がんに関する情報

膵臓がん

最終更新日 : 2019年3月1日
外来担当医師一覧

がん研有明病院の膵臓がん診療の特徴

がん研有明病院の膵臓がん診療の特徴

診療

1.チーム医療

肝胆膵外科、肝胆膵内科、画像診断部や病理部などを含めた“チーム肝胆膵”として、最善と思われる治療を考え、提供します。特に外科と内科は同じ病棟に勤務しており、常に情報交換しながら診療を行っています。

2.診断、治療

肝がん、胆道がん、膵がんのなかには非常に進行の速いものがあります。それらのがんの患者さんは診断後できるだけ速やかに治療ができるように速やかな診断、治療を行います。進行の速いがんに対しては2-4週間以内に手術ができるように予定をたてています。

3.研究と臨床の架け橋

がん診療の向上のために、患者さんの自主的な協力による臨床研究は不可欠です。診断・治療にあたるとともに、同意のいただけた患者さんに関しては、新しい治療法、手術手技などの臨床研究も積極的に行っています。

内科

1. 様々な手法による診断・胆道ドレナージ

内科では、主として、診断・黄疸に対するステント治療・手術以外の治療としての薬物療法を担当します。診断においては、がんと診断された方のみならず、がんの可能性が疑われた時点から診療を行い、通常行われる腹部超音波検査やCT検査、MRI/MRCP検査に加え、超音波内視鏡(EUS)検査を積極的に行い、小さながんの発見に努めています。また、画像検査のみで診断が確定しない場合には、EUS下穿刺吸引生検(EUS-FNA)なども考慮します。一方で、黄疸を契機にがんが発見されることもしばしばあり、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)を用いた黄疸解除のための胆管ステント治療を迅速に行っています。この黄疸解除の成否が後の治療に大きく影響を及ぼすこともしばしばあり、一歩先を読んだERCPを心がけています。

2.より有効な化学療法の追求

胆道・膵がんの化学療法は、徐々に進歩しているとはいえ使用可能な抗がん剤の種類もその成績も十分とは言えず、新たな治療法開発のために、多くの病院が協力して大勢の患者さんの参加のもとに行われる臨床研究が不可欠です。私たちは、常に最良の標準治療を大切にするとともに、多施設共同臨床試験や治験(企業主導臨床試験)にも積極的に参加し、お一人の治療を通じて、より早く、多くの患者さんに新たな治療法を還元することを目標としています。

3.多職種によるトータルサポートプログラム(PANDA)

膵がんは難治性がんの代表と言われています。化学療法の進歩により、以前に比べ長期生存が見込める可能性が増えたものの、がんによる症状や抗がん剤治療の副作用への対策、利用可能な公的社会サービスや栄養サポートの情報提供など、患者さんがよりよい治療を受けるだけでなく、日常生活を安心しておくるために必要なサポートは十分とは言えない状況です。そこで当院では、医師(主治医、緩和治療科医師)、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカー、栄養士が、抗がん剤治療開始直後より治療と並行して支援を行うプログラムを開始しました。多職種の専門スタッフが直接患者と関わり、必要なケアをその場で実践し、安全・安楽な治療環境を提供することを目標に、「PANcreatic Direct Approach : PANDA」と名付け、少しでもより良い治療環境が提供できるように取り組んでいます。

(リンク:PANDAプログラム

外科

1.あきらめない外科

内視鏡で診断可能な消化管の癌と異なり、肝がん、胆道がん、膵がんの進展を画像だけで判断することは時に困難なことがあります。また 手術適応も施設により異なるのが現状であり、ある病院で手術ができないといわれても別の病院では手術ができるということもまれではありません。手術の経験や技量のほか、医師の考え方も大きく手術適応に影響するのが肝胆膵外科の領域です。我々は 難治癌であっても外科的な立場から可能性を最後まで追求します。“あきらめない外科”をモットーとし、患者さんとともに、がんに立ち向かって参ります。

2.出血の少ない手術を心がけています

肝がん、胆道がん、膵がんはおなかの中の最も複雑な部位にでき、手術が非常に複雑で切除が困難であり、出血量も多くなりがちです。私たち外科医の習熟した手技にさまざまな医療機器を組み合わせることで、手術中の出血をできるだけ少なくなるよう工夫しています。出血のすくない手術は安全かつ正確な手術につながります。血管をいっしょに切除する拡大手術から腹腔鏡手術という非常に小さい傷でできる手術まで過不足のない手術を選択しています。

