印刷

診療科・部門紹介
診療科・部門紹介

皮膚腫瘍科

皮膚腫瘍科

最終更新日 : 2022年4月21日

皮膚腫瘍科とは皮膚がんとはメラノーマ(悪性黒色腫)に関する情報|有棘細胞癌に関する情報|乳房外パジェット病に関する情報血管肉腫に関する情報基底細胞癌に関する情報スタッフ紹介

有棘細胞がん

ゆうきょくさいぼうがん Squamous Cell Carcinoma: SCC

紫外線の影響で顔にできやすいがん 手術、放射線、化学療法からベストな選択を

どんながん?

  • 発生・部位

    表皮の中間にある「有棘層」を構成する細胞から発生するがんです。高齢者に多く、加齢とともに罹患者が増えていきます。紫外線を浴びやすい顔や手足などに発生することが多い一方、何十年も前に受けたやけどや傷の痕や、放射線治療を受けた部位に発生することもあります。また、女性の外陰部に発生することもあり、これは子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)が関与していると考えられています。男性で亀頭部分に発生するケ−ラー(Queyrat)紅色肥厚症はHPVが関与すると考えられており、これは有棘細胞がんの前駆症状とされています。

  • 症状

    初期の有棘細胞がんは、一見すると湿疹に見えます。湿疹だと思ってステロイド剤を塗って2週間以上たっても治らず、調べてみたら有棘細胞がんだったということが少なくおりません。また、お尻にニキビのような「おでき」がたくさんできて、それが破裂したり治ったりを繰り返す、「慢性膿皮症」という皮膚病があります。これが治らず、「今回は長引くな」と思っていたら「実はがんだった」ということもあります。進行すると、浸出液の多い、ぐじゅぐじゅした潰瘍になったり、カリフラワーのように盛り上がったりします。盛り上がった腫瘍のなかでがん細胞が増殖を続け、血管を破壊して突然出血することもあります。

    有棘細胞がんは、いわゆる「垢」になる一歩手前の細胞ががん化したものであり、膿のような細胞がたまりそれに細菌が付着して、独特の臭気を発します。この、例えて言えば、「ずっと洗わなかった足の裏」のような臭いが、しばしば患者さんや家族を悩ませます。

  • 経過

    がんが表皮内にとどまっていれば、転移することはほとんどありません。しかし、表皮から真皮に浸潤してくるとリンパ節に転移しやすく、さらに肺や肝臓、ときには脳に転移することがあります。ほかの皮膚がんと同じく、有棘細胞がんも表皮内にとどまっているうちに見つけて切除してしまえば、それで治療が終了します。

症状と検査

【症 状】

  • 擦り傷のようなものから大きなものまで、見た目はさまざま

    ※下記に実際の写真を掲載しております。不安になられるときは閲覧に注意してください。

    有棘細胞がんは、表皮内がん(前がん病変)と、表皮の下にある基底膜を破って進行した浸潤がんとに分類されます。紫外線が原因で発生する「日光角化症」や、ヒトパピローマウイルスが発症の一部に関与しているのではないかと考えられている「ボーエン(Bowen)病」は、浸潤がんになる一歩手前、がんがまだ表皮内にとどまっている状態です。どちらも湿疹や擦り傷のような見た目で、「日光角化症」は日焼けしやすい顔や手足に生じ、「ボーエン病」は日に当たらない部分にも発生します。放っておくと浸潤がんに進行する可能性が高く、初期に診断して治療することが重要です。また、白板症が有棘細胞がんの前駆症になる場合もあります。症状はさまざまで、擦り傷程度にしか見えない患者さんもいれば、まるで手におまんじゅうが乗ったような大きな腫瘍ができる人もいます。これまでの経験から、おまんじゅうのような派手ながんより、擦り傷程度に見えるがんのほうが、その後の経過が悪い傾向があります。大したことがなさそうに見える傷や湿疹でも、なかなか治らない場合、実はがんだったという場合があるのです。真皮内にがんが浸潤するとリンパ節転移を起こしやすくなります。

    有棘細胞がん
    日光角化症:耳介上部
    有棘細胞がん
    日光角化症:右こめかみ部
    有棘細胞がん
    ボーエン病:下腹部
    有棘細胞がん
    ボーエン病:足背
    有棘細胞がん
    有棘細胞癌:右拇指基部
    有棘細胞がん
    有棘細胞癌:右前額部

【検 査】

  • 生検後、浸潤性なら転移しているか調べる検査を

    確定診断のためには、局所麻酔をして皮膚病変の一部を切り取り、顕微鏡で組織を調べる生検が必要です。浸潤癌であることがわかれば、CT検査でリンパ節や内臓への転移の有無を調べます。

  • センチネルリンパ節生検のエビデンスは確立していない

    有棘細胞がんでのセンチネルリンパ節生検は、がんの詳しい進行度を知るためには有用です。近年、保険適用となりましたが、センチネルリンパ節生検を行うことが予後を改善するかどうかについては、データは出ていません。

