印刷

診療科・部門紹介
診療科・部門紹介

皮膚腫瘍科

皮膚腫瘍科

最終更新日 : 2022年4月21日

皮膚腫瘍科とは皮膚がんとはメラノーマ(悪性黒色腫)に関する情報有棘細胞癌に関する情報乳房外パジェット病に関する情報血管肉腫に関する情報|基底細胞癌に関する情報|スタッフ紹介

基底細胞がん

きていさいぼうがん Basal Cell Carcinoma : BCC

皮膚がんのなかで世界で一番多いがん、転移しにくいけれど、再発に要注意

どんながん?

  • 見た目

    黒色から黒褐色のほくろのようながんです。盛り上がっていたり、中心に潰瘍ができるタイプや、シミのような平面状のタイプがあります。皮膚がんのなかで日本人のみならず世界で一番多いがんです。

  • 性状

    基底細胞がんは、表皮の最下層である基底層や毛包などを構成する細胞ががん化したものです。内臓やリンパ節に転移を起こすことは非常にまれながんですが、再発を起こしやすく、放っておくと皮膚から筋肉、骨など、深い組織へと広がっていき、組織を破壊します。

  • 発生要因・発生場所

    紫外線によって引き起こされる可能性が非常に高いと考えられており、70%が紫外線にさらされる頭や顔に発生します。そのほか、腕や足、体幹にも発生することがあります。熱傷や外傷などの瘢痕や、放射線による皮膚炎の痕にも生じるといわれています。また、高齢者に多くみられるがんで、年齢とともに発生数も増加しています。

症状と検査

※下記に実際の写真を掲載しております。不安になられるときは閲覧に注意してください。

  • 3つの性質の異なるタイプがあり、それぞれ治療が異なる。基底細胞がんは、主に3つのタイプ(病型)に分類されます。それぞれ性質が異なり、治療や再発率が変わってきます。
    • 結節・潰瘍型

      日本人の基底細胞がんの約80%と、1番多いのがこのタイプです。
      初期は、小さな黒いほくろのようですが、だんだん大きくなり盛り上がってきます。中心部がへこんで潰瘍になり、そこから出血することもあります。

    • 表在型

      シミのように平面に広がったタイプで、色は淡い紅色で、正常な皮膚との境界がはっきりしています。体幹や腕、足にできることが多いがんです。欧米人に多く、がんの厚さが薄いため、欧米ではレーザーや液体窒素で治療することもあります。

    • 斑状強皮症型

      表面に光沢のある淡い紅色〜肌色で、硬く盛り上がったタイプです。皮膚から体の深部へと広がる性質をもち、またがんと正常な皮膚との境界がわかりにくいため、切除の際には取り残しがないよう、がんの周囲を大きく切り取る必要があります。前述の結節・潰瘍型、表在型と比べて、再発を起こしやすいという性質があります。

    乳房外パジェット病<
    結節・潰瘍型: 右下眼瞼基底細胞癌(中央部が潰瘍となり、表面光沢、いわゆる蝋様光沢
    乳房外パジェット病<
    表在型: 前額部基底細胞癌(⇒のピンク色の病巣)
    乳房外パジェット病<
    斑状強皮症型
    鼻の側面に淡い紅色の病巣があり、中央部は窪んでいる

【検 査】

  • 視診を中心に必要があれば病理検査を基本的にダーモスコピーで皮膚病変を診て診断します。ダーモスコピーで判断が付かないものは、局所麻酔をして皮膚病変の一部を切り取って顕微鏡で調べる病理検査を行って判断します。内臓に転移することはほとんどないため、基本的にCT検査はしません。

治 療

  • 手術が基本 再発リスクと整容面で放射線などを検討

    基底細胞がんは、表皮という血流やリンパの流れのない組織で発生するがんです。そのため、転移している可能性は低く、表皮内にとどまっているがんの場合は、手術等による切除だけで治療が終了します。大きさや部位、進行度によって、再発リスクが分類されており、リスクの高低も考慮して治療方針が決定されます。低リスクであれば4mm、高リスクであれば5〜10mmがんから離して切除することが推奨されています。

    しかし、顔に生じることが多い腫瘍であり、この切除範囲が正しいかどうかを検証する臨床試験がJCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)で行われており、今後、切除範囲が大幅に見直される可能性があります。