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膵臓がんの治療の実績

膵臓は上腹部の一番背中側に位置する臓器で、「消化を助ける酵素である膵液を生成し、膵管から十二指腸に分泌する」外分泌と、「インスリンやグルカゴンなどのホルモンを産生し血管内に分泌する」内分泌の2つの働きがあり、この2種類の細胞はまったく性質が違います。外分泌細胞から発生する腫瘍には、浸潤性膵管がん、膵腺房細胞がん、膵管内乳頭粘液性腫瘍などがあり、一方、内分泌細胞からは神経内分泌腫瘍(低悪性度または高悪性度のがん)が発生します。この中で浸潤性膵管がんは膵がんの80%以上を占め「性質(たち)が悪い膵がん」を代表する膵腫瘍です。

外科治療の実績

2014年から2018年までの5年間に行った膵がん切除手術件数を示します。浸潤性膵管癌を含めた膵腫瘍切除は150件/年間前後、その他膵切除も含めると200件前後の件数を維持しています。

【集学的治療による進行膵癌への取り組み】

近年の化学療法の進歩により、膵癌の治療は手術と化学療法を組み合わせることが常識となってきています。当院では、2000年代より、膵癌切除後の術後補助化学療法に積極的に取り組み、大侵襲手術と言われる膵癌切除後も安全な補助化学療法を提供してきています。

当院の使命である進行膵癌の治療成績向上のため、2015年以降、主要脈管(上腸間膜静脈(SMV)・門脈(PV)、および上腸間膜動脈(SMA)・腹腔動脈(CA))への浸潤が疑われる、解剖学的切除可能境界域膵癌(Borderline resectable pancreatic cancer, BRPC)に対して、術前補助化学療法も組み合わせて、補助化学療法(GEM+Nab-paclitaxel)→切除→術後補助化学療法(TS-1)による集学的治療を実施しています。薬剤の選択には、有効性と同時に安全性を考慮する必要があり、本薬剤は、現時点で報告されている薬剤の中でも原発巣に対して十分な腫瘍縮小効果を期待でき、4コースの化学療法後に比較的短期間で膵頭十二指腸切除や膵体尾部切除が安全に施行可能であるという条件を満たしております。実際に、本試験を開始してからの切除率は良好で、8割以上の患者さんが安全に切除まで施行可能であり、今後治療成績の向上に寄与すると考えております。現在までに同戦略で100例の治療実績があり、以前の切除先行時代と比べて2倍近い長期生存成績を得ています。

より進行度の低いとされてきた解剖学的切除可能膵癌(腫瘍脈管への浸潤がない)の中にも、再発リスクの高い患者さんが存在することもわかってきています。2019年からは、解剖学的切除可能膵癌に分類される患者さんも個別に推定し、術前化学療法を導入していきます。常に最新・最良とされる治療方針を早期に導入し、最難治癌である膵癌と戦う患者さんをサポートして参ります。

内科診療の実績

●進行・再発膵がんに対する化学療法

2014年から2018年までの5年間に行った、膵がんに対する全化学療法と一次化学療法の推移と最近の化学療法の成績を示します。

長年、膵臓がんに対する標準療法とされてきたゲムシタビン(Gem)療法、S1療法に対し、2013年末にフルオロウラシル・レボホリナート・イリノテカン・オキサリプラチン(FOLFIRINOX)療法、2014年末にゲムシタビン・ナブパクリタキセル(Gem/nabPTX)療法など、より有効とされる治療法が保険承認され、2014年以降、一次化学療法が変化してきました。一方、S1療法は、術後補助化学療法(再発を予防するための化学療法)の有効性が科学的に証明されたこともあり、手術後の患者さんに多く使われています。

●胆管閉塞(閉塞性黄疸)・十二指腸閉塞に対する治療

膵がんには、胆管の閉塞による黄疸や十二指腸の閉塞による嘔吐などの合併症がしばしば見られます。化学療法を行うと同時にこれらの治療を迅速・確実に行う必要があり、当科ではこのようなインターベンションにも力を入れています。2014年から2018年までの5年間に行った金属ステント・消化管ステントの留置件数の推移を示します(膵がん以外のデータも含みます)。

(リンク:胆膵IVR

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膵がんについての知識

膵がんとは

膵臓は胃の後ろ側に位置する長さ20cm くらいの左右に細長い臓器で、CT の画像でみるとひらがなの「へ」 の字に似ています。膵臓の右側は頭部と呼ばれ、左端の細長い部分は尾部、頭部と尾部の中間の部分は体部と呼ばれます。膵臓には食べ物を消化する分泌液(膵液)をつくる仕事(外分泌)とインスリンなどのホルモンをつくる仕事(内分泌)があります。外分泌を担当する細胞からしみ出した消化液は小さな流れの集合を繰り返し、一本の大きな川(主膵管といいます)に合流します。消化液は主膵管を通り、尾部から頭部へ向かい、最後は十二指腸に流れ出ます。膵臓から発生する原発性の膵がんの80%を占める通常型の膵がんは、消化液の流れる管(膵管)を形成する細胞のがん化です。したがって、膵管がんということもあり、とくに専門家のあいだでは浸潤性膵管がんという言葉がよく使われます。その他、膵管内乳頭状粘液腫瘍(IPMN)と呼ばれる病変も、治療対象となります。

