
胃外科
胃がん通信バックナンバー
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がん研有明病院・胃グループは、チーム一丸となり、
ベストな治療を提供するために力を尽くします。
胃外科部長のご挨拶
ピロリ菌保菌率の減少に伴い、全国的に胃外科の手術件数は減少傾向にありますが、一方で食道胃接合部癌の患者さんが増加しています。機能温存を目的とした噴門側胃切除が主な外科治療ですが、標準的な再建方法はまだ確立されていません。当院では、難度が高いものの優れた逆流防止機能を持つ「観音開き法再建」を採用し、術後のQOL向上に努めております。また、食道外科とも密に連携し、患者さん一人ひとりに最適な治療を提供できるよう心がけております。患者さんのご紹介をお考えの際は、どうぞお気軽にご相談ください。(布部 創也)
化学療法内科部長のご挨拶
胃がん治療において抗がん剤治療を担当しています。検診で発見され、内視鏡治療や外科治療だけで治る方ばかりでなく、抗がん剤と組み合わせなければ手術が難しい方、抗がん剤で抑えていい時間を紡いでいかないといけない方が我々の担当です。抗がん剤の悪いイメージは過去のもので、有効性も上がり副作用対策も向上しています。新たな治療開発としての治験にも積極的に取り組んでいます。各領域の専門家が揃う専門病院ならではの治療を提供していくことを心がけて取り組んでおりますので、がんの広がりで手術が難しいかなと思われる患者さんがおられましたら、気軽にご相談いただければと思います。(山口 研成)
上部消化管内科部長のご挨拶
いつも皆様の大切な患者様をご紹介頂きありがとうございます。がん研有明病院の胃ESD件数が全国1位を維持できているのは皆様の適確な診断があってのことと感謝しております。ピロリ除菌による従来の内視鏡診断学が通じない診断困難症例の増加、ピロリ未感染者の増加による胃がんの減少の中、1例1例が貴重な症例となっております。このような状況で、我々は早期胃がんで発見頂いた皆様の患者様に対して真摯かつ誠意を持って対応して参る所存です。引き続きどうぞ宜しくお願い致します。(後藤田 卓志)
化学療法トピック


消化器化学療法科では胃癌に対する新規血管新生阻害療法の開発を進めています。パクリタキセル+ラムシルマブ併用療法後に全例で早期に血中VEGF-Aの上昇を確認し、さらに高値群で予後が不良であることを報告しました(図1)。そこで、「ラムシルマブ投与後の過剰なVEGF-Aを抗VEGF-A抗体で中和することで治療成績が改善するのではないか?」という仮説を立て、マウスを用いた基礎研究を実施しました。その結果、抗マウスVEGF-A抗体と抗マウスVEGFR-2抗体の併用療法群で有意な腫瘍増殖抑制効果が認められました(図2)。これらの研究成果から、ラムシルマブによって誘導された過剰な血中VEGF-Aをベバシズマブで中和する『ベバシズマブ+ラムシルマブ+パクリタキセル併用療法』が、現行の標準治療と比較して予後を改善する可能性が期待されます。この三剤併用療法の忍容性と安全性の評価、有効性および作用機序の確認、さらにベバシズマブの至適用量を決定することを目的とした第I相試験(略称:ベバラム試験)を2025年1月より開始予定です。
(消化器化学療法科 下嵜 啓太郎)
アイスランドにおける胃がん診療


ESD普及の目的で、昨年の10月からアイスランドのLandspitali University Hospitalで勤務をしています。バレット食道腺がん、大腸がんが主なターゲットになりますが、胃ESDも行っています。日本に比べると胃がん有病率が低いため、スクリーニング検査においては胃にかける検査時間は1-2分と短く、撮影写真も1-4枚程度と少なく、内視鏡検査方法に大きな違いがあります。しかしそんなアイスランドも1950年代には日本と同程度の有病率で、その他北欧諸国とは一線を画す胃がん大国でした。そのため、現在は遭遇する頻度が著しく下がったものの、アイスランドの人々は胃がんに対して一定の”怖さ”を感じているようです。頻度の低い疾患に対する検査の簡素化という合理性も尊重しつつ、ニーズに合わせて萎縮性胃炎などの所見を用いたリスク層別化、網羅的な胃検査など、日本で学んだ知見を海外で役立てられる様努めています。また、一般的には欧米のピロリ菌は東アジアに比べて弱毒である事が知られていますが、『著明な胃がん有病率の低下がピロリ菌感染率の低下に因るものであるとしたのならば、アイスランドのピロリ菌株は強毒性の可能性があるのでは』という仮定の下、アイスランド大学と共同で胃がん患者のピロリ菌を培養し、その病原因子を評価する研究も進めている最中です。
(上部消化管内科 並河 健)
Dr.平澤の内視鏡クイズ

