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頭頸科

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頭頸部がんとは

三谷浩樹
三谷浩樹
頭頸科部長

はじめに

「頭頸部がん」は耳慣れない言葉ですが、簡単に言えば「耳鼻咽喉科が担当するがん」であり、「鎖骨から上で脳と眼球、顔面皮膚を除く部位」を取り扱います。病名としては、口腔がん(舌がん)、喉頭がん、咽頭がん、甲状腺がんなどが含まれます。

口腔(舌、歯肉、口腔底、頬粘膜、口蓋) 口腔がんについて
咽頭(上咽頭、中咽頭、下咽頭) 咽頭がんについて
喉頭 喉頭がんについて
副鼻腔(上顎洞、篩骨洞、蝶形骨洞) 上顎洞がんについて
唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺) 唾液腺がんについて
甲状腺 甲状腺がんについて

1 頭頸部がんの特徴

口腔・咽頭・喉頭のがんでこの部分の機能に障害が起きると「話せない」「食べられない」ことにつながり、「蓄膿症だと思っていたが、実は上顎がんであった・・・」となれば治療により顔ぼうが変わる等、社会生活上のハンデを負います。

また、感覚器としての鼻や舌の機能が障害されると、嗅覚・味覚が損なわれ「何を食べてもおいしくない。つらいです。」となれば普段の食事さえも味気ない毎日となることでしょう。

このように、頭頸部がんは「人として生きていく機能」が集中している部位ですので、患者さんは「がんを治す」ことと引き換えに機能面で何らかの犠牲を払わなければならない場面に直面します。したがって、治療法を組み立てる際には「失われる機能」と「残せる機能」、そして「期待できる根治性」を的確に判断することが肝要となります。

たとえ同じステージでも年齢、社会的な立場、人生観などで実際に選ぶ治療はさまざまであり、そのいずれかの治療においても根治性と生活の質をバランスよく配分する必要があることが特徴です。

2 頭頸部がんの頻度

頭頸部がんの全がんに対する割合は、5大がんである胃がん、大腸がん、肺がん、子宮がん、乳がんの計65%に比べ5%と低く、さらに頭頸部がんは細かく8部位(咽頭がん、喉頭がん、口腔がん・・・)に分かれており個々の発生頻度はさらに低くなっています(一番多い舌がんでも全がんの1%強です)。しかも、舌がんは手術がよい、咽頭がんは放射線治療がよく効く、など部位毎に治療法が異なっていることが特徴です。

組織学的には「扁平上皮がん」が大多数です。性差・年齢は、男性で60才以上に多いのですが、最近では80才以上の高齢者でも全身状態に応じたがん治療の対象になります。一方、甲状腺がんは病理組織学的には乳頭がんが多く、女性に多いのが特徴です。

近年の傾向として「口腔・咽頭がん」は増加しており、「喉頭がん」は喫煙率の低下により減っています。リスク因子としては、飲酒・喫煙・口腔の衛生不良があげられ、また、近年中咽頭がんの50%はヒトパピローマウイルスの関与があることがわかってきました。

3 頭頸部がんの診断

視診・触診が基本です。口の中は直接観察できますし、触診による進行度の把握も重要です。頸部の異常も注意深く触れば腫脹を触知することができます。口から奥にあって直接見ることができない部位はファイバースコープで観察します。がんを疑えばその場で生検(6ミリ程度の小さな器具で組織を採取すること)も可能です。

原発巣ならびに頸部転移の評価としては超音波・細胞診・造影CT・MRIを基本とし遠隔転移の評価は肺CT、進行例ではPETも併せて施行し進展範囲を診断します。

そして、得られた結果すべてを基にステージを決定します。

また頭頸部と同様に飲酒や喫煙が発症のリスクとなる胃や食道に重複がんがみられることも15%程度あります。胃や食道のスクリーニングのため上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)も併せて施行します。

画像の読影も画像診断部と合同で行っています

4 頭頸部がんの治療

手術・放射線治療・化学療法が基本です。治療の位置付けですが、単独で根治治療となり得るのは手術と放射線治療です。化学療法の役割は「補助として放射線治療に加えて治療効果を高める」、「化学療法を先行して腫瘍縮小化を期待し、その後に手術や放射線治療を行う」、あるいは「手術ができない、あるいは肺転移・骨転移等で延命効果を期待して使用する」とされています。

進行度別の治療概略ですが、ステージT・Uの早期がんでは手術や単独放射線治療が基本です。一方、ステージV・WAの進行がんの治療法は、3〜4時間程度で終わる中規模な手術から組織移植が必要な8時間以上かかるような大がかりな手術が適応となる場合もあれば、手術せずに抗がん剤を併用した化学放射線治療で根治を目指す方法も選択肢となります。

切除・再建長時間手術の様子

5 頭頸部がんの放射線治療

放射線治療における照射技術の発達は目覚ましく、「強度変調・放射線治療:IMRT」が頭頸部に多く適用されています。従来法は放射線ビームが「一定方向」、「一定の力」で照射されていたのに対し、IMRTでは「自由に」「放射線の強弱」が設定できるようになりました。

IMRTで耳下腺、口腔、脊髄の線量を低減しながら高線量を必要な領域に集中して当てることは、高い治療効果を維持しながら「味がわからない」「唾液が出ない」「ノドが渇く」といった放射線による副障害の軽減につながっています。

6 頭頸部がんの治療成績とスクリーニング

ステージT・Uまでの早期がんの状態で発見できれば、2〜3時間の手術や放射線治療で80〜94%の5年粗生存率が得られ生活の質も発症前の状態近くまで回復しますが、進行がんの5年粗生存率はステージVで60〜70%、ステージWAでは40〜50%です。また、大きな手術が必要となれば「食べる機能」「話す機能」に何らかの影響を及ぼします。

早期発見はがん治療を行う上で重要なポイントです。舌がん・歯肉がん等の口腔がんは耳鼻咽喉科・歯科はもちろんのこと、内科や診療所の医師からも口腔内の診察により異常を発見されることがありますが、口の中以外は「他の診療科の医師には馴染みが薄い場所」に存在しているのも事実です。

耳鼻咽喉科では鼻やのどのファイバースコープ検査は簡便に可能で、視診での異常所見がきっかけで多くの頭頸部がんが発見されています。「痛みがちょっと長引いているな」「クビに腫れ物がある」と感じられたら是非一度、お近くの耳鼻咽喉科での診察を受けられるようお勧めします。

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