この項では、通常型の膵がん(浸潤性膵管がん)について説明します。

膵がん

膵がん罹患率

膵がんの発症は60歳ごろから増加し、罹患(りかん)率は高齢になるほど高くなります。死亡率の年次推移では、男女とも戦後1980年代後半まで増加し、1990年代以降は横ばいもしくは漸増傾向にあります。日本の膵がん死亡率はもともと低いレベルでしたが、1960年代から80年代後半に増加し欧米先進国並みになっています。死亡率は男性で高く、女性の約1.7倍です。罹患数と死亡数はほぼ等しく、膵がん患者の生存率が低いことが伺えます。日本では毎年22,000人以上の方が膵がんで亡くなっています。膵がんは日本及び欧米先進国の主要ながん死因のひとつです。

膵がんの危険因子

膵がんの危険因子として、喫煙・糖尿病・膵がんの家族歴(親・兄弟に膵がんの方がいること)、膵のう胞、慢性膵炎などが知られています。喫煙は明らかな危険因子ですが、禁煙から10年程度で膵発がんのリスクは健康な人と同じ程度まで下がるといわれています。今からでも禁煙は遅くありません。糖尿病に関しては、小さな膵がんが引き金となっている場合があり、糖尿病の診断時には膵がんの検査も受けるようにしましょう。近親者に膵がんの方がいる場合、特に複数名の場合には、自身も膵がんになる可能性が高くなりますので、定期的な検診をお勧めします。

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症状

膵頭部にできた膵がんは小さくても胆汁の流れ道(胆管)をつぶして胆汁の流れを悪くして、黄疸を引き起こすことがあります。このような黄疸(閉塞性黄疸といいます)は膵がん早期発見のきっかけになります。黄疸以外の症状は、胃のあたりや背中が重苦しいとか、なんとなくお腹の調子がよくないとか、食欲がないなどという漠然としたものが多く、膵がんが疑われることなく経過することが少なくありません。糖尿病の急な悪化は膵がんを疑う症状のひとつです。おなかやせなかの痛みや体重の減少などがみられます。

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診断

膵がんを疑った場合、まず行われるのは腫瘍マーカーを含めた血液検査と腹部超音波検査や腹部 CT 検査、MRI/MRCP検査などの画像診断検査です。

膵がんの代表的な腫瘍マーカーは CA19-9です。画像診断では、膵がんの存在を示唆する主膵管の拡張がないか、膵がんそのものが写っていないかが検討されます。造影CT は膵がんの存在診断にとても役に立ちます。小さな膵がんをみつけるために、胃・十二指腸内から膵臓をくまなく観察する超音波内視鏡(EUS)検査も非常に有用な検査です。

これらの画像で膵がんが疑われた場合は、内視鏡的逆行性膵管造影(ERCP)による膵液・膵管擦過細胞診検査や、超音波内視鏡下穿刺吸引生検(EUS-FNA)などの病理検査を加えることにより、確実な診断に迫ることが重要です。ただし、重篤な合併症もありうる検査であるため、安易な検査は禁物でもあります。

(リンク:胆膵IVR

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病期診断

病期は、手術できるか、できないかに大別できます。

膵がんを治す唯一の方法は、手術です。したがって、手術できるかできないかの判断はきわめて大事です。この判断は、セカンドオピニオンを求めるときの大きなポイントになるでしょう。

手術ができないと判断される要因は、がんが重要な血管にくっついている場合もしくは遠方の臓器に転移がある場合のふたつです。

2016年7月に、膵癌取り扱い規約が第7版に変わりました。これにより、これまで一部で混乱が起きていた国際分類と日本の分類が統一化されることになりましたが、国内分類のみで比較すると、下記のごとく、これまでステージIIIだった方が、ステージIIになるなど分類が異なりますので、何によるステージ分類かを確認する必要があります。また、第7版では、手術できるかどうかに着目した、切除可能性分類、という項目が新たに加わりました。

