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診療科・部門紹介
診療科・部門紹介

集中治療部

集中治療部

最終更新日 : 2023年9月25日

はじめに|診療体制|スタッフ紹介施設認定等その他

診療体制

■ 施設の概要

ベッド数約686床のがん専門病院の中にある10床のICU(特定集中治療管理料 3)です。救急科、集中治療科、麻酔科の専門医資格を持つ集中治療部の医師3名が専従し、消化器外科の医師が専任する体制とし済生会中央病院の救急診療科医師(非常勤)、36名の専従看護師(急性・重症患者看護専門看護師1名)、専任臨床工学技士、専任管理栄養士、専任薬剤師、兼任理学療法士、歯科医師及び歯科衛生士等の多職種で構成するチームによる安全で質の高い医療を提供する努力に務めています。

(多職種カンファレンスと多職種による集学的なアプローチ体制)
多職種カンファレンス

特徴

食道外科、肝胆膵外科、頭頸科などの術後入室が約7割と多くを占める外科系ICUですが、2015年8月から院内急変体制の構成を再編し、救急医療チーム(Medical Emergency Team,MET)を立ち上げたことで院内救急等での急性呼吸不全や敗血症性ショックといった緊急入室も約3割と増加傾向にあります。当初はOpen ICUの運用体制で開始されましたが、2015年よりElective critical care consultation体制とし、2020年度には、集中治療専従医が全患者の治療方針に介入するMandatory critical care consultation体制のHigh intensity ICUとなりました。主治医チームをサポートする形で、ICU専従医師が中心となり治療方針の策定やベッドサイド処置、人工呼吸器の設定や管理、腎代替療法に参加して最善の治療を提供する努力に務めると共に多職種による早期離床・リハビテーションも実践しています。尚、当院では脳血管疾患や循環器疾患等に対する専門的な治療は自院だけで完遂することが出来ないため済生会中央病院や昭和大学江東豊洲病院等との病院連携で最善の治療を提供する体制としています。

 

(早期離床・リハビリテーション)
(早期離床・リハビリテーション)

診療実績

昨年度(2022/4/1〜2023/3/31)は入室患者数1,010人,平均在室日数2.8日,病床利用率は78%でした。コロナ禍が落ち着きをみせ、減少していた手術件数も増加傾向にあり、それに応じて入室患者数も復調傾向となりました。院内急変原因として最も多いのは呼吸不全であり、ICU入室患者の約1割程度が人工呼吸療法を必要としています。また、当院は院内に透析室がないため、腎代替療法が必要となった場合は全例をICUで治療していることも特徴で主治医チームとICU専従医師で治療方針を協議・決定し専任臨床工学技士が実務を担当しています。

(入室患者数の動向)

(入室患者数の動向)

*2014/8までは8床、2014/9以降は10床での運用。

 

(人工呼吸療法延べ件数)
(人工呼吸療法延べ件数)
(腎代替療法)
(腎代替療法)

がん患者さんの集中治療とは

ここでがん患者さんの集中治療についてご紹介します。

がん患者さんの約5%はICU入室を経験し、また、ICU入室患者さんの約15%はがん患者さんで占められるとされています。がん患者さんのICU入室理由を表1に示しますが、がん患者さんは闘病中にこのような様々な急性病態を呈することがあります。がん自体の病勢進行の制御具合と、急性病態の重症度の両方を十分に勘案して治療にあたる必要があります。近年、革新的ながん薬物療法の開発と、臓器補助技術の画期的な進歩により、ICU治療を要したがん患者さんの生存率は向上しています。

ICUでの治療内容は管理方法の視点から主に以下の4つに分けられます。

  1. フルコードICU管理
    対象:根治的がん治療法がある、寛解期、予後が1年以上の患者さんなど。
    治療内容:ICUリソースの制限なく完全な臓器サポート(侵襲的人工呼吸、昇圧剤・降圧剤、腎代替療法、補助循環装置など)を実施。
  2. 期限を設けたフルコードICUトライアル管理(Time limited trial)
    対象:進行期のがんであるが、がん治療の途中で発生した急性期病態が、可逆的か非可逆的かの判断が難しい患者さんなど。
    治療内容:期間を限定してフルコード状態でICU管理を実施。フルコードの期間は一定ではなく、患者さんの臨床経過に応じて判断する必要があるが、血液疾患患者では約2週間(多臓器不全の場合は1週間)、固形がん患者では約1週間(多臓器不全の場合は4〜5日)を目処に治療の継続を判断していく。
  3. モニタリング強化・緩和導入目的のICU管理
    対象:新薬(治験なども含む)の使用によって起こる有害事象の内容や程度が不明な場合や、既存の抗がん剤投与による重篤な有害事象の発生リスクが高い場合(例:化学療法開始に伴う腫瘍崩壊症候群や急性呼吸不全のリスクが高い患者)、非侵襲的戦略で医療を最適化するための緩和治療を導入する目的の患者さんなど。
    治療内容:非侵襲的陽圧換気導入、侵襲的血行動態モニタリングを行わない昇圧剤使用、電気的除細動、気胸ドレナージ、疼痛緩和・せん妄治療薬の最適化などを実施。
  4. ICUでの管理が適さないと考えられる患者さん
    対象:がんの進行により著しく衰弱しており今後のがん治療継続が困難な場合、蘇生行為や侵襲的処置を希望していない患者さんは、原則としてICUでの管理は適さないとされています。しかし、患者さんの病態やご家族毎の病状理解も様々であり、腫瘍治療医、集中治療医、各科臓器専門医などがチームで情報を共有し、それぞれに応じた最良の医療を提供すべく方針を決定しております。
表1.がん患者さんの集中治療室入室理由
誘因 具体例
術後ケア 予定または緊急
呼吸不全 (1) 感染性:細菌、 ウィルス、 真菌
(2)非感染性:びまん性肺胞出血、 間質性肺疾患、 薬剤性肺障害、 輸血関連急性肺障害
循環不全 心原性ショック、 薬剤性心筋炎/心筋症、 急性冠症候群、 肺塞栓症、 敗血症性ショック
中枢神経障害 (1)代謝:低ナトリウム血症、 DKA、 薬剤副作用、 てんかん、 CO2ナルコーシス、 多臓器不全
(2)頭蓋内占拠性病変:腫瘍浸潤/出血、 中枢神経感染
(3)その他: 脳症、 脳炎、 せん妄
凝固障害・出血関連 術後や腫瘍浸潤による出血、 DIC、 血小板減少症
慢性疾患の急性増悪 慢性心不全、 慢性閉塞性肺疾患、 慢性腎不全、 慢性肝障害
オンコロジックエマージェンシー 心タンポナーデ、腫瘍崩壊症候群、 上大静脈症候群、高カルシウム血症
その他 治験薬など新規治療薬開始時の重篤副作用モニタリング、 緩和ケアの導入

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