEUS下膵のう胞ドレナージ術(EUS-PCD)などがあります。
    (EUS-HGS)
  3. 超音波内視鏡下腹腔神経叢ブロック(EUS-CPN): EUS下に膵臓周囲の神経が密集する部位に局所麻酔薬・無水エタノールを注入し、がんによる痛みの緩和を図る治療です。痛みの程度によっては、背部からの神経ブロックと組み合わせるなど、最大の効果が得られるよう工夫しています。

消化管ステント

胆道や膵臓は十二指腸に近接しているため、膵頭部がんや胆道がんが増大するとしばしば十二指腸が閉塞します。膵尾部がんが増大すると近傍の大腸が閉塞することがありますし、転移部位によってはその他の消化管が閉塞することもあります。消化管が閉塞すると食事が通らなくなりますので、通り道を確保しなければなりません。従来のバイパス手術に代わり、近年では内視鏡を用いたステント治療が盛んに行われるようになってきました。閉塞部に留置するのみの単純な手技ではありますが、曲がりくねった腸管にきれいに留置し、うまく機能させるには様々な工夫が必要です。

(大腸閉塞に対するステント治療)
(小腸内視鏡を用いた、術後再建腸管閉塞に対するステント)

また、胆道がん・膵臓がんの場合、特に胆管閉塞と十二指腸閉塞が同時に起きることも多く、ERCPやEUSを用いた胆管ステントとの組み合わせなど、より高度の技術が必要となることがあります。

(胆管ステント+十二指腸ステント)
(胆管ステント+十二指腸ステント+肝内胆管-胃吻合ステント)

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