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治療法

●膵がんの手術

手術の成功のみが、膵がんを治す前提であり、病期診断で切除可能と判断された場合には、手術療法をお勧めします。手術の方法は、膵がんのできた場所(頭部か、体尾部か)で異なります。膵がんの手術は難易度の高い手術ですので、可能な限り定評のある病院で手術してもらうのがよいでしょう。病期診断で手術できない時期と判断された場合、特に、転移がなく、周囲の血管への拡がりのみによって手術できないと判断された場合には、施設によっては手術可能と判断される場合もありますので、経験豊富な病院にセカンドオピニオンを求めるのも一法です。手術できるかどうかの境界病変に対しては、化学療法を先行する試みも行われています。

膵がんの手術と成績

●膵がんの化学療法

最終的に手術できないと判断された場合、抗がん剤による全身性化学療法をお勧めします。長年、膵臓がんに対する標準療法とされてきたゲムシタビン(Gem)療法、S1療法に対し、2013年末にフルオロウラシル・レボホリナート・イリノテカン・オキサリプラチン(FOLFIRINOX)療法、2014年末にゲムシタビン・ナブパクリタキセル(Gem/nabPTX)療法など、より有効とされる治療法が保険承認され、2014年以降、一次化学療法が大きく変化してきました。また、S1療法は、術後補助化学療法(再発を予防するための化学療法)の有効性が科学的に証明されたこともあり、手術後の患者さんに多く使われています。

病期診断で T4M0と判断された場合、放射線療法も治療候補になります。抗がん剤との併用である化学放射線療法や重粒子線療法などの治療は、臨床試験というオプションとして行われることもあります。

膵がんの化学療法、治験・臨床試験

●黄疸の治療

膵頭部がんはしばしば胆管に浸潤し、(閉塞性)黄疸の原因となります。一般的には、内視鏡を使って十二指腸乳頭からがんの狭窄を越えた場所までチューブをいれます。病態によって、鼻から体外に胆汁を逃がす経鼻カテーテルやプラスチック・ステント、さらに形状記憶合金からなる、より口径の太いメタリック・ステントを使い分けています。
胆管ステントを留置した後は、胆汁や食物などによるステントの閉塞や、ステントを介した十二指腸液の胆管内逆流により、胆管炎(高熱)が生じやすい状態になります。ステントが有効な期間は平均で10ヶ月程度であり、閉塞時には交換が必要です。頻回に胆管炎を繰り返すこともあり、高熱には注意が必要です。

胆膵IVR

●膵神経内分泌腫瘍に対する化学療法

神経内分泌腫瘍(NET)とは、神経内分泌細胞とよばれる細胞からできる腫瘍で、膵臓、消化管、肺など全身のさまざまな臓器にできます。このうち、膵の神経内分泌腫瘍は、その悪性度により、高分化型(PNET-G1, G2, G3)と低分化型(NEC, 神経内分泌がん)に分類されます。高分化型に関しては、その悪性度と腫瘍量などを参考に、オクトレオチド・ランレオチドなどのソマトスタチンアナログ、エベロリムスやスニチニブなどの分子標的薬、ストレプトゾシンなどの抗がん剤が用いられます。また、ホルモン過剰産生による症状緩和には、オクトレオチドが用いられています。一方、膵神経内分泌がんに対しては、イリノテカン・シスプラチン(IP)療法もしくはエトポシド・シスプラチン(EP)療法が選択されています。

膵がんの化学療法、治験・臨床試験

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再発の診断と治療

手術ができた場合、治っていることが期待できる状況ですが、膵がんは手術後も再発することが少なくありません。したがって、手術後の最初の5年くらいは3-4ヶ月ごとに腫瘍マーカーを含めた血液検査や CT 検査などの画像診断を行い、再発の有無を確認します。手術のあとの再発は、残念ながら既に手術の段階で目に見えないがん細胞が手術で取れる範囲以上に広がっていたということなので、再発を早期診断するという考え方はありえません。再発の多くは転移ですので、再度手術することはまずありません(Chapter.4: 病期診断をご覧ください)。再発した場合は、Chapter.5で示した病期診断で手術できない時期と判断された場合と同じ治療法、すなわち抗がん剤治療が考慮されます。

再発を予防する治療を補助療法といいます。膵がんでは手術後に一定期間抗がん剤治療を行うと、手術のみで経過をみた場合にくらべて明らかに再発率が低下することがわかっています。現在、6ヶ月間のティーエスワン®療法が標準的な補助療法と考えられています。

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治癒率

膵がんは代表的な難治がんであり、あらゆるがんの中で最も生存率が不良です。手術できた方の5年生存率は10-30%くらいです。転移はないが手術できない方(規約第7版のステージV)の1年生存率は30-50%くらい、転移があるため手術ができない方(規約第7版のステージW)の1年生存率は10-30%くらいです。

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