
胃外科
胃がん通信バックナンバー
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平素より多くの患者さまをご紹介いただき、心より御礼申し上げます。近年、胃がん治療は多様化・複雑化が進み、治療方針の決定に難渋する症例も少なくありません。当院では、内視鏡科・外科・化学療法科が密に連携し、各診療科の専門的見地から最適な治療方針を検討しております。治療方針にお悩みの症例につきましても、セカンドオピニオンとしてご紹介いただければ、迅速かつ的確に、各科連携のもと多角的な視点から治療方針をご提案させていただきます。
また、ピロリ菌除菌の普及により、今後は胃がんの罹患数が減少すると予想される一方で、進行がんの中にも化学療法の進歩によって根治が期待できる症例が増えてきております。胃がんと診断された際には、ぜひ当院へのご紹介をご検討いただけますと幸いです。
(胃外科部長 布部 創也)
胃外科スタッフ紹介
-
佐野武
病院長 -
布部創也
部長 -
大橋学
手術部長 -
入野誠之
副部長 -
速水克
医長 -
幕内梨恵
医長 -
李基成
副医長
上部消化管内科スタッフ
-
後藤田卓志
部長 -
平澤俊明
胃担当部長 -
由雄敏之
食道担当部長 -
石山晃世志
副部長 -
堀内祐介
医長 -
山本 浩之
副医長 -
福山 知香
副医長
消化器化学療法科スタッフ紹介
-
山口研成
部長 -
陳勁松
外来化学
療法部長 -
篠崎英司
副部長 -
大木暁
副部長 -
若槻尊
医長 -
小倉真理子
副医長 -
大隅寛木
副医長 -
福岡聖大
副医長 -
宇田川翔平
副医長 -
下嵜啓太郎
副医長
胃外科トピック
胃癌治療の進歩に伴い、低侵襲手術の適応は拡大していますが、局所進行胃癌に対する低侵襲胃全摘の有用性は十分に検証されていません。本研究は、当院で2017年1月から2024年3月に施行された胃全摘術を対象に、ロボット支援または腹腔鏡による低侵襲胃全摘(MTG)と開腹手術(OTG)の短期成績を比較したものです。359例の患者から傾向スコアマッチングにより選択された190例(各95例)の解析で、術後のCRP値やドレーンアミラーゼ値がMTG群で有意に低く、在院日数も短縮されていました(表1)。また、MTG群はOTG群と比べて術後重篤合併症(Clavien-Dindo≧3)が有意に少なく(3.2% vs 11.6%)、特に膵瘻や腹腔内膿瘍といった感染性合併症の発生率が低下していました(表2)。熟練した術者のもとであれば、MTGは安全性に優れ、OTGに比して良好な短期成績が期待できる選択肢と考えられます。


文献:1) Ri M, et al. Ann Gastroenterol Surg. 2024.
(胃外科 李 基成)
胃内視鏡領域のトピック
2025年3月改訂の『胃癌治療ガイドライン』第7版では、内視鏡的切除の根治性評価が変更されました。腫瘍が一括切除され、以下のいずれかを満たす場合はeCuraAと判定されます。
※以下の3病変は第6版でもeCuraAとされていたものです:
- UL0(潰瘍/潰瘍瘢痕なし):分化型優位、pT1a、HM0、VM0、Ly0、V0(腫瘍径不問)
- UL0(潰瘍/潰瘍瘢痕なし):未分化型優位、2cm以下、pT1a、HM0、VM0、Ly0、V0
- UL1(潰瘍/潰瘍瘢痕あり):分化型優位、3cm以下、pT1a、HM0、VM0、Ly0、V0 さらに第7版では、新たに以下の病変もeCuraAに追加されました:
- 3cm以下の分化型優位、pT1b (SM1 (<500μm))、HM0、VM0、Ly0、V0

これにより、従来eCuraBとされ、CTなどの画像検査が推奨されていたこの病変に対しても、年1回程度の内視鏡による経過観察のみで対応可能となりました。
(上部消化管内科 並河 健)
Dr.平澤の内視鏡クイズ

60歳代女性.既往:なし
42歳女性。既往歴に特記すべき事項はなく、喫煙歴およびPPI使用歴もない。母方の叔父に胃ポリポーシスの既往がある。自身も胃ポリポーシスを指摘され、精査目的で当院を受診した。
上部消化管内視鏡検査では、胃体部に無数のポリープを認めた。また、体部大弯に15mm大の白色調領域(黄色矢頭)を認めた。生検の結果、ポリープは胃底腺ポリープ、白色部位はtub1であった。十二指腸および大腸にはポリープを認めず、血清ピロリ抗体も陰性であった。


GAPPS(gastric adenocarcinoma and proximal polyposis of the stomach)が疑われたため、遺伝カウンセリングを行った上で遺伝子検査を施行した。その結果、APC遺伝子のexon1Bに病的バリアントが検出され、GAPPSと確定診断された。
本疾患は、常染色体優性遺伝形式をとり、胃近位部に多数の胃底腺ポリープを形成する稀な疾患であり、これらのポリープは腺腫や腺癌への進展をきたすことがある。また、FAP(家族性大腸腺腫症)と異なり、十二指腸および大腸に多発する腺腫を認めないことが特徴である。
本症例では胃癌に対してESDが行われたが、GAPPSは新たな多発胃癌のリスクがあるため、根治治療として胃全摘が推奨される。患者の希望により胃全摘は実施されず、現在は定期的な内視鏡フォローアップを継続している。(New England Journal of Medicine に本症例が掲載されました!Tanaka K, Hirasawa T. Gastric Adenocarcinoma and Proximal Polyposis of the Stomach. N Engl J Med. 2025 Mar 13;392(11):e29.)


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【メールマガジン 内視鏡アトラス】
がん研有明病院で経験した興味深い症例、教育的な症例などを毎週メールマガジンとして配信しています。現在は 全国の3,000名以上の内視鏡医に届けています。ご興味がある先生はご連絡ください。 toshiaki.hirasawa@jfcr.or.jp 消化器内科 平澤俊明
化学療法トピック
近年では、殺細胞性抗がん剤に加え、免疫チェックポイント阻害剤や、分子標的薬の併用が一般的となり、胃癌におけるバイオマーカー検査の重要性が増しています。新規のバイオマーカーの探索と、それに対する治療薬開発も急速に進んでいます。
胃癌の約16%に認められるFGFR2b(線維芽細胞増殖因子2アイソフォームb)の過剰発現は、異常なシグナル亢進を引き起こし、胃癌の腫瘍増殖や転移と関連していることが報告されています。Bemarituzumab(Bema)はFGFR2bに選択的に結合するヒト化IgG1モノクローナル抗体で、主に抗体依存性細胞傷害を介して抗腫瘍効果を発揮します。FGFR2b陽性進行胃・食道胃接合部腺癌に対する1次治療における化学療法+Bemaの有効性を検証する第III相試験の結果が待たれています。しかしながら、この結果はすぐに患者さんのもとに届けられるものではありません。また、複数のバイオマーカーが陽性の場合、他の分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤が1次治療で選択されることもあります。
そこで当院では、2次治療の標準治療であるパクリタキセル+ラムシルマブ併用療法に、Bemaを追加する医師主導治験を実施しています。FGFR2b検査が保険適応外であることから、全国約80の施設のご協力もと進められています。
化学療法科では、日常診療に加え、臨床研究や研究所との連携を通じて新たな治療法の開発にも積極的に取り組んでいます。今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

(消化器化学療法科 下嵜 啓太郎)
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電話:03−3570−0506(直通:医療機関専用)
FAX:03−3570−0254
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