
臨床研究企画戦略部(先進がん治療開発センター)
臨床研究企画戦略部のご紹介
浅井 洋 部長
臨床研究企画戦略部は「臨床研究企画推進室」と「データサイエンス室」の2室より組織されています。以下、臨床研究企画戦略部と各室の担当業務ついてご紹介いたします。
臨床研究企画戦略部の使命は、がん患者さんのために新しい治療法開発を目指す臨床研究が確実にゴールを達成できるよう、研究者を支援することです。
臨床現場で得た直感や疑問(Clinical Question,CQ)をどう解決したらよいか? CQを臨床現場で役立つエビデンスにするため、自ら研究責任者として臨床研究を行いたいと考えている臨床医・研究者は多いと思います。
臨床研究を実施するには、研究立案から結果発表に至る各段階でたくさんのやるべきことがあります。具体的には、研究デザイン策定、研究実施計画書(プロトコール)作成、治験調整事務局/研究事務局、データマネジメント、統計解析、総括報告書作成や論文投稿などです。時に、医薬品医療機器総合機構(PMDA)等の規制当局との相談や競争的資金獲得のためのGrant申請も必要になり、これらの業務の進捗管理・課題解決のためにはプロジェクトマネジメントも必須です。
残念ながら、これらのすべてを、多忙な臨床医が一人では行えません。なぜなら、臨床医は医学・医療の専門家であって、必ずしも臨床研究の専門家ではないと考えられるからです。特に、質の高い臨床研究を目指そうとすれば、当然ですが、前掲の各業務の専門家との協働が必須となります。
臨床研究企画戦略部では、がん研究会の臨床医・研究者の方々に対し、高質の臨床研究・医師主導治験等を効率的に進められるよう、臨床研究各業務の専門家の立場で、業務支援をしています。主な支援内容は、図1にあげた3つです。
ひとつめは、臨床研究実務支援です。具体的には、研究の各段階で必要になる業務(図2参照)のすべて又は一部(研究の種別によって異なる)の支援です。
研究者の先生方が臨床研究企画戦略部の支援を希望される場合には、まず「支援研究選定委員会」*に申請していただくことになります。支援研究選定委員会で、当該研究に対する支援が妥当と判断され、かつ臨床研究企画戦略部のリソース上の問題がないとなった後に、支援が開始されます。場合によっては、外部へ業務を委託することもありますが、その場合も開発業務受託機関(CRO)等の選定に関して支援します。
二つめは、「臨床研究よろず相談室」*と称して、研究立案から出口戦略まで、臨床研究に関する全般的なコンサルテーションの運営です。臨床研究よろず相談室は、研究者の方々からの相談事項について、部内の生物統計家やスタディマネージャーらがそれぞれの専門的な立場で助言をし、解決策を導き出す場となっています。
*申請方法・コンタクト先については、デスクネッツに掲載していますので、そちらをご参照ください(がん研内の皆様のみ閲覧可能)
三つめは、質の高い臨床研究を自ら企画・実施できる研究者及び研究協力者を育成できるよう、教育的側面から支援することです。座学だけでなく、事例に基づいて実際にプロトコールを作成してみるといったハンズオンセミナーの企画も計画中です。
臨床研究企画推進室
高質な臨床研究を実施するには、一般的に以下の3つの要件を満たす必要があります。
- 臨床研究を実施する根拠(rationale)が明確である
- 研究デザインが妥当で、その選択根拠が明確である
- 研究参加者の安全とデータの品質が担保される
言い換えれば、研究の質は、如何に科学的・倫理的な研究計画を立案できるかにかかっており、つまりは「研究実施計画書(プロトコール)の出来具合で決まる」と言っても過言ではありません。臨床研究企画推進室では、メディカルライター・スタディマネージャーが、生物統計家やデータマネージャーとの協働で、科学的・倫理的に妥当なプロトコール作成の支援をします。また、総括報告書作成や論文投稿、PMDAや規制当局との相談資料やGrant writingなども支援します。
どんなに優れた研究計画であっても、準拠すべき規制要件を満たして実施されなければ、公正な研究結果を得ることはできません。スタディマネージャーは、医師主導治験や特定臨床研究の開始から終了まで、GCPや臨床研究法で求められるタスクをスケジュール通りに遂行できるよう、極めて多岐にわたる調整業務を支援します。
データサイエンス室
臨床研究を成功裏に導く鍵は、計画段階から、生物統計家やデータマネージャーと密接に連携することです。なぜなら、不適切な研究計画やデータ管理から得られる結果は、どんなに優れた統計解析を行っても”Garbage in、 garbage out”になるからです。
データサイエンス室では、生物統計家が臨床医と相談しながら、研究目的に合致した研究デザイン、研究対象集団、エンドポイント、サンプルサイズの設定、欠測値・経時的測定データの扱い等を含む統計解析計画全般の業務を支援しています。また、適宜、論文作成や査読への対応も行っています。
データマネージャーは、症例報告書作成、EDC構築、データマネジメント計画書やSOP作成、データクリーニング業務、モニタリング報告書作成に従事し、臨床研究におけるデータマネジメント業務を効率的に実施しています(図3)。