胃外科
胃がん通信バックナンバー
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平素より多くの患者さまをご紹介いただき、心より御礼申し上げます。前号では、ピロリ菌感染率の低下に伴う胃がん患者数の減少に加え、ピロリ未感染胃がんや食道胃接合部がんの増加を背景として、内視鏡治療や外科治療のあり方が変化していること、さらに新規薬剤の登場により、胃がん治療が大きな転換期を迎えていることをご紹介しました。
また、令和8年度診療報酬改定を踏まえ、当院では地域医療機関との連携強化および逆紹介の推進に取り組んでおります。胃がん根治術後の患者さんにつきましては、術後早期から紹介元医療機関やかかりつけ医の先生方へ逆紹介を進め、日常診療や慢性疾患管理、各種検査などをご担当いただきながら、当院は専門的ながん診療を継続してまいります。
今後も地域の先生方と連携しながら質の高い胃がん診療を提供してまいりますので、胃がんと診断された患者さんがおられましたら、ぜひ当院へご紹介いただけますと幸いです。
(胃外科部長 布部 創也)
胃外科スタッフ紹介
-
布部 創也
部長 -
大橋 学
手術部長 -
入野 誠之
副部長 -
速水 克
副部長 -
李 基成
副医長
上部消化管内科スタッフ
-
後藤田 卓志
部長 -
平澤 俊明
胃担当部長 -
由雄 敏之
食道担当部長 -
石山 晃世志
副部長 -
堀内 祐介
医長 -
山本 浩之
副医長 -
福山 知香
副医長
消化器化学療法科スタッフ紹介
-
山口 研成
部長 -
陳 勁松
外来化学
療法部長 -
篠崎 英司
副部長 -
大木 暁
副部長 -
若槻 尊
医長 -
福岡 聖大
医長 -
小倉 真理子
副医長 -
宇田川 翔平
副医長 -
下嵜 啓太郎
副医長 -
吉野 光一郎
副医長
胃がん術後フォローアップにおける地域連携のお願い
令和8年度(2026年度)診療報酬改定では、大病院と地域医療機関との連携強化がこれまで以上に求められることとなり、当院においても逆紹介の推進に取り組んでおります。
胃外科領域では、根治術後の患者さんについて、術後早期から紹介元医療機関やかかりつけ医の先生方へ逆紹介を行う方針を検討しております。逆紹介後は、体調不良時の診察・検査・処方、高血圧や糖尿病などの慢性疾患管理、内視鏡検査や超音波検査などをお願いできればと考えております。
このような取り組みは、2023年度から本格運用されている紹介受診重点医療機関制度において、大病院と地域医療機関との役割分担をより明確にする流れに沿ったものです。
当院は引き続き専門的ながん診療を担う一方、地域の先生方には日常診療や慢性疾患管理をご担当いただくことで、それぞれの役割を生かした地域医療連携を進めてまいります。患者さんを地域全体で支える医療体制の構築に向け、今後ともご理解とご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
(外来統括部/消化器化学療法科 陳 勁松)
胃外科トピック
胃癌術後合併症の早期発見は、重症化予防や在院日数短縮の観点から重要です。しかし従来の予測モデルは、術前・術中因子を中心としたものが多く、術後経過中のバイタルサインや血液データを十分に活用できていませんでした。本研究は、機械学習(ML)を用いて包括的周術期データを解析し、胃癌術後合併症を時系列に予測可能か検討した多施設共同研究です。2013年から2019年に胃癌手術を受けた4139例を対象に、術前・術中・術後データを用いた4種類のMLモデルを構築しました。
その結果、直近8時間以内のデータを用いたモデルでは、膵液瘻(AUC 0.889)、腹腔内膿瘍(AUC 0.842)、肺炎(AUC 0.826)、縫合不全(AUC 0.824)に対して高い予測精度を示しました。また、主要な予測因子としてCRP、脈拍数、術中出血量が抽出されました。包括的周術期データを活用したMLモデルは、胃癌術後合併症を高精度かつリアルタイムに近い形で予測でき、早期介入や術後管理の最適化に有用となる可能性が示されました。
