診療科・部門紹介
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胃外科

胃外科

最終更新日 : 2023年6月14日

診療科の特徴

布部創也
布部創也
院長補佐
胃外科部長

@ 残せる胃は残す

胃切除後には体重が10-20%程度減少することが知られています。とくに胃全摘では、大きな手術であることや術後に食事量が減ることなどにより、体重が著明に減少し術後の生活の質に大きく影響することが報告されています。そこで当科では可能な限り「胃全摘を避ける」ことを一つの大きな目標として診療に当たっており、通常胃全摘が必要と判断されるような症例でも、胃亜全摘術や噴門側胃切除術にて胃を温存することが可能となっています (図1)。しかし、胃の温存のためには、外科医の手術手技だけでなく、消化器内科医による的確な術前診断や手術中の内視鏡検査などもきわめて重要であり、外科・内科・放射線科などによるカンファレンスを毎週行い、胃がんチームとして力を合わせ取り組んでいます。

日本胃癌学会が施行した2007年の全国統計では、胃切除術に占める胃全摘術の割合は約30%と報告されていますが、当科では2015年に施行した胃切除術に占める胃全摘術の割合は約15%であり、特に早期胃がんでは1.9%にとどまっていました。可能な限り胃全摘を避けることを目標に掲げたチーム医療の取り組みの成果が挙がっていると考えられます。「胃を残して欲しい」ということは当科にセカンドオピニオンを求めて受診される患者さんの強い要望であり、この要望に少しでも多く答えることができるように更なる努力を重ねています。
詳細は、「「患者さんに優しい治療」を目指して:胃を残す取り組み」の項目をご覧ください。

図1. 胃を残す工夫

噴門側胃切除術
噴門側胃切除術
胃亜全摘術
胃亜全摘術

A 大きなリンパ節転移を伴う胃がんや、切除不能な胃がんの治療もあきらめない

【術前化学療法】

胃から少し離れた場所に、大きなリンパ節転移が存在する症例は手術のみで治すことが困難と考えられており、手術と抗がん剤治療を組み合わせた治療を行います。そこで、新たな取り組みとして、手術前に抗がん剤治療を行い、がんの勢いを抑えてから手術を行う術前化学療法も積極的に行っています (図2)。

【切除不能胃がんに対する化学療法】

診断時に既に胃以外の臓器への転移(肝転移や腹膜播種といった遠隔転移)がみられる症例は切除不能とされ、治癒は断念して化学療法を行い、できるだけの延命を目指すことになります。しかし、近年、延命のためと考えていた化学療法がとても良く効いて遠隔転移が消え、諦めていた切除が可能になる患者さんに遭遇するようになりました (図3)。

このように外科と化学療法科が力を合わせて、治癒が困難とされてきた胃がんに対しても積極的に治療に取り組んでいます。

図2. 術前化学療法の治療効果
術前化学療法の治療効果

図3. 切除不能胃がんに対する化学療法の一例
術前化学療法の治療効果

図3の説明)門脈の中へ腫瘍が入り込んでいたため(門脈腫瘍栓)、切除不能と診断されていました。化学療法後、原発巣は著明に縮小し、門脈腫瘍栓は消失しました。この症例は胃全摘術により治癒切除を行うことができました。

動画紹介

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