60歳代女性.既往:なし
胃部不快感の精査の内視鏡検査で、胃の隆起性病変を指摘され紹介となった。



体下部から胃角の前壁に4cm大のSMT様病変を認める。EUSでは、粘膜下層から壁外にかけて多房性の嚢胞が多発しており、CTでは胃大網動静脈沿いに低濃度の多結節状構造物を認め、造影効果はなかった。以上より、胃リンパ管奇形と診断した。
胃リンパ管奇形は、まれな疾患であり、特に巨大な多房性嚢胞状リンパ管腫は極めてまれである。病因は、リンパ管系の組織奇形や発育障害と考えられており、他にも、リンパ管内皮細胞の分泌機能障害や浸透圧障害、炎症の併発、機械的内圧上昇によるリンパ管閉塞が考えられている。悪性化することはないため、無症状の場合は経過観察が原則である。有症状例や出血、破裂、炎症の可能性がある場合、増大傾向のあるもの、悪性腫瘍との鑑別が困難な場合には、切除を検討する。

そう感じたことはありませんか?
GIST、SMT様の胃癌、悪性リンパ腫、NET、グロムス腫瘍、異所性膵など、胃SMTには鑑別が必要な疾患が多く、さらに組織診断も容易ではありません。これまで、この領域を系統的に学べる書籍がなかったため、多くの医師が手探り状態で診断を行ってきたのではないでしょうか?
そこで、がん研有明病院での18年間にわたる知識と経験を基に、3年間をかけてこの難解なSMTを徹底解説する書籍を執筆しました。豊富な症例を用い、講義形式でわかりやすく解説。読者に「目から鱗が落ちる」ような体験を提供します。
臨床現場で役立つ、まさに必携の一冊です!
胃外科トピック



食道胃接合部癌と体上部胃癌の増加に伴い、噴門側胃切除の適応症例が増えています。噴門側胃切除の再建法は多彩であり、当院では観音開き(上川)法再建(図1)を採用しています。上川法再建は、偽穹窿部(Pseudo-Fornix、図2)を作成し高い逆流予防効果を発揮する一方、腹腔鏡下での縫合が煩雑であり高難度で敬遠されがちな術式でもあります。ロボット手術は安定した3D視野で精度の高い操作を可能にするため、上川法再建に適している可能性があります。本研究は2016年から2023年にかけて当院で噴門側胃切除上川法再建を施行した患者さんを対象に、ロボット手術と腹腔鏡手術の成績について比較検討を行いました。傾向スコア・マッチング後の解析によると、ロボット手術は腹腔鏡手術に比べ、再建時間が30分短縮され、術中出血量と術後在院日数がともに短いことがわかりました。術後合併症や逆流率に関してはロボット手術と腹腔鏡手術が同等でした。ロボット手術の注意点は導入初期の狭窄率が高いことであり、これは年次推移で徐々に低下しています(図3)。本検討により、ロボット支援下噴門側胃切除上川法再建は吻合が行いやすい安全な術式であることが示唆されました。
文献:1) Hu Q, et al. Surg Endosc. 2024 Oct;38(10):5824-5831.
(胃外科 胡 慶江)
胃切除術前の説明動画を公開しています


がん研胃外科では、これから胃がんの手術をうける 患者さんを対象に術前説明用の動画を作成しました。 動画はYouTubeで閲覧出来ます。右図のQRコードからもご覧になれます。(https://youtu.be/kwiYQ8g5CIA)
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