(胃外科 李 基成)
胃内視鏡領域のトピック
2026年3月に胃癌取扱い規約第16版が刊行されました。今回の改訂の大きな特徴は、TNM第9版およびWHO消化器腫瘍分類第6版との整合性を重視した点です。早期胃癌領域で特に注目されるのが、壁深達度分類におけるTis(carcinoma in situ:上皮内癌)の導入です。従来は上皮内に限局する病変も含めて粘膜内癌として扱われ、T1aに分類されていましたが、第16版では粘膜固有層への浸潤を伴わない病変をTis、粘膜固有層への浸潤を伴う粘膜内癌をT1aとして区別することになりました(表1,2)。これにより、これまで指摘されてきた日本独自の胃癌分類と国際分類との乖離が縮小し、病理診断や研究データの国際的な比較が容易になることが期待されます。治療方針への直接的な影響は限定的と考えられますが、今後は内視鏡治療後の病理レポート等でTisという表記を目にする機会が増えるため、その背景を理解しておくことが重要です。
(胃外科 李 基成)
化学療法トピック
化学療法科ではHER2陽性かつCLDN 18.2陽性の切除不能進行・再発胃癌に対し、ゾルベツキシマブ +トラスツズマブ + ペムブロリズマブ (CPS≥1) + CapeOX併用療法の有効性及び安全性を検討する第2相試験(ZAP-Hetero試験)を実施しています。
HER2陽性胃癌の50〜75%ではHER2蛋白が不均一に発現しており、このような症例ではトラスツズマブ併用化学療法の効果が低いことが知られています。そのため、HER2不均一発現を克服する新たな治療戦略の開発が求められていました。
CLDN 18.2は胃粘膜に特徴的に発現する膜蛋白であり、HER2陰性かつCLDN 18.2陽性胃癌に対するゾルベツキマブ併用化学療法の有効性が示されております。HER2陽性胃癌においても20‐30%の症例でCLDN 18.2の発現が認め、HER2陽性かつCLDN 18.2陽性胃癌症例の80%においてHER2不均一発現を認めました。さらに、同一腫瘍内におけるCLDN 18.2の発現割合は、HER2の発現割合と比較し有意に高いことが示されております(80% vs 25%, p = 0.015)(自験例)。
ZAP-Hetero試験では本併用療法の有効性及び安全性を検討するだけではなく、付随研究を企画し、マルチオミクス解析を通して治療効果予測因子を探索し、さらにシングルセル解析を行うことで、本併用療法が腫瘍免疫に与える影響も探索する予定です。
(消化器化学療法科 下嵜 啓太郎)
Dr.平澤の内視鏡クイズ
内視鏡の送気・送水管はスコープ内で合流し、先端の単一のノズルから排出されます。通常、空気はボタンの通気孔から逃げていますが、穴を塞ぐと先端から空気が押し出されます。ボタンを深く押し込むと、パッキンが空気逃げ道を遮断し、その圧力が送水タンクに加わって水が押し出される仕組みです。
この密閉を担うパッキンに微細な傷があると、送気時に水が随伴して噴射され、視野が妨げられてしまいます。
原因となる傷は肉眼での確認が困難なほど微小なこともあり、拡大内視鏡を用いて初めて視認できるケースもあります。したがって、目視で明らかな異常が認められなくても、トラブル発生時は予備のボタンに交換することが有効な解決策となります。
がん研有明病院では、先生方からのご紹介に対し、迅速に対応できるようにご紹介専用電話を開設しております。お困りの患者さんがいらっしゃいましたら、いつでもご連絡ください。
<ご紹介連絡先>診療予約室
電話:03−3570−0506(直通:医療機関専用)
FAX:03−3570−0254
受付時間:平日 午前8時30分〜午後4時30分


