
胃外科
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ごあいさつ
胃がん内視鏡検診が導入され、各施設の先生方は様々な業務が増加し、お忙しいことと存じます。当院ではすべての胃癌症例を治療前にカンファレンスで検討し、一人の医師の采配で治療が決定されることはありません。治療方針に迷った症例もとりあえず、上部消化管内科、胃外科にご紹介いただければ、最良の治療方針をカンファで決定いたします。胃全摘が他院ですすめられた患者さんも内視鏡治療で完治したり、もしくは噴門側胃切除が選択され、胃を残すことができた患者さんもいます。最近はガイドラインも組織型、大きさ、粘膜下浸潤度、瘢痕の有無など、細かいポイントからの検討で内視鏡治療後も治癒判定になったり、追加手術が必要になったりと複雑です。私たちは山口俊晴名誉院長の時代からの教えで、早い、うまい、安い(安全)をモットーに治療にあたっています。
(消化器内科部長 藤崎 順子)
患者さんに寄り添う周術期管理
がん研有明病院では、患者さんからの声に耳を傾け、少しでも安心して治療を受けて頂けるように心がけています。以下に患者さんからの声をご紹介します。
患者さんの声:「胃癌と言われました。心配なので、早く治療を受けたいです」
当院の対応:「治療開始までの期間をできるだけ短くしています」
- 初診日に内視鏡を含め、ほとんどの必要な検査を行います。
- 初診から1週間以内に治療方針を決定し、2週間以内には入院/手術を行う計画で進めます。
患者さんの声:「手術を乗り切ることができるか心配です」
当院の対応:「職員みんなでサポートしますので、安心してください」
病棟の看護師との面談や、リハビリ指導、栄養指導など多職種との連携を外来の時点 から強化しています(図2)。当院では、このような多職種による周術期管理チームをPERICAN (Perioperative team at Cancer Institute Hospital: ペリカン)と名付け活動しています。
(胃外科副医長 井田 智)
最近のトピックス:ピロリ菌除菌後胃癌
胃癌の原因は99%ピロリ菌といわれており、子宮頸癌、肝癌と同様原因が判明している癌の一つです。
ピロリ感染慢性胃炎の除菌治療が保険収載され5年となりましたが、除菌後に胃癌が見つかる患者さんも多くみられます。2016年に早期胃癌に対し内視鏡的切除を施行した患者さんの内訳では、未除菌、除菌後の割合がほぼ同等となっています(図1)。
また、残念ながら除菌したにも関わらず、進行胃癌で発見される患者さんも時におられます。2017年に当院で胃切除を行った進行胃癌375名のうち、除菌後の患者さんが32名(8.5%)おられました。発見までの年数は、除菌後10年以上が5名、1〜9年が9名、不明が18名でした。最も多い年代は60歳代ですが、30-50歳代にも分布しています(図2)。除菌が成功し安心してしまい検査を怠ってしまう場合もあり注意が必要です。
症例提示:42歳女性。10年前に除菌治療を行い、その後は毎年バリウム検査を施行していました。しかし、病変発見時には進行胃癌であり胃切除術を施行しました(図3)
除菌後における適切な内視鏡検査間隔については、まだ確かな証拠はありませんが、定期的な 内視鏡検査による経過観察が重要です。
(上部消化器内科部長:藤崎 順子)
Dr.平澤の内視鏡クイズ
Q: 食道胃接合部の2-3時方向の病変を診断してください。
b:バレット上皮(SSBE)
c,d:バレット食道腺癌
【解説】
食道胃接合部の食道側の発赤は逆流性食道炎やバレット上皮の鑑別が問題となる。逆流性食道炎は三角状や、線状の形態をとり、周囲の粘膜の白濁や毛羽立ちを伴うことが多い。
バレット上皮は食道胃接合部より口側に存在する円柱上皮であり、逆流性食道炎による炎症により食道扁平上皮が円柱上皮に置換されたものである。内視鏡所見では、粘膜面の凹凸はなく、柵状血管を認める。3cm以下の場合SSBE (Sort Segment Barrett’s Esophagus )と呼ばれる。バレット食道腺癌はバレット上皮を背景に発生する腺癌であり、0-3時方向が好発部位である。早期の病変は発赤した平坦型病変であり、バレット上皮よりも粘膜面が粗造で凹凸を伴うことが多い。
ポイント:食道胃接合部0-3時方向の発赤に注意!
上部消化管内科スタッフ紹介
平成30年度の上部消化管内科は臓器別の専門スタッフ7名、レジデント8名の計15名で診療に当たっております


お知らせ:ロボット手術を開始しました
2018年4月より胃癌に対するロボット支援下腹腔鏡下手術が保険適用となりました。ロボット手術では術者がサージョンコンソールという操作台に座り、遠隔操作でロボット本体を動かします。ロボット手術は、3Dのフルハイビジョンでの鮮明な画像や、ヒトの手のような関節をもつ手術機器、さらに手ぶれ防止機能など様々な利点を持ち、これまでの腹腔鏡下手術よりも正確で繊細な手術が行えると期待されております。
がん研有明病院では最新の手術ロボット ダ・ヴィンチXiを導入し、2019年1月より 胃癌に対するロボット手術を開始しました。今後も積極的に行っていく予定です。
(胃外科:李 基成)