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診療科・部門紹介
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皮膚腫瘍科

皮膚腫瘍科

最終更新日 : 2022年4月21日

皮膚腫瘍科とは|皮膚がんとは|メラノーマ(悪性黒色腫)に関する情報有棘細胞癌に関する情報乳房外パジェット病に関する情報血管肉腫に関する情報基底細胞癌に関する情報スタッフ紹介

皮膚がんとは

皮膚がん」について知りましょう

皮膚のどこから発生したかによって、病気も治療法も異なる

「このメラノーマは、皮膚がんですか?」

「皮膚がんや悪性黒色腫(メラノーマ)」という言葉を耳にされたことがあるかと思います。ただ、その言葉の意味はというと、多くの方はあまりごぞんじないのではないでしょうか。実は、「皮膚がん」というのは、特定の病気の名前ではなく、皮膚にできるさまざまながんの総称なのです。「メラノーマ」「基底細胞がん」「有棘細胞がん」などというものが、病気の名前です。外来診療では、例えばメラノーマと診断された患者さんに、病気や治療について説明をし、今後の治療方針について考えていきます。一通りの説明が終わったところで、患者さんから「ところで、このメラノーマって、皮膚がんなのですか?」「これは、悪性なのですか?」という質問がよくあります。一般には「皮膚がんとは何か」があまり知られていないのですが、悪性の腫瘍であり、治療をしなければ大きくもなりますし、転移もします。

「取れば治る?」皮膚がんの誤解

皮膚がんは、発生当初はちょっとした皮膚の変化だけで、痛みやかゆみなどもほとんどありません。そのため、皮膚の変化に気がついても「皮膚がん? まさかね」と思いながら放っておいてしまう人も少なくありません。また、「皮膚がんは、取ってしまえばすぐに治る」と考えている人も多いようです。皮膚がんが、皮膚の表面、わずか0.2mmほどしかない表皮にとどまっているうちならば、悪性度が高いといわれる皮膚がんのなかの「メラノーマ」であっても、切除するだけで治療は終わります。しかし、病気が進行してがん細胞が表皮の下にある真皮に入り込むと、転移する可能性が出てきます。

その理由は、皮膚の構造にあります。

  • 皮膚の構造

    皮膚は表面に近い部分から、表皮、真皮、皮下組織の3層構造になっています(図1)。

図1:出典 吉野公二著「皮膚がん」より抜粋

表皮は平均約0.2mmと非常に薄く、それが角質層、顆粒層、有棘層、基底層の4層に分かれています。その95%が角化細胞で構成されています。角化細胞とは、表皮の最下層の基底層(基底細胞)で分裂して順次、皮膚表面へ移行し、最後は垢(アカ)となる細胞です。

表皮の下にあるのが真皮です。部位によって異なりますが、平均約2mmの厚さがあります。真皮は、コラーゲンなどのタンパク質から構成されていて、汗を分泌する汗腺や皮脂を分泌する脂腺、毛を取り囲む毛包、血管やリンパ管などが存在しています。

皮膚がんが転移するしくみ

図1を見てもわかるように、表皮には血管がありません。がん細胞は血液やリンパ液に運ばれて転移します。ですから、がんが血管のない表皮にとどまっているうちは、転移しません。しかし、その下の真皮には血管やリンパ管が存在します。がんが真皮に入りこむと、血管やリンパ管を通じてがん細胞がからだに散らばり、脳、肺、肝臓、腎臓などに転移する可能性が出てきます。皮膚がんによって命を脅かされることもあるのです。また、転移はしていなくても、がんが広がってくると切除範囲は大きくなります。そうなると機能的にも整容的にも障害が大きくなりますし、切除したところを修復するために、ほかの部位から皮膚を移植するなど、体の負担も大きくなります。ですから、内臓にできるがんと同じく、皮膚がんにおいても早期発見、早期治療が非常に大切です。

