
脳腫瘍外科
脳腫瘍外科
診療科の特徴|スタッフ紹介
2023年4月に新規に開設された診療科となります
宮北 康二
脳腫瘍外科部長
脳腫瘍外科は2023年4月から新設された診療科となります。よろしくお願いいたします。これまで当院には脳神経を専門とした外科診療科がありませんでした。従いまして当然のことながら脳腫瘍の疑いで受診された方も、当院で治療経過中に転移性脳腫瘍を発症された方もそのほとんどが他施設に治療をお願いせざるを得ない状況でした。今後は頭蓋内に出来たすべての脳腫瘍を対象として治療方針を検討、提示させていただいたうえで納得のいく治療を提供できるようにいたします。
脳腫瘍の分類は脳実質や脳を覆う膜、神経の鞘などから発生する原発性脳腫瘍と、他臓器のがんが脳に進展する転移性脳腫瘍に大別できますが、いずれの分野においても精力的に治療をおこないたいと考えております。脳腫瘍の種類によっては他施設での専門的治療を受けられる方がよいと判断することもあります。その際にはご本人とも相談をして適切な施設へ紹介をさせていただきます。セカンドオピニオンも対応いたしますので遠慮なく話を聞きに、相談にいらしてください。
転移性脳腫瘍について
がん罹患者数は100万人、がん死亡者数は40万人を超え、治療経過中に10〜30%が脳への転移を指摘され、その30%以上が脳への転移が原因で亡くなるといわれています。がんの治療成績が改善するのはよいことですが結果として脳への転移も増加し、脳腫瘍外科の担う役割はさらに重要になってきております。転移性脳腫瘍の治療のこれまでは、大きさや個数によって手術の必要性を判断して、手術を行わなければ放射線治療のみを行うという方針でしたが、そのような時代は終わりました。もちろん手術治療の担う役割は今も重要でありますが、急速に発達している遺伝子診断とそれに伴う薬物療法の恩恵により、かつては無効とされていた薬物療法も改善されてきております。脳の転移巣を薬物で制御できる場合もありますので、原発巣を担当する各診療科の医師や放射線治療医と密に連携をして治療をすすめてまいります。緩和的治療を選択することが必要となる方もいるかと思いますが、今ある最善の治療を提供できるようにいたします。
原発性脳腫瘍について
脳実質から発生する原発性脳腫瘍、膠腫(グリオーマ)の治療には特に力を入れていきたいと考えております。もちろん髄膜腫をはじめとした良性脳腫瘍の手術も積極的に行います。悪性腫瘍である膠腫が疑われるときは診断と腫瘍容積減量を目的に手術を行ったのちに放射線治療、薬物療法の両者もしくはいずれかを選択することとなります。診断によっては手術のみで経過を見ることもあります。
中枢神経に安全かつ確実な手術を行うためには、神経機能を正しく評価し、実際の手術ではナビゲーションシステム、脳波測定機器などを使用して神経機能の温存を図り、最大限の腫瘍切除に努めます。切除組織はがん研有明病院の病理部で遺伝子解析を含めた病理診断の検討を行い正確な診断のもと放射線治療、薬物療法を開始します。膠腫の治療を行うに際しては、遺伝子診断なくして治療は進められない時代となっております。
全職種(チーム医療)での治療が大切です
脳腫瘍治療は、われわれ医師だけでは当然成り立ちません。看護師は、家族構成(介護者)と神経機能にあわせた生活環境の整備を行い、日々の治療や生活における注意点の確認などを行います。診療開始と同時にリハビリテーション療法士と神経機能の維持、改善を図ることも重要です。薬剤師と一緒に薬物療法の注意点、問題点を理解していただき、栄養士により食事摂取の状況を確認して、嚥下状態に合わせた食事形態の選択も必要となります。放射線技師による適切な質の良い画像検査の提供や放射線治療科医とともに放射線治療を実施します。転移性脳腫瘍の方は原発巣(元のがん)の診療を行っている先生と状態を確認しながら協同して治療をすすめます。退院後の生活や社会復帰を視野にいれて、社会福祉士との相談もすすめながら治療を継続していきます。
全職員が一つとなって、より良い治療を提供できるように努力いたします。そして居住地である地域の先生方とも十分な連携を図りながら治療を進めたいと考えております。