【手 術】

  • 生検が必要な場合は、二期的手術を

    手術ができる部位であれば、切除をします。切除だけで治療できるがんとはいえ、再発を起こしやすいがんであるため、切除の際には取り残しがないよう注意を要します。顔に発生した場合などは、できるだけ切除範囲を小さくして侵襲を少なくしたいところですが、小さく切除してがんを取り残してしまうと再発を招き、数年後にさらに大きな切除が必要になることもあります。がんを切除した後は、小さいものはそのまま縫い合わせますが、大きい傷は植皮や皮弁など、整容面にも配慮した再建が必要になります。また、病変が大きい場合や斑状強皮症型のときには、取り残しを避けるために、切り取った組織の端にがん細胞があるかどうかを調べるための検査(病理検査)をして、がん細胞が取り切れているかどうかを確認します。病理検査の結果が出るまでには約1〜2週間かかります。そのため、1回目の手術でがんを切除した後は、切除した場所に人工真皮をかぶせるなどして、いったん手術を終了します。病理検査でがんが確実に切除できたと確認できたら、2回目の手術で切除部位を再建します。このように切除と再建を2回に分けて行うことを二期的手術といいます。上記のように再発を起こしやすい斑状強皮症型では特に、「二期的手術」を行います。万一、病理検査でがんの取り残しがわかったら、再び手術を行い、がんを切除します。

【放射線治療】

  • 局所制御率は比較的高い。機能面を考慮する場合などに選択を

    がんが大きく、目や鼻、唇など機能的・整容的な問題があって手術ができない場合や、切除後の再発のリスクが高い場合に、放射線治療が選択肢となります。電子線、あるいはX線が用いられますが、電子線のほうが照射の範囲を狭く設定することができ、確実に病巣だけに放射線を当てることができます。がんの大きさや部位にもよりますが、一般に1回線量2Gyで、総線量40〜70Gyの照射が行われます。進行期基底細胞がんに対する放射線治療の局所制御率(がんが再発または再燃しない割合)はおおむね90%前後といわれます。

【化学療法】

  • シスプラチンを用いた併用療法を

    再発を繰り返した場合、転移を起こした場合などは、抗がん薬治療を行うことがあります。基底細胞がんには、日本では「シスプラチン」と「アドリアマイシン」の併用療法が行われていますが、保険適用になっていません。海外では、「カルボプラチン」、「パクリタキセル」が使われており、「ビスモデギブ」という分子標的薬も承認されています。この薬については、局所の進行例では奏効率が43%、転移があった場合の奏効率は30%という結果が出ています。近年では、免疫チェックポイント阻害薬の抗PD-1抗体(ペムブロリズマブ)はTMB(遺伝子変異量)が多いときに、使用できるようになりました(本邦保険適用)。

【レーザー・液体窒素・イミキモド ―その他の治療法】

  • 表在型の場合に用いる治療

    基底細胞がんをレーザーや液体窒素で治療する方法は、海外では表在型に対して行われていますが、日本人は結節・潰瘍型が多く、この型のように盛り上がったタイプの基底細胞がんでは効果が低いため、日本ではほとんど行われていません。「イミキモド」は、日本では日光角化症や尖圭コンジローマで保険適用が認められている外用薬です。表在型の基底細胞がんには米国や欧州で約80%の病理的消失率が確認されていますが、結節・潰瘍型では42〜76%と効果が落ちます。

再発に備える

  • 初発時に再発リスクを抑える切除範囲を確保したい

    基底細胞がんの再発は、ほとんどの場合、元のがんがあった場所、つまり切除した場所に起こります。表面のがんは、最初の切除のときに切り取っているため、再発はより深い組織から起きることがほとんどです。ですから、再発したがんが表面に出てきたときには、皮膚のより深部へ増殖する危険性が高まります。そのため、再発手術の際は、初発のときよりも、切除範囲はかなり大きくなります。最初の手術のときには、「顔にできた小さながんなのに切除範囲が意外に大きい」と感じられる場合もあるかと思いますが、十分な範囲を切除してがんをしっかりと取りきることが重要なのは、このような再発のリスクを抑えるためなのです。

    初発の境界明瞭な基底細胞がんで、大きさが20mm以下の場合、がんから3mm離して切除したときの治癒率は87%です。4〜5mm離して切除すると治癒率は95%になります。

    また、再発例では、4〜5mm離して切除した場合の治癒率は83%でした。ただし、初発でも再発でも、高リスク部位での発症率斑状強皮症型だった場合、再発率は高くなります。

    いずれにしても、再発のリスクを軽減するに病変から距離を離して切除したほうが良いと考えられますが、顔にできることが多いがんだけに、大きく取れば問題が解決するわけではありません。整容面や機能面まで考えて、主治医と良く話し合って納得できるかたちで切除範囲を決める必要があります。上述したように、この切除範囲が正しいかどうかを検証する臨床試験がJCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)で行われており、今後、切除範囲が大幅に見直される可能性があります。

    再発までの期間については、2年以内に再発する人が再発した人全体の50%です。3年以内に再発する人が再発した人全体の66%、5年以内に再発する人が再発した人全体の80%とされています。つまり、治療から5年を過ぎたら再発のリスクは小さくなると考えられます。術後は、セルフチェックを欠かさず、何か変化があった場合はすぐに主治医に報告しましょう。何もなくても、3年間は半年〜1年に1度は医療機関で診察を受けることも大切です。

このページのTOPへ