このような症状には要注意

以下のような皮膚の変化があったら、すぐに皮膚科を受診したほうが良いでしょう。

  • ここ数ヵ月で急に、ほくろが大きくなった、盛り上がってきた、出血した
  • シミが急に大きく(6mm以上)広がってできた
  • 左右非対称で縁がギザギザのほくろができた
  • 爪に黒い線が入った
  • 顔や手、お尻などにできた湿疹が、ステロイド軟膏を使っても2週間以上治らない
  • 昔やけどをしたり怪我をした部分に湿疹のようなものができて治らない
  • 陰部や肛門周辺などに、赤い斑点や皮膚の一部が白くなったような湿疹ができた
  • 最近、頭をぶつけたところの、あざが治らない
  • 以前リンパ節を郭清し、リンパ浮腫があった腕や足にあざのようなものができた

受診の結果、皮膚がんが疑われる場合は、さらに詳しい検査・診断ができるよう皮膚腫瘍の専門家がいる病院を紹介してもらいましょう。紹介先については、日本皮膚科学会が皮膚悪性腫瘍に関する診療技術と知識をもつ医師を認定する「皮膚悪性腫瘍指導専門医」という制度があり、これも手がかりになります。

ほくろと皮膚がん、どう違う?

皮膚が黒や褐色に変化するものとして、ほくろやシミ、脂漏性角化症(老人性いぼ)、基底細胞がん、メラノーマなどがあります。これらは、皮膚科医でも肉眼で見ただけでは区別がつかないことがあります。その場合、ダーモスコピーという拡大鏡で細部を詳しく観察して、はじめて診断がつきます。それでもわからないときは、皮膚の組織を取って検査する「皮膚生検」を行う必要があります。10年前からあるほくろでも、この数力月で急に大きくなってきた場合は、皮膚がんを疑います。しかし、これはほくろががん化したということではありません。 10年前からあったものが、今メラノーマと診断されたとしても、発生当時からメラノーマだったのです。ですから、「これはずっと前からあったほくろだから」と自己判断せずに、急に大きくなった場合は皮膚科でしっかりと調べてもらうことが重要です。

さまざまな性格をもつ、皮膚がん

「皮膚がん」とは、表皮のなかにある細胞ががん化したものを指します(図2)。それに対して、真皮から下にある組織ががん化したものを「肉腫」と呼びます。同じように皮膚にできたように見える病気でも「がん」と「肉腫」では、発生した組織が異なります。

さらに「皮膚がん」はどの細胞から発生したのかによっても、性格が異なり、それぞれ発症数も異なります(表1)。

図2:出典 吉野公二著「皮膚がん」より抜粋
表1:出典 吉野公二著「皮膚がん」より抜粋

表皮の基底層から発生したものが「基底細胞がん」です。皮膚がんのなかでは一番発生が多く、転移することはほとんどありませんが再発が多いがんです。「有棘細胞がん」は、表皮のなかの有棘層ががん化したものです。高齢者の顔や手足などに発生することが多く、加齢とともに罹患者が増えていきます。昔のやけどの傷あとに発生することもあります。また、このがんは、特有の臭気を伴うのも特徴の1つです。「乳房外パジェット病」は、汗腺の1つである「アポクリン腺」に由来するといわれています。外陰部や肛門周囲に多く発生し、ときに、脇の下などにも発生します。見えづらく、また人に相談しにくい部位だけに受診が遅れ、診断されたときには大きく広がっていることも少なくないがんです。そして、基底層にある色素細胞から発生したがんが「メラノーマ」で、爪にも発生します。ほくろと区別がつきにくく、病気の進行が早い、悪性度の高いがんです。皮膚科で診るがんとして「血管肉腫」があります。正確な分類では「皮膚がん」ではなく「肉腫」に含まれ、血管の内側の細胞から発生します。高齢者の頭の怪我を契機に発症することがあり、非常にまれですが、悪性度は高く注意が必要ながんです。

自分の「がん」を知ることが治療への第一歩

このように、「皮膚がん」は、それぞれ発生母地が異なっており、皮膚のなかの何ががん化したかによって、病気の経過も治療も異なります。ですから、これからがんに立ち向かっていくにあたっては、自分は何の皮膚がんなのかを知ることがとても大事なのです。

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