治 療

  • V期までは切除し、手術できない場合は放射線治療を

    手術ができる場合と、手術ができない場合によって、治療が異なります。手術ができるのは、基本的にV期までです。V期は、がんが皮下組織を越えているか、リンパ節転移が生じていても、遠隔転移はない状態です。ただし、有棘細胞がんのリンパ節転移は周囲の組織を取り囲むように転移をする性質があるために、V期でもがんが大きいとなかなか手術で取りきれないという状況も起こりえます。がんが大きい場合、手術の前に放射線治療と化学療法を行い、がんを小さくしてから切除する方法をとることがあります。再発・転移のリスクは、がんのできた部位と大きさによって分類されます。がんと正常な皮膚との境界が不明瞭なものや、急速に大きくなってきたがん、痛みなど自覚症状を伴うがんは高リスクに分類されます。リスクの高低によって、切除の際の距離をどのくらいとるかなど、治療が変わってきます。手術ができないがんに対しては、放射線治療が比較的効果的です。転移があった場合には化学療法が選択されますが、有棘細胞がんに対してはあまり有効ではないといわれています。

【手術】

  • 再発リスクに適した距離を保ち、最大10mm離して切除

    内臓への転移が起きていないV期までの場合は、手術でがんを切除します。切除後は大きさにもよりますが、縫縮、または植皮、もしくは皮弁による再建をします。がんが深部まで浸潤していて、筋肉まで切除しなければならないときは、遊離皮弁が必要な場合があります。

    原発巣は最低限4mm離して切除する必要があります。切除の大きさは、リスクによって変わります。高リスクの領域にできたがんや、皮下に浸潤しているがんは、がんから6〜10mm離して切除します。

    • 術前化学療法・術前化学放射線療法
      • 化学療法で腫瘍を小さくしてから、手術を行うことも

        ほかの皮膚がんでは、術前化学療法を行うことはほとんどありませんが、有棘細胞がんは化学療法で腫瘍縮小効果を望めることがあり、術前化学療法を行う場合があります。顔や手など人目につきやすい部分に大きながんがあり、切除すると変形が大きかったり機能が失われるなどの恐れがある場合、放射線治療と化学療法を組み合わせてがんを小さくしてから手術を行うことで、切除範囲を小さくすることができます。

    • 術後放射線療法
      • 術後に放射線を照射する場合もある

        一方、切り取ったがんの端にがん細胞が残っていた場合(切除断端陽性)や、がんを切除できていても神経まで浸潤していた場合など再発の危険性が高いと考えられる場合は、手術後に放射線治療を行うことがあります。

【放射線治療】

  • 化学療法を併用する場合もある

    W期で内臓に転移のある場合は、手術が適応になりません。また、W期であっても転移を起こしているリンパ節が血管を巻き込んでいる場合も、手術が適応にならないため、放射線による治療などを行います。照射は、がんの大きさによって異なりますが、概ね総照射量50〜65Gyを4〜6週間かけて照射します。放射線の効果を増強させる目的で、化学療法を併用することもあります。

【全身化学療法】

  • 症状を和らげることを目的に行う

    日本では、「ペプロマイシン単剤」か「シスプラチン+アドリアマイシン」、もしくは「シスプラチン+5-FU」が併用されることが多いです。手術困難な進行原発巣や所属リンパ節転移に対して、こうした化学療法を使用した全身化学療法は、がんを小さくして症状を和らげる効果が期待できます。一方、生存期間を延長させる効果は乏しいといわれています。また、内臓などへの遠隔転移に対しても、有用性は不明とされています

【外用の化学療法】

  • 塗り薬で症状を緩和する

    手術や放射線治療、化学療法の適応とならない患者さんに対して、保険適用されている治療法として、「ブレオマイシン硫酸塩製剤」と「フルオロウラシル外用剤」があります。どちらも患部に塗る、外用の化学療法剤です。がんが進行し治癒は目指せない状態のなかで、がんによる症状を緩和する目的で行う局所化学療法という位置づけで使用されます。増大したがんによる出血は、「モーズ軟膏」で止血を行うことがあります。

再発に備える

有棘細胞がんは、再発はほとんどみられないがんですが、真皮内に浸潤するとリンパ節転移を起こしやすいという性質をもっています。リンパ節への転移を早期に発見するためには、患者さん自身のセルフチェックが大切です。リンパ節転移を生じた症例の60〜80%は手術から2年以内に発見されたとの報告もあり、可能であれば、毎日または毎月1回、日を決めてリンパ節を触って腫れや異変がないかチェックします。自分で触れることのできるリンパ節は首、脇の下、脚の付け根の3ヵ所です。がんのできた部位によってどこのリンパ節に転移しやすいかが決まりますので、あらかじめ医師にチェックすべきリンパ節を聞いておくと良いでしょう。異変を感じたら、すぐに医師に報告してください。

このページのTOPへ